Dental Materials Journal
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12 巻, 1 号
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  • 耐水性の向上
    田仲 持郎, 井上 浩一, 正村 博一, 松村 和良, 中井 宏之, 井上 清
    1993 年12 巻1 号 p. 1-11,89
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    バリウムーボロシリケートガラスをフィラーとする試作光硬型X線不透過性コンポジットレジンの耐久性,特に耐水性,の向上を目指した.この目的を達成させるために,従来から用いられているベースモノマーの典型的な成分であるBis-GMAに換えて撥水性を賦与するためにBis-GMA-Fを用いた.
    その結果,約2万回のサーマルサイクリング後において,Bis-GMAを含むコンポジットレジンは圧縮強さ,ダイヤメトラル引張り強さ,曲げ強さ,曲げ弾性係数が初期の60∼70%に低下した.一方Bis-GMA-Fを含むコンポジットレジンは曲げ強さを除く圧縮強さ,ダイヤメトラル引張り強さ,曲げ弾性係数に関してほとんど低下しなかった.これはマトッリクスレジンとしてのBis-GMA-FとBis-GMAの吸水に関する性質が反映したものと考えられた.
  • 今 政幸, 桑山 則彦
    1993 年12 巻1 号 p. 12-17,89
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    歯科用インプラント材料としてハイドロキシアパタイト焼結体の高靱化を試みる目的で,ハイドロキシアパタイト粉末にダイヤモンド微粒子を分散させた複合焼結体を作製した.この複合焼結体の破壊靱性などに及ぼすダイヤモンド粒子添加の影響を調べた.その結果,アパタイトーダイヤモンド複合焼結体の強さおよび硬さはアパタイト単独の焼結体に比較してわずかに低下したが,破壊靱性はダイヤモンドを添加することにより向上することがわかった.特に10wt%ダイヤモンド添加時に極大値を示し,相対靱性値でアパタイト単独の焼結体より3倍向上することがわかった.破壊靱性が向上した理由はアパタイト複合焼結体中のダイヤモンド粒子が焼成温度で黒鉛に転移することによりアパタイトマトリックス相にマイクロクラックを生成させたためであると推察された.
  • 寺田 林太郎
    1993 年12 巻1 号 p. 18-28,90
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    機械的および化学的仮封材除去後の牛歯エナメル質および象牙質の特性を,明らかにした研究である.歯面は,SEM観察およびXMA分析が行われ,接触角は歯面の濡れ性を調べるため測定された.一般臨床で行われる歯科用探針を用いる機械的除去方法では,エナメル質および象牙質において仮封材を十分に除去することはできなかった.また,仮封材除去面の歯面接触角は研磨面の歯面接触角より増大していた.残存仮封材の存在する歯面に37%燐酸の酸処理を行うことは,エナメル質上では残存仮封材を効果的に除去できるものの,象牙質上ではできなかった.一方,酸処理を行うことは,エナメル質上で著明に歯面接触角を減少させたものの,象牙質上では認められなかった.
  • 楳本 貢三, 倉田 茂昭, 山崎 升
    1993 年12 巻1 号 p. 29-35,90
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    生体親和性と接着強さの耐水耐久性に優れた裏装用セメントを開発するため,疎水性ポリマーを含んだエマルジョンタイプのセメント液を用いたセメントを考え,その可能性について基礎的な検討を行った.その結果,スチレンーブタジエンーアクリル酸エステル(SBA)コポリマーよりなるセメント硬化体の浸漬液のpHは,水酸化カルシウム製剤であるダイカルと同様のアルカリ性を示した.また,初期の圧縮および間接引張り強さは,ダイカルと比較し同程度か若干低いものの経時的に強さは増加し,ダイカルよりかなり大きな値を示した.5wt%カルボキシ変性SBAコポリマーセメントは,ステンレススチール,ガラス,牛歯象牙質およびコンポジットレジンに対し,ダイカルよりも明らかに高い接着性を示した.
  • 配合割合およびフッ化ジアンミン銀の影響
    山賀 まり子, 小出 武, 稗田 豊治
    1993 年12 巻1 号 p. 36-44,90
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,グラスアイオノマーセメント(以下GICと略す)にタンニン・フッ化物合剤(HY剤)を0 (HY0), 1.5 (HY1.5), 5.0 (HY5), 10.0重量%配合したもの(HY10)を牛象牙質へ接着させて,配合割合による影響および経時的な変化を調べることを目的としている.この目的のため,1日後および1ヵ月後のせん断接着強さおよび凝集破壊の割合を測定した.フッ化ジアンミン銀を塗布したものについても,同様に実験を行った.その結果,1日目では,GICへHY剤を1.5%配合することによって,接着強さを向上させることができた.経時的には,いずれの配合割合のものでも接着強さは低下し,HY剤を配合したものも,しないものでも,各配合割合間での差は認められなくなった.フッ化ジアンミン銀の併用によってGICの接着強さは向上し,HY0およびHY1.5では,経時的な接着強さの低下も防止できた.
