日本看護技術学会誌
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6 巻, 2 号
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原著
  • 佐藤 好恵, 藤井 徹也, 佐伯 香織, 新實 夕香理, 渡邉 真紀, 小澤 由紀, 中野 隆
    2007 年 6 巻 2 号 p. 4-11
    発行日: 2007/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     殿部筋肉内注射部位として選択される 「四分三分法の点」 と 「クラークの点」 における上殿神経 ・ 動静脈等に関する形態学的検討を行い, より安全性の高い部位について検討した. 実習用遺体24側で上殿神経 ・ 動静脈の走行を観察し, 76側で皮下組織 ・ 筋の分布について計測した. 「四分三分法の点」 では, 梨状筋上孔から中殿筋の後方筋腹へ分布する上殿神経後枝が小殿筋表層の投影点を通過して走行する例は20側 (83.3%) であり, 小殿筋表層での上殿神経の刺入または密接例は 「四分三分法の点」 が 「クラークの点」 よりも2.6倍多かった. よって 「四分三分法の点」 は上殿神経 ・ 動静脈の損傷の危険性が高い部位であった. また 「四分三分法の点」 と比較して, 「クラークの点」 は皮脂厚が1.3 ± 0.9cmで有意に薄く (p<0.01), 中殿筋の厚みは2.1 ± 0.8cmで有意に厚かった (p<0.01). したがって 「クラークの点」 がより安全な筋肉内注射部位であると考える.
実践報告
  • 井垣 通人, 永嶋 義直, 山崎 好美, 菱沼 典子
    2007 年 6 巻 2 号 p. 12-17
    発行日: 2007/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     排便, 排ガスを促す看護技術として, 「熱布による腰背部温罨法」 が利用されている. 本研究では, 熱布より簡便で安全かつ安定な蒸気温熱を提供する蒸気温熱シートを開発し, 腹部適用による便通を整える効果を検討した. 本シートは, 薄膜状で保持具を用いて腹部に使用し, 適用部位の皮膚表面温度を38~40℃にする蒸気温熱が5時間以上持続する特徴をもつ.対象は, 便通不調が気になる中高年女性59名, 平均年齢54.5歳で, 適用期間は3週間で1日1回腹部に適用した. その結果, 本シート適用前後にて, 排便日数は適用前で平均4.1日/週が適用後で5.1日/週に増加した (p<0.01). さらに主観的評価では, 本シート適用前後にて, 「悩んでいる」 「非常に悩んでいる」 の便秘悩み者では26名から9名, お腹がはる感じ悩み者は23名から8名に低下した. 便秘 ・ 膨満感 ・ 排便改善に有効であった作用機序は, 蒸気温熱シートが副交感神経を優位とし, 胃および腸の運動機能を促進するためと考察される.
短報
  • 山崎 好美, 大久保 暢子, 海野 康子, 菱沼 典子
    2007 年 6 巻 2 号 p. 18-22
    発行日: 2007/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     経管栄養の注入速度による血糖推移を見るため, 4名の女性に①400kcal普通食を15分で経口摂取, ②400ml (400kcal) のエンシュアリキッド®を経鼻経管栄養法で200ml/hr (2時間) で注入, ③②と同様に600ml/hr (40分) で注入し, それぞれで摂取直前から3時間30分まで15分ごとに血糖値を測定した.
     経管栄養法では, 200ml/hr, 600ml/hrどちらの速度でも, 普通食を15分で摂取する時よりも血糖値のピークは遅れて現れ, その後の下降は遷延し, 空腹時血糖より低値を示していた.
     本データでは, 経管栄養の注入速度が200ml/hrと600ml/hrで, 血糖推移としてどちらがより安全性が高いか言及は控えたいが, 今回用いたエンシュアリキッド®のような, 「半消化態栄養剤」 では, 臨床現場においても, 急激な糖吸収による高血糖, 反応性低血糖というような現象が起きているのではないかと考えられる.
