日本森林学会大会発表データベース
第125回日本森林学会大会
選択された号の論文の867件中1~50を表示しています
口頭
林政
  • 柴田 晋吾
    セッションID: A01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    背景および目的:アメリカにおいては、近年、PES(生態系サービスへの支払い)やエコシステムクレジットマーケットの拡大・多様化が進展している。本研究ではそれらの実施の背景、実施状況と課題にアプローチする。方法:文献レビュウによる中間報告。
    結果:1985年の農地法以降、様々な省庁等が私有地の所有者の環境価値の保全・向上等のために拠出してきている。また、多様なクレジットマーケットが存在している。このほか、自主的な取り組みも拡大している。こうした背景には私有林の断片化やオープンスペースの減少、そして厳格な環境法の存在がある。森林関連のPESは19億ドルで、その内訳は政府による支払いが19%、湿地ミティゲーションが38%、狩猟のための貸付および入場料が22%、保全地役権が17%などと推定されているが、これらに参加している森林所有者の割合は極めて低い。また、クレジットには特定箇所の生態系サービスを束ねた束型のものと単独型のものが併存しており、複数のクレジットの販売などの重層化(stacking)の問題がある。水平型重層化に取り組む事例もあり、様々なメリットが期待できる重層化の推進には適切なルール作りが課題となる。
  • 大塚 生美
    セッションID: A02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    1980年代半ば以降アメリカ合衆国では,年金基金や職員組合の退職金基金などの巨大な投資ファンドが,垂直統合林産会社の原料供給部門として経営されていた社有林を,その会社から切り離して買収するという形で大規模な投資を活発化させた。筆者らは2002年から2007年の現地調査から,この投資ファンドによる林地取得の動力について明らかにした1)。こうした森林投資を分析する意味は,投資ファンドによる林地取得が持続可能な林業経営となり得るのかどうかが,我が国のみならずアメリカ合衆国でも高い関心事であることが背景にある。そこで,本論では,アメリカ合衆国における関連文献の時系列分析ならびに現地補足調査等を踏まえ,投資ファンドによる林業経営の評価等について論じたい。注1) 大塚生美・立花敏・餅田治之(2008)「アメリカ合衆国における林地投資の新たな動向と育林経営」『林業経済研究』54巻2号:41-50
  • 堀 靖人, 石崎 涼子
    セッションID: A03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    [目的]ドイツでは、製材業の生産の集中が進み寡占化している一方で木材生産は小規模で分散的である。まとまった量の原木の安定供給を要求する大規模な製材業に対して、木材を共同販売するための組織化が進んでいる。これらの木材共同販売組織の形態や販売方法は多様である。本稿では複数の木材共同販売組織を取り上げ、それぞれの特徴を明らかにする。[方法]2012年11月に実施したヒアリング調査と収集した資料、契約書、研究論文を用いて分析する。[結果]共通する点として、森林所有者の木材を有利に販売することを目的として設立されており、組織の基盤は森林組合など森林所有者の組織であること、販売先とは個別に契約を結んで木材を取り引きしていることなどがあげられる。一方で、組織化の範囲が行政区画にしたがって行われている場合とそうでない場合が存在すること、販売については、買い取って販売する方法、買い取りには丸太で買い取る場合と立木で買い取る場合があること、また、買取りは行わず、販売を仲介するだけのケースがみられること、さらには木材共同販売組織が製材工場までの原木の運搬にまで関わるケースがあるなど多様であることが明らかになった。
  • 石崎 涼子, 堀 靖人
    セッションID: A04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    【目的】本報告では、事例調査を通じて、ドイツ南部のバイエルン州における木材共同販売の実態を明らかにする。事例として取り上げるのは、州南部を拠点とするイン・シルヴァ、イザ-ル・レッヒ森林組合、北部のホッホフランケン森林所有者サービス社の3つである。【方法】主に2013年11月に実施したヒアリング調査と収集した文書等を用いて分析した。【結果】バイエルン州は、ドイツ国内でも木材生産量が多く、近年、年間木材消費量が50万m3を超える巨大な製材工場が次々とできている。その州に設立された木材共同販売組織をみると、(1)州内の森林所有者や森林組合のみならず、隣接州や近隣国の共同組織を束ねた組織が形成されている点、(2)大口の木材需要者への安定供給のみならず、ロジスティックにも力をいれる動きがある点、(3)木材供給者や木材需要者との間で、罰則等を含む契約文書に基づく取引が行われている点、(4)それらの契約には、年単位の枠組み契約と3ヶ月単位の価格契約など複数の契約が用いられている点、(5)中規模や大規模の所有者もこうした木材共同販売組織に参加している点などが明らかとなった。
  • 山本 伸幸
    セッションID: A05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    他の多くの欧州諸国同様に、フィンランドにおいてもリオサミット後の1990年代後半、森林関連法が刷新された。この環境時代の森林法体系に基づき、21世紀初頭のフィンランド森林政策は展開してきた。前回の改正から十数年が経過し、2011 年に成立した中道・左派連合カタイネン政権のコスキネン農林大臣の下で、森林法,森林管理組合法が大改正されることとなった。両法の改正議案は2013年末に国会を通過し,2015 年から施行される見通しである。今回の2つの法改正の大きな特徴は、森林所有者の責任と裁量の増加を目指すものと要約できる。森林所有者の経済的インセンティブを推進力として、適正な森林管理を実現していこうという新たな政策の方向性が示される一方、税金同様の仕組みで森林所有者から半強制的に徴収されていた森林管理賦課金制度は廃止され、また、これまで森林管理を担ってきた森林管理組合は木材販売規制などの半公的性格を大幅に緩和される。本報告では、今後のフィンランド林業に大きな影響を及ぼすであろう森林法・森林管理組合法改正の動向について述べる。
  • 劉 家セン
    セッションID: A06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    中国における造林事業の展開と農民への影響
    ―河北省承徳市を事例に―

      中国の森林面積は1998年以降増加しており、世界の森林再生の一環として、大きな役割を果たしている。本研究は中国における造林事業の展開、中国の農村と農民への影響を明らかにすることを目的としている。既往の研究では、黄河と長江の中流地域を対象としたものが多く、黄河下流域の大都市圏周辺の農村への影響は明らかにされていない。本報告では、河北省承徳市を事例にして、鎮政府での行政資料、村落および農民世帯への半構造化調査を基に、造林事業前後における土地利用と農民の就業構造、生活状況の変化を考察する。また、造林事業の実施過程での、農民の参加意識を明らかにする。
  • 福嶋 崇
    セッションID: A08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本発表では、90年代始めよりアフリカでは先駆的に取り組まれてきたタンザニアの参加型森林管理(PFM)制度の現状と課題を主に現地調査を通じ明らかにする。
