一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
選択された号の論文の290件中201~250を表示しています
口頭発表 5月29日 家族
  • 久保 桂子, 片岡 舞
    セッションID: 3E-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 共働き夫婦の妻がワーク・ライフ・バランスの実現のためにとっている戦略を、短期・長期の両面から明らかにするとともに、その戦略とワーク・ライフ・バランス実現のレベルとのギャップが、仕事と家庭生活との間の葛藤に及ぼす影響を明らかにする。
    方法 小学生以下の子のいる共働き妻を対象に、質問紙を用いた半構造化インタビューを行い、その結果を分析した。調査協力者は、2013年の「子育てと仕事の両立に関する調査」(研究代表者久保)の調査協力者および協力者から紹介された者、および知人やそれらの者から紹介された者16名である。対象者の居住地は千葉県、東京都、神奈川県、茨城県で、年齢は20代から50代である。
    結果 (1)ワーク・ライフ・バランス実現のための戦略は現在の戦略とともに、自身が目指すワーク・ライフ・バランスのレベルに到達できるよう、ライフコース上で長期的な戦略をとっている。(2)仕事と家庭生活不調和を是正するための戦略として、仕事の要求と家庭の資源、家庭の要求と仕事の資源を一致させる戦略をとっている。(3)自身のワーク・ライフ・バランスの期待のレベルと、実際の到達レベルとのギャップが葛藤となる。(4)女性が戦略をとるためのバックグラウンドとして、職場の資源が重要な役割を果たしている。さらに、これらの戦略は、対象者の成育環境やメンターの存在等によって形成された個人の生活の価値意識が基盤にあることが明らかになった。
  • 藤田 智子, 坂本 有芳
    セッションID: 3E-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 女性の社会進出が進む一方で、男性の家事育児時間は増えていない。子育て中の働く女性が、家事育児において、どのような外的資源を利用しているのか、また利用における葛藤について明らかにする。
    方法 仕事と子どもを持つ女性20人を対象に、1対2の半構造化インタビューを行った。スノーボールサンプリングによって対象者を募った。調査期間は2013年5月~2014年1月、所要時間は約1時間である。対象者の職場の会議室や大学のゼミ室などで行った。対象者に了解を得た上でICレコーダに録音し、文字起こしを行い1次データとした。
    結果 対象者の第一子出産平均年齢は33歳で、継続就業をしながら第一子を出産した人は13名であった。利用している外的な資源は、自分や義理の親、祖父母、ファミリー・サポート、シルバー人材センター、ベビーシッターなどであった。自分や義理の親に手伝ってもらっている場合、融通が利いて助かる半面、甘えが出てルーズになる、育児に対する考えが対立するといった問題が起きていた。シルバー人材センターやベビーシッターなどの外部サービスの利用については、「やっぱり何か抵抗もあってお願いできなかった」というように、利用に対して心理的ハードルが高いようであった。なお、本研究は、お茶の水女子大学・社会連携室外部受託研究(代表者:石井クンツ昌子)の一部である「子の発達段階に応じたキャリア・デザイン研究会」(代表者:坂本有芳)の一環として実施した調査に基づく。
  • -短大幼児教育学科学生の意識調査から-
    知野 愛
    セッションID: 3E-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】福島県では東日本大震災後の原発事故による避難等で、人口減と共に世帯数の増加が生じている。その背景には世帯分離があるが、その他の事情も含めて子育て環境は急激に変化しており、孤立感を深める家族も多く存在し、子育て支援を一層充実することが重要と思われる。そこで、地域での子育て支援の今後の方向性を考えることを目的とし調査を開始したが、本発表では、これから家族を形成する短大生を対象に実施した「家族と地域における子育てに関する意識調査」の結果を報告する。
    【方法】2015年にアンケート調査(短大幼児教育学科2年生対象)を実施し、併せて資料調査も実施した。
    【結果】「子育てをする人にとって地域の支えは重要か」という問いに対し90%が「そう思う」と答え、「地域で子育てを支えるために重要だと思うこと」は「子育てに関する悩みについて気軽に相談できる人や場があること」、「防犯のための声掛けや登下校の見守り」、「子どもと一緒に遊ぶ人や場があること」の順に回答が多かった。一方で、理想の家族の住まい方は「夫婦と子どもの世帯で親とは離れて住む」(53%)、「夫婦と子どもの世帯で妻(自分の親)と近居」(25%)の順に多く、親と別世帯を望む声が多かった。今後も世帯分離を念頭においた支援が必要であり、また資料調査では、「本当に大変な母親は外へ出て支援を求められない」等の意見が見られ、家庭訪問型支援の重要性が増していると思われた。
  • - 親の貧困状態と子どもの「メンタリング格差」-
    石川 周子
    セッションID: 3E-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 近年、米国における子どものメンタリングの議論では、支援や保護を必要としながらもそれらが十分に提供されていない状況として「メンタリング格差」の存在が指摘されている1)。そこで本研究では、子どもに対するメンタリングに差異をもたらす要因を検討することを目的とする。具体的には、親の貧困状態が親以外の大人による子どもへのメンタリングに与える影響について実証的に検討する。

    方法 名古屋市在住の中高生の母親2,050名を対象に調査票を郵送した。調査時期は2014年10月~11月、抽出方法は多段抽出法である。本分析では中高生とその母親206組を分析対象とする。分析は従属変数を親以外の大人のメンタリング、独立変数を親の貧困状態とする多変量解析を行った。

    結果 親の貧困状態は、親以外の大人による子どもへのメンタリングを規定する要因の一つであることが明らかにされ、貧困による「メンタリング格差」が存在する可能性が示された。本分析結果は、貧困状態の解決が、子どもの社会関係を豊かにしていく上で重要な要素の一つであることを示唆したものといえる。

    [文献]1)渡辺かよ子.社会的包摂に向けたメンタリング運動 米国の特別な支援を必要とする青少年のためのプログラムを中心に.愛知淑徳大学論集-文学部・文学研究科編.2008,第33号,19-30
  • 中部日本の茶生産地域における32年間のパネル調査から
    佐藤 宏子
    セッションID: 3E-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 日本有数の茶生産地域における長期反復調査から、茶生産の盛衰などの地域社会の社会経済的変化に伴って、中部日本の農村直系制家族の世帯構成と世帯規模はどのように変化したか、世代交替と直系家族の再生産はどのように展開しているかを明らかにする。
    方法 1982年に静岡県岡部町に居住する30~59歳の有配偶女性475人に対して第1回調査を実施した。その後、同一対象者に対して93年と05年に第2回、第3回のパネル調査を実施した。2014年には住民基本台帳を閲覧し280世帯(第1回調査有効回答者世帯の58.9%)の4時点パネルデータを得た。
    結果 (1)平均世帯人員数は5.35→4.83→4.34→3.69と減少し、最頻値は82年の6人世帯、93年の7人世帯から、2014年には2人世帯となり、世帯規模が著しく縮小している。(2)直系家族は70.7%→61.4%→49.2%→39.3%と減少している。(3)子世代の結婚難が深刻化しており、2014年の同居未婚子最年長者の平均年齢は46.6歳まで上昇した。また、同居未婚子最年長者のうちで40歳以上の未婚者が約75%、50歳以上の未婚者が37.0%を占めている。(4)夫婦のみ世帯は82年の1.8%から05年の17.5%へと増加したが、05年以降は単独世帯が増加している。(5)世代交替に伴って直系家族の中心的世帯構成は「親世代・対象者世代・未婚子」から「対象者世代・子世代・孫」へと移行した。しかし、82年の直系家族のうち14年に次世代直系家族を再生産できた世帯は33.3%にすぎない。
  • 泉 光世
    セッションID: 3E-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    複数の先行研究において、駐在員日本人家族は異なる文化の中で暮らす中で、家族機能や子どもの適応行動の問題についての困難に直面していると繰り返し報告されている。しかし、アメリカにおける駐在員日本人家族のレジリエンスについての研究の数は限られている。研究の多くは、母親の精神的健康やストレス、またそれらの因子と子どもの精神的健康との関連性に焦点を当てたものである。駐在日本人家族のレジリエンスと、子どもの適応行動との関連性に焦点を当てた研究は見当たらない。本研究は、ウォルシュ(2006)のファミィーレジリエンス(FRA)の9つのプロセスのコンセプトを適用し、アメリカに駐在する4‐8歳の子どもを持つ家族について調査した。本発表は特に母親によって使われたFRA、及びFRAと日常生活において受けるストレス(SLES),子育てに関するストレス、結婚満足度(KMSS)、母親としてのアイデンティティーの重要性、週末子どもと過ごす時間、及び子どもの適応行動(SDQ)との関連性について検討した。結果:母親は信念体系スコアが最も高かった。FRAは5つの要素:SDQ,KMSS,日常生活の中で受けるストレス、母親としてのアイデンティティーの重要性、週末子どもと過ごす時間との間に相関関係がみられた。KMSSと子育てに関するストレスが、FRAとSLESの関係性に影響を与えていることが分かった。問題解決能力とSDQの間に相関関係があった。
口頭発表 5月29日 食物
  • 松尾 将平, 三貝 咲紀, 森田 洋
    セッションID: 3E-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 焼酎醸造に用いられる麹菌は、クエン酸を多量に生産し、もろみ中の雑菌汚染を防止している。また、発酵段階では、デンプンを糖に分解する液化・糖化酵素が重要な役割を担っている。焼酎醸造においては麹菌が生産するα-アミラーゼは、酸性条件下で失活するため、pH 3以下でも作用する耐酸性α-アミラーゼ(Aα-A)が重要となる。本研究では焼酎麹菌のAα-A生産の増強とリン酸塩の影響について検討を行った。

    方法
    液体培養 Aspergillus kawachii  NBRC 4308の胞子懸濁液を基本液体培地である糊化米粉を炭素源とした改変SLS液体培地に接種し、30 ℃、200 rpmで72 h振とう培養を行った。
    固体培養 Aspergillus luchuensis NBRC 4314 の胞子懸濁液を蒸米に接種し、45 h培養を行った。
    Aα-A活性 1 minに培養液1 mLが1 μmolのCNPを遊離した時を1 単位(U)と定義し、基質1 gあたりの酵素活性に換算した。

