Dental Materials Journal
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14 巻, 2 号
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  • 桃井 保子, 広崎 国継, 河野 篤, John F. MCCABE
    1995 年 14 巻 2 号 p. 109-119,275
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    光硬化型と従来型グラスアイオノマーセメント(修復用2種,裏層用2種)の曲げ強さ,弾性率,弾性ひずみエネルギーを比較検討した.また,窩洞に充填した光硬化型と従来型修復用セメントに,多数の金属小球を繰り返しぶつけ,窩洞辺縁と材料表面の劣化を光顕および電顕で観察した.光硬化型は従来型に比べて,曲げ強さが大きく,弾性率が低く,弾性ひずみエネルギーが大きい事がわかった.また,光硬化型では辺縁や表面の劣化が少ない事が観察できた.これらの結果から,グラスアイオノマーセメントに光重合レジン成分が添加されたことで,グラスアイオノマーセメントの脆性が減じ,材料が永久変形をおこさずにより大きなエネルギーを吸収しうるようになった事が示された.3ヵ月間の水中浸漬で,弾性率が有意に増す材料は,変化しない材料に比べて,セメント中に占める酸-塩基反応の割合が大きく,長期にわたってセメント反応が持続する事を示唆していた.
  • 清水 建彦, 北野 忠則, 井上 正義, 成川 公一, 藤井 弁次
    1995 年 14 巻 2 号 p. 120-134,275
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    臼歯用可視光線重合型コンポジットレジン(LITE-FIL P: Base resin: UDMA, Filler: micro crashed type, alumino-silicate, barium glass & silica, 85wt%, 74vol%, Shofu Co., Kyoto, Japan)で修復した91症例をUSPHSを改良した評価基準にしたがって,10年間毎年評価した.LITE-FIL Pを修復した91症例は10年後68症例に減少した.23症例の喪失は修復直後の歯髄反応を示した1症例,第3大臼歯の挺出や歯周疾患による抜歯が4症例,燐在歯の消失による支台歯が2症例,二次齲蝕が8症例,レジン修復と全く関係のない歯面の齲蝕による喪失症例は8症例であった.磨耗は比較的少なく,辺縁適合性も良好で,変色もないことなどから,全ての評価項目を総括すると,比較的小範囲の修復に限ればLITE-FIL Pの10年間の臨床成績は概ね良好であり,臼歯部修復材として十分応用価値があることが認められた.
  • 楳本 貢三, 倉田 茂昭
    1995 年 14 巻 2 号 p. 135-142,275
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    3-メタクリロキシプロピールシリルトリイソシアナートと3-メルカプトプロピールトリメトキシランの混合シラン処理剤を陶歯,貴金属合金および非貴金属合金の接着プライマーとして用いた.サーマルサイクル試験1,000回後,陶歯,銀合金およびステンレススチールに対する接着強さは良好であった.このときの陶歯の破断面の状態は初期の状態と同じであり,2本が陶歯,残りはレジンの凝集破壊であった.しかし,コバルトクロム合金には効果は認められなかった.
  • Chatcharee SUCHATLAMPONG, 後藤 真一, 小倉 英夫
    1995 年 14 巻 2 号 p. 143-151,276
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    歯科用アマルガムの初期強さ特性を合金相の生成と関連づけて調べるために,5種のアマルガムについて1時間後,6時間後,24時間後,および7日後の圧縮強さを測定し,同一時間後に各アマルガムのX線回折を行った.試験したアマルガムは,いずれも24時間後には7日後の圧縮強さの約90%,または,それ以上に達した.しかし,1時間後から24時間後までの初期圧縮強さの増加はアマルガムの種類によって異なっていた.試験した5種のうち,2種のアマルガムは6時間後に7日後の圧縮強さの約90%に達した.7日後の圧縮強さに対する初期圧縮強さの比とγ1相の回折強度比(7日後の回折強度に対する1時間後,6時間後ならびに24時間後の回折強度の比)との間には有意な相関が認められ,初期圧縮強さの増加は主としてγ1相の生成に依存することが示された.
