Dental Materials Journal
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8 巻, 1 号
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  • 水素ガス還元法で得た金属清浄化表面に対する接着性レジンの接着性
    大野 弘機, 荒木 吉馬, 遠藤 一彦, 川島 功
    1989 年8 巻1 号 p. 1-8,121
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    接着性レジン(4-META/MMA-TBB)と合金の接着機構における合金表面の酸化膜,不動態被膜の役割を解明するために,さらに,これらの被膜の存在しない金属そのものに対する接着性レジンの接着性を調べるために,水素ガス還元法で得た金属の清浄化表面に対する接着性を検討した。
    その結果,酸化膜や不動態被膜が存在しなくても接着性レジンは金属に接着し,これらの被膜は両者の接着機構に本質的な役割を果たすものではないことが明らかになった。引張試験で求めた接着強さにおいて,卑金属では,優れた接着性はCr, Co, Feで得られ,破断面はすべての試験片でレジン内での凝集破壊を呈していた。Niは卑金属中で接着性が一番劣っており,破断面は接着部の周辺で界面破壊を,中心部で凝集破壊を示した。貴金属ではAgとAuが比較的良い接着性を示すが,PtとPdは熱サイクル中に全面に界面破壊を起す場合があり,実験に使用した金属中で一番接着性が悪かった。金属の種類による接着性は次の順で悪くなった。
    Cr≅Co≅Fe>Cu>Ag>Au≅Ni>Pt>Pd
  • 浅岡 憲三, John A. TESK
    1989 年8 巻1 号 p. 9-25,121
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    陶材焼成時の冷却過程をコンピュータ・シミュレーションにより解析し,陶材中に残留応力が発生するメカニズムを明かにした。即ち,温度依存の弾性係数,熱膨張係数,粘性係数と冷却速度依存のガラス転移温度,材料内温度分布を考慮したプログラムを作製し,材料内の応力,ひずみの経時的変化を粘弾性問題として計算した。シミュレーションの結果は風冷強化ガラスに対する実験結果と良く一致した。そして,陶材中の残留応力,σ,が板厚,2l,と冷却速度,q,の関数として次式で表されることが示され,市販焼付用陶材に対して定数を求めた。
    σ=kl2Qnここで,k, nは定数,Q=q/q0, q0は参照冷却速度。風冷強化により陶材が強化されるために必要な陶材の物理的性質をシミュレーションの結果から議論した。金属焼付陶材補綴物中の残留応力の計算に,ここで用いた方法が適用できることが示唆された。
  • 平 雅之, 若狹 邦男, 山木 昌雄, 松井 昌
    1989 年8 巻1 号 p. 26-34,122
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    日常の歯科臨床における切削機械として広く普及しているエアータービンは,軸受け機構の違いから2種類に大別されている。本研究では,まず,これらの無負荷時回転数を空気圧との関係で調べ,次いで,切削実習用に新たに開発されたガラス・セラミックス素材を用いて定荷重切削実験を行ないトルク性能と切削効率について比較検討を加えた。
    エアーベアリング式タービンはより高速(48×104rpm)で回転するものの常に一定の高い空気圧を必要とした。一方,ボールベアリング式タービンは空気圧を調整することで回転数を15×104rpmから32×104rpmに可変させ使用することができた。
    エアーベアリング式タービンは負荷をかけると回転数が低下しやすくより低いトルク性能を示したが,切削効率はより大きかった。ボールベアリング式タービンは逆に,より高いトルク性能とより小さな切削効率を示した。
    歯科切削においては,このようなエアータービンの特長に十分留意すべきことが示唆された。
  • I. 単独重合体/可塑剤混合物の粘弾性
    片倉 直至, 細谷 誠, 飯島 一法, 本間 久夫, 坂口 緑
    1989 年8 巻1 号 p. 35-39,122
