日本看護技術学会誌
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12 巻, 2 号
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原著
  • ―第1報 アセスメントツールの作成とその試行―
    藤田 淳子, 石垣 和子
    2013 年12 巻2 号 p. 4-13
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,在宅脳血管障害者の誤嚥性肺炎予防ケアのための呼吸アセスメントツールを作成し,試行により臨床適用可能性を検討することである.本ツールのねらいは,状態を評価するアセスメント力の強化およびアセスメントからケアの判断の明確化である.研究方法は,第一段階として,訪問看護師へのインタビュー調査と文献検討から呼吸アセスメントツールを作成した.内容は,4つのケアの構成要素からなり,それぞれに「アセスメント項目」と「ケアの方針」を設定した.第二段階は,訪問看護師と研究者と協働で8事例に対し本ツールを試行し,臨床適用可能性を検討した.結果,本ツールは,訪問看護における臨床適用可能性があり,特に換気 ・ 咳嗽に関するアセスメントとケアの判断を強化することが示された.アセスメント項目について一部修正が必要であったことから,今後は,修正点を反映した呼吸アセスメントツールを検証する必要がある.
  • 萩野谷 浩美, 佐伯 由香
    2013 年12 巻2 号 p. 14-22
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,大腿動脈 ・ 静脈を介して心臓カテーテル検査を受ける患者のストレスの程度を評価することを目的とした.
     大腿動脈あるいは大腿静脈を介して心臓カテーテル検査が実施された患者9名 (男性5名/女性4名,53~84歳) を対象に,検査前後における患者のストレスの程度を唾液αアミラーゼ活性 (以下sAA),心拍変動の周波数解析などの自律神経機能とvisual analogue scale (以下VAS) を用いて評価した.
     検査後のsAAは,安静解除直前まで上昇傾向を示し,安静解除後に有意に減少した.この変動は,心拍変動の周波数解析から算出したLF/HFの結果とも類似していた.安静解除後1時間のVASは,他の時点と比較して有意に低かった.これらの結果は,安静解除直前までは交感神経活動が亢進した状態にあり,安静解除に伴い交感神経活動が低下することを示している。また,患者の主観的苦痛度も安静解除後に軽減したことが示された.
     心臓カテーテル検査後の安静臥床時では患者のストレスが上昇することから,これを軽減するための援助が必要であると考えられる.
研究報告
  • ―森林映像療法の可能性―
    辻裏 佳子, 豊田 久美子
    2013 年12 巻2 号 p. 23-32
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,森林映像の心身反応に関する基礎的検証を行うことを目的に,健康な20歳代24人 (男女各12人,平均年齢21.67±1.31歳) を対象に,森林映像とコントロール映像を用いた.実験は,映像視聴10分,前後に安静5分の合計20分とし,評価指標は,semantic differential technique (SD法),心拍変動,実験前後にVisual Analogue Scale (以下VAS) と気分プロフィール調査 (以下POMS) を用い,自記式質問紙にて森林映像から心地よく感じた内容の回答を得た.森林映像は,穏やかさと好感を得る一方で豊かでダイナミックな印象が得られ,VASから「快適な」「鎮静的な」「リフレッシュした」で得点が上昇し (p <0.001~0.01),POMSから「緊張-不安」の軽減が認められた (p <0.01).心拍変動から副交感神経活動の優位な反応が認められ,今後の活用として心地よく感じる場面の疎密や映像の余韻の活用をすることで快適性やリラックス効果を引き出せる可能性が示唆された.
  • 吉良 いずみ
    2013 年12 巻2 号 p. 33-42
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,1日の水分摂取量と排便状態との関連と,水分摂取による排便状態への効果に関する文献レビューを行い,便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスを明らかにすることである.文献検索はPubMed, CINAHL,医学中央雑誌web版を使用しconstipation, fluid intake, water intakeをキーワードとした.その結果得られた,成人を対象とした水分摂取量と便秘症状に関連する実態調査7件と,介入評価研究7件についてCooperの統合的文献レビューの方法を参考に分析した.
     結果,1日の水分摂取量が500mL以下の場合は排便量を減少させ,便秘症状につながることが示唆された.一方,便秘症状を有する対象に水分摂取を促すことは,対象が脱水傾向にある場合は便秘症状の改善に有効だが,脱水傾向がない場合は水分摂取量の増加による排便状態への効果を裏付ける有効なエビデンスはなかった.