  • 若狹 邦男, 山木 昌雄, 松井 昌
    1995 年 14 巻 2 号 p. 152-165,276
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,象牙質接着システムにおいてコンポジットレジンと重合する接着場所としての接着領域(bonding area)での剪断接着試験による平均応力およびnano-indentation試験で求めた変形挙動を評価することとした.はじめに,接着領域内平均応力は象牙質・接着レジン界面に沿って計算する.第2には,塑性変形域の大きさをnano-indentation試験ののち,弾性・塑性変形を呈する領域をモデル化して計算した.その結果,平均応力を接着領域の弾性率(E),(コンポジットレジンの弾性率,ER/E)比および象牙質・接着レジン界面応力によって表わすことができた.さらに,この接着領域ではB/HD(接着領域の硬さ)比がその接着領域の厚さに依存することや塑性域の大きさを示す(b/2a)比(b;塑性域の大きさ,2a; nano-indentation試験での圧痕長さ)が接着領域の弾性率の増加とともに大きくなることを明確に示した.
  • 林崎 順子, 伴 清治, 有本 憲弘, 加藤 教授, 木村 嘉宏, 長谷川 二郎
    1995 年 14 巻 2 号 p. 166-174,277
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    リン酸塩を混合したアルギン酸ナトリウム水溶液をノズルを装着したシリンジを用いて,塩化カルシウムと酢酸カルシウムを混合し酢酸でpH7に調整した紡糸液中に吐出し,イオン交換させ,ゲル状繊維を合成した.乾燥後,大気中焼成し繊維状リン酸カルシウム塩を得た.焼成温度の上昇に伴い,繊維状リン酸カルシウム塩の結晶性は増加し,900°C焼成時にハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2,以下HAと略す)の単一結晶相を呈した.ゲル状繊維の紡糸液中での熟成時間が5分以下の時,焼成繊維はHA及びNaCaPO4の混合結晶相であった.また,焼成繊維は熟成後の蒸留水による水洗時間が3秒以下の時,HA,クロルアパタイト(Ca5Cl(PO4)3)及び酸化カルシウムの混合結晶相であり,5分∼1時間ではHAの単一結晶相であった.しかし,水洗時間が2週間を越えると,HAとβ-Ca3(PO4)2の混合結晶相を呈した.
  • 山本 仁, 高橋 英和
    1995 年 14 巻 2 号 p. 175-184,277
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    近年,歯科材料における疲労特性の重要性が指摘されている.そこで本研究では水中保管した2種類のコンポジットレジンの疲労特性について検討した.試験にはHybrid typeとMFR typeの2種類のコンポジットレジンを用い,ダンベル型の試片を作製し,37°C水中に24時間,1ヵ月間,3ヵ月間,6ヵ月間,12ヵ月間保管してから疲労試験と引張試験を行った.疲労試験ではステアケース法を用いて105回における疲労強度を求めた.24時間後の疲労強度は,Hybrid typeで54.7MPa,MFR typeで28.1MPaであり,ともに経時的に減小傾向がみられた.一方,直接引張強さはHybrid typeで77.0MPa, MFR typeで53.5MPaであり,Hybrid typeでは水中保管期間にかかわらず変化がみられなかったが,MFR typeでは経時的に小さくなる傾向が認められた.
  • (第1報) 修飾表面の分子構造と生体活性
    遠藤 一彦
    1995 年 14 巻 2 号 p. 185-198,277
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    インプラント用金属に生体活性を付与するために,金属表面を機能性タンパク質で化学修飾する方法を検討した.今回はシッフ塩基結合法を用い,NiTi合金表面に接着性タンパク質として知られる血漿フィブロネクチン(pFN)を固定化し,各処理段階における表面構造をX線光電子分析装置で調べた.さらに,固定化したpFNをフルオレサミンを用いた蛍光法により定量した.その結果,pFNは合金表面に結合したシランカップリング剤により導入されたアミノ基及びグルタルアルデヒドにより表面に固定され,表面上での密度は約1μg・cm-2であることが明らかとなった.また,pFNを表面に修飾した合金上では,研磨状態の試料と比較して,ヒト歯肉由来の線維芽細胞はより扁平に伸展しており,細胞の伸展が促進されていることが確認された.以上の結果より,機能性タンパク質を金属表面に修飾し,金属-細胞間の相互作用を制御することにより,バイオアクティブな金属インプラントの開発が可能であることが示唆された.
