一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
選択された号の論文の290件中1~50を表示しています
ポスター発表 5月28・29日 食物
  • 岡田 悦政, 岡田 瑞恵
    セッションID: P-001
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 哺乳類において、24時間周期システムは、視床下部中の視交差上部の核で行われている。 しかしながら、24時間周期の時計は、周辺組織(例えば肺組織)にも大部分が存在する。 本研究目的は、若齢、老齢ヒト線維芽細胞に対する熱水とエタノ-ル抽出両サンプルの時計遺伝子(Per1とBmal1)の活性化と時計制御遺伝子であるSirt1への変化に対する潜在的効果を分析することである。
    方法 乾燥種子に水を加えホモジネートし、湯煎にて加熱(95-100℃、10分間)後、60分間攪拌した。その後ろ過して熱水抽出サンプルとした。また、エタノール抽出は、種子に2~5倍量の70%エタノールを加え、撹拌後24時間ホモジェネートし、ろ過してサンプルとした。ヒト肺由来線維芽細胞TIG-1-60(PDL60)TIG-1-20(PDL20)は調製培養後、サンプルを加え37℃、5%CO2条件下で4時間培養した。培養後、時計遺伝子Bmal1, Per1, そしてSirt1遺伝子の活性化への影響をRT-PCRにて測定した。
    結果 若齢細胞に対する遺伝子の活性化は、Bmal 1レタス2.9,チンゲンサイ2.2,キャベツ2.18、コマツナ2.0、コーン1.5,Per1チンゲンサイ5.9,ホウレンソウ2.0、エダマメ1.9,Sirt 1レタス2.9,チンゲンサイ2.2,キャベツ2.18、コマツナ2.0、コーン1.5倍であった。一方、老齢細胞に対する遺伝子活性化が見られたのは、Bmal 1キャベツ4.2,ホウレンソウ3.5、コマツナ1.9、エダマメ1.8,チンゲンサイ1.5,Per1チンゲンサイ15.9,レタス5.9、エダマメ5.8,キャベツ4.3,コーン3.8、コマツナ2.8、ホウレンソウ1.2,Sirt 1レタス1.3,キャベツ1.2倍であった。
  • 岡田 瑞恵, 岡田 悦政
    セッションID: P-002
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】我々は幾つかの機能性を見出した Petasites japonicus (JBB) の花蕾成分が、時計遺伝子に対して影響を与えるか否かを目的とした。一方、スルフォラファン(Sulf)、レスベラトロール(Res)は抗ガン、抗炎症、Ⅱ型糖尿病の抑制などの機能性とともに、NRF2のアクティベーターであることも報告されている。近年、概日時計がNRF2/glutathione介在の抗酸化防御経路の律動的な活性を調節していることが報告された(Pekovic V et al. 2014)。よって、Sulf, Resを比較物質として概日時計遺伝子に対するJBB抽出成分の影響を検討した。
     【方法】JBBはメタノール抽出し、dry-up後DMSOにより溶解後、1, 1/10, 1/100の濃度調製し、比較物質とした10μM, 100μM Sulf, 100μM Resと同様に0.22μmフィルター処理をした。肺由来線維芽細胞TIG-1-60, TIG-1-20は調製培養後、サンプル, Sulf, Resをそれぞれ加え37℃、5%CO2条件下で4時間培養した。時計遺伝子は、Bmal1, Per1, また、概日時計をコントロールしているSirt1の発現をRT-PCRにて測定した。
     【結果】Bmal1は若齢、老齢ともにJBBが最もアップレギュレーションし、若齢において1/10 JBB が100μM Resより約4.15倍高く、また、10μM Sulfより約2.98倍、100μM Sulfより約3.53倍それぞれ高い発現量であった。Per1は若齢、老齢ともに100μM Sulfが最もアップレギュレーションした。さらに、Sirt1は若齢、老齢ともにJBBが最もアップレギュレーションし、若齢において、次ぐ100μM Resより約1.18倍高い発現量となった。
  • 畦 五月, 野中 絋士, 秋山 純一
    セッションID: P-003
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 レクチンは動植物界に広く分布しているタンパク質である。その機能のみならず、多量に摂取した場合の生体へのネガティブな影響と、少量摂取した場合のポジティブな影響が明らかになっている。一般にレクチンは生の試料から抽出され精製されているが、食用とする状態、つまり加熱後のレクチンの状態については不明な場合が多い。そこで、加熱した食品に含有されるレクチンの体内での免疫活性の測定のための基礎資料の作成を目的として、ボイルした食品からレクチンを精製し、生のレクチンとの比較を試みた。方法 無加熱の金時マメ、サトイモ、ブロッコリー、さらに、ボイルした状態のこれらの試料からカラムクロマトグラフィーによりマウス赤血球での赤血球凝集活性を指標にしてレクチンを精製した。 結果 金時マメとサトイモの試料においては、生と加熱した状態では精製にあたってカラム樹脂の種類が異なった。また電気泳動によるバンドの位置から推定して、生とは異種のタンパク質に変性している可能性が推測された。また、ボイルする時間によりタンパク質の溶出曲線が変化し、調理条件のわずかな違いによりタンパク質が異なった熱変性を起こし、同時にタンパク質であるレクチンも熱変性していった可能性が示唆された。ブロッコリーレクチンについては、生ではマウス血球で全く活性が検出されない結果であったが、加熱によりH活性を示し、その分子量は200万付近の高分子になっていた。本研究はJSPS KAKENHI 15K00805の補助を得て行った。
  • 赤松 美由紀, 木村 万里子, 長澤 治子
    セッションID: P-004
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】小豆や白いんげん豆に含まれるオリゴ糖のプレバイオティクス効果についての報告は、これまでほとんど例がない。本研究では、小豆および手亡(白いんげんの一種)からオリゴ糖画分を調製し、それらの乳酸菌増殖活性と構造特性を調べた。
    【方法】小豆と手亡のアセトン脱脂粉末ペプシン消化物に50%になるようにエタノールを加え、可溶性画分にオリゴ糖を回収した。その後、陽イオン・陰イオン交換、2種類のゲルろ過(Sephadex G-25,  Biogel P-2)を組み合わせた方法で各オリゴ糖画分を分離した(小豆と手亡2種類ずつ、合計4種類)。4種類のオリゴ糖画分は、4N TFAで加水分解した後、N-アセチル化、ABEEラベルし、HPLCで糖組成分析を行った。次いで、各オリゴ糖画分を0.1%含むMRS寒天培地で乳酸菌(Lactococcus Lactis sp等)を48時間培養し、培養開始時の生菌数に対する48時間後の生菌数の比を増殖倍率として増殖促進活性を調べた。