    【結果】タンザニアのPFMは政府との共同型森林管理(JFM)・地域コミュニティによる森林管理(CBFM)からなり、導入以来ますます発展して展開されている。一方で、1)コミュニティにとっての参加インセンティブの低さや理解不足、2)森林セクターの対策の優先順位の低さや野生生物セクターとの政策の齟齬、3)生物多様性の高い森林や水源涵養林といった対象森林の偏重、4)コミュニティによる管理が効果的になるほど罰金収入が減少するというジレンマ、5)地方政府レベルにおけるキャパシティ不足、6)貧困層の参加の困難さや地域内不平等拡大の懸念、といった課題を抱えていることが調査より明らかになった。
    【考察】タンザニアは気候変動政策の1つであるREDD政策への適用を検討しており、PFM制度は今後ますます注目を集めると共に今後の発展が期待される。PFMの改善策として、参加インセンティブの拡充や地方政府やコミュニティのキャパシティビルディングなどが求められる。
  • 倉島 孝行, 松浦 俊也, 宮本 麻子, 佐野 真琴, TITH Bora, CHANN Sophal
    セッションID: A09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    炭素クレジット売買から得られる利益を、どういう形でどれだけ地域社会・住民に分配すれば、効果的な森林保全インセンティブを生み出すことができるのか。この点はREDD+事業の成否の鍵を握る重要事項である。しかしながら、一般に途上国では地域住民に関する情報インフラが未発達で、最適な利益分配を実現する上で不可欠となる生業や収入実態に関する基礎データも不足している。理論上、REDD+が最も奏功しうるのは森林開拓最前線地だが、こうした地域では特にその傾向が強い。REDD+事業の遂行に当たっては、効率性の追求が重視されている。この観点からも対象住民の生業や収入実態の把握は必須となる。だが、これまでのところ、途上国の試験事業地等で住民に関する上記のような基礎データを緻密に収集し、利益分配についての議論に反映した例は見当たらない。本発表では、カンボジア中部のREDD+試験事業計画地内の住民に対する生業・収入調査の結果から、森林開拓最前線地においてどのような事態が進行中であるのかを明らかにし、それにもとづき、森林開拓最前線地でのREDD+事業が相対せざる得ない利益配分に関する構造上の問題について論述する。
  • 橋本 沙優, 小池 浩一郎
    セッションID: A10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    タイでは、1960年代から1980年代後半まで、キャッサバなどの輸出指向型の商品作物の生産拡大や商業的伐採のため、森林を伐採し農地の拡大を行っていた。また、化学肥料や農薬多投の集約的農業や単一作物栽培の拡大により、土壌劣化が急速に進行し、土地生産性の低下や集荷業者に対する農民の負債の増大から農村の貧困が拡大した。1993年に農村での雇用創出と農家の生計安定の必要性から、国王により新たな農業理念New Theoryが提唱された。New Theoryとは、天水農業地域の小農が、自給作物生産を基本とし、ため池によって水資源を確保し、単一商品作物栽培から自給的な複合農業への転換を進めるべきとする理念である。近年、このNew Theoryに沿って農村内部では、自立度の高い生計の確立と渇水の緩和や土壌保全等の働きを強める自給的な複合農業への動きがみられる。
    そこで本研究では、聞き取り調査の結果をもとに、代表的な天水農業地域であるタイ東北部マハーサーラカーム県で自給的な複合農業を実施している農家の経営実態を明らかにするとともに、農家の生計において樹林地が果たしている役割を検討する。
  • 伊藤 勝久
    セッションID: A11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    森林とくに人工林の整備管理問題から、公益的機能の維持増進を主目的に地方自治体が森林税制度を導入している。高知県が初めて創設し、現在で33県が導入している。島根県は2005年から「水と緑の森づくり税」として導入し、現在第二期の4年目にあたる。島根県と共同で森林および税制度に対する県民意識を追跡調査しており、2013年度の調査では、森林機能、税制度等の県民意識に加え県民が想定する森林形態を調査した。
    その結果、税制度の認知、賛否は高まっており、期待される森林機能も、二酸化炭素吸収、水源涵養、土砂崩壊洪水防止に次いで木材生産が位置付けられ、木材生産と公益的機能の関係性も理解されているようにみえる。森林形態としては人工林よりも天然林、針葉樹よりも広葉樹、閉鎖林よりも疎林、放置林よりも管理林を選好している。その中で一例として二酸化炭素吸収を重視する人々および木材生産を重視する人々は、人工林よりも天然林、閉鎖林よりも疎林を選好する傾向があり、林業的知見とかけ離れている。森林への理解が高まっているとはいえ、一般県民の森林の認識と科学的知見にはギャップが存在していることが明らかになった。
  • 梅原 久奈, 田中 美由紀, 高橋 卓也
    セッションID: A12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     大企業の活動が主流であった企業による森づくり活動に加えて、中小企業を巻き込む新しい取り組みとして「栗東きょうどう夢の森プロジェクト」が滋賀県栗東市で実施されている。このプロジェクトは、中小も含む地元企業から小口協賛を募り、森づくり活動を進めていくという、全国的にも特徴的な取り組みである。本研究では、同プロジェクトの立ち上げの動悸と経緯、そして現在に至るまでの過程を把握することを目的1とする。さらに、中小企業のプロジェクトに対する協賛目的と森づくり活動に対する参加要員を明らかにすることを目的2とする。そして、目的2で明らかにした企業の意識を踏まえた上で、同プロジェクトの利点・欠点を分析し、今後、中小企業の森づくり活動を拡大していく方法を考察することを目的3とする。
     本研究結果から、中小企業における森づくり活動において、同プロジェクトの有用性が明らかになった。また、プロジェクトにおけるインセンティブや活動内容などに関する課題点も明らかになり、その内容を踏まえた上で、今後のプロジェクト方針の提案を行った。さらに、中小企業の森づくり活動に対する促進要因についても考察を実施した。
  • 高橋 卓也, 入江 美穂, 梅原 久奈
    セッションID: A13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    日本における森林認証紙の普及の実態および課題について明らかにするため、2013年にアンケート調査を実施した。対象としては、加工流通認証を取得した印刷会社(有効回答124件)、認証未取得印刷会社(有効回答59件)、そして認証紙の需要先として一般企業(有効回答42件)を選択した。認証取得印刷会社側で認証取得の目的とし、実現できているメリットとして重要なのは、「取引先の要望にこたえる」「自社のイメージアップ」である。今後、認証紙が普及するために必要とされることとしては「コストが低くなること」「認知度の向上」が多くの回答者に挙げられた。認証未取得印刷会社のなかで、認証紙の認知度は約80%で、その意味まで知っているとするのは53%であった。認証取得の前提条件としては、取引先の存在、認知度の向上、わかりやすい制度、コスト低下などが挙げられた。一般企業で認証紙を使用している企業は22社、使用していないのは20社であった。認証紙を使用している企業にとって最も重要なメリットは「環境負荷の低減」「自社のイメージアップ」である。
  • 窪江 優美, 前川 洋平, 関岡 東生, 宮林 茂幸
    セッションID: A14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     近年、県産材認証の取り組みが活発化している。報告者らは、こうした動向について県産木材の産地化を図る流通戦略の一つとして捉え研究を行ってきた。
