看護技術としてのグリセリン浣腸の実施方法の課題を明らかにするため, 看護職者を対象としてグリセリン浣腸の実施方法の実態と, 基礎教育課程で用いられるテキストでのグリセリン浣腸の実施方法について調査した. 方法は, 日本看護技術学会第5回学術集会に参加する看護職者への質問紙調査と, 既刊の看護技術に関するテキストからグリセリン浣腸技術の記述実態の調査とした. 倫理的配慮は, アンケート調査では, 調査趣旨および調査協力の自由意思の説明, 無記名回答とし, テキスト調査は最新版のテキストを偏りなく選択した. 調査内容は, 潤滑液の種類, カテーテルの挿入方法, 長さ, 挿入時の体位, 浣腸実施前中後の観察項目であり, さらにテキスト調査では, グリセリン液濃度, 引用文献の有無も調査した.
テキストのグリセリン浣腸技術に関して, 引用文献を提示して記述しているものが少ないことが明らかとなった. テキストで具体的記述が少ない潤滑液やカテーテル挿入方向について, 看護職者は多様な方法を選択していた. カテーテル挿入の長さや浣腸実施前後の観察項目としては, 6~10cm, 腹部状態やバイタルサインの観察などテキストに記述された内容が, 看護職者の実施頻度が高い, 共通した知識 ・ 技術であった. しかし, 浣腸実施時の体位について, テキストでは記載されていない立位, 中腰などが, 臨床では実施した経験のある体位であり, 実施する頻度の高い体位としても選択されていた. 以上のことから, グリセリン浣腸技術に関して, 最新知見を反映させ, また臨床の状況を取り入れて, 看護職者自身が安全性 ・ 適切性などを判断できる実施方法の説明が必要であることが明らかとなった.
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