船舶用ディーゼル機関にきわめてまれに発生するクランク軸の曲げ疲れ破壊を解明するため, 使用中に損傷したクランク軸について大形 (60φ) および小形 (10φ) の回転曲げ疲れ試験を行なって, その結果を統計的に処理し, クランク軸の曲げ疲れ限度の信頼下限を推論した.検討の結果としてつぎの結論が得られた.
(1) クランク軸の曲げ疲れ限度の下限値を上昇させるには, クランク軸に巨視的な材料欠陥がなく, かつ均質な素材を用いて, 疲れ限度のばらつきを減少させる方法がもっとも有効であり, 疲れ限度の平均値を増加させる方法よりも効果が大きい.
(2) 材料欠陥を不均一に含有するクランク軸材の疲れ限度のばらつきを正確には握することは困難であり, 小形あるいは大形の一種の試験のみでは誤まった評価をするおそれがあり, 試験片採取位置, 鍛造粒子流れの方向などを考慮して, 統計処理上の母集団を考える必要がある.
(3) 疲れ試験によって, 疲れ限度の平均値σWとその標本標準偏差√Vを正しく求めれば, クランク軸の損傷率は次式rを用いて判断することができる.
r= (σW-σL) ・ (1/√V)
ここに, σLはクランク軸すみ内部の曲げ応力半振幅
すなわち, rが2以下であれば損傷率は数%であり, 3以上であれば損傷率はきわめて低いと考えている.
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