     本報告では、2013年に実施した聞き取り調査の結果より、関東圏における県産材認証の現状を概観するとともに、県産材の流通に着目し、今後の課題について若干の考察を行いたい。
     関東圏(1都6県)では、茨城県を除いた各都県が県産材認証制度を有している。各都県とも県産材利用拡大のための補助制度も併せて整備し、認証制度とともに県産材利用の拡充と指向していることが明らかになった。一方、各都県は木材流通構造や森林資源状況の違いによって、木材の消費県と生産県に大別が可能であり、県産材の需給構造が異なることも確認された。また隣接する県間等において素材や木材製品の移出入が自由に行われるケースもみられ、本来は認められていない他県の事業体や工場を認証するケースが増えつつある。さらに直近では、木材利用ポイント制度等の実施に伴い、複数の県の認証制度を取得する事業体も増加傾向にあることも明らかとなった。
  • 田中 亘, 岡 裕泰, 林 雅秀
    セッションID: A15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     群馬県渋川広域森林組合の組合員を対象として、木材伐採と更新に関する長期的な意向について郵送によるアンケート調査を実施したところ、以下の結果が明らかになった。過去3ヶ年では皆伐がほとんど実施されておらず、その理由として現在の木材価格が安いことが最も多く挙げられた。回答者のうち4分の1は今後も皆伐を行う意向を持たないが、残りの4分の3は将来いずれかの時点で皆伐して収入を得る意向を持っている。皆伐については今後20年間において過去の実績と比べて1年間当たり約2倍の面積で、41~60年生の林分を中心に実施することが想定されている。その一方、生育不良等で皆伐が実施されない予定の人工林面積は全体の13%程度と見込まれている。また、再造林については約半数の回答者が全ての皆伐跡地において実施する意向を持っている。以上から、渋川地域においては近い将来に皆伐面積と木材生産が漸次増加する、かつ長期においても伐採跡地の再造林によって人工林経営が継続的に行われるものと推測される。
  • 松本 美香, 垂水 亜紀
    セッションID: A16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的・方法】近年、自伐林家の活動に注目が集まっている。しかし、その実態については、少数の事例報告があるのみである。そこで、自伐林家が高知県内でもっとも活発に活動してきた土佐町の自伐林家を対象として、その世帯の経緯、属性、活動内容、今後の見通し等を明らかにするために、アンケート調査(10戸)、聞き取り調査(6戸)を実施した。
    【結果】聞き取り調査結果により、林業経営の特徴を分類すると以下の通りであった。①「過剰投資か否か」で区分。前者は非農林業からの参入者に多く、後者は農林業従事者者に多い。②「一般林業タイプか否か」で区分。前者は自伐のほか、立木購入・施業受託などを行ってきた者で後期高齢者が多く、林業の主業意識が高く多くの困難を乗り越えてきた。補助事業への依存度も高い。 後者は生産対象や育林手法に独自性を持ち、個々に販売先の開拓や付加価値付けといった消費市場への意識が強い。また林業だけでは生計が維持できな いので、多角化戦略を取るものが多い。今後、高齢者のリタイア、農林業後継者不在のなかで、自伐林家の展望は見通しにくいものになっている。
  • 佐藤 宣子
    セッションID: A17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     近年、自伐林業運動ともいえる「木の駅プロジェクト」の全国な波及が見られる。この新たな動きは、自営農林家による素材生産力への注目だけではなく、地域での仕事おこしやエネルギー自給、経済の内部循環を高めるといった地域再生視点からの研究の必要性を提起している。研究の目的は、自伐林業運動の中核になると思われる自営農林家の実態把握を行い、その今日的な意義を議論することである。研究方法は、2010年の世界農林業センサスの農業項目と林業項目のクロス集計結果の考察と熊本県での個別農林家の対面調査による。センサス分析の結果、家族農業経営体かつ家族林業経営体でもある農林家において、主業農家(農業所得が主で65歳未満の自営農業就業世帯員が存在)率が高いこと、消費者への農産物の直接販売や農家民宿への取り組みが活発であることが判明した。個別農林家調査では、自伐林家でもある農林家(山林保有53ha)が中核となって集落営農組織を設立し、集落内で後継者不在の所有者から山林の委託組織に発展させる活動を行っている。林業側面だけではない自営農林家の多面的な分析によって山村社会での役割を考察することが求められる。
  • 田村 早苗
    セッションID: A18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】昭和41年「入会林野近代化法」が制定され、整備後の経営形態として生産森林組合が強く推奨された。これにより、3,039組合(平成23年度末累計)が設立している。しかし、当初より法人化に伴う税務・事務業務の負担、自営原則の縛りなど経営に関して様々な問題点が指摘された。近年では、さらに深刻さを増して解散する組合が増加傾向にあり、組合数は減少している。生産森林組合の経営不振は全国的に総じた状況であるが、個々の組合の置かれた状況は一様ではない。今後のあり方を検討するためには、個別の事例研究を積み重ねていくことが必要である。
    【方法】青森県三八地域と西北地域において、計4つの生産森林組合を対象に組合経営の現状について組合長または理事に聞き取り調査を行い、組合員対象にアンケート調査を実施した。
    【結果】1.組合経営の違いにより組合員の意識に違いが認められる。2.組合員の高齢化に伴い、組合の存続に否定的な考えが強くなっている。3.所有林への入山機会が、組合活性化への意識に繋がっている。
  • 垂水 亜紀, 笠松 浩樹, 松本 美香, 牧野 耕輔, 久保山 裕史
    セッションID: A19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    2012年春から夏にかけて、西日本での木材価格下落が問題視されていたが、とりわけヒノキ価格の下落は顕著であった。一方、2013年は消費税増税前の駆け込み需要等から、全国の原木市場で品薄状況となり、ヒノキ価格は高騰している。こうしたヒノキ価格の乱高下に対し、川上、川下ともに、ヒノキの取り扱いに苦慮し、国産ヒノキ離れを危惧するような声も聞かれている。
    本報告では、2007年から2011年まで5年連続ヒノキ素材生産量1位を誇る愛媛県において、近年の価格推移について分析を行った。また、主要な原木市場、製材業者に対し、近年の価格変動や流通状況について聞き取り調査やデータ収集を行い、ヒノキ価格の変動要因の仮説について検証を行った。
    なお、調査結果から、2012年の価格下落の特異性に関しては、素材生産業、市場、製材業それぞれのセクターによって受け止め方が異なっており、資源の安定供給を可能にする価格設定の困難性が明らかになった。
  • 奥田 裕規, 狩谷 健一
    セッションID: A20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    山形県金山町の森林所有者の保有山林面積規模別内訳は、3ha未満の所有者286戸、3ha以上100ha未満の所有者200戸、100ha以上1,000ha未満の所有者3戸、1,000ha以上の所有者4戸と数からいえば中小林家が殆どであるが、1,000ha以上の大山林所有者4者の保有山林面積を合計すると4,500haとなる。また、金山町人工林の齢級配置は全国と比較して31年生から40年生までにピークがあるのは同じだが、51年生以上の人工林の割合が全国8.6%に対し金山町37.6%となっており、高齢人工林の割合が高い。このように大山林所有者主導の長伐期林業構造が成立している金山町における中小林家の森林経営の現状を把握するため、2005年8月金山町森林組合員322人のうち、所有面積50ha以下の森林所有者301人に対して郵送によるアンケート調査を行った。回答数は99通で回答率は33%であった。また、2013年2月、前回と同様に金山町森林組合員340名に対して郵送によるアンケート調査を行った。回答数は120通で回答率は35%であった。今回は、この8年間における金山町の中小林家の森林管理の状況や森林管理についての考え方の変化について分析を加える。
