本研究は象牙質窩洞における5種の象牙質接着システムの歯髄刺激性ならびに細菌侵入の比較検討を目的として計画された。まず,サルの歯牙224本に5級窩洞を形成し,さらに窩縁周囲のエナメル質を除去して,象牙質窩洞を作製した。次に,これらの窩洞に各種象牙質接着システムを用いて,コンポジットレジンを充填した。実検期間は3, 30, 90日とし,各期間経過後,サルを薬殺し,病理組織標本を作製,評価を行なった。象牙質接着材を用いたすべての群において初期に様々な程度の象牙芽細胞層の変化が認められ,軽度ないしは中等度の炎症性変化が観察された。細菌侵入例以外において炎症性変化の程度は経時的に減少した。SAプライマー/フォトボンドを用いた例においては陰性対照のグラスアイノマーセメントと同程度であった。よって,本研究において,特に象牙質窩洞では,レジンと窩壁象牙質の良好な接着と適合が歯髄刺激の減少に寄与することが示唆された。
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