    結果 牛乳を添加し、液体培養を行った結果、964 U/gと高いAα-A活性が得られた。高活性の要因を探索した結果、培地中のリン酸塩が最も酵素生産性に影響を与えていた。これより、リン酸塩を固体培地上に添加し、固体培養を行った結果、1.9 U/gと低いAα-A活性が得られたことから、リン酸塩の添加は液体培養のみにおいて有効であることが明らかとなった。
  • 竹藤 春香, 森田 洋
    セッションID: 3E-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的甘酒は酒粕または麹を原料とするものに大別でき後者を原料とした方が栄養価は一般的に高い。麹甘酒ではAspergillus oryzae (麹菌)が生産するグルコアミラーゼ(GA)及びα-アミラーゼ(α-A)の生産性が重要となる。両酵素の生産性を考えた時、麹菌のGA生産の低さが課題となる。本研究ではAspergillus 属菌とGA生産菌のRhizopus 属菌の混合培養による糖化酵素生産増強を目的とし、さらに混合麹により製造した甘酒の官能評価を行った。  
    方法 製麹. oryzaeNBRC5238とR. oryzaeNBRC4716の初発胞子数を制御し、原料米(夢つくし)に接種、培養した。α-A活性1minに試料1mLが1μmolのCNPを遊離時を1Uと定義した。GA活性デンプンから60minに1mgのグルコース生成時を1Uと定義した。 官能試験評価本大学の男女34名をパネルとして3種の甘酒を順位法を用いて行った。 
    結果混合麹のGA及びα-Aの最適生産条件は、両菌株の初発胞子数比を1:1で接種した時であった(GA:79U/g,培養70h、α-A:573U/g,培養95h)。続いて胞子数比1:1、培養スケール5kgとして製麹機による実験をした。GAは培養70hに34U/g、α-Aは培養95hに492U/gの活性を得た。官能評価は混合麹(培養45h)が香り、後味で従来の甘酒と比較し評価が高かった。
  • 伊藤 彰敏, 小野 尚之, 小野 奈津子, 山本 晃司
    セッションID: 3E-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 地域振興、地産地消の観点から、地域素材から分離した有用酵母を利用した食品開発が全国的に展開されている。当センターでは岡崎市の老舗企業及び岡崎市の要請を受け、愛知県の地域産業資源である「岡崎公園の五万石ふじ」の花から酵母Saccharomyces cerevisiaeを分離した。本研究では五万石ふじ酵母の清酒製造特性評価及び製品化事例を報告する。
    方法 遺伝的に異なる4種類の五万石ふじ酵母についてTTC染色性、アルコール生成能、キラー性及び糖資化性を評価した。α化米及び乾燥麹(精米歩合60%)を使用し、総米100gの清酒小仕込試験を行った。炭酸ガス減量測定及び製成酒の成分分析(国税庁所定分析法)を行った。
    結果 五万石ふじ酵母は、協会酵母とはTTC染色性が異なり、アルコール生成能が低かった。また、キラー性は認められなかった。五万石ふじ酵母はD-マルトースに対し高い資化性を有していた。五万石ふじ酵母もろみは、発酵後期に停滞する傾向を示した。五万石ふじ酵母酒は、低アルコールで甘口の傾向を示し、酸度がやや高く、酢酸イソアミルがエステル香気の主体であった。研究成果として、丸石醸造株式会社(岡崎市)において復刻米「萬歳」及び「五万石ふじ酵母GF1」を利用した岡崎ブランド純米大吟醸酒を製品化した(平成28年2月)。本研究は、平成27年度「岡崎市ものづくり支援補助金」の資金援助を受けて実施した。
  • 西田 淑男, 吉田 祐子, 小野 尚之, 伊藤 彰敏, 長幡 友実
    セッションID: 3E-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 みりんの製造はうるち米の米麹、掛け米のもち米、および焼酎またはアルコール溶液を原料として製造されている。製造方法の合理化等の研究や種々の改良が行われてきている。しかし、原料もち米が製造や品質に及ぼす影響や関連性がほとんど検討されていないため、製造工程が終了するまで製造されるみりんの品質の予測がつきにくい状況にある。我々は原料もち米と製造されたみりんの関係について明らかにしてきた。今回、麹歩合、アルコール歩合、糖化熟成温度がみりん品質への影響を調べることを目的とした。
    方法 同一の麹、蒸したもち米を使用し、麹比率を5段階、アルコール量を4段階に変化させたみりんを仕込み、仕込まれた各もろみを20℃、25℃、30℃、35℃で30 日間糖化熟成を行った。製造されたみりんの品質の成分(ボーメ度、アルコール濃度、たんぱく質含量、pH、3種類の煮切量など)の分析を行った。各成分間の関係及び仕込み・糖化熟成条件との関係について統計解析ソフトSPSSを用いて相関分析および重回帰分析を行った。
    結果 仕込み時の麹歩合、アルコール歩合、糖化熟成温度が製造されたみりんの品質成分の説明変数となることが示された。

    [文献]
    外国産もち米のみりん製造への利用試験 日本家政学会誌 56, 329-332, 2005
    原料もち米と製造みりんの関係 日本家政学会誌 59, 337-343, 2008
  • 長野 宏子, 宮本 仁美, 加藤 みゆき, 粕谷 志郎, 堀田 茂樹, 鈴木 徹
    セッションID: 3E-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 東南アジア諸国で主食として食されている発酵米麺は、これまでの研究結果から微生物の働きにより米タンパク質が分解され、低アレルゲン化されていた。また茹で操作により栄養成分が減少していた。日本米(古米等)の発酵米麺への可能性を日本の製麺技術を用い検討し、米の機能性やその調理の工夫を検討した。
    方法 (1)試料:ベトナム(ハノイ)の発酵米麺工場の「しとぎ」「米麺製品」と岐阜県産「米粉」を実験に供した。「しとぎ」及び「米粉」を日本の製麺法で麺の製造を行った。(2)発酵米麺から分離した微生物Bacillus subtilis SR等を米粉に作用させた。(3)各試料からタンパク質を抽出し、アミノ酸自動分析システムによる遊離アミノ酸の定量およびSDS電気泳動後に米アレルギー患者プール血清を用いて米アレルゲンタンパク質を検出した。米アレルギー患者血清を用いるため、岐阜大学倫理委員会にて許可を得ている。
    結果 (1)日本製麺法によるベトナムの「しとぎ」を用いた発酵米麺は、米粉や未発酵(米粉)米麺とは異なり、SDS泳動バンドとアレルゲンバンドが薄くなっていた。(2)米粉に微生物を添加し発酵させると、20.1KDa付近のアレルギー反応が薄くなっていた。さらに全遊離アミノ酸含量や、分岐鎖アミノ酸(バリン、リジン、イソロイシン)、旨味成分であるグルタミン酸など、大幅に増加していた。(3)べトナム発酵米麺と岐阜未発酵米麺と比べると、独特の風味が残る発酵米麺の評価が低かった。ドレッシング等の調理の工夫により食べやすいものになった。
  • 加藤 みゆき, 加藤 芳伸, 大森 正司
    セッションID: 3E-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 茶の種類は,緑茶・紅茶・ウーロン茶・後発酵茶などが存在している.これらの茶は,カメリア属の茶葉から製造されている.茶の製造には主に中国変種とアッサム変種が多く用いられている.これまでミャンマーにおける茶の製造実態を調査してきた.ミャンマーでは,シャン州が主要な茶の栽培地になっている.しかし,シャン州以外にもミャンマー全土で多くの茶の製造が見られた.そこで今回,ミャンマーにおける茶の品種と製造方法について報告する.

    方法 ミャンマーのシャン州,カチン州,カレン州,チン州等多くの茶の栽培地域で茶の製造方法・利用方法等聞き取り調査を行った.一方,茶を製造している茶葉の遺伝子解析を行った.遺伝子の解析方法は,前報1)で報告している方法を用いた.つまり茶葉からDNAを抽出し,マーカーとしてribulose
    1,5-bisphosphate carboxylase large-subunit(rbcL)を用いて解析する方法を行った.

    結果 ①ミャンマーにおける茶の製造方法は,飲用としてのラペチャウ,紅茶,後発酵茶のラペソウなどがあった.②緑茶の製造方法は,蒸す・ゆでる方法より炒る方法を用いている場所が多かった.これはラペチャウおよびラペソウや竹筒茶においても同様の傾向であった.③茶葉は多くがアッサム変種であったが,カチン州の一部では,中国変種があった.チャの仲間に属するタリエンシス等で茶を製造している地域もあった.さらにアッサム変種の変異体の茶葉が茶の製造にも使われていた.

    1)Katoh et al. Food Science and Technology Research,21,381-389(2015)
  • 岡本 由希, 内山 裕美子, 高橋 貴洋, 大森 正司, 松崎 敏, 南条 文雄, 原 征彦
    セッションID: 3E-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 フラクトオリゴ糖は難消化性多糖類として知られ,すでに消費者庁にも認められている特定保健用食品として市販されているものである.また,緑茶はそれ自体を飲用することにより,含まれているカテキンが中心的な役割を担い,さまざまな生理的・薬理的効果を示すことが報告されている.そこで本研究では,フラクトオリゴ糖とカテキンを同時に用いることで,ヒトの腸内環境等におよぼす影響を明らかにすることを目的として,ヒトへの飲用試験を行い,知見が得られたので報告する.

    方法 飲用試料は,フラクトオリゴ糖の特定保健用食品(規格基準型)の1日摂取目安量3~8gを考慮し,3区に調製した.すなわち,飲料1包当たり,フラクトオリゴ糖0~5g,カテキンはそれぞれ350mgとし,デキストリンを用いて粉末総量を13.0gに調製した.飲用パネルは,和洋女子大学のボランティア学生を中心に180名に依頼し,無作為に3群に分け,1か月間に渡って1日1包を約350mlの温湯に溶解し,その日のうちに自由に飲用することを依頼した.飲用試験の開始前および終了後に自覚症状に関するアンケートを実施した.なお,本試験は和洋女子大学ヒトを対象とする生物学的研究・疫学的研究に関する倫理委員会の承認を得て実施した(承認No.1518).