  • (第2報) 化学修飾したNiTi合金の耐食性
    遠藤 一彦
    1995 年 14 巻 2 号 p. 199-210,278
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    機能性タンパク質を表面に化学修飾したインプラント用NiTi合金の耐食性を生理食塩水中ならびに細胞培養液中で評価した.アミノシランとグルタルアルデヒドを架橋剤として用い,ヒト血漿フィブロネクチン(pFN)を表面に固定化した試料のアノード分極挙動と腐食速度を電気化学的手法を用いて調べた.また,NiTi合金上に生成した酸化物被膜の組成,厚さ,ならびに表面に吸着したタンパク質をX線光電子分析装置を用いて調べた.不働態保持電流密度は,血清タンパク質の存在により増大した.これは,血清タンパク質が合金表面に速やかに吸着し,金属イオン・タンパク質複合体を形成して溶液中に拡散することにより,酸化物被膜の溶解速度が増大したためと考えられる.表面に化学修飾を施した試料の腐食速度は,いずれの溶液中においても,研磨状態の試料と比較して約1/2に減少することが明らかとなった.合金表面に形成されたポリシロキサン層により,腐食反応に関与する溶存酸素や血清タンパク質,腐食生成物である金属イオンや金属配位化合物の拡散が抑制されたためと考えられる.本表面処理法は,合金表面に生体活性を付与すると同時に耐食性を向上させるため,バイオアクティブな金属インプラントの開発に有用と考えられる.
  • 河合 啓次, Karl F. LEINFELDER
    1995 年 14 巻 2 号 p. 211-220,278
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンの歯質接着性を変えることにより,繰り返し負荷後,窩洞辺縁部の劣化度にどのような影響がみられるのかを検討した.接着条件として,エッチングおよびボンディング処理の有無や種類を変えて1級窩洞にコンポジット充填を行い,40万回の繰り返し荷重負荷後,辺縁部の露出エナメル質の幅を劣化度として測定した.その結果,エッチングおよびボンディング処理を併用した場合は,そのどちらかまたは両者を省略した場合と比べ,1種のコンポジットレジンを除いて露出エナメル質の幅は有為に小さかった.辺縁でのSEM観察でもほぼ同様の所見が得られた.いずれの接着条件においても,劣化度は最初の5万回の間が最も大きかったが,繰り返し回数とともに減少した.
  • 鈴木 明子, 今井 庸二
    1995 年 14 巻 2 号 p. 221-229,279
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    バルビツル酸/塩化第二銅を重合開始剤とするレジンの象牙質への接着において,バルビツル酸の構造ならびに前処理剤の効果を検討した.4種類のバルビツル酸/塩化第二銅を開始剤とするMMA-PMMAレジンを用いて,硬化時間とウシ象牙質への接着強さを測定した.象牙質面を3%の塩化第二銅または塩化第二鉄を添加あるいは添加していない10%クエン酸またはリン酸水溶液6種類で前処理した.4種類のバルビツル酸で硬化時間は有意差が認められたが,3%塩化第二銅を含む10%クエン酸水溶液処理した象牙質への接着強さには有意差はなかった.前処理剤は接着強さに有意に影響し,リン酸系処理剤の方がクエン酸系処理剤よりも有意に接着強さが大きかった.バルビツル酸/塩化第二銅系レジンを用いて最適条件下で接着すると,MMA-TBBレジンに匹敵する大きな接着強さが得られた.