    【結果】各オリゴ糖の資化性は、乳酸菌の種類により違いが認められた。今回調製したオリゴ糖の中で最も乳酸菌増殖活性が高かったのは、手亡の陰イオン交換吸着画分であり、主要構成糖としてマンノースやN-アセチルグルコサミンが検出され、その他にキシロースやフコースの存在も認められた。
  • 松本 絵美, 竹山 恵美子, 新海 シズ, 福島 正子
    セッションID: P-005
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】ヒト体内にはα-トコフェロール(以下Toc)が多く含まれることから,主としてα-Tocの研究が進められてきた。最近,α-Tocに高濃度のγ-Tocが加わるとアレルギー性疾患やアルツハイマー病などの炎症性疾患に効果があるとの報告が認められるなど,Tocは異性体のバランスによって生理効果が異なる可能性がある。そこで,γ-Tocの生理効果を調べるためにまず,αおよびγ-Tocとの共存下における生体吸収について検討した。 【方法】γ/α比の異なるToc溶液をCaco-2細胞に滴下し、37℃、5%CO₂環境下の暗所で一定時間静置した。その後細胞の頂端膜側と基底膜側の溶液をそれぞれ採取し,HPLCを用いてTocを測定した。ヒト対象実験では,1日10g のグリーンナッツオイル(以下GNO)またはカノーラオイル(以下CAO)を健康な20~50代の女性7名に各1週間摂取させ血清中Toc濃度を調べた。マウスはICR4週齢雄を用い3群に分けた。AIN-93G(油抜き)にGNO,CAO,コーンオイル(以下CO)をそれぞれ7%添加した飼料で5週間飼育した後,血清,肝臓,脳,筋肉,白色脂肪のTocを測定した。 【結果】細胞透過では,γ-Tocに対してα-Tocの添加割合が増加するとγ-Tocの透過率は低くなった。ヒト血清中のγ-Toc濃度はCAO摂取後よりもGNO摂取後で有意に高く,抗酸化力も高かった。マウスの血清,肝臓,脳,筋肉,白色脂肪のいずれにおいてもGNO摂取したものは,CAOまたはCOを摂取したものよりγ-Tocの生体内保持量は多かった。
  • 大岩 倫子, 竹山 恵美子, 浅倉 奈々, 足立 歩美, 阿部 祥子, 上村 恵理華, 相良 智美, 福島 正子
    セッションID: P-006
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 n-3系不飽和脂肪酸は炎症や認知能低下への予防効果等が期待されているが,体内の脂肪酸量は加齢により減少し,記憶や学習能低下を招く可能性がある。我々は以前,α-リノレン酸を多く含むグリーンナッツオイル(GNO)食を月齢の異なるマウスに投与し,GNO摂取が加齢による脳内DHA量の低下を抑制する可能性を示唆した。そこで今回,老化促進モデルマウス(SAM)を用い,加齢およびGNO摂取による影響について調べた。

    方法 実験には,学習・記憶障害という形質を持つSAMP8(P群)と,対照動物のSAMR1(R群)の4週齢雄マウスを用いた。1週間の予備飼育後,それぞれのマウスをGNO投与群(GNO群)とコーンオイル投与群(CO群)に分け,AIN-93G(大豆油抜き)にGNOとCOをそれぞれ7%添加した飼料を与え,82日間飼育した。また,本飼育開始時と解剖前にY字迷路試験を行った。屠殺したマウスの脳,肝臓,赤血球膜から脂肪酸を抽出し,メチルエステル化後,ガスクロマトグラフにより分析した。

    結果 Y字迷路試験における交替行動率は,GNO群ではP,R群ともに本飼育開始時より解剖前の方がわずかに高い値を示した。対して,CO群の交替行動率は,R群では本飼育開始時と解剖前とでほぼ変化がなく,P群は解剖前の方が低値を示した。また,各器官におけるDHA量は,CO群よりもGNO群の方が高値であり,アラキドン酸量はCO群の方が高い値を示した。
  • 橋詰(高澤) 奈々世, 岩田 惠美子, 土田 幸一, 小林 理恵, 榎本 俊樹
    セッションID: P-007
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】近年では、キヌアやアマランサスなどの雑穀が高い栄養価や機能性を有することなどからスーパーフードとして注目されている。しかし、古くから日本でも栽培されてきたアワ、キビ、ヒエ、ソバ、大麦などの雑穀も抗酸化能などの機能性を有することが報告され健康増進を目的とした需要が高まっている。そこで、本研究ではこれら5種の雑穀のデンプンを酵素糖化し、雑穀由来糖化液(以後糖化液)を調製しその機能性について評価した。 【方法】5種の雑穀粉を水に分散させ、酵素(α‐アミラーゼ、β‐アミラーゼ、プロテアーゼ)により糖化を行い、遠心分離後の上澄み液を測定用糖化液とした。各糖化液はBrix20%の原液と、これをBrix40%に加熱濃縮した糖化液を調製し、それぞれのペルオキシラジカル捕捉能から抗酸化能を評価する他、ACE阻害活性を比較した。 【結果】各糖化液のペルオキシラジカル捕捉能については、ソバが最も高く、次いで大麦、アワ、ヒエ、キビの順となった。ソバおよび大麦糖化液は他の糖化液に比較しポリフェノールが多く含まれるため、抗酸化能が高くなったと考える。ACE阻害活性はいずれの糖化液も高い活性が認められ、ソバおよび大麦糖化液のそれは特に高かった。また、全ての試料においてBrix20%に比較し40%の糖化液の活性値が上昇していた。以上のように各糖化液は高い抗酸化能およびACE阻害活性を有していることから、これらの機能性を活かした利用法を追究する意義がある。
  • 小出 あつみ, 間宮 貴代子, 阪野 朋子, 松本 貴志子
    セッションID: P-008
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 甘酒は長い歴史を持つ日本独自の発酵甘味飲料である.本研究では,甘酒の食品への有効利用を目的に,甘酒の特性を活かした菓子と飲料(以後,食品)9種類を開発し,栄養価と嗜好性について検討した.
    方法 甘酒は,イチビキの「冷やし甘酒」を使用した.レシピは一般の料理本を参考に試作を行って決定した.栄養価は栄養計算ソフト(フーズサポ―ター)を使用した.官能評価は食物系の教職員18名をパネルとして8項目について「甘酒の特性を活かしているか」を5点尺度の採点法で,嗜好性を順位法で行った.
    結果 各食品の栄養価では,副材料の影響が大きかった.官能評価の採点法(総合)と順位法の上位5位の中に共通してスムージー,アイスクリーム,芋羊羹,チョコレートケーキの4食品が入った.これらの食品は,甘酒の特性を活かした好まれる食品であると推察された.甘酒の食品への利用では,他の材料と混ぜると香りが弱くなり,さらに製造工程で生地に甘酒を練り込む食品では,甘酒の味と香りが感じにくかった.甘酒の利用では,食品における水分調製と米麹の粒状の食感を活かすことが難しく,粒状の食感は好まれなかった.以上の結果から,甘酒を利用した食品では,総体的に味と香りで評価が低かったが,外観,美味しさおよび新奇性では高い評価を得た.分析型と嗜好型評価で共通して上位4位に入った食品では,評価が低かった香りと味を改良することで,商品化への可能性が示唆された.