  • 小菅 良豪, 伊藤 勝久
    セッションID: A21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    昨年岡山県の素材生産業者への聞き取り調査により、造林公社の収入間伐施業の行詰りを感じている業者が、多いことがわかった。その原因は、公社造林の収入間伐材が原木市場での需要に合致していないこと。高価な高性能林業機械への投資を回収するため、施業地の纏まった公社造林に素材業者集中し、落札価格が下がったためであった。素材業者は今後の展開として、私有林集約化施業へ軸足を移そうとしている。
    本報告では、実際に私有林集約化施業を行っている素材業者と森林所有者への聞き取り調査と実施し、私有林集約化施業の可能性を明らかにする。調査地は岡山県新見市で、この地域の特徴は森林所有者の一人あたりの所有面積が県内の他地域に比べ広く、集約化施業に比較的向いている地域である。
    また比較対象として、広島県西部の森林組合における私有林での素材生産の現状を、組合と森林所有者への聞き取り調査から明らかにする。そして広島県西部の私有林施業と新見市の私有林集約化施業との比較検討を試みる。具体的な質問事項は、施業林地の状況、施業までの準備、施業の採算性、契約内容・方法、所有者の満足度、所有者の今後の森林経営について等である。
  • 興梠 克久, 椙本 杏子
    セッションID: A22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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     静岡県では自伐林家グループが多数設立されており(興梠、2004),生産性、持続性といった従来の視点に社会性の観点を新たに加え,これらが地域森林管理の担い手たり得るか評価することが研究の目的である。事例として,集落外社会結合である静岡市林業研究会森林認証部会と集落社会結合である文沢蒼林舎の2つの自伐林家グループを取り上げた。
     それぞれの集落内で個別経営を行っていた自伐林家の一部が,集落外で機械の共同利用や共同請負、森林認証の共同取得を目的とした機能集団を形成していった。しかし,その機能集団が地域森林管理を担う主体になるのではなく,機能集団の活動を経た自伐林家が,今度は各集落で再度、地域森林管理を担うためのグループ活動を展開し,集落内の林家全体が再結合していた。この再結合に、認証部会メンバーによる一部の活動(自伐林家が共同で経営計画を作成するケース、事業体化し地域の森林を取りまとめ管理を行うケース)と、文沢蒼林舎の活動(集落の自伐林家が集落全体の森林管理を担うケース)があてはまり、これらのケースは地域森林管理の担い手として評価できると考えられる。
  • 林 雅秀, 吉良 洋輔, 松浦 俊也
    セッションID: A23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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     本研究では、集合行為論の立場から、2つの集団が管理する共有林利用のルールに違いが生じる原因の説明を試みる。そうした原因の一つとして、今回は集団の構成員の属性や意識の差異に着目する。調査対象は福島県会津地方の2集落で、そのうちA集落は管理する共有林内における山菜・キノコ利用について部外者の入山料制を実施している。この実施には一定の経費や手間が必要だが、これまでは経費分を上回る入山料収入が得られている。つまり、入山料制という集合行為を成立させることで、高い利得を得ているとみなせる。一方、B集落は部外者の入山に対して厳しい姿勢をとり、入山禁止の看板設置や監視の強化などを行っている。共有林管理のために一定のコストを支払っているものの、得られる利得はA集落のように大きくはないと考えられる。両集落のこうした違いの原因として、集落住民自身による山菜・キノコ採取活動の程度を調べた結果、集落間に有意な差はみられなかった。集落内の集まりへの参加については、A集落の住民のほうが参加する集まりの数が多い傾向があり、そうした社会関係が集合行為の成立に関わっている可能性があると考えられた。
  • 知念 良之, 芝 正己
    セッションID: A24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年の沖縄県において主体となる住宅建築様式は鉄筋コンクリート(RC)造で木造は10%程度となっている。これは全国的にみて、非常に特異的な地域と言えるが、住宅の変遷に関する研究はあまり多くないのが現状である。本研究では歴史的変遷と過去の木材利用や政策を照らし合わせることで、強く影響を与えたと思われる要因を明らかにし、今後の動向を予測する手がかりとするものである。【方法】琉球王国時代から現在に至るまでの林業・住宅分野に関する資料・先行研究の調査と統計データの解析を行った。【結果】琉球王国時代は木材の輸入が困難であったため、造船・用材確保を目的とした森林政策が行われた。しかし琉球処分の混乱や第二次大戦の際に大量の伐採があったため森林資源は枯渇した。戦後、日本本土から杉材などが持ち込まれたが需給バランスを崩して価格が上昇したこと、沖縄を統治していた米国主導でコンクリート生産体制が整えられ、耐火造の住宅に対して優遇がなされたこと等が現在の沖縄の状況を生み出して来たと考えられる。一方、2000年以降の木造住宅に対するローンの優遇、プレカット材の急速な普及が近年の木造住宅増加の引き金となっている。
  • 田村 和也, 岡 裕泰
    セッションID: A25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    木材関連ビジネスサーベイを木材需給短期予測へ活用する可能性を探るため、「日銀短観」、「法人企業景気予測調査」、「中小企業景況調査」(中小機構)の過去約10年間の木材・木製品製造業の結果、および「木材業景況調査」(全木協連)を用い、各調査項目の現状判断と将来見通しの関係、調査間の結果比較、および「製材統計」「木材価格」「企業物価指数」など木材需給統計との関係を分析した。各調査の業況など主な項目では、見通しは現状判断と相関するがバイアスも観察された。調査間で共通する項目は、概ね類似した動きであった。業況や販売状況と製材品出荷量(前年同期比)、価格判断と製材・木製品物価指数の変化の間には相関が見られた。これら観察から、各種の木材関連ビジネスサーベイにおける現状判断は木材需給実績と緩やかな関連を有しており、その将来見通しを短期的な需給予測に役立てることが考えられるが、判断・見通しには偏りも見られ、なお分析が必要である。
  • 谷口 大樹, 藤掛 一郎, 大地 俊介
    セッションID: A26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     南九州における素材流通はこれまで市売が主流であったが、近年直送を初めとする多様な流通経路が生まれている。本研究では、その中で、流通業者が素材生産事業体から素材を買い取り、製材工場へ協定取引によって販売するようになった事例を取り上げ、その実態と意義を明らかにした。調査は、そのような方式を導入した流通業者2社とそこへ素材を販売する素材生産事業体3社に対して行った。