    結果 飲用開始前のアンケートから,普段の茶の飲用状況,皮膚症状や腸に関連する症状について確認をした.そして,飲用1か月後に実施したアンケートにおいては,ニキビ等の皮膚症状が改善したケース,主として便秘が改善されたケースが多く見られた.フラクトオリゴ糖と緑茶を併用した飲料を継続飲用することにより,ヒトの腸内環境が改善されたことが明らかとなった.
  • -リデュースクッキング推進への協力-(第2報)
    三神 彩子, 赤石 記子, 久松 裕子, 藤本 ひろみ, 長尾 慶子
    セッションID: 3E-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 東京家政大学のある北区では、ごみの減量・資源化の促進を図るため「東京都北区一般廃棄物処理基本計画」を策定している。本学では北区と協働し、ごみ減量啓発活動「リデュースクッキングの推進」の一環として、普段の調理で処分しがちな食材や使い切れず廃棄している食材を有効活用した[リデュースレシピ]を2013年度から開発してきた。今回も前報に引き続き、生ごみ減量の推進につなげるレシピを提案する。
    方法 本学栄養学科家庭科教職課程必修科目「食教育の研究」の平成27年度履修生66名を対象に、野菜を丸ごと使い切る(大きな野菜の使い切り、捨てがちな外葉、茎、皮などを使う)、残り野菜の活用(冷蔵庫の少量野菜の使い切りなど)を条件に、「ご飯に合うおかず」としてのレシピを募集した。その中から,ごみ削減への貢献度や味,量,作りやすさ,栄養バランスなどを加味し,区民へ普及しやすい料理10品を選択した。
    結果 [リデュースレシピ]開発では,廃棄率の高い野菜の捨てがちな外葉,茎,皮等の可食部分を〝すり下ろす、刻む″等の手法をとり入れたり、〝加熱方法や調味の工夫″により1食4人分調理に対し生ごみが約5~15g程度に抑えることができ、味、栄養バランスの良いレシピが完成した。北区ごみ組成調査では、可燃ごみの約42%が生ごみであり、さらにその85%が調理くずであることから、このレシピを活用することで、区内のごみ減量につながることが期待される。
  • 谷口 泉
    セッションID: 3E-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】愛知県津島市、又近隣市町村では古くから当地の川魚であるモロコを食す文化があり、家庭における郷土料理として、長く親しまれてきた。最近では、モロコがなかなか手に入らなくなっていることから、若者を中心に、モロコの認知度が低くなっている傾向にある。本プロジェクトは、「モロコ」の養殖、レシピ開発を行い地域創生事業に繋がることを目的とする。
    【方法・結果】若者向けのレシピ開発にあたり19歳~23歳58名を対象に、モロコについてのアンケート調査を行なった。また高齢者向けのレシピ開発においては、津島商工会議所モロコプロジェクト委員会が2010年に30~79歳71名を対象に行ったアンケート調査の結果から、今回は対象者別のコンセプトを立案した。高齢者向けには「素材の味を活かした親しみのある日常の和食」をコンセプトに、野沢菜の混ぜごはん、根菜のきんぴら、なすの揚げ浸し、あんかけ茶わん蒸しで計4品の馴染みのある和食とモロコを組合せたレシピを開発した。若者向けには、「シーン、料理の特徴を明確にした食べごたえのある料理」をコンセプトにサラダ巻き寿司、韓国風丼ぶり、彩り野菜のピクルス、レンコンのはさみ揚げで計4品を食べごたえのある副材料と組み合わせレシピを開発した。
  • 礒野 千晶
    セッションID: 3F-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】 牡蠣はミネラル類、タンパク質やグリコーゲンなどを多く含み、エネルギー源としても優れている二枚貝の一種である。牡蠣は養殖地域や季節によって成分含有量の差が大きいことはよく知られているが、これまで同じ瀬戸内海沿岸の異なる地域で養殖されたマガキ含有成分量の違いについて報告された研究例は見当たらない。本研究では、瀬戸内海のマガキ含有成分の季節変動および養殖地域による違いを解析し、瀬戸内海のマガキの特徴を明らかにすることを目的とした。
    【方法】 2012年11月から2013年6月ならびに、2013年11月から2014年6月までの各月に水揚げされた岡山県産、広島県産、兵庫県産のマガキを試料とした。それらの重量、水分、タンパク質、脂質、灰分、グリコーゲン、亜鉛および脂肪酸組成を測定した。
    【結果】 マガキの水分含量は、三県産共に11月から4月にかけて減少傾向であった。タンパク質および灰分含量は、採集期間を通じて三県産共に大きな変化は見られなかった。脂質含量は、三県産共に11月から4月にかけて減少傾向であった。グリコーゲンは、11月から2月または3月まで増加傾向であったが、5月から6月にかけて大きく減少した。養殖地域で比較すると広島県産は他二県産と比較してグリコーゲン含量が少ない傾向であった。亜鉛含量は、広島県産が他二県産に比べ多く含まれていた。脂肪酸組成は、11月から6月を通してEPA、DHA、パルミチン酸、オレイン酸の順に含有量が多いことが分かった。
  • 内山 裕美子, 高橋 貴洋, 築舘 香澄, 岡本 由希, 加藤 みゆき, 大森 正司
    セッションID: 3F-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 後発酵茶は,大きく3種に分類されている.好気的カビ発酵のプアール茶,嫌気的バクテリア発酵の阿波晩茶やミヤン,好気・嫌気2段階発酵茶の碁石茶・石鎚黒茶などが知られている.中でも石鎚黒茶は,数年前にその製造者が高齢のために製造をやめてしまったものであるが,今回,東京都西多摩郡檜原村で製造再現実験を試みた.本研究では,今回製造した再現石鎚黒茶の化学分析,味覚センサでの分析などを行い,再現石鎚黒茶の成分と風味において特徴的な知見が得られたので報告する.

    方法 試料には,再現石鎚黒茶,阿波晩茶,碁石茶,および愛媛県西条市で近年製造されている天狗黒茶を用いた.再現石鎚黒茶の製造方法は,従来製造されていた石鎚黒茶の方法に準拠して行った.なお,石鎚黒茶が製造されていた時,発酵過程から分離同定した微生物を培養し,再現石鎚黒茶製造工程に応用した.各茶葉3gを500mlの純水(100℃)で5分間沸騰を続けて得た浸出液を急冷し,味覚センサ測定サンプルとした.カテキン,カフェイン,アミノ酸は阿南,津志田らの方法に準じてHPLCにより分析を行った.

    結果 再現石鎚黒茶に含まれるカテキン類はEGCGやECGなど,ガレート型カテキン類が大きく減少しており,以前に分析を行った石鎚黒茶と同様の傾向であった.味覚センサによる測定の結果,そのプロファイルから,味わいのあるバランスを示しており,濃さ・ボディ感が強く,しっかりとした飲みごたえを感じることができるものであった.また,二次元散布図を作成したところ,再現石鎚黒茶のポジショニングは他の試料とは明らかに異なっていた.
  • 岩田 惠美子, 橋詰 奈々世, 榎本 俊樹, 小林 理恵
    セッションID: 3F-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的:アクリルアミドの摂取量が多いと発がんリスクが高まることがすでに報告されている。食品中のアミノ酸(アスパラギン)と糖類(還元糖)が、焼く、揚げるなどの高温加熱(120℃以上)時のメイラード反応過程においてアクリルアミドが生成するため、穀類を原材料とするパンや焼き菓子などにも高濃度に含まれることが危惧される。そこで本研究では、市販の強力粉3種を用いて調製した食パン試料とこれらをオーブントースターで数分間トーストした試料について、表面の色調の変化およびアクリルアミド生成量を比較した。
    方法:A社、B社製の市販強力粉3種を用いてホームベーカリーで食パンを焼成し、クラスト、クラムの色を色差計により測定した。2㎝厚にスライスし、1~3分間のトーストの後、クラスト、クラムの色を測定し、焼き色の変化(0分との差)としてL*、a*、b*値の平均値から⊿E*値を算出した。さらに、専用キット((株)森永生科学研究所製)によりアクリルアミドの生成量を測定した。
    結果:食パンのクラストとクラム、トーストによる焼き色の変化は試料間に有意な差が認められなかったがB社製強力粉で調製したトースト試料(クラム)の⊿E*値は他の2種の値よりすべての時間において低かった。また、B社製強力粉で調製したトースト試料のアクリルアミドの生成量は他の2種の強力粉のそれと比べて少なくなる傾向が認められた。
  • 安田 みどり, 久壽米木 綾子, 斎木 まど香, 児島 百合子
    セッションID: 3F-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】キクイモ(学名:Helianthus tuberosus)は、他のイモ類と異なり、デンプンをほとんど含まず、水溶性の多糖類であるイヌリンを多量に含有している。イヌリンは、難消化性でカロリーが低く、腸内細菌叢の改善、血糖値の上昇抑制等の機能性が明らかにされている。しかし、イヌリンは多糖類であるために分析が難しく、報告例も少ない。そこで、本研究では、佐賀県内で栽培されたキクイモに含まれるイヌリンの含有量を調べることを目的として、イヌリンの分析を試みた。

    【方法】試料として、佐賀県で栽培されたキクイモ(10、12月採取)を凍結乾燥したものを用いた。イヌリンは、フルクタン測定キット(日本バイオコン株式会社)を用いて測定した。すなわち、フルクタン以外の糖質を酵素にて単糖に分解して糖アルコールとして除去し、残ったフルクタンをフルクタナーゼにて分解し、フルクトース量として測定した。