  • 江口 恵加, 中山 久之, 湯浅 正洋, 冨永 美穂子
    セッションID: P-009
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】我々はこれまでに、主として長崎県産物由来の植物性乳酸菌を用いた発酵豆乳やおから粉末添加発酵豆乳(発酵おから豆乳)を開発しており、この発酵(おから)豆乳の嗜好性に味や香りが関与している可能性を明らかにしてきた。そこで本研究では、これらの嗜好性に及ぼす因子を明らかにすることを目的として、乳酸発酵前後や乳酸菌の違い、おから粉末添加の有無による香気成分や味覚応答の変化を分析した。
    【方法】豆乳、3%および5%おから粉末添加豆乳に動物性乳酸菌を含む8種の乳酸菌培養液を約0.05%接種後、37℃で20時間保温し、発酵(おから)豆乳を調製した。それら乳酸発酵液の酸度、pHを測定するとともに、香気成分をGC/MSにより測定し、酸味、苦味、塩味、旨味などの8項目の味覚応答を味認識装置により測定した。
    【結果】いずれの乳酸菌を用いた発酵豆乳も大豆の不快臭の一つであるヘキサナールが減少傾向にあったが、発酵豆乳間の香気成分に差はみられなかった。味覚応答については、乳酸発酵により酸味応答の上昇と塩味応答の減少がみられ、酸味応答と酸度上昇の傾向は一致していた。また、乳酸菌の違いやおから粉末添加の有無により苦味応答に違いがみられた。各呈味センサーに応答する成分の検討が必要であるが、発酵(おから)豆乳の嗜好性には、酸味の程度や豆乳由来の豆臭さだけではなく、その他の味や香気成分が影響している可能性が示唆された。
  • 孟 き, 菅原 悦子
    セッションID: P-010
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的:アワビの肝を用いた魚醤は他の市販魚醤より強い汗様、香ばしいにおいを有する。Zygosaccharomyces属の酵母を用いた発酵はアワビ肝醤油の香気改善に有効な方法であると昨年度の本大会で報告した。そこで、本研究では、アワビ肝醤油の発酵時におけるグルコース添加による香気改善への影響の解明を目的とした。
    方法:グルコースの添加量を0.5% (G0.5)、2.5% (G2.5)と5% (G5)と変化させ、酵母Z.rouxii 061を用いてアワビ肝醤油を27℃、5日間振動培養した。遠心分離で除菌した培養液を80℃、30分間火入れ加熱した。火入れ加熱前後の試料からSPME法(SolidPhase Micro Extraction)により香気成分を抽出し、GC-O分析により各試料の香気特徴を評価した。さらに、AEDA(aroma extract dilution analysis)法により、G2.5試料の香気成分の寄与度を評価した。発酵前の生及び火入れ加熱したアワビ肝醤油も同様に分析した。各試料の香気成分はGC-MSにより同定した。
    結果:GC-Oの結果、G2.5試料から感知できた香ばしい香気成分数はG5、G0.5試料より2倍多かった。火入れ加熱後、試料から感知できた香気成分の総数は減少したが、香ばしい香気成分数に変化はなかった。AEDAの結果、発酵前の生アワビ肝醤油では甘い2-phenylethanolのFD-factor(FDf)が最も高く、煮たジャガイモ様のmethionalと汗様のbutanoic acidのFDfも高かった。発酵後、G2.5の生試料では、2-phenylethanolのFDfがさらに高くなり、methionalなどのFDfが低下した。火入れ加熱後のG2.5試料でも2-phenylethanolのFDfが最も高かった。従って、グルコース2.5%添加の発酵法はアワビ肝醤油の香ばしい香気特性を維持すると共に、香気改善にも有効であると考えられる。
  • 湯浅 正洋, 小江 桃子, 冨永 美穂子
    セッションID: P-011
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 わが国においては様々な味や香りを呈する市販だしが販売されており、それらの嗜好成分は異なることが推察される。しかし、市販だしにおける嗜好成分の特徴については不明な点が多い。そこで本研究では、市販だしの主要な嗜好成分と考えられる呈味成分を網羅的に分析した。また、天然素材を用いた手作りだし(天然だし)の呈味成分についても分析し、市販だしと比較した。
    方法 市販顆粒だし8種、市販だしパック7種、固形だし1種を各製品の標準使用量に準じて蒸留水で希釈し、加熱後に濾過したものを試料とした。天然だしは、かつおだし、昆布だしおよび混合だし(かつおと昆布)とし、それぞれ常法に従い抽出したものを用いた。呈味成分としてアミノ酸および核酸の含量を分析した。
    結果 市販だしのグルタミン酸含量は原材料に調味料(アミノ酸等)を含むもので顕著に高く、食品素材や風味原料を含むものでは少ない傾向にあった。5’-イノシン酸含量は顆粒だしよりもだしパックで低い傾向がみられ、5’-グアニル酸は原材料にしいたけや玉ねぎを含むもののみで検出された。また、市販だしは天然だしと比べグルタミン酸含量が高いのに対し、うま味を呈するアスパラギン酸、甘味および苦味を呈するアミノ酸類の含量が低値を示した。以上より、市販だしの呈味成分は原材料やだしの形状により違いがあることや、市販だしと天然だしでは呈味成分の組成が異なることが明らかとなった。
  • 冨永 美穂子, 前田 純佳, 湯浅 正洋
    セッションID: P-012
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    (目的) 長崎県対馬産乾し椎茸は肉厚で美味しいといわれているが,その特徴を明らかにした研究はほとんどない.また,乾し椎茸そのものの特徴は報告されているが,だしに注目した研究は少ない.そこで,本研究では対馬産乾し椎茸だしの風味に関与する成分として呈味成分のアミノ酸,核酸量および味覚応答を大分県産のそれらとだしの抽出条件を変え,比較検討することとした.
    (方法) 対馬および大分県産乾し冬菇しいたけを使用し,重量が2%になるように蒸留水を加え,5℃5時間,5℃24時間,25℃5時間の条件で浸漬した.これらを濾過したものを「非加熱」,浸漬後に加熱濾過したものを「加熱」として測定に供した.呈味成分に関わる核酸(グアニル酸),甘味および苦味を呈するアミノ酸類をHPLCにより定量し,旨味,苦味,渋味などの味覚応答を味認識装置により分析した.
    (結果) 乾し椎茸だし中のグルタミン酸量,甘味アミノ酸量はいずれの浸漬条件においても対馬産よりも大分県産で多く検出され,グアニル酸量も多い傾向にあった.グアニル酸量は産地,浸漬条件にかかわらず,加熱により増加した.乾燥方法や収穫時期が異なることも考えられるが,低温(5℃)水戻し条件下において,対馬産は大分県産に比較し,アミノ酸からの苦味成分が少なく,長時間の水戻しでも苦味や渋味による味の低下がしにくい特徴をもつことが示唆された.
