Dental Materials Journal
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9 巻, 2 号
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  • 早川 徹, 渋谷 功, 高橋 清之, 堀江 港三
    1990 年 9 巻 2 号 p. 129-135,277
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    新しい象牙質のエッチング剤として,AC(クエン酸3アンモニウム)水溶液の効果を調べた。5%, 10%, 20%,及び30% AC溶液を調整した。いずれの溶液もpH 7.3から7.4と中性であった。
    10% ACでエッチングした後,プライマーMTYA・G・Hを作用させた場合に約7MPaと最大の接着強さが得られた。AC溶液でエッチングした後の象牙質表面をSEMで観察するとスメアー層は除去されているが,象牙細管は開孔していなかった。
    さらに10% AC, 0.5のMEDTA,またはEDTA 3-2でエッチングした象牙質に対して,プライマーを作用させない場合プライマーとしてMTYA・Hまたは,MTYA・G・Hを作用させた場合の接着強さを比較検討した。各エッチング剤間で接着強さにそれほど差はなく,いずれの場合もMTYA・G・Hを作用させた場合が最も高い値を示した。
  • 藤沢 盛一郎, 門磨 義則, 菰田 泰夫
    1990 年 9 巻 2 号 p. 136-146,277
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    酸性モノマー(メタクリロイルオキシデシルジハイドロジエンホスフエート,MDP)は市販歯科用接着システムの重要な成分として使用されている。この化合物はメタクリル酸(MAA)と比べ強い溶血作用を示した。歯科用接着モノマーの生体膜との相互作用のメカニズムを分子レベルで明らかにするため,我々はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)リポソームシステムとMDP及びMAAの相互作用を,核磁気共鳴装置(NMR)と示査走査熱量計(DSC)で研究した。DSCでMDP-DPPC相互作用をみると,pHが減少するにつれてDPPCリポソームの相転移のブロード化がおこり,最終的にはpH 2.5でエントロピーが零になった(MDP-DPPC 1:1モル比)。NMRでみると,MDPのプロトンケミカルシフトは遮蔽が高まり,DPPCリポソームの流動性が高まるためのホスファチヂルコリン極性基(OCH2CH2N)のプロトンシグナルが新たに観察された。MAA-DPPC相互作用は低いpH値でもMDP-DPPCより小さかった。MDPの溶血活性は赤血球のりん脂質膜との相互作用に基づくものと結論づけられた。
  • 真鍋 厚史, 長谷川 篤司, 千木良 尚志, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄, 中山 貞男, 立川 哲彦
    1990 年 9 巻 2 号 p. 147-152,228
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    レジンの象牙質に対する接着性を改善するために用いられるdentin primerによって,術者の手指を主とする皮膚組織に引き起こされる副作用を検討するために,glutaraldehyde (GLU)またはHEMAの水溶液,およびこれらの混合水溶液からなる試作primerの7日間の反復塗布によって,ウサギの皮膚に見られる変化を病理学的に検討した。さらに,新たに試作したdimethylaminoethyl methacrylate (DMAEM)水溶液の接着性を検討するとともに,この水溶液による副作用も合わせて検討した。その結果,DMAEMは従来報告されている,HEMAおよびGLUを含む水溶液と同等の接着性を示したものの,ウサギの皮膚に対して強力な炎症作用を引き起こし,さらに,このような炎症は,塗布7日後にも完全に回復することは出来なかった。さらに,GLUを含む水溶液でも同様の炎症が惹起されたが,その程度はやや軽微で,7日後にはほぼ完全な回復が観察された。これに対してHEMAおよびglyceryl methacrylateの塗布では,著明な変化は全く認められなかった。
  • 伴 清治, 高橋 好文, 棚瀬 裕明, 長谷川 二郎
    1990 年 9 巻 2 号 p. 153-162,228
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    成形修復用光重合型コンポジットレジン,歯冠修復用光重合型硬質レジン,純粋ジメタクリレートモノマー,触媒を添加したBis-GMA,モノマー混合物の熱重合挙動を,走査型示差熱量測定(DSC)により,光照射せずに,一定の昇温速度でゆっくり過熱した場合,すなわちDSC昇温法により測定した。成形修復用光重合型コンポジットレジンおよび歯冠修復用光重合型硬質レジンの中には,大きな発熱ピークを示すものがあった。また,純粋TEDMAモノマーも大きな発熱ピークを示した。一方,カンファーキノンを添加したBis-GMAは発熱ピークは生じなかった。ゆえに,光重合型コンポジットレジンの熱重合挙動はカンファーキノンの熱分解によるものではなく,レジン成分であるモノマー自体の熱重合によるものと考えられた。
  • 須田 玲子, 安藤 芳明, 塩野 目学, 長谷川 紘司, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄
    1990 年 9 巻 2 号 p. 163-166,228
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    象牙質知覚過敏症に対する35% HEMA水溶液の鎮静効果を臨床的に評価するために,歯周治療を要する48患歯の歯面をEDTAによって清掃し,35% HEMA水溶液を塗布して市販のdentin bonding agentで被覆した。このような手法による知覚鎮静効果は,圧搾空気,冷水,および探針によって歯面を刺激した際の反応を,術前後で比較することによって評価した。その結果,これら3種類の刺激に対する反応は,70%以上の症例でいずれも術後には明らかに減少し,35% HEMA水溶液による象牙質知覚鈍麻作用が,前報のウサギを使った生理学的な検討に加えて,臨床的にも確認された。しかしながら,今回被検歯とした48歯のうち10症例では冷水に対する反応が軽減しないなど,すべての症例に完全に奏功させることは出来ず,今後,効果の確実性と持続性を検討する必要があると考えられる。現在,このような鎮静効果の発現については,象牙芽細胞突起内の微小管が可逆的な変化を受ける可能性を検討しており,次報で報告する所存である。