    【結果】キクイモ中のイヌリンは、35~50 g/100g乾燥物(8~17 g/100g生)で、実と皮にあまり違いはみられなかった。赤色と白色の品種の違いについても有意差はみられなかった。しかし、同じ場所で10月と12月のキクイモと比較すると12月に採取した方が少なかった。土の中で貯蔵中にイヌリンから単糖や少糖へ分解が起こっていることも考えられることから、それらの分析結果についても合わせて報告する。
  • 飯島 陽子, 長尾 望美, 小池 理奈, 岩本 嗣
    セッションID: 3F-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】ゴボウは、日本で食される代表的な根菜の一つであり、独特な香りが特徴である。また近年、各種野菜のスプラウトは栄養価が高く人気が高まっているが、ゴボウスプラウトはまだほとんど市場に出回っておらず、その風味特性については不明である。そこで本研究では、ゴボウおよびゴボウスプラウトの香気特性に着目し、香気成分の分析、組成比較を行った。 【方法】ゴボウはスーパーで購入し、ゴボウスプラウトは種子を2週間既定条件で栽培した。それぞれのサンプルを液体窒素で凍結粉砕し、これを分析サンプルとした。そのヘッドスペースガスにおける香気成分をSPME法で捕集し、GC-MS分析を行った。また、GC-MSで検出された各成分についてはGC-においかぎを行い、香気特性を調べた。 【結果及び考察】ゴボウの香気成分のうち、2-methoxy-3-(1-methylpropyl)-pyrazineおよび2-methoxy-3-(2-methylpropyl)-pyrazineが最もゴボウ様香気に寄与していた。主成分分析によってゴボウとスプラウトの香気組成を比較したところ、スプラウトでは、pyrazine類のほかにc-s-3-hexenalなどの青葉の香りに関与する成分も検出され、スプラウトのフレッシュ香に関与するものと考えられた。
  • 三宅 紀子, 手塚 千妃呂
    セッションID: 3F-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 生活習慣病の予防にビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含む野菜の摂取の重要性は高まっている。本研究では、野菜を多く摂取するための一つの方法として携帯できる保温ポット(スープジャー)の利用を考えた。保温ポットは加熱調理の一部を保温で代替できることにより省エネルギーにもつながる一方、栄養素の損失も懸念されるため、ビタミンCに着目して検討を行った。
    方法 色紙切り(2㎝角)にした赤パプリカ50gを水300mlに投入し、3分30秒間加熱した。その後保温ポットに入れ、1、3、5時間保温し、パプリカとスープのビタミンC量をHPLC-UV法により分析した。また、スープへの調味料添加の影響を調べるために、0.8%食塩水、同じ食塩濃度になるように調製した醤油添加水の中でパプリカを加熱し、保温後、パプリカとスープのビタミンC を定量した。
    結果 パプリカのビタミンC量は保温1時間後には約2分の1に、保温5時間後には約3分の1に減少した。しかしながら、ビタミンCの減少分はスープで認められ、パプリカスープ全体では、ビタミンCは保温5時間後においてもほぼ保持されていることが明らかになった。また、パプリカのビタミンC量にはスープの調味料の影響は認められなかったが、スープのビタミンC 量は、水の試料と比較して食塩添加、醤油添加した試料の方が低くなる傾向が認められた。以上の結果から、保温ポットの活用は健康的で環境にも配慮した食生活につながる可能性が考えられた。
  • 岸田 恵津, 西窪 玲衣, 井奥 加奈
    セッションID: 3F-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 野菜を蒸すと甘く感じる傾向があり,また水溶性成分の減少が抑制されるなど嗜好的・栄養的メリットから蒸し加熱が注目されている。しかし,70℃などの低温蒸しにおける栄養成分の量的変動については必ずしも一定の見解が得られていない。そこで本研究では,キャベツを取り上げ,70℃を含めた蒸し温度がキャベツのアスコルビン酸(AA)量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
    方法 市販の寒玉キャベツを用い,外葉・中葉・内葉等の部位別に試料を調製して,100℃と70℃で蒸し加熱を行った。試料を10%メタリン酸溶液中で破砕し,抽出液を適宜希釈して分析に供した。ビタミンC量はポストカラムHPLCで, AAとデヒドロアスコルビン酸(DHAA)に分別定量した。
    結果 AA含有量は部位によって異なり,芯(50mg/100g)>外葉(41mg/100g)>葉脈・中葉・内葉(30-34mg/100g)であった。可食に適する時間(100℃10分,70℃20分)で中葉を加熱すると,AA残存率は100℃で約75%,70℃で約50%であった。中葉を用いてAA量の経時変化を調べると,100℃と70℃では加熱時間に伴ってAAは減少した。蒸し加熱時間を一定(10分)にして蒸し温度を変えた場合のAA残存率は100℃で82%,70℃で58%,50℃で93%であり,70℃での減少量が最も大きかった。電子レンジで30秒処理した後に70℃で蒸すと,AAの減少が抑制された。したがって,キャベツにおいて70℃蒸しが100℃よりもAA減少量が多い要因として,AA酸化酵素が関与している可能性が示唆された。
  • 山本 淳子, 森山 三千江
    セッションID: 3F-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 嚥下困難者の多くは、刻み食やドロドロのミキサー食などの食事が主流である。しかし、食欲の増進には、視覚的な要因も大きい。そこで開発されたのが、凍結含浸法である。特に、硬い組織の食品には、嚥下困難者にとり、有効な調理法と考えられるが、その栄養価についての詳細なデータは少ない。そこで、ミネラル、ビタミンC(VC)の測定を行い、凍結含浸法を用いた根菜類の栄養成分を明らかにすることを目的とした。

    方法 にんじん、ごぼう、れんこん、大根を試料として、凍結含浸法を用い、生との成分比較を行った。総VC量はHPLCポストカラム誘導体法、ミネラル量はイオンクロマトグラフ法で測定した。

    結果 凍結含浸法を用いた根菜類のミネラル量は、にんじん、ごぼうでは、凍結含浸することで、組織が柔らかくなり、生に比べ多く抽出された。しかし、れんこん、大根では、カリウム、カルシウムが生に比べ減少した。れんこん、大根は、にんじん、ごぼうに比べ、組織が柔らかく、凍結含浸操作中に溶出しやすいことが考えられる。VC量については、にんじん、ごぼうでは、生に比べ酸化型のアスコルビン酸が占めるものの、総VC量の減少は見られなかった。しかし、れんこん、大根では、減少した。

    以上のことから、硬い組織のにんじん、ごぼうでは、凍結含浸法を行っても、栄養価が高い状態を維持できるが、組織の比較的軟らかいれんこん、大根においては、大きく減少することが示唆された。
  • 清水 祐美, 岡田 実紀, 平光 正典, 井上 孝司
    セッションID: 3F-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:カルシウム(Ca)の摂取は骨粗鬆症予防の観点から重要であるが、食品中Caの体内吸収率は低いため、吸収率を高めることも重要である。レモン果汁に含まれるクエン酸は、キレート作用により食品中Caを可溶化し、吸収率を高めると考えられる。本研究ではレモン果汁が食品中Caの可溶化及び物性、官能に与える影響を検討した。
    方法:1)鶏肉及びしらすを調味液に浸漬させ、上澄み溶液中のCa量をMXB法で測定した。鶏肉では、蒸留水、各4%のクエン酸、リンゴ酸、酢酸、4%クエン酸+0.2%リンゴ酸、レモン果汁(4%クエン酸+0.2%リンゴ酸)を、しらすでは、蒸留水、各3.8%のクエン酸、酢酸、レモン果汁(3.8%クエン酸)、穀物酢(3.8%酢酸)を使用した。2)鶏肉を調味液に浸漬させ、加熱調理後、破断応力を測定した。調味液は蒸留水、レモン果汁溶液(2%、4%クエン酸)、穀物酢溶液(2%、4%酢酸)を使用した。また、32~55歳の11名にて官能評価を行った。
    結果:1)鶏肉、しらすとも、いずれの群もコントロール(蒸留水)群より可溶化率が高く、レモンに含まれるクエン酸とリンゴ酸がCa可溶化に寄与していると考えられた。また、レモン果汁は穀物酢よりCaを可溶化しやすいことが示唆された。2)レモン果汁、穀物酢に浸漬すると、破断応力が小さくなり、鶏肉が軟化した。また、しっとり感、さっぱり感が増加し、肉臭さを低減することも明らかとなった。
  • 久保 加織, 長 朔男, 小寺 真実, 森 太郎
    セッションID: 3F-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】伝統野菜は、地域の気候、風土などに適した固定選抜が繰り返されながら受け継がれ、地域の生活文化を担ってきた。しかし、栽培や輸送における手間やコスト、食生活の変化などにより、継承が危ぶまれているものも多い。本研究では、伝統野菜の継承のためにその特性を整理することを目的とし、滋賀県在来カブと江戸時代に滋賀県から伝播したとされている県外の在来カブを栽培して、形態および官能評価を実施した。
    【方法】滋賀県在来カブ12品種と他県種3品種の種子を生産者、あるいは種苗店、滋賀県農業技術振興センターから分譲を受け、滋賀大学内で栽培した。形態評価は、農業生物資源研究所特性評価マニュアルに準じて実施した。官能評価は、生カブと甘酢漬カブについて、滋賀大学学生と教職員43名をパネルとし、5段階評点法で実施した。
    【結果】在来カブの形、大きさ、色は変化に富み、他県種もその元とされる在来カブと大きく異なっていたが、これは、それぞれが地域で独自に固定選抜されてきたためと考えられる。官能評価では、生カブの総合評価と味の好ましさ、あるいは香りの好ましさとの間に強い相関関係がみられ、辛味や渋味あるいは苦味が強くなく、甘みの強いカブが好まれる傾向があった。一方、甘酢漬カブでは、総合評価と味の好ましさ、あるいは色の好ましさとの間に高い相関がみられ、パネルは、生カブと甘酢漬カブで異なった基準を持って評価した可能性が示唆された。