  • 本間 太郎, 内藤 政志, 内田 和宏, 赤澤 竜太, 高柳 勉
    セッションID: P-013
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 食事により健康を維持するためには、偏食をなくし、多様な食材を積極的に摂取することが望まれる。しかし、小学生は食べ物の好き嫌いが多い傾向にある。その原因の一つとして、その食素材が持つ特有の香りの問題が挙げられる。そこで本研究では、忌避される原因となる香りのもととなる成分を解明する一助とするために、児童に忌避されやすい食材を調査票を用いた調査により特定し、その食材の揮発成分を測定することを目的とした。
    方法 小学1~6年生の児童571人を対象に、嫌いな食べ物とその理由について質問票による調査を行った。香りが理由で嫌いな食べ物として上位に挙がった食材の中からナスに着目した。品種及び産地の異なる7種類のナスを焼きナスとして調理し、それぞれの揮発成分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)により測定した。
    結果 GC-MSによる解析の結果、7種類の焼きナスの揮発成分の多くは全ての焼きナスに共通して検出された。しかしながら、各揮発成分のピーク強度は試料間で差が見られ、また、一部の試料のみに検出された揮発成分も存在していた。焼きナスの揮発成分にこれらの違いが見られた要因として、ナスの品種・産地など違いが影響したものと推測された。
    ※本研究は、平成27年度 公益信託 家政学研究助成基金による助成を受けて実施した。
  • 海老塚 広子, 藤本 智子, 潮来 茉里, 山本 真衣, 三澤 香莉, 塩谷 一紗
    セッションID: P-014
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】 母乳は乳児に栄養を与える手段として、栄養学的意義はもちろん免疫学的・精神的に優良であるといえる。母親の食事形態により乳児の母乳への吸いつきが悪くなることが観察され、妊娠・授乳期の母親の食事が、乳児の離乳食の嗜好性に影響を与えていることも推察される。本研究では、母親の食事摂取状況や食習慣と、母乳の匂いに着目し、その関連性について明らかにすることを目的とした。個人による母乳の匂いの差異および食事内容による母乳の匂いへの影響について検討した。
    【方法】 授乳婦7名を対象とし、3日間の食事調査および食事後約2時間経過した母乳の採取を依頼した。母乳の分析には、におい識別装置(FF-2A:(株)島津製作所)を用いた。統計処理はSPSSを用いて多変量解析、Asmell2を用いて臭気指数相当値による類似度解析を行った。
    【結果および考察】 授乳婦の食事調査の結果、エネルギー・主要栄養素量に大きな差異は認められなかった。母乳の匂いには個人差があること、カレーを摂取することにより、におい成分のバランスに変化が現れることが判明した。また、鯛のあらが母乳の匂いに変化を与えている可能性が高いことが確認された。この結果を、授乳婦への栄養指導に役立てて、健康な乳児の発育に貢献することが期待される。     
  • 佐藤 典子, 杉江 真悠, 杉山 薫
    セッションID: P-015
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 食物繊維には便通を整え大腸ガンを予防する、血中脂質を正常化するなど、生活習慣病予防効果がある。今回、ココアなどに豊富に含まれる食物繊維リグニンを積極的に食生活に取り入れるためリグニン添加ゼリーを調理し、最適な添加量を検討した。
    方法 砂糖20%、ゼラチン2%、リグニン濃度を0%,0.5%,1.0%,2.0%の4段階として、ゼリーを調理した。大学生を対象に、甘さ、苦さ、食べやすさ、見た目、食感、おいしさについて順位法による官能評価を実施した。結果は、有為水準1%で結果を検討した。
    結果 甘さと食べやすさと見た目は、0.5%添加、苦さ、食感では1.0%添加の物が好まれた。総合的なおいしさは、0%、0.5%、1.0%添加の3種には有意差がみられなかったが、この3種と2.0%との間には、いずれのゼリーにおいても有意差(p<0.05)が認められた。以上より、適切なリグニン添加量濃度は0.5%だと考えられた。リグニン0.5% 添加の場合、プリンカップ1個のゼリー(100g)でリグニンを0.5g摂取できるが、これを同じく0.1% ココア添加ゼリーで摂取するには、5 倍量のゼリーの摂取が必要になり、プリンカップ 1 個分のゼリーで摂取するにはココア添加量を 5% にする必要がある。このように本研究で調理したゼリーはリグニンの効率的摂取を可能にする。
  • 宮澤 洋子, 山田 直子, 土田 満, 林 恭子
    セッションID: P-016
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  平成26 年度全国下水道普及率は77.6%に対し、欧米諸国では80~90%であり日本は低い傾向にある。水質汚濁原因は約7割が生活排水で、その45%が調理操作によるものである。米の研ぎ汁は窒素、リンなどの有機成分が含まれ、年間7,000tのリンが放出され汚染源となっている。米の研ぎ回数の工夫により、研ぎ汁の汚濁負荷量と食味調査を行い、水環境及び食味も適した炊飯方法を検討することを目的とした。
    方法 愛知県産こしひかりを900gに調整し、白杉ら1)の方法で、水1,800ml(米の2倍重量)を加え、指先をボールの底に付けるように毎秒1回で10回混ぜ、ザルに移し水を切る操作を1回とする洗米を行った。その操作を1、2、3回行い、出た研ぎ汁を試料とした。研ぎ汁の分析内容は、COD、BOD、全窒素、全リンの測定を行った。食味調査は、見た目、香り、総合評価などの6項目で評価法による7段階で判定した。
    結果 各汚濁負荷量では、研ぎ回数1回に比べ3回で有意に高くなり、研ぎ回数2回と3回では有意差は認められなかった。食味調査では、見た目、香りなどで研ぎ回数1回に比べ3回で有意に高くなり、総合評価で研ぎ回数2回で高い点数となり、3回との差は認められなかった。環境負荷の影響をおさえ、食味調査の評価の良い調理の工夫として、研ぎ回数2回でも概ね妥当であることが考察された。
    [文献]1)白杉直子ら:調理及び食器洗浄方法の工夫による台所排水の環境負荷低減効果.日調科誌,36(2)130-138.
  • 岡崎 貴世
    セッションID: P-017
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】発芽直後の野菜の新芽であるスプラウト(かいわれ大根、ブロッコリースプラウトなど)は調理済み食品にトッピングされたり、サラダとして生食されることが多いため細菌汚染対策は特に重要である。スプラウトの衛生対策として、低温管理や塩素消毒が定められている。その有効性の検証も兼ね各種スプラウトの細菌汚染状況を調査し、特に低温で増殖する汚染菌の特性を明らかにした。【方法】スプラウト8種類を、上部2/3と下部1/3に分けて細菌検査を行った。検査は一般生菌、低温細菌等について、塗抹法で35℃、24~48時間(低温細菌は7℃、1週間)培養を行った。7℃で培養後のシャーレから所見の異なるコロニーを無作為に選択し、48株の菌を分離した。分離菌の抗生物質感受性には6種類のセンシディスク(日本BD社)を用いた。【結果】すべての試料から一般生菌、低温細菌および大腸菌群が検出され、1試料から糞便汚染の指標である大腸菌が検出された。またスプラウトの細菌汚染は、上部よりも下部が大きく、生産環境が影響していると考えられた。分離菌のうち44株がグラム陰性菌であり、豆苗は他のスプラウトと比較して低温で増殖する菌が多かった。分離菌は平均3.5種類の抗生物質に対して耐性を示し、多剤耐性菌が約8割を占めた。生産過程で塩素系消毒剤に抵抗性を持った菌がスプラウトに残存し、それらが抗生物質に耐性を示したと考えられた。
  • 荒木 裕子, 山本 直子, 石垣 貴志, 関川 歩美, 丸井 正樹
    セッションID: P-018
