象牙質知覚過敏症に対する35% HEMA水溶液の鎮静効果を臨床的に評価するために,歯周治療を要する48患歯の歯面をEDTAによって清掃し,35% HEMA水溶液を塗布して市販のdentin bonding agentで被覆した。このような手法による知覚鎮静効果は,圧搾空気,冷水,および探針によって歯面を刺激した際の反応を,術前後で比較することによって評価した。その結果,これら3種類の刺激に対する反応は,70%以上の症例でいずれも術後には明らかに減少し,35% HEMA水溶液による象牙質知覚鈍麻作用が,前報のウサギを使った生理学的な検討に加えて,臨床的にも確認された。しかしながら,今回被検歯とした48歯のうち10症例では冷水に対する反応が軽減しないなど,すべての症例に完全に奏功させることは出来ず,今後,効果の確実性と持続性を検討する必要があると考えられる。現在,このような鎮静効果の発現については,象牙芽細胞突起内の微小管が可逆的な変化を受ける可能性を検討しており,次報で報告する所存である。
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