  • 大学生とその親の比較
    米田 千恵, 栗山 真央
    セッションID: 3F-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 野菜は出盛り期が一般に旬とされるが,近年,旬が不明瞭となっている.本研究では,旬の野菜に関する意識が大学生とその親で異なるのか調べ,四季でイメージされる料理に世代間の違いがみられるのかについても明らかにすることを目的とした.
    方法 質問紙法によるアンケート調査により生活形態,食生活の状況,旬の意識等について選択式回答をさせ,四季からイメージされる野菜および料理を3つずつ記述させた.
    結果 大学生176名,大学生の親40名から有効回答を得た.1日に食べる野菜の種類は大学生では1~3種類,親は4~6種類という回答が最も多かった.日常の献立を考える際に旬・季節感を考慮している割合は,親で90%以上であったが,大学生は48%であった.野菜栽培の周年化について賛成した割合は学生92%,親は73%であった.四季でイメージされる野菜と料理の回答数は,親は野菜,料理ともに平均値が3に極めて近く,季節間の差はほとんどみられなかった.一方,大学生の平均回答数は親より低く,野菜では夏(2.65),春(2.11),秋(1.97),冬(1.80)となり,料理では夏(2.10),冬(1.93),秋(1.59),春(1.50)であった.大学生では季節間にも有意差がみられ,特に夏以外の野菜,料理への意識が低かった.一方で親は旬の野菜から連想される料理が多様であり,親のほうが和食の喫食頻度が高かったことも一因と考えられた.
  • 佐藤 真実
    セッションID: 3F-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 日本の食生活が洋風化し、食料自給率、食品群別摂取量、家計支出は年々変化している。本研究では、消費に関わる食品や料理の嗜好度について性別、年齢、世帯構成別に違いを明らかにする。また1975年からの食嗜好の変遷について明らかにする。  方法 平成26年7月より県内の10歳代から80歳代までの男女1650名を対象にアンケート調査を行った(有効回答率89.1%)。調査項目は、119食品の料理や食品の嗜好度と摂取頻度、属性(性別、年齢、世帯構成)などについてである。嗜好度は9段階(1:もっとも嫌い~9:もっとも好き)の尺度を用いた。  結果 全体では、ごはん(7.47)、焼肉(7.27)、味噌汁(7.25)、みかん(7.23)などの嗜好度が高く、これらの料理や食品は性別、年齢別、世帯構成別で有意差が認められなかった。性別では、男性がラーメン(7.31)、刺身(7.31)、そば(7.07)、焼き魚(7.03)などの麺類、肉・魚料理で嗜好度が高かった。年齢別では、若年層の嗜好度が全体的に高く、とくにアイスクリーム(7.47)、鶏のから揚げ(7.44)などで嗜好度が高かった。年齢が高くなるほど焼き魚、野菜煮物、コーヒーなどの嗜好度が高くなった。世帯構成別では、一人暮らしの嗜好度が全体的に低かった(いずれも有意水準5%以下)。1975年と比較して、肉料理や魚料理の嗜好度はやや上昇、果物、嗜好飲料の嗜好度は減少傾向であった。平均嗜好度はどれも「少し好き」な状況であり、かつてのような料理や食品ごとの嗜好度の差は小さかった。  
  • 岸本(重信) 妙子, 平松 智子, 新田 陽子, 田淵 真愉美, 我如古 菜月, 川上 貴代, 久保田 恵, 井上 里加子, 芦内 菜月, ...
    セッションID: 3F-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 グローバル化が急速に進む日本で、宗教上の文化の違いや食の禁忌に対応できるように、異文化理解を進めることが重要となっている。そこで、大学生を対象として、ハラール食対応の異文化理解のために、グループワークを用いた食育教材を開発し、またハラール食の喫食による比較官能評価を行って、その効果を検討した。 方法 Ⅰ.ハラール食に関する食育教材及びその中で使用する2献立によるワークシートを作成し、大学の栄養学科2年次生42名を対象として2015年10月に食育授業を実施し、授業後アンケートを自己記入式で行った(回収率・有効回答率ともに100%)。Ⅱ.集団給食施設での大量調理を想定した2種類のレシピのハラール対応食を実際に喫食してもらい、普通食との比較官能評価を栄養学科4年次生30名を対象として同年11月に実施した。得られたデータは統計ソフトSPSS(22.0)を用いて分析を行った。 結果 ワークシートによるハラール食対応に関して食材ではなく調味料に不正解が多かった。授業後アンケートでは醤油・味噌についての正解率が81%のみであった。地域的な事情等からムスリムとかかわる機会が乏しく、ハラール食に関する予備知識や異文化理解について学ぶ機会があまりなかった場合でも、グループワークを用いたハラール食に関する食育授業を行うことや実際の喫食によって、ハラール食への理解に効果があり、異文化理解が進むことが示された。
  • 加藤 美香子, 高田 忠助
    セッションID: 3F-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    現在,幼児教育現場において食育への取り組みに関心が持たれていることは広く知られるところである.実際に,食育は教育内容の主柱の一つになっている.これは内閣府による『第2次食育推進基本計画』において,「特に人格形成期にある子どもの食育は重要である」と記載されていることからも明らかである.

    しかし同時に,重視されるべきと謳われている食育の実践方法,内容については明確な柱が存在しない.現在の食育の主たる実践方法,内容は“栽培して食べる”“「いただきます」を言うことで感謝の気持ちを育てる”などであり,個々の活動の目的や現在の食育実践から育つ力というものが具体的に見えない.

    そこで本研究では,学校法人愛光学園 幼保連携型認定こども園 三和幼稚園・キンダーガルテンに在籍する0~5才の乳幼児164名を対象に,食育について独自のカリキュラム構成および教育実践,検討を行なった.

    これに伴いまず,乳幼児期の食育のねらいを5本の柱に集約し,実践研究を行う上で「発達食育学」として独自の定義づけを行なった.