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】ネームとはタイの発酵ソーセージである。ネームは乳酸発酵により、微生物の繁殖を抑制しており、生で食べることが出来るのが大きな特徴である。我が国でのネームに関する研究は少なく、ネームの安全性についての研究もなされていない。本研究ではより安全で品質の安定したネームを調製することを目的として、条件の異なるネームを調製し調製条件の違いによる安全性および品質を検討した。

    【方法】試験試料として4種類のネームを調製した。基本的な材料である豚肉、豚耳、ニンニク、トウガラシ、米飯を調製する自然発酵区、また基本材料に発酵を促進する助剤であるヨーグルト、グルコン酸、肉用乳酸菌を添加したネームを調製した。35℃で4日間発酵させ、一般生菌数、大腸菌群、乳酸菌数およびpHを経時的に測定し、調製条件の違いによる安全性および品質を比較検討した。

    【結果】自然発酵区ではpHの低下は見られたが、大腸菌群が十分に抑制されなかった。ヨーグルト添加区、乳酸菌添加区では乳酸菌が生成する乳酸によってpHが低下し、大腸菌群が抑制された。グルコン酸添加区では4%添加のものは即時にpHが低下し、大腸菌群は強く抑制されたが、酸によるタンパク質変性が見られた。上述の通り、自然発酵区では十分に抑制されなかった大腸菌群がヨーグルト添加区、グルコン酸添加区、乳酸菌添加区において抑制されていることから、ネームの安全性を高めることを目的としたヨーグルト、グルコン酸、乳酸菌の添加は有効な手段であると示唆された。
  • 谷本 憂太郎, 長田 亜梨沙, 菅野 友美, 鵜飼 光子
    セッションID: P-019
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 黒米は白米と比較して抗酸化活性が高いといわれている。本研究ではこの黒米とパスタやうどんなどの市販の黒米加工品について抗酸化活性(ラジカル捕捉活性)を測定し,原料及び白米加工品と比較するとともに,加熱や発酵などの加工処理が抗酸化活性に及ぼす影響について検討した。
    方法 全ての粉末試料は80%エタノール抽出を行った。原料の黒米粉及び黒米茶(焙煎)は熱水抽出を行った。各抽出液を10mlとり,105℃で乾燥後,乾固重量を測定した。抗酸化活性はDPPH(2,2-diphenyl1-1-picrylhydrazyl)法でDPPHラジカルの捕捉活性を評価し、電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance; ESR)スピントラップ法ではヒドロキシルラジカル及びスーパーオキシドラジカルの捕捉活性から評価した。
    結果 抽出方法では熱水よりも80%エタノール抽出の方がどのラジカル捕捉活性も高かった。原料である黒米と黒米茶では黒米茶の方がDPPHラジカル捕捉活性,スーパーオキシドラジカル捕捉活性が高かった。これは焙煎が原因であると考えられた。黒米加工品のうち,黒米パスタがどのラジカル捕捉活性においても最も高い活性を示した。このことから黒米パスタには3種のラジカル捕捉活性があると考えられた。また,甘酒,ビールのDPPHラジカル捕捉活性,ヒドロキシルラジカル捕捉活性についてはそれぞれの原料が白米のものより活性が高かった。以上の結果から黒米加工品は白米加工品よりもラジカル捕捉活性が高く,加工処理によりラジカル捕捉活性が異なることがわかった。
  • 片山 佳子, 外山 剛之
    セッションID: P-020
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 落花生は、様々な用途に使用され消費されているが、その加工工程において、薄皮は多量の産業廃棄物となる。しかし、落花生薄皮にはポリフェノールであるレスベラトロールが多く含まれていることから、高い抗酸化作用を持つと考えられる。そこで本研究では、この多量に廃棄されてしまう薄皮をお茶のような飲料として利用できないかと考え、ポリフェノール量および抗酸化活性を測定するとともに、官能評価による嗜好性を分析することを目的とした。

    方法 落花生薄皮1gに抽出温度(80,85,90,95,100℃)を変えた水200mLで20秒間抽出したものを試料液とした。ポリフェノール量の測定は、Folin-Denis法にて行った。抗酸化活性はラジカル消去能をDPPH法で測定し、Trolox相当量として算出した。嗜好型官能評価は、外観、香り、味、苦味、総合評価の5項目を5点評点法により評価し、分散分析法により検定を行った。

    結果 ポリフェノール量と抗酸化活性は、抽出温度が高くなるにつれて高い値を示し、抽出温度100℃が最も高い結果となった。これは水溶性の抗酸化物質であるポリフェノーが多く溶出されたためと考えられた。また、ポリフェノール量が多いほど高い抗酸化活性を示したことから両者には高い相関性があり、落花生薄皮茶の抗酸化活性の主体はポリフェノールであることが考えられた。官能評価は、当初、高温抽出では薄皮の渋味が懸念されたが高温の100℃抽出が総合的に好まれた。このことから落花生の薄皮茶は高い抗酸化活性をもつ飲料として利用できることが示唆された。
  • 西 彰子, 佐伯 孝子, 横地 加奈子, 関谷 吏華
    セッションID: P-021
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    微細粒子に製粉された玄米粉を用いてシフォンケーキを焼成し、微細精白米粉や小麦粉を用いた場合と物理的特性や官能評価によって比較した。重量減少率・比容積・膨化率は一元配置の分散分析、官能評価は5段階評点法では二元配置の分散分析、順位法ではNewell&MacFarlaneの検定を行った。同配合で170℃35分焼成120分放冷した結果、①焼成前、後のシフォンケーキ生地の高さは微細玄米粉で最も低かった。比容積も微細玄米粉で最も小さく、膨らみが小さかった。②焼成による重量減少率は、微細精白米粉、微細玄米粉では高い傾向が見られた。➂焼成後生地の高さを焼成前生地の高さで除して求めた膨化率に差はなかった。④玄米粉シフォンケーキの膨らみの小ささは、微細玄米粉の吸水による粘度の強さが生地調整時に破泡を助長していることが原因と考えられた。⑤微細玄米粉シフォンケーキの焼き色が浅く、表面の亀裂が大きかった。⑥官能評価で微細玄米粉シフォンケーキは、小麦粉、微細精白米粉を用いたケーキより好まれなかった。次に、微細玄米粉の配合量を1/6、 1/3量減じて焼成し、微細精白米粉の場合と比較した。その結果、①微細玄米粉量を1/6、 1/3量減じたシフォンケーキは膨らみが改善された。②官能評価の結果、微細玄米粉量を1/6、 1/3量減じたシフォンケーキはしっとり感が特に好まれ、総合評価では微細精白米粉シフォンケーキと同様に好まれた。
  • 奥西 智哉, 宮下 香苗, 堀 清純
    セッションID: P-022
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】米粉は新規素材として各種小麦粉製品に用いられてきているが、製品特性等の研究は米粉パンについては知見が多いものの、菓子利用については十分であるとは言えない。種子タンパク質の特性が大きく異なるesp2変異や、球形の澱粉粒を合成するSS二重変異体が導入された米粉用イネが開発されている。esp2変異はタンパク質分子間S-S結合を形成することで加工特性向上が期待されており、SS二重変異体は澱粉が通常の多角形ではなく球形になり粉質形質になる。これらの品種の製粉特性およびケーキ加工適性を評価したので報告する。

    【方法】鶏卵900gをホイッパーで均一になるまで撹拌し、900gの砂糖を加え

    比重0.25±0.01(30℃)に調整した。得られたバッター240gに篩った小麦粉100gを加え、木ベラで60+25回すくうように混ぜた。型に流し入れヘラで表面をならしたものを180℃で30分焼成した。焼成後、室温で1時間冷却したものを以上冷ます。各種粉砕方法で得られた米粉のSEMによる外観観察、損傷澱粉含量、アミロース含量および粒度分布を測定した。