     調査の結果、以下の三点が得られた。(1)流通業者は安定供給を求める製材工場に協定取引で素材を販売するとともに、販売価格に基づいて素材の買取単価を決め、定額買取を行うようになっていた。(2)素材生産事業体は、この方式では価格が安定する点と流通業者の販売機能を利用できる点を評価しており、特に、材価が安定した結果、立木購入のリスクが小さくなることをメリットとして挙げた。(3)素材生産事業体から流通業者への販売量には事前の契約はなく、安定しないが、流通業者は自らの立木購入等で調整を行うことで製材工場への安定供給を実現していた。
  • 前川 洋平, 宮林 茂幸, 関岡 東生
    セッションID: A27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     これまでに報告者らは、伝統的な技術保持者や伝統的産業の継承に対する公的支援の現状に関して研究を行ってきた。具体的には、一つ目は、国(経済産業省)による「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」の施策内容や効果に関する研究である。二つ目は、都道府県が行う伝統的工芸品産業に関する条例等整備状況に関する研究である。三つ目は、市町村を対象とした研究である。
     これらを踏まえ本報告では、直接に当該産業が立地する市町村に対する調査結果(941品目が確認された)から、伝統的な工芸品の保護・育成に関する国や都道府県、市町村を含めた公的支援の現状を整理し、伝統的工芸品産業に対する公的支援の課題について、若干の考察を行うことを目的とした。なお、調査は2013年時点の国内全市町村を対象として、質問紙法によって実施した。
     市町村が把握する伝統的な工芸品産業の多くは、公的支援を受けていない現状にある。これらの産業は従事者が少数であることや、生産組合も結成できていないことが確認できた。地場産業として位置づけることが可能な伝統的工芸品産業に対しては、国や都道府県、市町村など公共団体による支援が継続して必要であると考えられる。
  • 岡 裕泰, 田村 和也
    セッションID: A28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    原木需給のミスマッチは丸太価格の暴騰や暴落をもたらす要因となる。1~3ヶ月程度の短期の原木需要見通しが立てられれば、原木供給調整のための基礎データとして有用と考えられる。林野庁においても四半期毎に見通しを作成・公表しているが、その精度改善は可能だろうか。2002年以降を中心に、月次データおよび四半期毎の国産材製材用素材入荷量、製材用素材在庫、製材品在庫等のデータを利用して、国産材製材用素材の需給量を見通すためのモデルについて検討した。国産材素材入荷量には季節変動が顕著なことが確認された。また入荷量には慣性があり、前期の量が大きいほど、次期の量も大きい傾向が認められた。さらに前期の素材在庫率(直近1年間の入荷量に対する在庫量の割合)が低いほど、次期の入荷量が大きい傾向が認められた。翌月以降の見通しを立てるのが当月の下旬とすると、実績値として利用できるのは前月までの入荷量と在庫量である。分析の結果、季節ダミーと製材工場への前月の入荷量、前月の素材在庫量の3つの変数で、政府の見通しと同じ程度の誤差率で国産材製材用素材の需給量を予測できることがわかった。改善のためにはさらに研究が必要である。
  • 塩崎 智悠, 佐藤 宣子
    セッションID: A29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では近年重要性が強く認識されるようになった学校教育における森林環境教育について,地域との関係性に焦点を当て福岡県における事例を考察し,課題を分析した。福岡県では森林環境税を使った教員対象の研修会が毎年開催され,最近5年間でのべ101名の教員が参加している。本研究では研修会に参加した教員へのアンケートを分析した。その結果,森林環境教育が実施されるか否かは,教員の意欲に依るところが大きいという事が明らかとなった。森林環境教育に熱心な教員が同僚を誘い合わせて研修会に参加しているという実態があり,研修内容の活用についても教員によってばらつきが大きかった。このように主体となる教員の存在は,森林環境教育を推進する上で重要であるが,その教員が異動すると学校において活動が継続されないといった問題点もある。一方で,研修に参加した教員がいない場合でも,森林環境教育を継続して行っている学校も見受けられた。活動内容こそ様々であったが,地域と連携して活動しているといった共通点があった。そのような活動を行っている福岡県の3つの小学校の事例分析を行う事で,初等教育における森林環境教育の課題を明らかにした。
  • 芝 正己, Azita Zawawi Ahmad, Janatun Jemali Naim, 知念 良之
    セッションID: A30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】2013年1月、「奄美・琉球」の世界自然遺産登録暫定リスト記載が政府決定されUNESCOへ提出されたが、より具体的な候補区域(島単位)の提示が求められている。現在、「白神山地」、「屋久島」、「知床」、「小笠原諸島」が世界自然遺産として登録されているが、本報では「奄美・琉球」世界自然遺産候補地の内、特に「沖縄本島」に絞って取組みの概観や課題を議論した。【方法】国内4世界自然遺産の登録前後の問題点や課題を先行研究・文献により整理すると共に関連の統計資料等の分析により考察した。【結果】「沖縄本島」の候補地として、大宜味村・国頭村・東村の北部3村を中心としたヤンバル亜熱帯森林地域が挙げられているが、1)世界自然遺産保全の担保処置としての諸法(自然環境保全法・自然公園法・国有林野管理経営規定・鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律・絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律・文化財保護法)の適用、2)希少種保護対策、3)世界自然遺産に対する地元住民の意向・連携性、4)核心地域・緩衝地帯の絞り込み(域内の米軍北部訓練場の存在)等が遺産候補地要件として緊急の課題である。
  • 柴崎 茂光
    セッションID: A31
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     鹿児島県屋久島は、1993年に山岳地域が世界自然遺産に登録されたことも一因となり、1990年代から観光客を含む入込数の急激な増加が2010年頃まで続いた。とりわけ近年は、縄文杉に対する関心が著しく高まり、往復10時間弱の登山道を歩いて、一般の観光客も訪問するようになった。そして繁忙期には山岳地域における過剰利用や安全・リスクが顕在化してきている。こうした状況が発生する重要な要因として、メディア等による情報提供のあり方が影響を与えた可能性を否定できない。
     そこで本稿では、屋久島が観光地「屋久島」のイメージの時代的な変化を明らかにする。具体的には、昭和30年以降の観光雑誌を対象として、屋久島の観光地がどのように紹介されてきたかを明らかにしたうえで、持続的な観光という視点から、今後の屋久島のイメージ化のあり方について考察したい。
     本研究は、科学研究費補助金基盤研究 (B)「世界自然遺産の再資源化に向けたアクションリサーチ」(研究課題番号:23310035)の助成を受け、実施した。
  • 平野 悠一郎