    (1)食心育:食への感謝・生命への感謝

    (2)食楽育:食の楽しさや食べ物への興味関心

    (3)食共育:食を通じた、人とのつながり

    (4)食律育:食を通じてルールを学ぶ

    (5)食体育:健康な体作り

    また客観的評価の指標として,保護者からのアンケート回答結果を使用した.これにより,幼児教育現場からの実践的食育カリキュラム提案ができる可能性があることが示唆された.
  • ―共食と食生活QOLに着目して―
    江崎 由里香
    セッションID: 3F-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 中学生は心身ともに成長が著しい第2発育急進期であり,この時期の食生活は極めて重要である.特に,精神的な発達という観点からは,食事の環境も含めた食生活QOL (食生活に対する楽しさや満足度) が子どもの心身の健康に関連することが報告されており (表, 2009),食生活QOLを高めることは中学生にとって重要な課題である.そこで本研究では,共食と食生活QOLに着目し,中学生の食生活の実態を明らかにすることを目的とした.
    方法 岐阜県と神奈川県の中学生を対象に1週間の食生活ダイアリー調査を実施し,朝食と夕食に関する回答を235名から得た.本調査は,食生活 (何を,いつ,誰と,どのように (手伝い,会話を含む)) と,食生活QOL (會退他, 2012) を改変した6項目を用いて行った.
    結果および考察 共食人数に関しては,月~金曜日の平均人数 (自分以外) と比較して,日曜日の朝食が0.15ポイント,日曜日の夕食が0.53ポイント高い値を示した.会話に関しては,月~金曜日の平均得点と比較して,日曜日の朝食が0.25ポイント,土曜日と日曜日の夕食が0.21ポイント高い値を示した.食生活QOLに関しては,月~金曜日の平均得点と比較して,日曜日の朝食が0.61ポイント,土曜日の夕食が0.49ポイント高い値を示した.以上の結果より,家族と一緒に食事をする機会が増える日曜日の朝食と土・日曜日の夕食は,食卓での会話が弾み,食生活QOLが高まることから,中学生にとって重要な役割を果たすと考えられる.
  • 磯部 由香, 平島 円, 中山 あい
    セッションID: 3F-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現在、各々のライフステージに応じた食育の推進が求められている。幼児における食育では、子どもに加え、子どもの食生活を管理する保護者への働きかけが必要である。この活動の一例として親子料理教室があげられるが、単発のイベントとして実施されている取組が多い。そこで、地域のコミュニティを活用して継続的に食育プログラムを実践し、その有効性を検証した。
    方法 廃校後の小学校を活用した子ども向け放課後プログラムの一環として親子料理教室を実施した。平成27年5月~11月に計4回開催し、計17組の親子が参加した。各回終了後におよび実践前後にアンケート調査を行い、料理教室に対する評価を得るとともに、家庭での子どもの調理参加の実態と保護者の意識についての変容を分析した。
    結果 今回取り上げた調理の献立に関して、高い評価が得られた。また、「子どもが調理を楽しんでいるか」「家でも献立を作りたそうか」という質問に対しては、参加者の8割以上の人が「とてもそう思う」と回答していた。自由記述から保護者が子どもとの調理を楽しみ、一緒に調理することに意欲的になっている様子が伺えた。実践後の家庭での調理参加の回数は増加傾向にあり、子どもの調理への興味関心、手伝いの頻度および調理参加への積極性も高まっていることから、本プログラムの食育としての有効性が証明された。
  • 平島 円, 堀 光代, 磯部 由香
    セッションID: 3F-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 大学や専門学校へ入学した当初の学生は調理が好きだが,調理をする機会が少ない.そのため,調理への意識や調理技術の低い学生の多いことがこれまでの調査でわかっている.そこで本研究では,大学や専門学校の入学時と卒業時の学生の調理に対する意識と調理技術について調べ,在学中の変化を比較検討した.
    方法 2007~2011年の4月に大学,短期大学,専門学校に入学した1,319人(18~20歳)と2009~2015年の3月に卒業した1,116人(19~24歳)を対象とし,調理の意識と技術に関するアンケート調査を行った.有意差検定にはχ2検定を用いた.
    結果 入学時と卒業時の調理頻度を比べると,毎日調理する学生は入学時のほうが多かったが,週3~5回または週1~2回調理する学生は卒業時のほうが多く,ほとんど調理しない学生は卒業時のほうが少なかった(p<0.01).すなわち,全体的には在学中に調理頻度は高くなるとわかった.調理を好きな学生の数は卒業時に減少した(p<0.05)が,得意料理を持つ学生は増えた(p<0.05).しかし,よく作る料理や得意料理の種類に変化はなかった.また,「米を炊く」「だしをとる」「リンゴの皮をむく」「ほうれん草をゆでる」「魚の下処理をする」といった調理操作はいずれも卒業時に「できる」ようになり(すべてp<0.01),在学中に基礎的な調理技術が習得されたとわかった.
  • 原 知子
    セッションID: 3F-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 生活時間の管理が保護者を離れて自由になりやすい短期大学生においての食生活の状況および意識を把握するため、食事記録、理想の食事等についてのアンケートを実施した。 方法 滋賀短期大学Ⅱ年生を対象に、①自分の理想の1日の食事 ②6日間の実際の食事記録 について、アンケート調査を実施した。食事内容については、食事バランスガイドに基づくSV数に換算し、グループごとの特徴を比較するために、目標SV数を中心とした点数に換算した。実施期は2015年5月~9月とした。 結果 対象学生について、理想の食事は男子学生では主菜が多い以外、食事バランスガイドの目安に達していず、女子学生では主食、副菜、主菜の目標SV数はほぼ目安にちかいものの、男女ともに乳・乳製品、果物についての必要量の把握が少ない傾向にあった。6日間の食事記録における摂取SV数は、バランスガイドの区分で主食、主菜は充足度に達しているが特に副菜を始めとして、果物、乳・乳製品で充足度が低く、理想と考えているよりも優位に少なかった。理想の食事に反映されている知識と、実践レベルに一定の相関があれば、知識レベルを上げることが教育効果を上げることにつながるという証左となるが、理想の食事と記録による食事内容からは、摂取基準を把握していてもそれが実際の食事に反映するとは限らないと考えられ、食事摂取について実践的な力を養成する事の必要性が痛感された。
  • 熊谷 美智世, 吉田 文香, 佐藤 瑶子, 香西 みどり
    セッションID: 3G-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 圧力鍋は消火後の鍋内圧力が常圧に戻るまで蓋を開けられないため、余熱調理が行われる。これまで加熱時間や調理成績に関する研究はあるが、余熱に関する研究は少ない。そこで本研究では、圧力鍋の余熱効果を根菜類試料の温度と軟化率から検討した。  
    方法 同一圧力鍋(4L)に水(1.2~2.5kg)を入れて常圧、低加圧(約50kPa/bp約113℃)、高加圧(約80kPa/bp約118℃)で加熱して沸騰直後に消火し、鍋内が70℃までの水温を測定した。水1.2kgに4cm角ダイコン200gを入れて各圧力で加熱し(沸騰継続0~10分)、加熱中及び消火後の水温、試料の中心温度を測定した。中心温度から軟化の速度定数を用いて軟化率を算出した。  
    結果 消火後100~70℃の間の水温下降速度に圧力による差はなかった。野菜の軟化に必要な80℃以上の時間は、水量1.2kgでは常圧約35分、低加圧約44分、高加圧約48分であり、各圧力とも水量が多いほど保持時間は長かった。ダイコンを加熱し沸騰直後に消火した際の常圧、低加圧、高加圧を比べると、消火後の最大中心温度は各々85.1、93.8、97.6℃、軟化率は消火時でいずれも0.00、余熱利用後は各々0.18、0.63、0.82であった。ダイコンの最適軟化率は0.77であり、常圧では生に近く高加圧では十分に軟化した。消火後の軟化率は加圧程度に応じた余熱効果の差を表した。  
  • 大田原 美保, 後藤 詩絵, 香西 みどり
    セッションID: 3G-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 玄米貯蔵から得られた白米と白米貯蔵による古米の差異を、米と飯の成分、物性および嗜好性の面から明らかにし、これらの飯の老化についても検討することを目的とした。
    方法 コシヒカリの玄米および白米を密閉容器に入れ、37℃/75%RH条件下で0、30、80日貯蔵し、玄米は90%に搗精して測定用試料とした。生米は、吸水率、遊離脂肪酸度および糊化特性(DSC)、飯は官能評価、物性(テクスチュロメータ)、色(色差計)の測定を行った。生米と飯の全糖、還元糖、遊離アミノ酸量を測定し、米粉および澱粉の組織構造はSEMで観察した。
    結果 玄米貯蔵と白米貯蔵の比較では、白米貯蔵は生米の遊離脂肪酸度の増加が著しく、飯のb*値は高く黄色みが強かった。飯の物性は玄米と白米貯蔵に有意差はなく、30日貯蔵は0日に近かった。80日貯蔵はいずれも硬さの増加と粘りの減少が顕著であり、4℃冷蔵による物性変化では共に80日貯蔵で粘りが急速に低下した。生米の還元糖、遊離アミノ酸量は貯蔵により増加し玄米貯蔵の方が顕著だった。飯の糖量はいずれも0日より多いが、炊飯による増加量は玄米貯蔵米で低かった。Tp(DSC)は米粉では貯蔵により上昇したが米澱粉では差がわずかとなり、組織観察結果からも古米の飯の物性や成分には澱粉と他成分の相互作用の関与が示唆された。浸漬をせず加水比を1.9に増やすと飯の食味が改善された。
  • 石川 明希奈, 磯邊 瞳, 柴 岳郎, 小林 理恵
    セッションID: 3G-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    [目的]ソバ粉の加工利用法の拡大を目指して,空洞膨化調理であるシューの調製を試みた。小麦粉シューでは糊化度を高めることで膨化率が増すと報告されていることから,ソバデンプンの糊化後に再製粉したα化粉を,ソバ粉シュー調製時に添加する効果を検討した。
    [方法]ソバ全層粉(以降,全層粉)または,これをα化粉で10,30%および100%代替した粉に80~150gの卵液をそれぞれ添加してシューペーストを調製した。これを190℃のオーブンで15分,続いて180℃で5分間焼成した。全層粉の基礎特性として,アミログラフおよび示差走査熱分析により糊化温度を測定し,ファリノグラフにより吸水特性を調べた。各シューペーストの粘度および降伏応力,焼成シューの各部位の大きさと共に,空洞面積,比容積および重量減少率を測定した。対照は薄力小麦粉(以降,小麦粉)シューとした。
    [結果]全層粉の糊化温度は小麦粉より高く,糊化進行遅延度が大であった。また,一定の硬さにするための加水量は小麦粉より多かった。比較的良好に膨化した全層粉シュー生地は小麦粉シューペーストより卵液添加量が多く,各α化粉添加ペーストのそれは更に多かった。α化粉の添加によりペーストの粘度および降伏応力は増し,シュー空洞面積の有意な増加は30%添加から認められた。α化粉100%は全層粉より重量減少率,比容積および空洞面積が有意に大となったが,小麦粉シューのそれらには劣った。
  • 松本 美鈴
    セッションID: 3G-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 塩麹により牛肉が軟化し,うま味成分が増加することは,三橋等により既に報告されている.本研究では,塩麹を塗布した牛もも肉の保存条件および加熱条件などを変えて,塩麹による肉の軟化効果を検討した.

    方法 <10℃保存>牛もも肉に肉重量の10%塩麹(株式会社河野源一商店)または塩水(食塩濃度12%)を塗布し,それぞれ10℃で1,3および24時間保存し,沸騰水中で肉の中心温度が80℃に達するまで加熱後,冷却し試料とした.<25℃保存>牛もも肉に塩麹,塩水またはpH5に調整した塩麹を塗布し,25℃で1時間保存し,沸騰水中または低温(80℃水中で)加熱後,冷却し試料とした.<測定項目>加熱後の重量保持率,レオメーター(山電)を用いたテクスチャー試験によるかたさ,歪率,凝集性などを測定した.