    【結果】各種米粉を用いたスポンジケーキ生地とスポンジケーキの物理的特性を,小麦粉を用いた場合と比較することによって明らかにした。湿式気流粉砕米粉を用いた場合、小麦粉と同等の膨らみを持つケーキであったが、乾式気流粉砕およびロール粉砕米粉を用いた場合、膨らみが小さいケーキであった。
  • 藤田 沙南, 村上 陽子
    セッションID: P-023
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 米は、我が国において唯一自給可能な穀物である。しかし、食の多様化や米から小麦粉食品への移行拡大等により、米の生産量・消費量はともに減少している。そこで本研究では、小麦粉の代替として米飯に着目し、米の種類が製パン性に及ぼす影響について検討した。また、副材料としてグルテンを添加し、米飯パンの製パン性に及ぼす影響について検討した。
    方法 米飯パン用の米は、中アミロース米5品種(キヌヒカリ、コシヒカリ、ヒノヒカリ、ハツシモ、ササニシキ)、低アミロース米2品種(ミルキークイーン、おぼろづき)とし、いずれも精白米を用いた。小麦粉を米飯で置換したものを米飯パンとし、小麦粉パンの乾物重量として、10~50%を置換した。加水量は、炊飯米の吸水量と合わせて180gとした。尚、グルテンの添加量は、基準となる小麦粉パンにあわせて、粉重量の12%とした。製パン性(比容積、物理特性、色彩構成)に関して得られたデータは、分散分析法(Tukey法)により有意差を検討した。
    結果 グルテン添加は米飯パンの物理特性に大きく影響しており、添加したものは無添加のものに比べて比容積が増加し、硬さは減少する傾向があった。低アミロース米は中アミロース米に比べて、グルテン添加による比容積の増加が大きかった。グルテンを添加しても比容積が完全には回復しなかった品種もあったことから、米飯パンの比容積はこれ以外の要因も関与しているといえる。
  • 齋藤 慶子, 藤井 恵子
    セッションID: P-024
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 澱粉パンは腎疾患患者やアレルギー対応食品として用いられるが品質改善が課題である。一方脱脂米ぬかは、日本人に不足しがちな鉄、食物繊維を豊富に含み資源の活用として期待できる食材である。そこで、鉄、食物繊維の補給と未利用資源の活用を目的として、澱粉パンに脱脂米ぬかを添加し、製パン性に与える影響について検討し、グルテンフリー食品としての応用可能性を検討することを目的とした。
    方法 澱粉パンの主原料はうるち米澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、グラニュー糖、米油、イーストを用いてパンを調製し、澱粉の10~50%脱脂米ぬかに置換した。生地の特性としてpH、動的粘弾性、製パン性として比容積、破断特性、色度などを測定し、保存性について検討した。併せて官能評価を行い、嗜好性についても検討を加えた。 
    結果 いずれの澱粉パンも脱脂米ぬかの添加割合の増加に伴い、生地の貯蔵弾性率、損失弾性率は増大し、パンの25%圧縮時応力は増加した。またパンの比容積は小さくなり、水分含量は増加した。さらに焼成当日と3日後では、添加割合の増加に伴い水分減少率が小さくなり脱脂米ぬかは澱粉パンの乾燥を防ぐことが示された。X線回折結果より、脱脂米ぬかを30%添加したパンでは老化が抑制されることが示された。官能評価より、脱脂米ぬかを30%添加したパンは、無添加のパンに比べ香ばしく、きめが細かくしっとりしており、総合評価も高いという結果が得られた。
  • 山澤 和子, 堀 光代
    セッションID: P-025
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】行事に因んだ食の伝承基盤は家庭にあり、各家庭で行事食を大切に伝え継いでいくことは先人の知恵や行事食の由来を学び、家族の絆を深める良い機会と考えられる。本研究では、日本の伝統的行事のなかでも認知度の高い「正月」に焦点を当て「家庭の正月料理」伝承のために有効な因子を明らかとすることを目的とした。
    【方法】平成24及び25年1月1〜5日に正月料理の準備への関わり方や準備の方法、その調理方法を家族の誰から受け継いだか(影響者)等をG県G市の女子短期大学学生に調査した。なお、分析は18~20歳の165名を用いた。行事食の伝承因子として家族構成員に世代幅があることおよび調査対象者が正月料理作りを手伝うことを仮説に分析した。
    【結果】家族構成別にみると、祖父母等との同居家庭(63.8%)では、餅を自宅で搗く・田作りを自宅で作る・数の子を市販品で購入するとの回答が高率であった。一方、核家族家庭(36.2%)では、餅を市販品で購入する・田作りを市販品で購入する・数の子を自宅で作るとの回答が高率であった(p<.05)。正月料理作りへの関わり方では、正月の料理作りを手伝った対象者(17.3%)の家庭では「餅は自宅で搗く」、手伝わなかった対象者(82.7%)の家庭では「餅は市販品を購入」とした比率が高かった(p<.05)。なお、手伝わなかった対象者の特徴として、家族構成では核家族、居住県では愛知県在住者が目立った。
  • ―2010年・2015年の調査よりー
    田中 ゆかり, 佐藤 恵, 藤本 真奈美
    セッションID: P-026
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 北海道には道民に慣れ親しまれている郷土料理のひとつ「甘納豆入り赤飯」がある。北海道特有の赤飯文化を明らかにすることを目的に2008年本学入学生からアンケート調査を開始し、結果をまとめてきた1。本研究では、調査様式が整った2010年と5年後に当たる2015年の比較、今後の調査について検討することを目的とした。1)日本家政学会第64,65,66回大会要旨集
    方法 本学入学生に対し6月~8月に「赤飯アンケート調査」を実施し、2010年と2015年の結果を比較した。調査対象者は食物栄養科、保育科2010年入学生272名と2015年入学生218名である。                           
    結果 2015年アンケートでは、好きな赤飯の種類で「甘納豆」と回答した学生は79%となり、2010年より8%増加した。甘納豆入り赤飯が好きと回答する割合の増加に伴い、食する種類では15%、家庭で調理する種類では調理者母12%、祖母21%、購入する種類では15%と、甘納豆が増加した。学生の回答には「子どもの頃から甘納豆の赤飯を食べている。」「甘納豆の赤飯しか食べたことがない。」などの記述がみられた。これらのことから、学生、母、祖母どの世代においても甘納豆入り赤飯が好まれ浸透していることが確認できた。赤飯を好きとの回答は87%と5年経過してもほぼ変わらなかったが、調理する機会は15%、食する機会は5%減少した。今後これらの変化、減少理由を調査していきたい。
  • 山内 加代子, デュアー 貴子, 棚橋 亜矢子, 松本 富美子
    セッションID: P-027
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉味噌とは古来より日本人の食生活に欠かせない食べ物の一つである。しかし、外食の増加や食生活の欧米化で味噌料理の代表ともいえる味噌汁を摂食する機会も減少している。そこで、本調査においては大学生を対象に味噌汁の摂食頻度およびその嗜好を調査すると共に塩味、酸味、うま味成分を分析し、大学生の味噌汁嗜好について考察した。 〈方法〉調査は平成27年7月に岐阜県の大学に通う管理栄養士養成課程の大学生(19~20歳)を対象に、自己記入式アンケートを用い味噌汁の摂食頻度や嗜好について調査を行った。日頃摂食している味噌汁の酸味、うま味成分の定量は、有機酸量とアミノ態窒素量を測定することにより行い、塩分量はデジタル塩分計を用いて味噌汁中の塩分を測定した。統計処理には汎用統計解析ソフトSPSSを用い、項目間の差の検定にはノンパラメトリック検定およびχ2検定を行った。