  • S.M. Akkas Ali
    1993 年12 巻1 号 p. 45-53,91
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Radial Crackの,水中及び大気中での,成長速度を測定することにより,炉冷,空冷した歯科焼付用歯冠色陶材の疲れ寿命を推定した.測定したCrackはVickers圧子を9.8Nの荷重で陶材表面に圧入して導入した.応力腐食係数nはcrack長さを5ヶ月まで測定して求めた。計算されたn値から,陶材の使用応力の評価を試みた.その結果,炉冷後,水中保存したガラス質及び長石系陶材の使用応力は,寿命が10年以上になるためには,その破壊強さの47,69%であると計算された.風冷強化(空冷)した陶材では,それぞれ58, 67%であった.以上のことから,風冷により導入された残留応力はガラス質陶材の使用寿命を伸ばすのには有効であるが,長石系陶材では有意な違いが生じないことが明らかになった.
  • 岡本 明, 関矢 一仁, 福島 正義, 子田 晃一, 岩久 正明
    1993 年12 巻1 号 p. 54-61,91
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,コンポジットレジンの磨耗を口腔内で評価するための簡便な方法を開発し,磨耗の進行過程で果たすフィラーの役割を明らかにすることである.2種類の異なるフィラーシステム,81wt%の粉砕フィラー(従来型)及び73wt%の有機複合フィラー(MFR型),を有する試作光重合型コンポジットレジンが用いられた.なお,試作レジンには,Bis-GMA (50wt%)とTEGDMA (50wt%)からなるレジンモノマーが用いられた.Au-Pd合金製クラウンの咬合接触部(OCA)と非接触部(CFA)に設けた直径2mmの円筒形窩洞に試作レジンを充填し,ボランティアの口腔内にクラウンを仮着した.クラウンは1月毎に撤去され,SEMによる連続的観察が行われた.その結果,新しく開発された方法は,コンポジットレジンの口腔内磨耗パターンの観察に有用なことが明かとなった.また,異なるフイラーシステムを有する試作コンポジットレジンは,著しく異なる口腔内磨耗パターンを示した.
  • 宮脇 博正, 平 雅之, 豊岡 博夫, 若狭 邦男, 山木 昌雄
    1993 年12 巻1 号 p. 62-68,91
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    8種類の市販コアー用コンポジットレジンと2種類の市販コアー用グラスアイオノマーセメントについて,片側切り欠き試験片(S.E.N.B.法)による破壊靱性値(KIC)測定を行った.また,Knoop硬さとMicro Brinell硬さ測定を行った.その結果,Si3N4を80wt%程度含有する2つのコンポジットレジンが最大のKIC値(=約2.0#MNm-3/2)と最大の硬さを有することが判明した.他の6種類のコンポジットレジンは66から86#wt%のSiO2系フィラーを含有し,硬い試料程大きなKIC値(1.2から2.0MNm-3/2)を有する傾向を示した.2種類のコアー用セメントのKIC値は,コアー用コンポジットレジンの半分以下であった.これらの材料を臨床応用する際には,縁端部の破折等を防止する目的で,高めのKIC値を有する材料を選択すべきことが示唆された.
  • 藤沢 盛一郎, 菰田 泰夫
    1993 年12 巻1 号 p. 69-74,92
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    MDPがりん脂質リポソームとどのように相互作用するかを見出すために,DPPC/MDPリポソーム及びジラウロイルフォスファチジルエタノールアミン(DLEA)/コレステロール(CS)/MDPリポソーム両系のNMRケミカルシフトの変化をpH7.0で研究した.この結果DPPC系でリポソームの流動化を伴ってMDPの1H遮蔽が見られた.DLEA/CS系でMDPの1Hシグナルは飽和して観測できなかった.一般にイオン化する化合物はりん脂質2重層より成る生体膜を透過しにくい.本研究から,pH7.0でイオン化したMDPのリポソーム相互作用が大きいことが明らかになった.これはMDP分子中のデカメチレングループとりん脂質のアシル鎖との疎水性相互作用に起因すると推察された.
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