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    合成した分子量の異なる3種類のポリメタクリル酸ブチルを粉末に用いて,液の成分にアルコールを含まない新しいティシュコンディショナーを試作し,その貯蔵弾性率G',動的粘性η',損失正接tanδの周波数および温度依存性を測定した。これらの測定値に対して,時間-温度換算則を適用することにより,G', η', tanδをそれぞれ一本のマスターカーブとして表わすことができる。材料の粘弾性的性質に与えるポリマー分子量の影響が,とくに低い周波数領域で顕著に観察され,分子量が小さくなるとG'はちいさくなり,tanδが大きくなった。
    本研究の結果によれば,ポリメタクリル酸ブチル系の粉末を用いることによって,さらに適切な物性を有し,液の成分としてアルコールを含まないティシュコンディショナーの製造も可能と考えられる。
  • 川口 稔, 福島 忠男, 堀部 隆
    1989 年8 巻1 号 p. 40-45,122
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    分子内にビスフェノール骨格を有する7種の芳香族系ジメタクリレート(Bis-GMA, Bis-GMA-F, Bis-GMA-EPh, Bis-GMA-ECh, Bis-MEPP, Bis-MPPP, Bis-ME2.6PP)とtri EDMAをベースモノマーとし,不定形シリカフィラーを70wt%配合した可視光線重合型コンポジットレジンについて,その機械的性質におよぼすジメタクリレートモノマー構造の影響について検討を加えた。骨格中に水酸基を有するジメタクリレートをベースモノマーとしたコンポジットレジンは,wetでの物性低下率がやや大きい傾向が認められたが,フルオロ基を有するBis-GMA-Fの場合は低下率も小さく,コンポジットレジン用ベースモノマーとしての有効性が再確認された。また,骨格中に水酸基を持たないジメタクリレートの場合,wetでの物性低下率は小さかったが,その物性は分子鎖の運動性に依存しており,鎖長の短いBis-MEPPをベースモノマーとしたコンポジットレジンはBis-MPPPやBis-ME2.6PPに比べ,脆性に富む傾向が認められた。
  • (第1報) 電気化学的腐食試験
    遠藤 一彦, 荒木 吉馬, 大野 弘機
    1989 年8 巻1 号 p. 46-55,123
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    3種の市販銀合金,Ag-Sn-Zn, Ag-InおよびAg-Pd-Cu合金の腐食挙動を0.1%硫化ナトリウム溶液とリンゲル液中で,電気化学的手法を用いて調べた。
    Ag-Sn-Zn合金は,0.1%硫化ナトリウム溶液中よりもリンゲル液中において腐食するのに対し,Ag-Pd-Cu合金は逆に,リンゲル液中ではほとんど腐食しないが,0.1%硫化ナトリウム溶液中において著しく腐食した。Ag-In合金は0.1%硫化ナトリウム溶液およびリンゲル液中で同程度に腐食した。
    特に,Ag-Pd-Cu合金は,0.1%硫化ナトリウム溶液中における腐食速度がリンゲル液中の約500倍にも達し,硫化物イオンあるいは硫化水素イオンを含む溶液中で,表面が単に変色するのみならず,腐食により著しく劣化することが明らかとなった。
    歯科用銀基合金は,その成分・組成により腐食に影響するイオン種が異なる。したがって,腐食試験を行なう際には,個々の合金系において,口腔内で起こると考えられる重要な腐食反応を充分に検討した上で,最適な腐食液を選定する必要がある。
  • 第2報,片側遊離端義歯におけるクラスプ・デザインの影響
    守川 雅雄, 鱒見 進一, 城戸 寛史, 豊田 静夫, 小園 凱夫
    1989 年8 巻1 号 p. 56-64,123
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    片側遊離端義歯の維持装置として,RPA, RPI,およびAkerの三種類のクラスプをシミュレーション・モデル上に設定し,鈎歯の三次元的動的挙動をマンディブラーキネジオグラフ(MKG)を用いて分析し,比較検討した。
    義歯床の第二小臼歯および第二大臼歯相当部に種々の荷重を加えることによって,鈎歯はその歯根を回転中心とした傾斜的挙動を示したが,Akerデザインのものが最も著しく,遠心頬側への傾斜が認められた。RPAも概略的にみてAkerの場合と類似した傾向を示した。RPIにおいては,鈎歯を遠心に牽引する傾向が最も少なかった。歯牙は側方的な力に対して耐性が極めて小さいという構造的な特徴から考えて,RPIのこの性質は,鈎歯々周組織保護の観点から今回の三種類の維持装置のうちでは最良のクラスプであろうと考えられた。
  • 小倉 英夫, 宮川 行男, 中村 健吾
    1989 年8 巻1 号 p. 65-75,123