    結果 <10℃保存>塩麹添加によりいずれの試料もかたさ変化率が無添加に比べて有意に小さく,やわらかくなった.また,保存時間が長いほど軟化しやすい傾向がみられた.一方,塩水添加試料では物性値に有意差がみられなかった.<25℃保存>沸騰水中加熱試料では,テクスチャー測定値に有意差がみられなかった.しかし,低温加熱試料においては,pH5調整塩麹試料は無添加および塩麹より凝集性が小さく,肉が崩れやすくなった.以上の結果より,塩麹による牛もも肉の軟化には,保存温度は25℃より10℃が好ましく,低温加熱が有効であることが分かった.
  • 綾部 園子, 阿部 雅子, 小澤 好夫
    セッションID: 3G-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】カリンとマルメロ果実はともに豊かな芳香を持つが、果肉が硬く、強い渋みがあるため、生食ではなく、はちみつ漬けやリキュール、またエキス分をジャムとして利用されている。我々は、カリンとカリンに類似しているマルメロに関して、抽出液中のポリフェノールおよびペクチン等に着目し、ジャムを調製して色や物性との関係について検討した。
    【方法】群馬県産カリンと山梨県産マルメロは、果実の芯部分を除去して薄切りし、水さらし後、水を加えて30分間加熱した(抽出液)。抽出液に70%濃度になるようエタノールを加えてペクチンを除去し、樹脂(アーバンライトXAD-4およびXAD-7)で、吸着部と非吸着部に分離した。抽出液、樹脂吸着部および非吸着部に果実に対し30%のスクロースを添加して加熱し糖濃度55%のジャムを調製し、ポリフェノール量、色(色差計、分光光度計)を測定した。一方、ペクチンを分画して定量し、カリン・マルメロの抽出液、ペクチン除去液および水と、各ペクチンを組み合わせて、ジャムを調製し、色と物性を測定した。
    【結果】抽出液の分離はアンバーライトXAD-7を用いた方が、樹脂吸着部のポリフェノール量が多く赤色の発色が顕著であった。ペクチンについてはマルメロの方が総量が多く、その大部分は水溶性画分であった。マルメロジャムはカリンジャムに比べてかたさ応力が大きく、水溶性ペクチン量がジャムのかたさに影響することが示唆された。
  • 野村 希代子, 戸松 美紀子, 杉山 寿美
    セッションID: 3G-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 生活習慣病の増加により塩分量の減少が求められ,具体的な方法として薬味の利用等が挙げられている.我々は,これまでに,薬味(吸い口)として,レモン外皮を含む汁物の塩味の嗜好性について検討し,低濃度の汁が許容されることなどを明らかにしている1.本研究では,ねぎを含む汁物の塩味の嗜好性について,飯を組み合わせた条件で検討した.
    方法 官能評価は,塩分濃度0.4-0.9%のねぎを含むみそ汁あるいはすまし汁(各6種類,提供温度60℃)を試料とし,0.4%から順に高濃度へ評価させた.さらに,みそ汁に白飯,すまし汁に桜飯(0.6%塩分)を組み合わせ,汁物として最も好ましい塩分濃度と,汁物として許容できる塩分濃度(複数回答)を選択させた.なお,飯と汁の食べる順序に汁の評価が影響されることから「飯の次に汁」の評価と「汁の次に飯」の評価を行った.
    結果 みそ汁では,各塩分濃度のねぎを含む汁を許容できるとした者は,ねぎを含まない汁と比較して,高濃度の汁で多く,白飯と組み合わせた「汁の次に飯」の評価でも,同様の傾向であった.すまし汁では,各塩分濃度のねぎを含む汁を許容できるとした者は,ねぎを含まない汁と比較して,ねぎを含むことによる影響は小さかった.一方,桜飯と組み合わせた「汁の次に飯」の評価では,低濃度の汁で許容できる者が多かった.ねぎを含むみそ汁に白飯,ねぎを含むすまし汁に桜飯を組み合わせた「飯の次に汁」の評価では,ねぎを含むことによる影響は小さかった.このことから,吸い口の種類により,汁物の塩味の嗜好性への影響が異なることが示された.
     1)角田他;日本調理科学会平成26年度大会研究発表要旨集p.32(2014)
  • 真部 真里子, 今井 萌乃, 川北 麻央, 田中 想乃, 西村 公雄
    セッションID: 3G-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 おいしく減塩するために「だし」を効かして料理することは公知であるが、我々は、鰹だしのうま味以外の呈味物質に塩味増強効果があり、鰹だしのにおいとうま味には、塩味が弱くてもおいしく感じるおいしさ向上効果があることを官能評価によって明らかにした。しかし、塩味増強効果を示す呈味物質の同定には至っていない。その一因には、鰹だし中の呈味物質には、不快感を伴う味質のものがあり、被験者の負担が大きいことが挙げられる。そこで、鰹だし中の主要な呈味成分、ヒスチジン(His)、乳酸、カルノシン(Car)の塩味増強効果を検討するために、各試料溶液にグルタミン酸ナトリウム(MSG)を加え、さらに後鼻腔経由で鰹だしのにおいを付与した条件での官能評価を実施した。
    方法 His、乳酸、Carに0.12%MSGを加えた溶液について、塩分濃度を0.62~1.00%の5段階に調整後、それぞれ0.80%NaCl溶液と組にした。被験者(20歳代女性)には、自作の装置を用いて鰹だしのにおいを直接口腔内に付与しながら各組提供し、より塩味が強いものを回答してもらった。
    結果 プロビット法で解析した結果、0.12%MSG溶液は、塩味強度に影響を及ぼさなかったが、Hisや乳酸を加えた場合には、塩味増強傾向が認められた。この傾向は、Hisの方が乳酸より顕著であった。以上の結果から、鰹だしの塩味増強効果はHisと乳酸に起因すると考えられる。
    *本研究は、2015年度同志社女子大学研究助成金により行った。
  • 安藤 真美, 畠中 芳郎, 北尾 悟
    セッションID: 3G-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食の多様化に伴い、卵や野菜類など従来冷凍保存に適さないとされていた食材の冷凍品を使った調理例が多く紹介されている。今回、野菜類を冷凍した場合の物性の変化を解析し、高齢者向け食品としての応用性を探った。あわせてえん下困難者用食品許可基準適合性についても検討した。
    【方法】試料には北海道産のニンジンおよびダイコンを用いた。1㎝幅のいちょう切りにし、未凍結および-20℃で一晩凍結させた試料について、100℃での茹で時間(ニンジン:1,3,5分 ダイコン:10,20,30分)と塩分濃度(0,0.75,1.5%)の条件を変化させ試料を調製した。測定項目は重量変化、破断応力・破断変形(CREEPMETER RE2-33005S YAMADEN)、塩分濃度(デジタル塩分計ES-421TANITA)、顕微鏡観察(TEM,SEM)、官能検査(評点法)である。また急速冷凍の影響についてもあわせて検討した。
    【結果】どの条件においても冷凍後茹でた場合、生のまま茹でた場合よりも破断応力が約3分の1となった。顕微鏡観察の結果より、細胞壁に亀裂が生じることが一因と推察された。また、冷凍後3分茹でた場合、破断応力は未凍結で5分茹でた場合と同等であるなど、調理時間の短縮が可能と考えられた。一方破断変形は約2倍となり、官能検査より、冷凍後に茹でた場合、食感が悪いという結果となった。急速冷凍した場合は、破断変形が低くなったことから、食感を改善させることが可能と推察された。さらに、試料の塩分濃度の結果から、冷凍後茹でた方が、生のまま茹でるよりも味がしみ込み易くなることが示唆された。
口頭発表 5月29日 被服
  • ―茶色タマネギとの比較から―
    安川 あけみ
    セッションID: 3G-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 身近な食材のタマネギの廃棄部分である外皮を用いて,絹布の染色をおこなった。紫色ならびに茶色のタマネギを染材として用い,染色液の濃度と温度,浸漬時間,媒染液の種類と濃度を変えて染色し,得られた布の色調を比較,検討した。
    方法 タマネギ外皮とその20倍の重量の水を混合し,穏やかな沸騰状態を維持し,液量が約4/5になるまで加熱して色素を抽出した。染色液10 cm3に5×5 cm2の絹布(JSA,JIS染色堅牢度試験用添付白布,14目付,平面重54.6 g/m2,厚さ0.10 mm)を浸漬(浴比1:80)して染色した。濃度を20~100%,温度を5~100℃,時間を15 min~24 h,媒染剤をMg,Al,Ca,Fe,Cu,Tiの6種類,媒染液濃度を5~200mmol/dm3と変えて染色した。染色布は分光式色彩計で色差を測定し,耐光堅牢度および洗濯堅牢度を調べた。
    結果 紫タマネギ抽出液には,酸性で赤色を呈するアントシアン系色素とケルセチンなど黄色色素が含まれると考えられた。染色温度を変えた結果,紫タマネギを用いて5~25℃で染色した場合は赤みの強い染色布が得られたが,これは低温の染色では黄色色素の染着が抑えられる一方,赤色色素の染着は抑えられず,赤みが強く出るものと考えられる。80~100℃では茶色タマネギに近い褐色に染まった。6種類の金属を用いた媒染染色では様々な色調の染色布が得られたが,紫タマネギの方が色のバリエーションが多かった。染色液濃度や時間を変えた結果について,また,耐光ならびに洗濯堅牢度試験の結果についても報告する。
  • 杉本 奈那, 鈴木 結花, 岩﨑 潤子, 小林 泰子
    セッションID: 3G-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 藍染め布は、古くから衣服に使用され、消臭、細菌増殖抑制、虫除け等の効果もあるという。本研究では、衣服として必要な消費性能から、数種の物性と染色堅ろう性、消臭性、抗菌性を選び、検討を行った。
    【実験方法】 試料布は綿と麻ブロード、染料はインド藍液(田中直染料店)を用い、1回染めと5回染めにより、染色布を調製した。JIS法に基づき、物性は、引張り強度と引裂き強度試験、染色堅ろう度は、摩擦と耐光試験、その他機能性は、検知管法による消臭性とフードスタンプ法による抗菌性試験を行った。
    【結果と考察】 引裂き強度は、綿では1回染め布で20%、5回染め布で50%、麻では約2~3倍に増加した。摩擦堅ろう度は、5回染めにより乾燥試験のたて方向で4級から3級に減少した。湿潤試験では、1回染めと5回染めで変化はなく、3級だった。濃色化により色落ちが目立った。耐光試験では、濃色化により堅ろう性は増加した。アンモニアに対する消臭性は、藍染め布には認められなかったが、銅媒染により発現した。抗菌性は、未処理布に比較し、染色を重ねることによりコロニー数が減少した。これら結果より、物性、抗菌性では、十分な消費性能が得られ、消臭性も媒染を加えることにより期待できることがわかった。今後は、より染色堅ろう性の高い染色布の調製を行い、紫外線遮蔽性、数種の細菌を用いた抗菌性についても検討を行う。
  • 柏木 はるか, 小島 里佐子, 河西 美優, 水出 千晶, 小林 泰子
    セッションID: 3G-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 紅茶葉による染色を行い、茶葉中のタンニンがアルカリや光により赤みを増し、染色布が変色することがわかった。そこで、紅茶葉の染色に合成染料での染色を重ねて、変色を抑えることを検討した。
    【実験方法】 茶葉はアッサム、ウバ、キーマン、合成染料は直接染料(Sirius Brown 3GN)、試料布はシルケット加工綿ブロードと綿金巾を用いた。媒染剤として硫酸銅、硫酸カリウムアルミニウムを用いた。布と同量の茶葉に50倍の水を加え煮出して抽出液を作り、布を入れて90℃で10分加熱染色した。カチオン前処理、紅茶葉染色、媒染、直接染料染色を組み合わせ各種染色布を調製し、染色堅ろう度試験に用いた。
    【結果と考察】 表面反射率より求めたK/S値は、綿金巾より綿ブロードの方が大きく、カチオン化を加えた布ほど大きかった。紅茶染色布に0.1、0.25、0.5%o.w.f.の直接染料による染色を重ねた布では、濃度が高いほど濃色に染まったが、洗濯やアルカリ試験で色落ちが大きかった。紅茶独特の色味を保ち、より高い堅ろう性を考慮すると、直接染料濃度は0.1%o.w.f.が適している。今回はソーピングを行わなかったため、ソーピングを加え、中性洗剤を用いた洗濯により堅ろう性の改善は可能と考える。また、手始めに用いた直接染料を反応染料に変えることで、堅ろう性の向上が期待できる。
  • 大泉 由美, 遠藤 恵, 武井 玲子
    セッションID: 3G-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 被服の色彩が果たす役割は大きい.染色された被服は生活環境下で変退色するため,それらは死蔵・廃棄,あるいは初期の用途外で着用されている.生活者を対象とした被服の変退色実態データは,必ずしも十分といえない.そこで,変退色を防止するための課題抽出を目的に,被服管理の行動シーン毎に変退色実態のアンケート調査を実施した.
    方法 学生76名,一般生活者70名の計146名を対象として,質問紙調査を2015年12月に実施,解析した.
    結果 シーン毎の変退色の経験割合は,「洗濯」時が一番高く,次いで「着用」,「保管」,「乾燥」の順であった.「洗濯」時では,「塩素系漂白剤」が4割以上,次いで「蛍光増白剤」が2割であった.「着用」時は「汗汚れ」「食べこぼし」は5割以上,「保管」時は「カビ・微生物」が4~5割と高い傾向であった.変退色を防止するための行動としては,「購入時に表示を確認」は3~4割,「汚れたら洗濯」は4割弱,「着用後すぐ洗濯」は2~3割,「日陰に干す」など干し方に気を付けている割合は2~3割であった.変退色した被服は,インナーとして「着用する」が4割弱と一番高く,「廃棄する」は4割であった.変退色に関するデメリット表示について「着用時」7項目,「洗い方」15項目,「保管」1項目に対して,「見たことがある」「参考にしている」の視点から質問したところ,全体的に「見たことがある」割合より「参考にしている」割合が低いことから,デメリット表示が今後の課題の一つといえる.
      