    セッションID: A32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    マウンテンバイクは、1990年代頃に日本で愛好者が増加し、林道、里道、登山道等を自由に走るスタイルにも人気が集まってきた。しかし、林地所有者や他の利用(ハイキング・林産物採取等)との軋轢が次第に増加し、結果として林地での走行を規制されるケースも目立ってきた。そのため、近年では、林地所有者との合意形成、スキー場等の他のレジャー施設との抱き合わせといった形で、マウンテンバイカー専用のトレイルを確保する動きが見られている。また、野外での走行を楽しむには地元の理解が不可欠との観点から、自治体・集落の里山整備に積極的に協力するバイカーも増えている。こうしたバイカー側の動きは、山村における物質生産の場としての林地の役割低下とも噛み合っており、地元の自治体や所有者に受け入れられるケースも見られている。その反面、トレイル設置に大規模な林地面積を必要とし、轍からの土壌浸食が生じ易く、また事故等の危険を伴うスポーツであることから、地元の理解を得るためのバイカー側の粘り強い活動はもとより、林地集約や事業展開に際しての自治体等の積極的なバックアップ、トレイル整備技術の向上、安全面の配慮等が不可欠となっている。
風致
  • 森田 えみ, 若井 建志, 銀 光, 浜島 信之
    セッションID: B01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     遺伝的要因と生活環境要因の複合により、生活習慣病等は発症すると考えられている。よって、体質に応じた適切な生活習慣の実施により、疾病を予防することが求められている。本研究では、個別化予防を視野に入れ、体質(遺伝子型)別に、継続した森林浴によるメンタルヘルスの維持を検証するために、うつとの関連も報告されているBDNF (Brain-derived neurotrophic factor:脳由来神経栄養因子)の遺伝子多型であるBDNF Val66Metに着目し、遺伝子型別に森林散策頻度とメンタルヘルスとの関連を検討した。
    【方法】
     対象者は人間ドッグ受診者(4,579人、平均年齢52.1 ± 8.7歳)で、自記式質問紙にて森林散策頻度を評価した。メンタルヘルスの指標はGHQ-12を用い、4点以上をメンタルヘルス不良と定義した。遺伝子解析はPCR-CTPP法で行った。
    【結果と考察】
     いずれの遺伝子型(Val/Val、Val/Met、Met/Met)でも、森林散策頻度が高い方がメンタルヘルス不良の割合が低かった。つまり、全ての遺伝子型で、高頻度の森林散策は、メンタルヘルスの維持に寄与する可能性が示唆された。今後は遺伝子解析を進め、体質別に森林浴の健康への寄与を更に明らかにする必要がある。
  • 武 正憲, 長野 康之, 松岡 法明
    セッションID: B02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    ライチョウ(環境省絶滅危惧種IB類)は、国指定特別天然記念物であり、個体数の減少により平成24年9月から保護増殖事業の対象種となった。ライチョウは、およそ2,000m以上の高山地帯という限られた地域に生息する野鳥である。そのため、保護増殖事業を実施するために必要となる生息数や生育範囲といった基礎的な情報を収集するには、調査に関する専門的知識に加え、高所登山の知識と技術が要求される。しかし、ライチョウの専門家は数少なく、広範囲にわたるライチョウ生息地を頻繁に調査することが困難である。本研究は、高所登山の専門的な知識と技術を有する登山ガイドによる、簡単なライチョウ調査を取り入れた観光目的の登山モニターツアーを実施することで、登山ツアーがライチョウの生息状況に関する情報収集に有効かどうかを検討することを目的とした。本報告では、事前学習を含む2泊3日の登山モニターツアーの参加者(20代から60代の男女7名)および登山ガイド(60代男性)へのアンケート調査の結果を元に、簡易的なライチョウ調査が登山ツアーのコンテンツとしての観光的な魅力を有するかを検討した結果と今後の課題について報告する。
  • 斎藤 馨, 藤原 章雄, 中村 和彦, 小林 博樹, 岩岡 正博, 中山 雅哉
    セッションID: B03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     定点から映像、音声、温湿度風向風速をインターネット経由でライブ公開配信し、同時に記録とデータのアーカイブを公開することで、森林の今と過去とをだれもが共有しながら観察できるサイバーフォレスト森林観察サイトの構築を進めている。
     1995年東京大学秩父演習林2地点設置後、新たに2011年より商用電源による24時間配信実験が可能な4地点(信州大学志賀自然教育園、東京大学国際沿岸研究センター、東京大学富士癒しの森、千葉県立中央博物館生態園)に設置し多地点比較観察を開始した。1日24時間の環境生態音、Webカメラ画像、一眼デジタルカメラ高解像度画像、気象データを用いて定点ライブモニタリングとアーカイブ公開サイトを構築した。連続記録画像から微速度映像を生成できるが、例えば東/西向きカメラ微速度映像により、日出日没時に太陽や月、星の運行の観察が容易となることから、各地点での天体や気象を含む自然的特徴把握に寄与できると示唆された。インターネットによるモニタリングの多地点化と24時間化は、これまで森林の樹木フェノロジーや季節変化観察に加えて、より広範な自然現象の比較観察と理解に貢献できると考えるに至った。
  • 艾海提江 買買提, 比屋根 哲
    セッションID: B04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、中国新疆ウイグル自治区における将来の都市緑化のあり方を探る基礎的な研究として、同自治区からの留学生(家族を含む)と日本人学生に、森林公園内の景観評価をしてもらうことで、主として新疆ウイグル自治区の人々の緑地景観に対する評価の特徴を明らかにすることを目的に実施した。
    調査は、岩手県滝沢森林公園内に「池と樹木からなる庭園」「ツツジ園」「芝生と疎林」「サクラの低木林」「カラマツと広葉樹の高木林」の5つのタイプの景観コースを設定し、被験者には各コースで気に入った箇所の写真を3枚撮ってもらい、撮影地点も地図上に記入してもらうことで把握した。この他、コース毎に景観の印象や評価を尋ねる質問に答えてもらった。また、5つのコースに対する被験者の評価の構造を検討するため、AHP法による調査を実施した。
    調査の結果、新疆ウイグル自治区の留学生は、調査した森林公園の景観を高く評価し、多くの留学生が新疆の都市でも造成が可能と考えていることがわかった。また新疆の留学生と日本人学生では、写真の撮影地点や撮影方向について顕著な違いは見られなかった。当日は、AHP調査をはじめ結果の詳細について報告する。
  • 深町 加津枝
    セッションID: B05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    祭りや民俗芸能、年中行事として受け継がれてきた伝統行事は、地域固有の自然条件や社会、経済状況の中で育まれ、森林資源の選択とその利用技術の積み重ねが各地域の森林文化を形づくってきた。そして、1975年になると文化財保護法が改正され、伝統行事の継承に関する施策が積極的にとられるようになった。京都は北、西、東の三方を丘陵に囲まれた盆地という地理的特徴を利用してできた都市で、起伏に富んだ自然地形を利用して建てられた大寺院や山荘・庭園が多数みられる。その周辺にある森林は、各地域の伝統行事とも密接な関わりがあり、文化的にも不可欠な存在となっている。しかし、高度経済成長期以降、担い手不足などの問題が生じ、伝統行事の継承が難しくなっている。また、身近な森林と人々の生活や生業との関わりは希薄になり、松枯れなどの影響もあって森林の量的、質的な変化が起こっている。本報告では、京都市左京区における伝統行事を対象に、用いられる森林資源の種類、材料の調達方法など近年の森林資源利用の動向をふまえ、伝統行事の継承に関わる課題を検討する。