  • 今井 庸二, 秋元 隆宏
    1990 年 9 巻 2 号 p. 167-172,229
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    象牙質知覚過敏は動水力学説によって最もよく説明されており,したがって露出した象牙細管を塞ぐことにより知覚過敏を低下させることが期待できる。そこで我々はリン酸カルシウムのような不溶性の物質をその場で沈澱させることにより細管を封鎖することを試みた。リン酸ナトリウムに続きすぐに塩化カルシウム水溶液を象牙質に塗布すると,開口した象牙質表面,細管内にただちにリン酸カルシウムの結晶が沈澱し,細管を封鎖した。結晶の大きさ,沈澱物の覆い方,厚さは,塗布方法や塗布する溶液の濃度によって変化した。5%リン酸二ナトリウム水溶液を塗布した後,10%塩化カルシウム水溶液を知覚過敏歯にすりこむように塗布することにより,処置した患者の84%において痛みはただちに消失した。
  • 平 雅之, 若狭 邦男, 山木 昌雄, 松井 昌
    1990 年 9 巻 2 号 p. 173-180,229
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    市販歯科用ダイヤモンドポイントのダイヤモンド砥粒サイズ(普通粒,微粒,超微粒)が歯科高速切削に及ぼす影響を明らかにする目的で,牛エナメルとglass-ceramic実習用模型歯を被削材とした静止負荷切削実験をair-bearing式並びにball-bearing式タービンを用いて行った。実験データとしては,負荷荷重の増加に伴う切削回転数の減少傾向と切削量の増加傾向を観察した。得られた知見は以下の通りである。
    (1) 微粒ポイントの切削効率と切削回転数は普通粒ポイントのものと類似していた。従って,日常の歯科臨床において微粒ポイントを頻用することが推奨される。修復物研磨用の超微粒ポイントの切削効率は他の2ポイントに比べると著しく小さかった。
    (2) glass-ceramic模型歯を用いる切削実習では,エナメル切削と同様の切削量を得るためには若干大きめの負荷荷重を必要とすることが示唆された。(3) air-bearing式タービンはball-bearing式タービンに比べると切削回転数が低下しやすかったが切削量は大きかった。
  • 今 政幸, 石川 邦夫, 桑山 則彦
    1990 年 9 巻 2 号 p. 181-192,230
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    歯科用陶材のモデルとしてガラスまたはアルミナス陶材をマトリックスに用い,ジルコニア分散陶材を作製した。その複合陶材の曲げ強さと破壊靭性(K1C)について検討した。
    ガラスマトリックスに各種ジルコニアを50wt%添加した複合陶材の曲げ強さと破壊靭性はガラス単独の場合に比較して20∼80%高くなった。50wt%以上ジルコニアを添加すると強さおよび靭性ともに低下する傾向を示した。アルミナス陶材をマトリックスとした場合では曲げ強さの向上はみられなかったが,破壊靭性については向上するものが数種出現した。ジルコニア含有量16∼23wt%時に極大値を示し,靭性値は最高でガラス焼結体の2倍の約2.6MPa・m1/2が得られた。
    各種マトリックスにジルコニアを分散した複合陶材の強さや靭性が高くなるのはクラックの湾曲と偏向またはマイクロクラック効果などが考えられた。
  • 浅岡 憲三, 今 政幸, 桑山 則彦
    1990 年 9 巻 2 号 p. 193-202,230
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    陶材の粘度は金属焼付陶材の適合性,すなわち合金と陶材の好ましい物理的・機械的性質の組み合わせ,焼成方法と残留応力の関係を決める重要な因子である。一般に,ガラス転移温度域での陶材の粘度はアレニウス式により表示される。この粘度が,応力を加えながら一定速度で加熱したときに,陶材が膨張から収縮へ転ずる温度(変形温度)を測定することにより求まることを,粘弾性モデルより導き,具体的な測定方法を明らかにした。
    市販焼付用歯冠色陶材6種,オペーク陶材6種について活性化エネルギーを上記の方法により測定した。その結果をもとに焼付用陶材の粘度,加熱時の変形とガラスの特性温度の関係を比較検討した。また,陶材の加熱速度と熱膨張係数の関係について調べた。膨張係数から求まったガラス転移域の下限温度が粘度より計算された歪点と陶材の焼成温度での粘度がガラスの軟化温度の粘度に一致した。ここで示された測定方法が簡便で信頼性の高い方法であると結論された。
  • 平林 茂, 平澤 忠
    1990 年 9 巻 2 号 p. 203-214,230
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    物性の低下を招く事無く,光重合型コンポジットレジンの光透過性を改善するために,低屈折率を有し,かつ脂環基またはフッ素置換ビスフェノール基のような嵩高な骨格を有する4種のジメタクリレートを合成し,それらを含有した6種の試作コンポジットレジンの硬化深さ並びに物性を調べ,UDMA, Bis-MEPPまたはBis-GMAを含有した3種の対照コンポジットレジンと比較検討した。
    合成したモノマーを含有した実験グループの硬化深さはUDMAを含有するコンポジットを除いた対照グループに比較して深かった。硬化深さはマトリックスモノマーとフィラーの屈折率の差が小さくなるに従い増加した。
    実験群のうち2種のコンポジットの物性は対照群のそれに匹敵した。その2種のコンポジットレジンのマトリックスモノマーは4, 8-ジメタクリロキシメチレントリシクロ[5.2.1.02,6]デカンまたは2, 2-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンとTEGDMAのモル比1/1のコモノマーであった。
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