日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
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22 巻
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総説
  • 上條 翔矢, 中山 栄純, 小林 幹紘, 松谷 伸二
    2023 年 22 巻 p. 51-62
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     熟練した観察技術をもつ看護師が, どのような場面で, どのような注視を行っているか, 注視と注意を関連付けてどのような研究がなされているのかについて実態を明らかにすることを目的として, Arksey & O’Malley (2005) のスコーピングレビューの方法にて文献調査を行った. 文献データベースは, MEDLINE, CINAHL, PsycINFO, EMBASE, Cochrane, 医学中央雑誌, CiNiiを用い, 検索ワードを「看護師」, 「注視」, 「眼球運動」, 「眼球運動測定」等として, 検索を行った. その結果, 国外文献7件, 国内文献14件が抽出された. 熟練した観察技術をもつ看護師は重要な領域をより注視し, 患者の顔面部を重点的に注視する傾向があった. 模擬環境下での研究や静止画像, 動画を用いた研究が多かったが, 用いられている課題設定の妥当性の評価を行ったものは見当たらなかった. また, 観察の構成要素のひとつである注意を考慮した研究は見当たらず, どのように注意を向けるのかについて調査する必要性が示唆された.

原著
実践報告
  • 相吉 はるな, 佐居 由美, 亀田 典宏, 西本 葵, 縄 秀志
    2023 年 22 巻 p. 71-76
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     COVID-19の流行は遷延し2022年度においても, 看護基礎教育の現場は臨地実習から学内実習への変更を余儀なくされる状況がある. 我々は, 看護展開論実習 (基礎看護学実習:1単位) を学内で実施する際に「想定外の状況に対応が必要な場面」が設定された計2回の看護実践を含むシミュレーション実習を計画した. 実習終了後, 今後の課題等を検討するため履修学生99名にアンケート調査を実施した (回答率38.4%). その結果, 2回の模擬患者への看護実践について, 異なる感想が得られた. 1回目の実践については, 「想定外の状況が起こり, その都度対応していく必要がある」等の今回の設定に関連した学びが記述されており, 2回目の実践に関しては, コミュニケーションについての配慮点など「患者との関わり方についての気付き」についての反応がみられた. また, 学生は計2回の実践を通して, 看護専門職者としての態度を養うという本実習の目的を達成するための実習目標の一部に到達することができていた. 本実習における新たな取り組みは, 臨床代替実習の質を高め, 臨床のリアルを組み込むというシミュレーション教育の課題克服の一助になることが推察された.

資料
  • 村川 弥生, 伊丹 君和, 伊丹 琢, 関 恵子, 千田 美紀子, 保田 淳子
    2023 年 22 巻 p. 77-87
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル フリー

     目的:在宅療養者と施設入所者を援助する看護・介護職を対象に腰痛実態および腰痛の起こり方と腰痛発症時の姿勢との関連を明らかにする.
     方法:訪問看護・介護事業所や介護老人福祉施設の計7施設に勤務する者を対象に, Googleフォームにて無記名式調査を実施した. 対象者の属性・腰痛実態は, 看護・介護職別に全数と割合を算出した. また, 腰痛の起こり方を「急激に起こった」と「徐々に起こった」の2群に分け, 腰痛発症時の姿勢との関連をχ2検定を用いて分析した.
     結果:有効回答297名. 腰痛有訴率は, 看護職87.5%, 介護職76.2%であった. 看護・介護職ともに, 腰痛発症時の姿勢は「中腰姿勢」が最も多く, 看護師の「長時間の立ち作業姿勢」で, 「徐々に起こった」と回答した者が有意に多かった.
     結論:在宅療養者と施設入所者を援助する看護・介護職の腰痛発症率は, 病院を対象とした調査と同様に高値であった. さらに, 看護・介護動作時の「中腰姿勢」や「長時間の立ち作業姿勢」による腰部の筋負担の蓄積が腰痛発症に関連していることが示唆された.

原著
  • 小平 智尋, 落合 有咲, 佐藤 愛, 佐橋 芽依, 宮川 日和, 村松 若奈, 山井 穂乃華, 吉田 麗, ハーネド 明香, 髙橋 智子, ...
    2023 年 22 巻 p. 28-37
    発行日: 2023/08/20
    公開日: 2023/08/20
    ジャーナル フリー

     ディスポーザブルタオル (以下, ディスポタオル) を用いた背部清拭に10秒の貼用時間および気化熱を抑えるタオルの広げ方と当て方の工夫を加える効果を皮膚温および主観的評価から明らかにした. 健康成人33名を対象に①貼用なし清拭, ②10秒の貼用時間を加えた清拭, ③10秒の貼用時間および気化熱を抑えるためタオルの広げ方と当て方の工夫を加えたオリジナル清拭の3つの背部清拭を実施し, 皮膚温・主観的評価を測定した. 反復測定二元配置分散分析・Friedman検定により分析した. 結果は, 10秒の貼用時間を加えた清拭およびオリジナル清拭の乾拭直後の皮膚温は安静後より上昇し, 貼用なし清拭よりも有意に高かった (P<.001). 主観的評価では, オリジナル清拭のあたたかさの得点が有意に高かった (P<.001) が, 気持ちよさは有意差がなかった. 結果より, ディスポタオル清拭において, 貼用時間を加えることは乾拭直後の皮膚温を上昇させ, 気化熱を抑えるタオルの広げ方や当て方を工夫することは主観的なあたたかさを感じられる効果が期待できることが示唆された.