  • 中村 和彦, 斎藤 馨, 藤原 章雄, 渡辺 隆一
    セッションID: B06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    フェノロジーの観察は、それほど専門的な知識や技術を必要としないため、環境変化の影響を誰もが直感的に把握できる。特に、長期間のフェノロジー観察によって気候変動の影響把握にも繋がりうる。そこで本研究では、信州大学志賀自然教育園(長野県下高井郡山ノ内町)にて1987年から継続して撮影している日々の定点写真を用いた観察の意義を検討した。観察者は、気候変動に関する教育が効果的と考えられる中高生に設定した。
    志賀自然教育園(標高約1600m)の定点写真で観察できる樹種のうち、ダケカンバ(Betula ermanii)の開葉を観察対象とした。中学校第1学年215名、高校第1学年374名に対し、それぞれ約60分間の講義の中で1987年から2012年までの計26年間の写真を提示し、分担して観察させた。単木単位での詳細な観察は困難であったため、観察基準を「広葉樹の部分で緑色の割合が半分以上になった日」をダケカンバ開葉日として代表させることとした。この教育効果については、講義後の感想文から、気候変動に関する記述を抽出して分析した。また、中高生らを市民科学者として位置づけた場合の、この観察結果の生物季節学における学術的な意義についても考察した。
  • 川端 篤志, 伊藤 太一, 中村 彰宏
    セッションID: B07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
  • 伊藤 太一, 川端 篤志, 中村 彰宏
    セッションID: B08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    都道府県立公園は国立公園以前に指定された歴史があるが、現在は自然公園法において都道府県が条例によって指定することになっている。群馬以外の都道府県に315箇所が指定され、総面積の46.2%が私有地である。また、都道府県立公園には最小面積に関する規定がなく、京都府立笠置山自然公園は19 haとなっている。同様に、自然環境保全法によって都道府県が条例で定める都道府県立自然環境保全地域にも最小面積に関する規定がなく、0.1 ha程の指定地域もある。滋賀と山口を除く都道府県に541箇所が指定され、35.6%が私有地である。
    私有地割合は文化資源数と比例すると考えられ、松島(1902年指定)に代表されるように都道府県立公園には多くの文化資源がある。さらに、都道府県立自然環境保全地域においても関東6都県の182の保全地域のうち110箇所に社寺や遺跡などの文化資源があった。これらから都道府県立自然環境保全地域は文化資源を核とする文化的景観を保全する意図で指定されたことが明らかになった。また、自然環境保全地域は利用を想定していないが実際には社寺や遺跡の来訪者に生態系サービスを提供している。
  • 奥 敬一
    セッションID: B09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
     薪の利用は、生態系サービス概念では通常「供給サービス」の中の「燃料供給」と位置づけられる。しかし、薪ストーブを媒介として薪を利用することは、一定のライフスタイルのもとでは精神的・レクリエーション的な「文化的サービス」の発揮にもつながり、健康、安全、豊かな生活、社会的な連帯の形成、教育といった人間社会の福利へと生態系サービスを拡張する可能性を含んでいる。
     こうした視点から、京都、滋賀の都市近郊において、里山林からの薪を利用している薪ストーブユーザー4軒を対象として3~5年間にわたるモニター調査を行った。その運転記録と生活の質に関わる聞き取り調査から、薪ストーブによって拡張された文化的サービスの実態について報告する。調査結果からは、薪ストーブを「里山林から得られる供給サービス(燃料)を、複合的な生態系サービスに拡張する装置」ととらえることができ、そのことが生活の質の向上の実感に大きく関わっていることが示された。
経営
  • 津脇 晋嗣
    セッションID: C01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】森林・林業政策、特に森林整備・管理のこれまでの取組と森林の機能の評価の取組をレビューし、森林の整備・管理と機能の評価がどのような相互関係を持ってきたかを分析し、今後の森林・林業政策及び森林の機能の評価の方向性を考察する。
    【方法】森林・林業白書、森林・林業基本法(林業基本法を含む)及びこれに関連した基本計画の改正の状況等から、我が国の森林・林業政策、特に森林の整備・管理が、どのような考えの基に進められてきたかをレビューする。また、昭和47年、平成3年、平成12年の林野庁及び平成13年の日本学術会議による森林の機能の評価、FSC等の森林認証の過程での森林の評価等から、我が国の森林の機能の評価がどのように行われてきたかをレビューする。これらの結果からこの2つの関係を分析し、今後の森林・林業政策の方向性及び森林の機能の評価の方向性を考察する。
    【結果】我が国の森林・林業政策は1992年の地球サミットをきっかけとして方向性に変化が生じ、また、森林の機能の評価についても、地球サミットをきっかけとして、持続可能な森林経営のため、FSC等への取組を通じて森林の機能を適切に評価する取組へと変化して行ったと考えられる。
  • Shourong Wu, Norihiko Shiraishi
    セッションID: C02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    China and Japan’s forestry policies have transformed from traditional forestry policies which timber production as the center to forest comprehensive policies both ecological and economic benefits. In China, impact factors are mainly shortage of forest resources, and natural disasters, specially the 1998 Yangtze River floods. Now China’s forestry policy system has influenced by the collective forest tenure system reform since 2005. And the Forest Act and related policies are in adjustment. In Japan, the forest revitalization plan had also started in order to promote forestry. There are also some common issues between Japan and China, such as the small forest owners how to manage forest to improve the economic benefit, and how to utilize woody biomass as a new renewable energy, and so on. We can observe some common trend which forestry development should expand to the society system deeply not only limited forestry as an industry.