    〈結果〉味噌汁の嗜好については、「好き」が65%、「どちらかといえば好き」が20%と、合わせて85%以上であった。岐阜県の大学生が、自宅から持参した味噌汁に使用した味噌の種類については、「豆味噌」が35%、「米味噌(淡色辛みそ)」と「米味噌(赤色辛みそ)」がそれぞれ25%、「米味噌(甘みそ)」と「麦味噌」がそれぞれ5%であった。味噌汁の摂取状況は、「1日1~2杯飲む」が5%、「週3~4杯飲む」が40%、「週1~2杯飲む」が30%、「飲まない」が10%という結果であった。また塩分濃度については、男子学生において有意(p‹0.01)に高い傾向がみられた。
  • ー夏季と冬季の比較ー
    高澤 まき子, 矢島 由佳
    セッションID: P-028
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的   食生活が著しく多様化している今日では、若い世代層の味覚感度が低下していることが指摘されている。前報では、味覚感度と食生活状況との関連について調査を行った。その結果、食事形態との関連において、中食・外食中心群は内食中心群に比較し、うま味の認知閾値が高かった。味覚感度は日常の食事形態のみならず、生理的、社会心理的な影響により変化をもたらすことが知られている。そこで今回は季節によって味覚感度にどのような変化をもたらすかについて調査を行い比較検討した。
    方法   管理栄養士養成課程の1年生(18-19歳)81名を対象とし、2015年8月初旬(夏季)と2016年1月下旬(冬季)の2回にわたって無味を加えた五味の識別検査および閾値検査を行った。
    結果   五味の識別検査での全て正答した人は夏季で69.1%、冬季で30.9%であり冬季の方が低かった。誤答した人の中で誤答率の最も高かった味は、両季ともうま味であり、冬季の方がうま味を酸味、無味に、また無味を酸味、うま味に誤答している人が多かった。五味の刺激閾値では、塩味、酸味、甘味で夏季より冬季の方が高い傾向にあった。認知閾値では夏季において塩味が冬季より低くなり(p<0.01)、酸味、甘味でも夏季の方が低くなる傾向にあった。以上のことから冬季の方が味覚感度は低くなる傾向にあった。
  • 西川 和孝, 柏木 麻里, 後藤 昌弘, 田中 章江
    セッションID: P-029
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的   豆腐は,凝固剤と大豆たんぱく質の変性を利用した日本型食生活における重要な食品の一つで,特徴的な微量成分(イソフラボン)を含むことが知られている.しかし,凝固剤の違いによる豆腐の比較や学校教育における豆腐の教材研究の報告はほとんどない.そこで本研究では,各種凝固剤の違いによる豆腐の物性とイソフラボン含量の比較,また家庭科教育で利用可能な教材開発と授業実践による評価を目的とした.
    方法   各種凝固剤(硫酸カルシウム,塩化カルシウム,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウム,天然にがり)で調整した豆腐の新鮮重量,レオメーターを用いた破断応力等を測定した.イソフラボン分析は,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った.また,家庭科教育の教材として,大豆から豆腐を作るのに適した条件を検討後,高等学校での授業実践及びアンケート調査を通して教材を評価した.
    結果   (1)各種凝固剤の違いによって,豆腐の新鮮重量及び破断応力の有意差はみられなかった.(2)HPLC分析の結果,天然にがりで調製した豆腐中にイソフラボンのdaidzinとgenistinが多く含まれることが明らかとなった.(3)高等学校家庭科で利用可能な豆腐の教材を検討した結果,凝固速度が比較的速い塩化カルシウムが有効であると考えられた.(4)授業実践前及び実践後のアンケート調査の結果,本教材を用いた授業は,豆腐の嗜好性や興味・関心を高める傾向がみられた.
  • 高校生と保育園児における食育
    村上 陽子, 藤田 沙南
    セッションID: P-030
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 食品の嗜好価値は、味・形・色などの科学的・物理的特性により決定される。一方、現代社会においては、食の色彩は軽視される傾向にある。食における色の効果を大事にしてきた我が国には、和菓子という伝統的な菓子がある。しかし、食生活の洋風化により、和菓子の喫食頻度は減少傾向にあり、食文化継承という面において懸念すべき状況にある。そこで本研究では、食文化継承の一助として、和菓子(練り切り)を食育教材として用いることとした。これにより、和菓子における色の多様性、色彩と季節感の関連など、和菓子における色の重要性を学ぶとともに食文化理解に繋げることを期待した。
    方法 対象は静岡県立高校3年生(25名)とし、実践は「子どもの発達と保育」において行った。授業に先立ち、和菓子の嗜好性や調理経験などを調査した。練り切りを用いて、色の多様性、および色彩と季節感の関連を学び、和菓子に対する理解を深めた。また、季節感や菓銘などを念頭におきながら、練り切りの製作を行った。さらに、製作した練り切りを用いて、生徒が保育実習を行った。
    結果 事前調査においては、練り切りに対する認知や調理経験は低かった。授業実践を通して、生徒は色の多様な練り切りに対して、高い興味関心を示した。練り切りづくりにおいては、季節感と色との関連を考えながら製作を行っていた。また、園児にも作れる練り切りを検討し、食文化のみならず、幼児の発達に対する理解も深めた。
  • 宇都宮 由佳, 伊藤 美穂, 秋永 優子, 糦須海 圭子, 江原 絢子, 朴 卿希
    セッションID: P-031
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    研究背景と目的
    学校給食は、第2次世界大戦後1947年に開始され、1950年にパン・ミルク・おかずの完全給食、コメ不足解消後、1976年に米飯給食が始まった。1980年日本型食生活が提唱、2005年食育基本法が制定され、2003年度には米飯給食が100%実施されている。しかし、献立については全国調査報告がない。そこで本研究では、小学校の給食献立を調査し、あわせてアンケート調査・聞取り調査を実施して、学校給食における和食や郷土料理の取入れ実態を明らかにする。
    方法
    献立は2014年10月から地域別に収集し「主食・汁・おかず」の組合せ分析をした。アンケートは、2015年2月予備調査、7~9月全栄協の講習会参加者の栄養教諭・学校栄養職員(228名)を対象に実施した。データはSPSSで分析した。
    結果
    献立分析では、米飯が多い地域、麺とパンなど複数主食が多く出現する地域とで特徴があった。汁と飯の組合せでは、日本・中国料理以外で韓国料理が各地域で出現していた。郷土料理は、アンケート結果96%が実施していたが、首都圏はその比率が低かった。実施理由の1位は「地域の食文化継承」、2位「地産地消」、実施上困っていることは1位「食べたことがない」、2位「大量料理が困難」であった。和食献立について、食器の種類や数が関係していることが聞取り調査からも明らかとなった。
  • 盛付け学習に着目して
    村上 陽子, 紅林 秀治, 植田 郁美, 藤田 沙南, 冨田 千秋, 石橋 美穂
    セッションID: P-032
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 近年、高度情報化社会といわれている。学習指導要領では、情報教育や授業におけるICT活用が明記されており、学校における教育の情 報化について一層の充実が求められている。一方、学校教育の情報化における問題点として、情報教育に対する教員のスキルの低さや偏り、情報機器を用いた授 業実践の低さなどが指摘されている。家庭科では、実践的・体験的な学習活動が重視されており、実験・実習を中心とした授業の工夫が必要である。その一環と して、実物や紙教材を活用した「見せる」授業が行われているが、従来の「見せる」授業では、①一斉授業では手元を見せることが難しい、②実物を用意するの に時間がかかるなどの課題が指摘されている。そこで本研究では、家庭科における「見せる」指導の効率化を図るため、AR(拡張現実)を用いた教材の開発を 行った。
