日本看護技術学会誌
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12 巻, 1 号
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原著
  • 肥後 すみ子, 深井 喜代子
    2013 年 12 巻 1 号 p. 63-73
    発行日: 2013/04/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     経皮的冠動脈形成術 (再灌流療法) を受けた成人の急性心筋梗塞患者 (AMI群 : 19名) と同年代の健常群 (19名) を対象に入浴時の生体反応を比較した.入浴は一般に安全といわれている手順を踏襲し,身体を洗う2分30秒間の前後に40℃の湯に3分間ずつ2回,第4肋間の高さまで浸かる方法 (総所要時間15分間) で行った.入浴の評価指標には血圧,心拍数,自律神経活性,口腔温,快適感 (VAS),Borg指数を用いたが,血圧をのぞくいずれの群間比較でも有意差を認めなかった.ところが,個々のデータを詳細に分析すると,1回目の入浴直後に収縮期血圧が30mmHg以上上昇したものは健常群では2名だったのに対して,AMI群では6名いた.また,血圧には著明な変動はなかったが,心室性期外収縮 (PVC) が増加したものがAMI群に3名いた.これらの患者はLown分類ではGrade2の比較的軽症のPVC判定であったが,左室駆出率に中等度障害があった.こうしたAMI患者にみられた入浴時の異常の原因は不明だが,少なくとも入浴前に入念に病態と循環動態を把握すること,そしてより安全な入浴方法を検討する必要があることが示唆された.
研究報告
  • 山口 舞子, 杉本 吉恵, 田中 結華, 高辻 功一
    2013 年 12 巻 1 号 p. 74-84
    発行日: 2013/04/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,変形性膝関節症患者への膝の疼痛緩和ケアによる疼痛の緩和効果を検討する基礎的研究として,健康な成人女性8名に対し安静,膝関節部への温罨法,および音楽聴取,さらに,温罨法と音楽聴取を組み合わせケア (以下組み合わせケア) の4種類のケアを実施し,その生理的 ・ 心理的反応を評価した.結果,組み合わせケアでは,s-IgA濃度と分泌率の両方がケア終了後に統計的に有意に上昇,増加した.組み合わせケアは,ケアを単独で行うよりも対象者に快適感をもたらし,免疫能を高める可能性が示唆された.またすべてのケアにおいて,心理的指標は統計的に有意な改善を示し,対象者の気分は改善することが示された.さらに,セミファーラー位で安静にするだけでも,対象者の気分が改善されs-IgA分泌率,および心拍変動に統計学的に有意な変化が生じていたことが明らかとなった.今後は変形性膝関節症患者を対象とした,ケアの疼痛緩和効果について明らかにしていきたい.
  • ―不眠の種類による検討―
    古島 智恵, 井上 範江, 分島 るり子, 児玉 有子, 村田 尚恵, 高島 利
    2013 年 12 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 2013/04/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     不眠を訴える入院患者のうち入眠困難と中途覚醒の訴えの患者に焦点をあて足浴の効果について検討した.評価指標は,主観的睡眠感,心拍数,心拍変動解析 (高周波成分 (HF),低周波成分-高周波成分比 (LF/HF)),手首活動量計による睡眠覚醒に関する項目を用いた.
     入眠困難を訴える患者 (男性4名,53.0±9.4歳) では,足浴を行った場合 (FB) は行わなかった場合 (CT) にくらべ,主観的睡眠感の総得点とその因子「入眠と睡眠維持」が有意 (p <0.05) に高かった.さらに心拍数では,FBはCTにくらべ消灯後と入眠後に有意に低く (p <0.05),交感神経活動を表すLF/HFは入眠後に有意に低かった (p <0.05).つぎに,中途覚醒を訴える患者 (男性4名,57.8±10.3歳) では,心拍数ではFBはCTにくらべ消灯後と入眠後に有意に低かった (p <0.05) が,LF/HFでは有意差はなかった.副交感神経活動を表すHFは,FBがCTにくらべ消灯後に有意に高かった (p <0.05).
     よって不眠に対する足浴の効果は,中途覚醒よりも入眠困難の訴えがある患者のほうがより効果的であると考えられた.
  • ―Enhanced Recovery After Surgeryプロトコール適用患者の参加観察から―
    加藤木 真史
    2013 年 12 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 2013/04/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,術後患者の離床の状況を明らかにすることを目的に行った事例研究である.術後当日は2時間,翌日から6時間の離床を明示したEnhanced Recovery After Surgeryプロトコールを先駆的に導入する日本,英国の2病院において,プロトコール適用大腸手術患者5名を対象とし,手術当日から術後3日目まで参加観察を行った.その結果,患者が離床してとった行動は,食事を摂る,トイレで排泄をする,同室者 ・ 面会者と交流するなど,12行動に分類された.患者の離床は,【創痛 ・ 悪心 ・ 眩暈がない】【身体を取り巻く管が動作を妨げていない】【起きる必要性を理解している】ことで可能となり,さらに【起きなければならない状況がある】【起きて過ごすための道具がある】【医療者以外の人とのつながりがある】【ベッド以外の場所がある】時に離床が促進されていた.以上より,術後の早期離床援助は,歩行を促すことばかりではなく,生活行動を通してベッドを離れることや,それらができる環境を整える必要があることが示唆された.
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