頭頸部癌
Online ISSN : 1881-8382
Print ISSN : 1349-5747
ISSN-L : 1349-5747
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 伊藤 達哉, 岡本 伊作, 渡嘉敷 邦彦, 羽生 健治, 塚原 清彰
    2024 年 50 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/11
    ジャーナル フリー
    臨床医が日常診療と研究活動の両方に十分な時間を割くことは難しい。当院ではデータベースツールであるAccess®をカスタマイズし使用している。これは臨床研究の効率向上と症例抽出の容易化に有効である。さらに,日本頭頸部癌学会の悪性腫瘍登録にも利用されている。データベースからの抽出プロセスも治療期間や年齢,治療種別ごとに検索が可能であり,実際の検索画面を提示しながらその有用性を示す。頭頸部癌の治療の進化とそのためのデータベース管理の必要性,そしてAccess®の利点と欠点について考察した。
    Access®はデータベースへの登録と抽出に優れており,システムを構築することで,臨床医の負担軽減に貢献できる可能性がある。今後,頭頸部癌治療のアップデートに対応しすることも可能である。他の医療機関での導入がより多くの診療ならびに臨床研究のため有意義であると考え報告する。
原著
  • 加納 里志, 対馬 那由多, 鈴木 崇祥, 浜田 誠二郎, 安田 耕一, 打浪 雄介, 本間 明宏
    2024 年 50 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/11
    ジャーナル フリー
    当院で治療した唾液腺癌の術後照射の効果について後方視的に検討した。対象は根治手術を行った唾液腺癌104例で,そのうち術後照射が75例に施行されていた。全症例を対象とした場合,術後照射あり群の3年局所頸部制御率(LRC)は90.3%(95%CI 82.8-97.9%),術後照射なし群では71.2%(95%CI 52.9-89.5%)であり,術後照射あり群において有意に良好であった(p=0.02)。耳下腺癌症例を対象にした場合では,3年局所制御率(LC)は術後照射あり群では93.0%(95%CI 86.4-99.7%),術後照射なし群では66.6%(95%CI 42.4-90.9%)であった(p<0.01)。また多変量解析の結果,全症例を対象としたLRCでは術後照射が唯一の独立したリスク因子であり,耳下腺癌を対象としたLCでは高悪性度と術後照射が独立したリスク因子であった。
  • 山内 盛泰, 石田 知也, 峯崎 晃充, 嶋崎 絵里子, 倉富 勇一郎
    2024 年 50 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/11
    ジャーナル フリー
    2019年12月からの2年間にペムブロリズマブ療法を開始した39例(単独22例,併用17例)について検討した。単独療法の奏効割合は全体で36%,CPS≥20で36%,CPS 1-19で50%,CPS<1で0%であった。併用療法では全体53%,CPS≥20で71%,CPS 1-19で43%,CPS<1で33%であった。1年/2年生存割合は全体66/40%,単独63/48%,併用71/32%であった。生存期間中央値はいずれも17.2ヶ月であった。CPS別ではCPS≥20で25.4ヶ月間,CPS 1-19で15.5ヶ月間,CPS<1で14.9ヶ月間であった。irAEありの群(13例)では,なしの群(26例)と比較して奏効割合(67 vs 33%),生存割合(2年83 vs 59%)ともに良い結果であった。80歳以上の高齢者(8例)では,投与期間中央値,生存期間中央値ともに全体よりも長く,忍容性ありと考えられた。
症例報告
  • —頭蓋底進展経路の検討—
    宮本 俊輔, 松木 崇, 加納 孝一, 堤 翔平, 籾山 香保, 原田 雄基, 山下 拓
    2024 年 50 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/11
    ジャーナル フリー
    上咽頭癌は頭蓋底に進展して脳神経障害を生じうるが,頭蓋底の解剖は複雑なため進展経路の診断は容易でない。今回われわれは症状初発から1ヶ月間で9つの脳神経障害を生じた稀な上咽頭癌の1例を経験し,進展経路について検討した。症例は21歳男性で,3日前からの嗄声・嚥下障害を主訴として受診した。診察にて上咽頭と両側頸部リンパ節の腫脹を認め,精査にて上咽頭癌(右後上壁型,cT4N2M0,stage ⅣA)の診断となった。初診から29日後の化学放射線療法開始までにⅠ,Ⅱ,Ⅶ以外の全脳神経障害を認めた。MRIからは右破裂孔が脳神経への腫瘍進展の拠点となり,Ⅸ-Ⅻ障害は椎前間隙を経た頸静脈孔・舌下神経管への尾側進展,Ⅲ-Ⅵ障害は頸動脈管を経た海綿静脈洞への頭側進展,Ⅷ障害は腫瘍進展部で生じた硬膜炎の内耳道波及により発症したと推測された。MRIは進展経路の詳細な評価に有用であった。
  • 竹内 拓馬, 中村 宏舞, 山中 俊平, 犬飼 大輔, 丸尾 貴志, 小川 徹也, 藤本 保志
    2024 年 50 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/11
    ジャーナル フリー
    神経鞘腫が血管肉腫に悪性転化した1例を報告する。症例は46歳の男性,左頸部腫瘍の増大と頭痛のため当院を受診した。CT画像では,左胸鎖乳突筋の深部に長径約80mmの腫瘤性病変を認め,境界は明瞭で辺縁の造影効果が強いが,内部は出血や壊死の可能性を示す広範な低吸収領域を認めた。細胞診では悪性細胞が検出されたが,病理確定診断には至らなかった。診断と治療の目的で腫瘍切除を施行したところ,神経鞘腫と血管肉腫が併存しており,神経鞘腫が悪性転化した血管肉腫と診断された。手術後,早期再発腫瘍からの出血が持続し,止血に難渋したが,化学放射線療法にて止血に至った。その後のパゾパニブ投与により部分奏効(PR)が得られ,10ヶ月間PRを維持している。神経鞘腫は急速な増大や疼痛などの症状が認められた場合に,悪性化の可能性を念頭に置き,切除をより強く推奨することが必要と考えられた。
  • 苦瓜 治彦, 白倉 聡, 小出 暢章, 塩水 紀香, 福島 亮, 島崎 幹夫, 久保木 諒, 小島 史也, 別府 武
    2024 年 50 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/11
    ジャーナル フリー
    原発性副甲状腺機能亢進症のうち,家族性副甲状腺機能亢進症の割合は2-5%であり,CDC73遺伝子バリアントを有する疾患として副甲状腺機能亢進症顎骨腫瘍症候群,家族性孤発性副甲状腺機能亢進症が挙げられる。今回原発性副甲状腺機能亢進症のため紹介され手術を施行したCDC73遺伝子バリアントを伴う副甲状腺癌の症例を経験したため報告する。症例は19歳女性,大腿骨頸部骨折を契機に原発性副甲状腺機能亢進症が疑われ当科受診。血液検査でカルシウム,intact-PTHが高値であり,画像検査で左下副甲状腺腫瘍及び全身の線維性骨炎を認めた。遺伝子検査でCDC73遺伝子バリアントが判明,左下副甲状腺及び甲状腺左葉合併切除を施行した。術後高カルシウム血症や線維性骨炎は改善,病理検査で副甲状腺癌の診断が確定した。今後も副甲状腺癌の再発転移やCDC73遺伝子バリアントに伴う全身合併症に注意し経過観察の方針である。
feedback
Top