  • ─1総合病院の産婦人科病棟における検討─
    加賀谷 奈穂子, 武田 利明
    2007 年 6 巻 2 号 p. 23-29
    発行日: 2007/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     近年, 立位でのグリセリン浣腸実施による直腸穿孔などの有害事象が報告されているものの, 立位での実施状況が把握できていない. そこで, 浣腸技術の問題点や課題を明らかにするために, 浣腸実施頻度が高い産婦人科病棟において実態調査を実施した. その結果, 全体の68.2% (22例中15例) に立位での浣腸実施経験があることが明らかになった. さらに, 左側臥位においてもカテーテル挿入の長さ, 浣腸液の注入速度が実施者によって異なり, 立位では挿入したカテーテルの長さが不明であることを示す結果が得られた. 左側臥位で浣腸を実施することが原則とされているが, 今回の調査から立位で浣腸を実施していること, 原則である左側臥位でも手技や方法がさまざまであることが示唆された. 今後, 立位での実施状況についてさらに詳しく調査, 分析するとともに, グリセリン浣腸技術を見直す必要性がある.
  • 坪井 ふみ子, 畠山 なを子, 藤井 博英
    2007 年 6 巻 2 号 p. 30-33
    発行日: 2007/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     先行研究でわれわれは, キュウリローション (キュウリエキス ・ アルコール ・ グリセリン ・ 精製水を成分とするオリジナルに調製したローション) が, 87%のそう痒感患者に止痒効果を認めることを検証した. 痒みの要因は, 角層の保湿機能低下によって起こる皮膚乾燥がある. 乾燥がひどくなるほど痒みが強くなる. そこで今回, 慢性 ・ 持続性の痒みを訴える患者16名を対象に, キュウリローションの止痒効果と, その根拠の一つとして保湿作用による皮膚乾燥の改善があるのではないかと考え, 保湿作用の検証を行った. 痒みについてはローション使用前と比較し, 使用後は88%の対象者に痒みの軽減効果があった. 皮膚水分率についてはローション使用前平均値35.1%と乾燥状態を認めたが, 使用後は1分後55.9%, 30分後45.6%, 60分後43.6%と皮膚水分率が上昇し, 有意差も認めた. キュウリエキスはキュウカンバーエキスともいわれ, 保湿 ・ 収れん作用があり, そう痒感患者の皮膚乾燥の改善につながったものと考える.
特別寄稿
  • 香春 知永, 大久保 暢子, 小板橋 喜久代, 吉田 みつ子, 鈴木 美和, 武田 利明
    2007 年 6 巻 2 号 p. 34-44
    発行日: 2007/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー
     看護技術としてのグリセリン浣腸の実施方法の課題を明らかにするため, 看護職者を対象としてグリセリン浣腸の実施方法の実態と, 基礎教育課程で用いられるテキストでのグリセリン浣腸の実施方法について調査した. 方法は, 日本看護技術学会第5回学術集会に参加する看護職者への質問紙調査と, 既刊の看護技術に関するテキストからグリセリン浣腸技術の記述実態の調査とした. 倫理的配慮は, アンケート調査では, 調査趣旨および調査協力の自由意思の説明, 無記名回答とし, テキスト調査は最新版のテキストを偏りなく選択した. 調査内容は, 潤滑液の種類, カテーテルの挿入方法, 長さ, 挿入時の体位, 浣腸実施前中後の観察項目であり, さらにテキスト調査では, グリセリン液濃度, 引用文献の有無も調査した.
     テキストのグリセリン浣腸技術に関して, 引用文献を提示して記述しているものが少ないことが明らかとなった. テキストで具体的記述が少ない潤滑液やカテーテル挿入方向について, 看護職者は多様な方法を選択していた. カテーテル挿入の長さや浣腸実施前後の観察項目としては, 6~10cm, 腹部状態やバイタルサインの観察などテキストに記述された内容が, 看護職者の実施頻度が高い, 共通した知識 ・ 技術であった. しかし, 浣腸実施時の体位について, テキストでは記載されていない立位, 中腰などが, 臨床では実施した経験のある体位であり, 実施する頻度の高い体位としても選択されていた. 以上のことから, グリセリン浣腸技術に関して, 最新知見を反映させ, また臨床の状況を取り入れて, 看護職者自身が安全性 ・ 適切性などを判断できる実施方法の説明が必要であることが明らかとなった.
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