  • 安田 千香, 深井 喜代子
    2023 年 22 巻 p. 38-50
    発行日: 2023/08/20
    公開日: 2023/08/20
    ジャーナル フリー

     目的:オキサリプラチンをベースとし, カペシタビンを含む化学療法を受ける大腸がん患者の手指に生じる末梢神経障害の特徴を明らかにする.
     方法:地域がん診療連携拠点病院の外来で化学療法を受ける患者54人を対象に横断的観察研究を行った. 病態と治療情報を診療録から収集し, 手指のしびれ痛み, 触覚感受性, 握力, ピンチ力, 箸を閉じる力, 箸でつまみ上げる力を計測し, 生活習慣等は問診した.
     結果:対象者全員が化学療法開始後から手指のしびれ痛みを経験し, うち43人は症状が慢性化しており, 示指の触覚感受性が低下していた者が28人いた. 触覚感受性と握力, ピンチ力, 箸でつまみ上げる力との間にはいずれも関連を認めなかったが, 触覚感受性が低下した者は箸を閉じる力が弱かった. 触覚感受性に関わらず握力とピンチ力は男性が有意に高かったが, 箸を扱う力に性差はなかった.
     結論:がん化学療法患者の手指に生じる末梢神経障害症状は, 慢性化したしびれ痛み, 指先の触覚感受性低下, 箸を使う等の精緻な指の動作時の筋力低下を特徴としていた.

短報
  • 秦 さと子, 吉田 睦史
    原稿種別: 短報
    2023 年 22 巻 p. 1-8
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究は, 袖付きプラスチックエプロンにおける2種類の脱衣方法「袖先法」, 「腰先法」による身体汚染の状況を明らかにすることを目的に実施した. ガウンテクニックを既習している看護系大学生19人に, 事前練習を行った後, 2種類のガウン脱衣方法それぞれを実施してもらった. 水様性の蛍光塗料を汚染物質とみなし, 噴霧したガウンを脱衣した後, 蛍光塗料が看護衣および身体に付着した区域を汚染部位とした. 身体を20区域に分けて観察し, 20区域それぞれについて, 2種類の脱衣法による脱衣後の汚染の有無の比較, および2種類の方法における汚染区域数について比較した. その結果, 2つの方法間での汚染区域数に有意な差はなく, 共通して, 左右前腕内側部, 左右手掌部/手背部に汚染を起こす可能性が高いことが明らかとなった. そのため, ガウン脱衣直後に前腕までの範囲の手指衛生を行う必要があることが示唆された.

実践報告
  • 上田 ゆみ子, 酒井田 由紀
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 22 巻 p. 9-14
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     医療用テープの使用には, テープテアと呼称される皮膚障害のリスクを伴うため, エビデンスに基づいた剥離手技の解明が望まれる. 本研究の目的は, 被着体にバイオスキンプレートを使用した場合の医療用粘着テープの剥離力を剥離速度別に測定することで, 適切な医療用テープの剥離手技に関する基礎的資料を得ることである. 剥離試験は, 被着体をバイオスキンプレート, 試料を医療用テープ4種, 引張速度を5mm/sec・15mm/sec・30mm/secの3条件とし, 実施した. 4種の試料を比較した結果, ジェントルフィックス, ポアテープNo. 12は30mm/sec, トランスポアホワイトサージカルテープは5mm/sec, サージカルテープNo. 12 (共和) は15mm/secにおいて剥離力が最大値を示した. 本試験では剥離力が最小となる剥離速度とそれ以外の速度において有意な差がみられた. 剥離速度は, テープの特性を考慮して選択する必要があり, 適正な速度で剥離することにより剥離力を小さくできることが示された.

資料
  • 栗田 愛, 武田 利明
    原稿種別: 資料
    2023 年 22 巻 p. 15-27
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 訪問看護師が在宅要介護高齢者に実践したグリセリン浣腸 (GE) と摘便の実施の可否を決定するために必要なアセスメントと実践のプロセスを明らかにすることである. 訪問看護師7名と在宅要介護高齢者17名に対して, 排便の援助を行う場面での参加観察と, 看護師への半構造化面接をした. 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法に基づき, 各看護師のGEと摘便に関するアセスメントをフローチャート式に整理した. その結果, 看護師はバイタルサイン測定, 腹部の聴診, 打診, 触診, 直腸診の順に身体診察を行うほか, 食事量, 最終排便日・排便量の情報も合わせて収集し, 便の貯留状況や便性状をアセスメントし, そのうえで訪問時間内に便が出せるか判断し, GEと摘便の必要性を判断していた. また摘便は, 便の硬さによって実施方法が異なり, 便の硬さに応じて直腸刺激も同時に実施していた. 看護師がGEや摘便の際に出血しやすい, つまり有害事象を起こしやすいと回答した状況は, 硬便であることと痔核があることであった. 今後, 有害事象を回避する視点でGEと摘便のアセスメント基準を構築していく必要がある.

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