創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
1 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 寺師 浩人
    2010 年 1 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
     糖尿病性足潰瘍で,創傷治癒に必要なことは,原因を正確に評価したのちに適切な創傷治療へと進むことである。評価のない創傷治療は行ってはならず,予防・歩行の観点からのケアも含まれなければならない。糖尿病性足潰瘍では,一つの創傷の原因が必ずしも一つではなく,複合病態であることが多い。その理解のために,まず創傷治癒を阻害する原因となる糖尿病性足病変の特徴をとらえる必要がある。次に,末梢動脈性疾患 (Peripheral Arterial Disease,以下PAD) と感染症の評価も同時に行う。正しい評価のない局所デブリードマンや末梢血行再建術は,罹患肢の大切断へと繋がる。また,創傷治癒のみが治療目標ではなく,予防措置の施されたフットウェアで歩行すること,生命の維持とが最終目標である。適切なるフットウェアが大切断回避のかぎを握る。同疾患は生命予後不良であり,下肢救済のみにとらわれた長期間の保存的治療に固執してはならない。
  • 秋田 定伯
    2010 年 1 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
     創傷治癒を促進し,理想的な瘢痕をもたらすために,さまざまな方法がとられるが,“ 幹細胞 ” 生物学の発達とその臨床応用の拡大により,創傷への再生方法として注目をあびつつある。幹細胞のなかにはES細胞,iPS細胞など将来非常に有望な細胞源もあるが,現状では倫理的問題を含めた実務上の問題があるため,いわゆる “ 体性幹細胞 ” を応用する方法が開発されている。創傷への臨床応用は基礎的研究に基づき,臨床へ展開されている。創傷治癒 • 創傷治療における幹細胞の動態,発現状態,分化様式の基盤的知見が,理想的創傷治癒へどのように展開されているか,付属器を含めた皮膚再生に向けての研究の現状と問題点について述べる。自験例では幹細胞を用いた創傷治療のなかで自家脂肪組織由来幹細胞を用いての難治性創傷治癒への有効例も経験しており,ますますの発展が期待される。
  • 小川 令, 赤石 諭史, 百束 比古
    2010 年 1 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
     ケロイドや肥厚性瘢痕には,いまだ確実な治療法が存在しないため,統一された治療指針ができておらず,各施設が限られた治療経験を基に独自に工夫を重ねて治療を行っているのが現状である。しかし,世界的にはケロイドや肥厚性瘢痕の基礎研究が進み,質の高い臨床研究が増えつつある。よってこれらの報告から,質の高い臨床研究を抽出し,現時点でのケロイドや肥厚性瘢痕の治療に対するエビデンスを検討したため報告する。
     診断では,時には悪性腫瘍の鑑別としてバイオプシーも考慮すべきであることが示唆された。予防では,細菌感染や異物反応,外傷などにより遷延する炎症,尋常性ざ瘡など皮膚の炎症性疾患,外力などを極力排除すべきと考えられた。肥厚性瘢痕やケロイドの治療では,手術,圧迫療法,放射線療法,凍結療法,ジェルシート,レーザー,ステロイド注射,5-フルオロウラシル(5-FU)などの単独療法,併用療法が有用であることが示唆された。また,治療後の経過観察はもちろん,治療中でも定期的に患者を診察し,再発の傾向がないか診断することは必須であると考えられた。
原著
  • 林 礼人, 松田 倫史, 堀口 雅敏, 松村 崇, 古元 将和, 小室 裕造
    2010 年 1 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
     皮下血腫は,外傷や手術に加え,さまざまな基礎疾患から生じ,その治療に直面する創傷外科医は的確な判断が求められる。皮下血腫の除去法として,われわれはシリンジ陰圧法を考案したが,今回その作用機序について基礎的な研究を行ったので報告する。
     実験には家兎を各群4羽用い,前頭部皮下に血腫を人工的に作成し,その吸引除去を行った。吸引法の違いで4つの群を作成(穿刺吸引:I 群,穿刺後にシリンジ陰圧法:II 群,開創後に穿刺吸引:III 群,開創後にシリンジ陰圧法:IV 群)し,吸引血腫量の比較および生じる吸引圧の測定を行った。
     I 群では少量の血腫が吸引できたのみで,III 群では陰圧を生じなかった。IV 群では,吸引できた血腫量が圧倒的に多く,吸引圧も高かった。
     シリンジ陰圧法の有用性が改めて確認され,小開創によりゲル化した血腫が通過する内腔の確保と最大吸引圧の大きさがそのおもな作用機序であると考えられた。
  • 陶山 淑子, 中山 敏, 福岡 晃平
    2010 年 1 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/01
    ジャーナル フリー
     ペースメーカー(pacemaker,以下PM),植込型除細動器(implantable cardioverter defibrillator,以下ICD)には露出,感染などの合併症がある。われわれは12名のPM • ICD露出あるいは感染症例に対して本体のみを抜去し,リード断端処理を行った。
     2004年4月から2009年3月の間,本体およびリード露出 • 感染を認めた12名に対して16件の外科的治療を行った。全例で本体を抜去し,リードを短縮,断端処理し,筋体あるいは骨膜に固定した。
     12名中7名は,術後1年の時点で再燃なく治癒した。血液培養陽性であった2名は1年以内に死亡した。リード断端にいたる瘻孔形成を3名に認め,2名は再手術により治癒した。リードを筋体内に固定した場合40%の治癒率に対し,骨膜固定法では83%の治癒率が得られた。
     PM • ICDの露出 • 感染に対するサルベージ方法として,リード短縮と断端処理は開心術にくらべて低侵襲で安全である。リード断端の固定は可能な限り,骨膜固定を行うのがよい。
症例報告
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