      
      
  • 稲垣 サナエ, 加藤 安香音, 牛腸 ヒロミ, 小見山 二郎
    セッションID: 3G-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 デニム製品は今期のトレンドであり、日常着として着る機会が多いアイテムの一つである。しかし、デニム製品は洗濯による色落ちや色移りなどのクレームも多く、取扱いに注意しなくてはならない。 そこで本研究では、国内外のファストファッション製品などを対象に、洗濯、水、摩擦、日光堅ろう度を測定し、デニム製品の退色、色移りに及ぼす取り扱い方法の影響を検討した。
    方法 試料として、ZARA、FOREVER21、無印良品、ユニクロ 、Levi’sのブルージーンズを使用した。洗濯による色落ち、色移りはJIS L 0844洗濯堅ろう度試験に準じ、白布への色移りはJIS L 0846水堅ろう度試験に準じた。摩擦による色落ち、色移りはJIS L 0849摩擦堅ろう度試験、日光による変退色はJIS L 0843耐光堅ろう度試験に準じて行なった。評価は目視とコニカミノルタ分光測色計 CM-3700で行なった。
    結果 試料4種ともに洗濯堅ろう度は4級前後と優れていて、洗濯だけでは変退色が起こらないことが分かった。洗濯温度を30、60、90℃と変化させてもユニクロ、無印良品の製品は4級前後とほとんど変化せず、変退色が起こらなかった。他の製品は30、60℃では4級前後であったが、90℃にすると2~3級に低下した。すべての試料で水堅ろう度は4級以上、乾燥摩擦堅ろう度は3級以上であったが湿潤摩擦堅ろう度は3級以下であった。ジーンズは濡れた状態で擦ると色落ち、色移りすることが分かった。染色堅ろう度の目視評価と分光測色計で測定した色差⊿Eに相関が認められた。
  • 大矢 勝, 服部 香名子
    セッションID: 3G-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 マイクロバブルは界面活性剤の減量化等の環境に配慮した洗浄技術の一つとして注目されているが、より高い洗浄性能を引き出すための技術に課題が残っている。従来はマイクロバブル洗浄に界面活性剤は使用しない取り組みが多かったが、本研究では少量の界面活性剤の添加による洗浄性の向上を目的として検討した。
    方法 界面活性剤としてSDS、AE、CTABを用いた。ガラス管内部を牛脂汚れで汚染し、洗浄試験用サンプルとして用いた。マイクロバブル水を調整して一定の流速でガラス管内に流し、洗浄操作後にガラス管を溶剤で抽出し、その紫外吸収の状況から汚れ残留量を評価し洗浄率を求めた。気泡サイズはマイクロスコープで撮影した動画からコンピュータ処理をして、その分布と平均値を求めた。
    結果 界面活性剤を添加することによっていずれの界面活性剤の場合もバブルのサイズのばらつきが小さくなり平均径も小さくなった。しかしcmc近い濃度ではマイクロバブル洗浄に支障をきたすことが分かった。界面活性剤の濃度を高めると通水洗浄でもマイクロバブル洗浄でも洗浄率が高まるが、マイクロバブルの効果に着目するとcmcの1/6~1/3程度の濃度が最も効率的であることが分かった。
  • 徳山 孝子
    セッションID: 3H-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的  2014年度の大会では、国民の新時代を印象づけた明治天皇の御正服(軍服)を取り上げ、その歴史的経緯と意匠を調査収集とその分析により明らかにした.2015年度の大会では、軍服にはなくてはならない金モールに注目し、製織技術の伝来、製織し始めた人物を明らかにした。引き続き明治維新期の男子服の「洋装化」がフランスからの支援で始まったことを裏付ける貴重な資料を紹介するとともに明治期の男子服意匠について模索した。

    方法 AICP校※所蔵の資料は、天皇、大使等の礼服の絵型や写真、装飾図案の原画、勲章のスケッチ、日本大使館からの注文書、手紙、伊藤博文に関する新聞の切り抜き等から服の試作部分に至るまで多くの資料が残されていた。

    結果 AICP校に所蔵されている大礼服は、明治5年に制定された勅任官の大礼服と類似していた。襟、背、胸、袖縁、測嚢、背端章の飾章は、五七桐、桐蕾小唐草、縁飾の電紋線によって精巧に装飾されていた。釦は金製五七桐、生地は黒ビロードであった。提督の絵型は、水色の礼服、金と銀の刺繍入りの金筋と記されていた。明治8年制海軍将校大礼服は詰襟であり、大将礼服はテーラーであるため、水色の礼服は大礼服と考えられる。明治8年制の海軍大将大礼服は、紺羅紗の上衣の裾廻り、腰ポケット、背部の裂け目に金線をめぐらしている。明治16年にも服制改正があり、大礼服は将官用の裾廻りの金線が除かれた点が大きな違いであった。
    Académie Internationale de Coupe de Paris
  • 山村 明子
    セッションID: 3H-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:1899年の高等女学校令に賢母良妻教育が表明されたのちの、明治末期における良妻賢母思想を背景とする主婦の装いについて分析し、主婦・母親に求めた理想的な姿を検証する。家庭生活における主婦の役割が多様化している今日において、本研究は衣生活研究を通して、次世代に心豊かな家庭生活を提言するためへの端緒とする。 方法:主な一次資料には1908年創刊の雑誌『婦人世界』を取り上げる。同誌は発行の辞には読者が「良妻賢母たらんこと」を言及し、家庭における実際的な知識等を掲載した。また、1890,1900年代の一般書籍より主婦・良妻賢母への言及について調査する。 結果:封建的家父長制度のもとの貞順な妻像とは異なり、男性は社会・女性は家庭、という分業がなされ、良妻賢母とは家庭生活を取り仕切ることにあった。また、男性は生産活動、女性は消費活動と位置付ける見解も登場した。一般書籍における主婦の装いへの見解には、「本分を忘れ粉飾にのみ心を用い」ることを戒め(「新編家政学」)、「粗服にあまんじ」て家事にいそしむ姿を奨励した(「家庭の趣味」)。一方、「十人並みでも、愛と仁との神の権化らしき容貌を望む」(「女子の弱点」)や、相応の服装を整えることへの配慮が提言された。『婦人世界』においては、家庭内外での人への配慮・好印象を与える服装、身だしなみが意識され、流行の適度な採用を促す記事が掲載され、「美しく」装うこともまた良妻賢母の嗜みと掲げられた。
  • 家計に占める割合と実際的運用法
    難波 知子
    セッションID: 3H-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的:本研究は、大正期の家計調査より家庭における被服費を調査し、被服費の家計に占める割合を明らかにするとともに、和服と洋服の二重生活の改善が叫ばれた大正期の衣生活を家庭の主婦がどのように計画立て、運用したのかを考察する。
    方法:家庭の被服費は、『家計調査集成』(多田吉三編、青史社、1991年)所収の大正期の家計調査を分析する。また各家庭の具体的な被服費や家計管理については、婦人雑誌に掲載された家計費の記事を収集し、主婦がどのように被服費を運用したのかを考察する。
    結果:①大正8年(1919)の家計調査では、職工(工場労働者)の月平均被服費が6円76銭9厘(家計に占める割合は16.8%)、俸給生活者(小学校教員)が11円2銭5厘(17.3%)であった。俸給生活者は職工に比べて洋服の購入額が多く、和服と洋服の両方に費用がかかるために金額の差が生じた。②大正10年(1921)の家計調査報告では、被服費の家計に占める割合は12〜14%が標準とされた。③各家庭の家計記録からは、月々の被服費を予算立てする場合と年2回の賞与をあてる場合とあり、夫や子どもの被服費(洋服)が優先された。④婦人雑誌には、よい生地の見分け方や買物の仕方、家庭における洋服製作、廃物利用法、着物の繰り廻しなどが頻繁に掲載され、被服にかかる費用の節減と合理的に衣生活を営むための生活改善の方法が説かれた。
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