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    6種の歯科用アマルガムの曲げクリープを異なる静荷重下で最長30日間連続的に測定した。その結果,試験した6種のアマルガムは30日以内のうちに9kgfの静荷重下ですべてクリープ破壊を起こした。また,これより低い荷重下でもいくつかのアマルガムはクリープ破壊を起こした。高銅アマルガムは,従来型の低銅アマルガムに比ベクリープ破壊に対し長期間抵抗した。混合型高銅アマルガムは,破壊時のクリープ値が試験したアマルガム中でもっとも大きかった。これは,このアマルガムが連続的な荷重に対し他のアマルガムに比べてより柔軟性があるということを意味している。破壊時間はクリープ速度の逆数にほぼ比例し,クリープ速度が減少すると破壊時間は急激に増加した。この結果は,以前に報告された一定期間内のクリープ値とアマルガム修復物の辺縁破折との相関をクリープ破壊の面から説明し,裏付けている。
  • 千葉 幹男, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1989 年8 巻1 号 p. 76-85,124
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Dentin cleanserによって象牙質の受ける変化が接着性にいかなる影響を及ぼすかについて,リン酸,グリシン含有ピルビン酸,EDTAによる歯面清掃を行なった後の象牙質の物理的特性を計測し,これらとレジンとの接着性の相関を検討した。その結果,レジンと象牙質との接着性は,cleanserによって象牙質に与える変化のうちMicro Vickers Hardnessの低下と最も高い相関を示した。すなわち,cleanserによって残存象牙質硬さが85%以上に保たれるEDTA-2Naによる処理が最も良好な接着性を示した。このことから,良好な接着性を得るためにはsmear layerのみを除去し,象牙質には全く影響を及ぼさないcleanserが理想的な材料であると結論付けられた。
  • 千木良 尚志, 小池 斗誌江, 長谷川 篤司, 伊藤 和雄, 和久本 貞夫, 早川 徹
    1989 年8 巻1 号 p. 86-92,124
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    35%HEMA水溶液に希釈されたジカルボン酸または,そのエステル構造物を含む市販及び試作のSelf Etching Dentin Primerの効果を象牙質円柱窩洞内での可視光線重合型コンポジットレジンのコントラクションギャップの計測と象牙質平面に対する引っ張り接着強さによって評価した。
    試作したprimerはすべて市販のリン酸エステル系ボンディング材と,また市販品のセルフエッチングタイプのprimerは付属のレジンモノマーを併用し,全ての窩洞および被着面には,市販の光重合型コンポジットレジンを填塞または接着させた。
    その結果,HEMAにメタクリロキシエチルコハク酸または,メタクリロキシエチルフタル酸を溶解した2種類の試作primerが,今回用いられたボンディイグ材の象牙質に対する接着性を著明に向上させた。また,マレイン酸を含む市販のprimerは,24時間後の引っ張り接着強さが11.99±5.7MPaと高い値を示したが,コンポジットレジンと象牙質窩壁との適合性を改善することはできなかった。
  • 平野 進, 平沢 忠
    1989 年8 巻1 号 p. 93-99,124
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンの圧縮クリープを4種の異なる応力(圧縮応力0∼3.5kg/mm2)で水中浸漬下で500時間にわたり行なった。得られた4種のクリープ曲線から,一定時間経過したときの各クリープひずみと圧縮応力との間には一次回帰式が成立した。そのためコンポジットレジンの500時間後の吸水飽和状態になったときのクリープひずみは圧縮応力が分かれば予測可能となった。またこの回帰式を使い,各時間における吸水膨張応力を求めた。最大吸水膨張応力はコンポジットレジンが吸水飽和したときに得られ,その値は0.74kg/mm2であった。各応力下で得られたクリープ曲線をひずみ一対数時間曲線で表すと,初期の数十時間は直線となった。
  • Yoshio KOZONO
    1989 年8 巻1 号 p. 100-107
    発行日: 1989/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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