  • 後藤 慶太, 金子 健太郎, 尾形 優, 熊谷 英樹, 佐藤 都也子, 山本 真千子
    2013 年12 巻2 号 p. 43-49
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究では片足への温熱刺激が生体にもたらす生理学的効果を,特に温熱刺激を与えていない対側下肢への効果に注目して,末梢循環および全身循環の動態とその調節に関与する心臓自律神経活動の指標を用いて,明らかにすることを目的とした.若年健常男子15名 (平均年齢22.4±1.1歳) を対象に,片足に蒸しタオルを用いた温罨法 (以下,片足蒸しタオル温罨法) を施行し,心拍数と血圧,HRV (heart rate variability),両足の皮膚温を測定した.片足蒸しタオル温罨法は,安静仰臥位15分後に,4枚の加温 ・ 加湿したフェイスタオルを被覆する方法で実施した.各測定値の観察は片足蒸しタオル温罨法施行前から施行後30分間まで連続して行った.その結果,片足への温熱刺激は,副交感神経活動を賦活化し,交感神経活動を抑制し,全身循環においては心拍数と血圧を減少および下降し,末梢循環においては対側下肢を含め促進することを明らかにした.したがって,片足への温熱刺激はリラクセーション効果および入眠効果をもたらすことが示唆された.
  • ―一施設の精神科外来での調査より―
    高橋 有里, 村上 繁子, 長澤 敦子, 三浦 奈都子
    2013 年12 巻2 号 p. 50-58
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,筋肉内注射における注射部位反応の状況,および具体的な注射方法の影響を明らかにすることを目的とした.一施設の精神科外来で患者と看護師を対象とし,独自に作成した記録表を用いて調査し,持効性注射製剤とそれ以外の注射薬に分けて分析した.その結果,持効性注射製剤では,太い針で,殿部が選択され,微量の空気を注入する方法が実施され,マッサージはされない傾向にあった.注射液の皮膚表面上への漏れ,出血,圧痛,硬結が19.2%に観察され,持効性注射製剤か否かで差はなかった.注射液の皮膚表面上への漏れは,注射針の太さ,注射部位,空気注入,マッサージに有意な関連はなかった.硬結は10.9%で確認され,頻回に注射をしている者に多かった.硬結形成した事例は,前回注射時に,注射液の皮膚表面上への漏れや内出血,突然のしびれがあり,皮膚の色素沈着や萎縮,硬結部位に注射すると痛み,出血,注射液の皮膚表面上への漏れを生じていた.
実践報告
  • 野呂 志津子, 山口 智子, 佐藤 奈津美, 猪股 里美, 成田 全, 松江 聖乃, 川崎 くみ子
    2013 年12 巻2 号 p. 59-63
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,ボックスシーツのずれやしわの発生状況を従来のシーツ (以下,基準シーツ) と比較検証することにより,ボックスシーツのほうがしわやずれが少なく使用していくことができるかを明らかにすることを目的とした.健康成人女性22名 (平均年齢24.0±3.0歳) を対象に,ずれ測定部位に印をつけたボックスシーツと基準シーツを用い,60分臥床と30分ヘッドアップを行い,おのおのずれとしわを測定した.結果,両シーツともベッドに対し横方向にくらべ,縦方向のずれが大きく,シーツ中央のしわは他のエリアよりも有意に多かった (p <0.05).ヘッドアップ時はシーツ下方より上方のしわが有意に多く (p <0.05),上方より下方のずれが有意に多かった (p <0.05).臥床時のしわはシーツ中央と下方でボックスシーツが有意に少なかった (p <0.05).以上より,頭側が袋状になりベッドメーキング時足元を適度な力で牽引できるボックスシーツは基準シーツにくらべ,外観上しわが少なく,ずれは同様であり,患者が療養生活を行ううえでボックスシーツも活用できると確認できた.
  • 工藤 由紀子, 武田 利明
    2013 年12 巻2 号 p. 64-71
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2016/07/08
    ジャーナル フリー
     日本では看護師が患者の発熱時に腋窩や鼠径部等への複数クーリングを行うことが多いが,その効果については根拠が乏しい.今回,複数クーリングが患者の深部温,血圧,心拍変動に及ぼす影響について明らかにすることを目的に,患者3名の事例検討を行った.複数クーリングの必要性を決断したときの腋窩温は38.0~38.3℃であった.複数クーリングの方法は病棟で普段行われている後頭部,両腋窩の3点クーリングとした.その結果,1名は深部温が低下し,HFがやや上昇,収縮期 ・ 拡張期血圧,心拍数,LF/HFは変動が少なく安定していた.この事例の深部温の低下は複数クーリングによって解熱が図られたのではなく,発熱後の体温の下降期を示している可能性が推察された.また2名については深部温の低下が認められず,そのうち1名は拡張期血圧の低下,心拍数の増加がみられ,もう1名は収縮期 ・ 拡張期血圧の上昇,心拍数の大きな変動がみられた.
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