  • 陳 元君, 石橋 整司
    セッションID: C03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    海南省は中部山岳地域に原生な熱帯林が残り多様性に富んだ特異な生物群集が生存している。海南省政府は、優れた自然環境を維持するため中部山岳地域を中心に自然保護区を設定したが、森林資源を利用した生活を営んできた先住民の森林資源利用権がほとんど認められていないため先住民との間に紛争が絶えず、自然保護と先住民の生活の両立が大きな課題になっている。本研究では、2004年に設立された鸚哥嶺自然保護区(以下、YGL)を対象に、先住民との関係緩和策の1つである専業護林員(以下、護林員)制度の実態について、護林員への対面聞き取り調査の結果を中心に検討した。YGLの護林員207名のうち、管理職14人全員、隊長33名中32名、隊員160名中32名から聞き取りを行った。解析の結果、YGLでは護林員の雇用によって密猟と違法伐採の減少に成功し、また、護林員が持つ自然環境に関する知識を科学調査や森林資源モニタリングに活用できていた。一方、護林員は先住民の不満を受けること、先住民の慣習に従った関係緩和行為が漢民族スタッフ主体である自然保護区管理機関側にあまり評価されていないこと、護林員の業務に関する知識不足などさまざまな問題も起こっていた。
  • 守口 海
    セッションID: C04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    土地貢租式は一般に、1パターンの施業を無限に繰り返すときに得られる収益の現在価値の平均収益額、もしくは、地価を1パターンの施業による生産力で決定づけたときの地代と位置づけられる。他のバリエーションもあるが、これらは無限の計画期間を前提している。一方、現実には利子率等のパラメータが変動するため、パラメータ不変を前提とする土地貢租式を指標として最適施業を探索することは不適切と考えることも自然である。
     無限の計画期間を前提にして、土地貢租式を基準として施業を最適化したとき、個々の伐期において、その施業を実施すべきであることは当然である。しかし、有限の計画期間を前提にしたうえで、施業の最適化の基準を土地貢租式とすることに意味を持たせられるかは、現実の施業計画の立案において重要である。
    そこで本報告では、伐期の整数倍である計画期間を前提とするとき、計画期間内の平均収益額が土地貢租式となることを示す。
  • 白石 則彦
    セッションID: C05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    我が国の人工林資源は、戦後に精力的に造林され総面積で1千万haに達した。そのうち特に昭和20年代後半から50年代半ばにかけて造林されたものが成熟しつつあり、現在8~12齢級にあるものが全体の2/3を占め、極めて偏った齢級構成をしている。平成21年には森林・林業再生プランが策定され、この森林資源を活用していくことが国の方針として掲げられた。本研究では、人工林資源をマクロに見て面積平分で保続生産を想定した場合に、今後の人工林資源の蓄積、成長量、収穫量を試算したものである。比較的単純な仮定をおいて試算した結果、資源の現状は80年の法正林と同程度に成熟しており、しかし80年の法正林と比較して蓄積も成長量も多いことが分かった。これは用いた収穫予想表が、8~16齢級で成長曲線が平均直線を上回り、1~12齢級で連年成長量が80年の平均成長量を上回っており、齢級構成の2/3が8~12齢級にあるために起こっていることが分かった。蓄積も成長量も法正状態を上回る事態は非常に特異であり、今後は成長量が漸減していくことが推察される。人工林が炭素の吸収源と位置づけられていることもあり、長期的に木材を利用していくことが望まれる。
  • 林 真智, 三枝 信子, 小熊 宏之, 山形 与志樹
    セッションID: C06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】衛星リモートセンシング技術を利用して広域の森林バイオマス分布を効率的に計測する手法の開発を目的とし、衛星搭載のLiDARおよび光学センサのデータを解析した。【方法】対象地域は北海道の森林とした。まず、衛星LiDARであるICESat/GLASデータを収集した。トゥルスデータ取得のため、106ヶ所のGLAS観測地点においてビッターリッヒ法により現地で地上バイオマスを計測した。このデータに基づき、GLASデータから地上バイオマスを推計する手法を検討した。次に、離散的な点の情報である衛星LiDARデータを面の情報に拡張するため、光学センサ画像から算出した植生指標とGLASから推計された地上バイオマスとの関係を検討した。光学センサとしてTERRA/ASTERなどの3種類のデータを比較した。【結果】GLASの波形データの特徴量として4つのパラメータを選定して地上バイオマス推計手法を開発した。そのRMS誤差は43.5Mg ha-1で、この手法により北海道の森林バイオマス分布特性を明らかにできた。さらに、光学センサ画像を利用した面的な森林バイオマス地図作成について、検討結果を報告予定である。
  • 今井 正, 小林 高士, 境澤 大亮, 鈴木 桂子, 中島 康裕, 室岡 純平, 佐藤 亮太
    セッションID: C07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    過去50年で、地上の森林が化石燃料により排出されたCO2のおよそ1/3を取り除いてきたという研究結果があり、炭素循環の、特に吸収において、森林は重要な役割を担っていると考えられている。一方、全球規模での炭素量・炭素循環の把握に際し、陸域の炭素蓄積量の誤差の影響は非常に大きく、地上の炭素蓄積の大部分を占める森林量(バイオマス)の高精度な推定は重要である。
    バイオマスを正確に求めるには、木を切り倒して重量(樹木個体の乾燥重量)を測る必要があるが、森林伐採・破壊、費用等のため難しく、広域データを求める場合、林冠高を計測し、それからバイオマスを推定する手法を用いることが多い。
    この林冠高を計測するリモートセンシングの1つとしてライダーが挙げられる。宇宙航空研究開発機構は、林冠高測定を主目的とした宇宙機搭載用ライダーについて、森林観測、炭素循環等の研究者・専門家の協力を得ながら検討を進めている。本講演では、ライダーによる林冠高観測ミッションについて説明する。
  • 粟屋 善雄, 河合 洋人, 高橋 與明
    セッションID: C08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
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    岐阜県高山市大八賀川に東西8.3km×南北2.0kmのテストエリアを設定し、1点/m2程度の低密度LiDARのデータを利用して、森林の木部バイオマスの変化を推定した。落葉広葉樹林とスギ・ヒノキ林のプロット調査に基づいて木部の乾燥重量を算出し、2012年8月に観測されたLiDARデータから得られた樹冠高を説明変数とする回帰式をそれぞれの森林タイプについて調整した。乾燥重量の推定精度を検証した後、2012年と2006年6月に観測されたLiDARデータに回帰式を適用して木部バイオマスの分布を推定し、両者の差から森林の木部バイオマスの成長量を乾燥重量ベースで算出した。テストエリアの面積の40.0%が落葉広葉樹林、42.7%が常緑針葉樹林、4.2%がカラマツである。落葉広葉樹とカラマツに落葉広葉樹用の回帰モデルを、常緑針葉樹林にスギ・ヒノキ林用の回帰モデルを適用したところ、バイオマス成長は落葉広葉樹林で4383.8Mg、常緑針葉樹林で2558.5Mg、カラマツ林で299.4Mgとなり、常緑針葉樹林が落葉広葉樹林の約1.7倍のスピードで成長していることが明らかになった。
  • 大野 勝正, 和智 明日香, 佐々木 貢
    セッションID: C09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    森林を適切に管理するため森林資源の把握は重要な課題である。これまで森林の資源量調査は標準地調査(サンプル調査)が主であったが、標準地の設定、調査者の熟練度などにより誤差が生じるという問題があった。一方、近年航空機レーザ計測データを用いた森林資源解析が研究されている。レーザ計測データによる資源解析の利点は計測範囲全てを対象にした資源量の把握、機械処理による効率化であり、従来の調査で生じる誤差を解決することができる。これまでの研究で樹高や樹木本数を目的としたレーザ解析は行われてきたが、標準地調査で得られ、材積算出に重要な胸高直径の推定に関する研究はほとんど行われていない。そこで本研究は航空レーザ計測データから得られる樹冠面積を用いた胸高直径の推定を行った。北海道根釧西部パイロットフォレストのカラマツ林1,500haを対象にレーザ計測を行い、プロット調査で得られた胸高直径とレーザ解析で得られた樹冠面積から相関式を作成した。この相関式を用いた胸高直径の推定精度は2cm以下であった。胸高直径を高い精度で推定する可能性が示せたことから標準地調査の代替としてレーザ解析の資源量把握結果が使用できると考えられる。
  • Ahmad Zawawi Azita, 芝 正己, Jemali Noor Janatun Naim
    セッションID: C10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    会議録・要旨集 フリー
    Most studies involving tree height estimation and crown detection have focused on analysis of plantations, boreal and temperate forests, and less study was done in subtropical or tropical forests. Our study tested the capability of LiDAR application in high density sub-tropical broad-leaved forest in Okinawa. DCHM was extracted from the LiDAR data for tree height estimation and watershed segmentation method was applied for individual crown delineation. The computed result was compared to field collected data and validated using IKONOS orthophoto image. The results suggested that LiDAR have a huge capability to estimate tree height in subtropical forest, but were not sufficiently capable in the detection of small understory trees and single tree crown delineation. We found that LiDAR computation result underestimated the frequency of trees and overestimated the crown size.
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