  • Mir Ayubur RAHMAN, 谷 千尋, 伊藤 和雄, 和久本 貞雄, 久光 久
    1995 年 14 巻 2 号 p. 230-235,279
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1, 6-hexanediol水溶液からなる試作デンティンプライマーの至適濃度および,至適作用時間を決定する目的で,ヒト抜去大臼歯に形成された円柱窩洞にEDTAによるクリーニング,試作プライマーによる前処理,および市販デンティンボンディング材を併用して填塞した市販可視光線重合型コンポジットレジンのコントラクションギャップを計測した.その結果,コントラクションギャップの形成は45wt%の1, 6-hexanediol水溶液を60秒間作用させた場合にのみ完全に抑制され,この条件が最適と評価された.また引張り接着性試験においては20.0wt%から57.5wt%濃度の1, 6-hexanediol水溶液を用いた場合で統計学的に有意差は認められなかった.
  • 菊地 聖史, 高久田 和夫, 宮入 裕夫, 奥野 攻
    1995 年 14 巻 2 号 p. 236-244,279
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    従来の陶材技工システムを発展させた新しい補綴物の自動製作システムの開発を目的とし,コンピュータを用いた陶材の自動築盛に関する基礎的研究を行うとともに築盛作業を自動化する上での問題点について検討した.実験は陶材吐出装置,蒸留水噴射装置,XY軸ステージ,制御用コンピュータから構成される装置を試作し,陶材を平板状に自動築盛することを試みた.水量,面積,厚みの各築盛条件を変えて自動築盛を行った結果,試作装置のように水と陶材粉末を築盛対象の局所に交互に供給し,泥化させて盛り上げていく方法では水量が築盛体の可否を決める重要な因子の一つであることが明らかになった.また適切な水量は水の蒸発によっても変わることから,築盛中に変動する条件に応じて供給水量をフィードバック制御する必要があることが分かった.
  • 鬼塚 雅, 上村 典子, 梶原 浩忠, 中島 厚生, 末永 健市, 自見 忠
    1995 年 14 巻 2 号 p. 245-255,280
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    熱湯浸漬が硬質石こう模型表面に及ぼす影響を調べるために,熱湯浸漬前後の石こう試料表面について,表面粗さ・ヌープ硬さの測定,および走査型電子顕微鏡の観察を行い比較検討を行った.その結果,アクリル板に接して硬化した石こう試料表面は,アクリル板の表面に比べ表面粗さの増加が認められた.またSEM像では石こう結晶の凝集界面に多数の空隙が生じていた.これに対して熱湯浸漬後の試料は,明らかな面荒れが生じ,SEM像の観察では結晶自体が細くなり,お互いの絡み合いも弱まっていた.ヌープ硬さは,熱湯浸漬により著しい硬度の低下を示した.また,熱湯処理後の超硬質石こうと未処理の硬質石こうとの硬度の比較では,硬質石こうと同程度か,あるいはそれ以下の値に低下した.以上の結果から,短時間の熱湯浸漬が石こう模型に大きく影響を及ぼすことがわかった.
  • 鋳型温度とスプルー条件
    Yvonne VIDOVIC, Hyun-Gon P CHUNG, Toshiko MORI
    1995 年 14 巻 2 号 p. 256-262,280
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    前回報告したチタン鋳造床作製技法を評価するための実験モデルに,二種の臨床要因を加えてさらに検討を加えた.鋳造機とこれに推奨されている埋没材の組み合わせを鋳造システムと呼ぶことにし,実験1では二室構造鋳造機を用いる鋳造システムによる鋳型温度の影響,実験2では一室構造鋳造機を用いる鋳造システムによるスプルー条件の影響を検討した.既製の鋳造システムに第三の埋没材を導入することの影響も検討した.完全に鋳造されたモデルパターンの保持孔の数により鋳造の成功率を算出した.メーカー指定の高温鋳型(620°C)では完全な成功率を得たが,任意に選出した中温(350°C)と低温(100°C以下)では成功率は低下した.中温と低温では有意な差がなく,これは第三の埋没材でも同様であった.コバルトクロム床で一般的な4mm直径のスプルーよりも大きなものが有利であろうという仮定が一室構造鋳造機システムで証明されたが,臨床で使用するような長いスプルー(26mm)と短いスプルー(5mm)との間には有意な差がみられなかった.第三の埋没材では4mmの直径でも高い成功率が得られ,鋳造機の作動原理と埋没材の組み合わせを考慮することの必要性が示唆された.
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