    方法 AR教材は、フリーソフト「Metasequoia」と 「ARToolkit」を用いて作成した。実践は、静岡県内の中学校および高校において行った。実践は、家庭科の授業で行い、単元は調理の盛り付けとした。ARの効果を測るために、紙媒体で行った授業と比較した。
    結果 実践の結果、AR教材を活用・体験することによって、学習内容に対する理解度が高まり、また、 盛り付けに対する興味関心・意欲の向上が見られた。このことから、ARは家庭科の食育教材として有用であることが示唆された。
  • 保護者のアンケート調査より
    森脇 弘子, 田渕 桂子
    セッションID: P-033
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 近年,小学生において,生涯にわたり健全な心身を培い,豊かな人間性を育む食育の更なる推進が求められている。小学生の食生活は保護者の影響を受けている。そこで,小学生の親子を対象とし,望ましい食事量や食事バランスを簡単に知ることのできる弁当箱ダイエット法による料理教室を実施し,保護者を対象としたアンケート調査による教室の評価を行った。
    方法 2013~2015年の8月,広島市内のA公民館で料理教室を実施した。対象者は小学生とその保護者,内容は弁当箱ダイエット法の説明,調理の説明,参加者による調理実習,弁当の試食とした。参加者は小学生37名,保護者24名であり,教室の最後に保護者を対象としたアンケート調査を行った。調査内容は弁当箱ダイエット法の理解と実習の評価,家庭でのお手伝い,家庭での参考や料理教室への参加についてであった。
    結果 弁当箱ダイエット法の理解と実習の評価(自分に合った弁当箱のサイズの理解,料理の組み合わせの理解,それぞれの調理法の理解,彩りのきれいな弁当になったか,弁当の中身は動かずつめられたか)はすべての者が肯定的であった。子どもの食事づくりのお手伝いは6割の者が毎日していた。家庭での参考や次回料理教室への参加はすべての者が肯定的な回答をしていた。以上のことより,料理教室により望ましい食事量や食事バランスを理解することができた。今後,家庭での実践がされているかなど,長期の介入を行うことが課題である。
  • -親子料理教室の実践-
    福岡 恩, 柴田 充代, 小田 麻未
    セッションID: P-034
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 平成17年度乳幼児栄養調査の結果では、1歳以上の子どもを持つ親の食に関する悩みとして「偏食する」「よく噛まない」という項目を選択したものが平成7年~17年の10年で増加した。また、第2次食育推進基本計画に「よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加」を現状値70.2%に対し目標値を80%以上としている。本研究は、自身で調理し食べることにより様々な食品を積極的に食べるきっかけに、また、献立の工夫で「噛む」ことを意識できるよう、地域の未就学の子どもを持つ親子を対象に料理教室を開催し、終了後アンケート調査を実施した。

    方法 対象は平成25年11月より平成28年3月まで「楽しい親子クッキング」へ参加したのべ220組の地域の親子。献立に咀嚼を意識できるようなものを組み込み、調理・試食してもらった。また、実習後、アンケートを実施した。作った料理の味、硬さ、こどもの日頃の咀嚼に関してどのように感じているかなどについて質問した。データ解析はクロス集計(Microsoft excel)等で行った。

    結果 日頃の咀嚼は「できている」23%、「どちらかといえばできている」23%、「ふつう」35%、「どちらかといえばできていない」15%、「できていない」0%だった。また、日頃の咀嚼の有無と実習で作った料理の硬さについての評価の相関を検定したところ、有意差はみられなかったが、日頃の咀嚼が「できていない」群には実習の料理の硬さを硬いと感じる傾向がみられた。
  • ―大学生(ヴィエンチャン特別市居住)の食生活の実態より―
    今津屋 直子
    セッションID: P-035
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的:ヴィエンチャン特別市居住者を対象とした聞き取り調査より、ラオスには伝統的な食べ物や食べ方が保持されていることが示唆された。本報告は、大学生を対象とした質問紙調査より若者の食生活の実態を把握し、若者に備わる食を営む力の育成について検討した。 方法:ラオス国立大学への質問紙調査の手続きは、経営経済学部を通して行い、経営経済学部および教育学部の学生388名の回答を得ることができた。調査の質問項目については、先述の調査結果を基礎データとして作成した。 結果:朝食の欠食は13%であった。主食はもち米の飯という回答が朝食、昼食、夕食において多かったが、うるち米の飯を主に食べているという回答は10%以下であった。献立は、米飯を中心に野菜や魚や肉類の副食を摂り、様々な食品を組み合わせた食べ方が示唆された。昼食や夕食を一緒に食べる相手は友人あるいは家族という回答が多く、誰かと一緒の食事は楽しく、重要であると考えていることが示唆された。健康に気をつけて食事をしているという回答のうち多く規則正しく食べるや1日3回食べるという内容であり、栄養バランスや肥満予防については各々10%以下であった。安全性については衛生面に注意している回答者が多かった。 文献:*今津屋直子(2015)ラオスにおける食を営む力の育成に関する研究(1)−ヴィエンチャン特別市居住者の食生活の実態−, 関西学院大学教育学論究, 7,31-43
  • 学校給食と乳製品の利用についてのアンケート調査
    中澤 弥子
    セッションID: P-036
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】 イギリス・ロンドンのCプライマリースクールでは、食べ物を活用した教科教育、スクールガーデンでの食農教育、学校給食における栄養教育等、食育を重視した健康教育が実践されており、平成26年9月から調理を活用した教科教育が始まった。本研究では、日本の食育及び健康教育の参考資料を得るため、Cプライマリースクールで現地調査を行った。本報告では、児童を対象として行った学校給食及び乳製品の利用についてのアンケート調査結果を中心に報告する。
    【方法】 新学期が始まって3週間程経過した平成27年9月末から10月初めに調査を行った。調査の方法は、授業での参与観察、児童、教職員、保護者へのインタビュー調査及び児童を対象とするアンケート調査である。アンケート調査は、低学年及び高学年に行い、調査用紙は低学年用と高学年用の2種類を作成した。
     【結果】 Cプライマリースクールには、プレスクールが併設されていた。各学年各クラスで、担任と調理教育用の二人の専属シェフが相談して調理実習を教科の中に取り入れており、3歳児から調理実習が実施されていた。EUのプログラムにより、7歳児までの児童には牛乳と野菜・果物の提供が給食外の時間に実施されていた。アンケートの結果、学校給食が好きとの回答は175人(81.4%)から得られ、理由として、おいしい、健康に良い等の回答があがった。牛乳が好きとの回答は、184人(85.6%)から得られた。
  • 大森 桂
    セッションID: P-037
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 生涯にわたる健康の保持増進のためには、幼少期からの食に関する適切な指導が重要である。本研究は、発達段階に応じた食教育の効果的な方法について検討するための基礎資料を得ることを目的とし、児童の生活習慣や栄養に関する知識等の実態を調査した。
    方法 山形県内の公立のA小学校(在籍児童149名)において、全学年の児童および保護者を対象に、2015年7月に質問紙調査を実施した。就寝および起床時刻、朝食の摂取状況等の生活習慣の他、家庭での食に関する会話の頻度、不定愁訴等について尋ねた。知識については、給食指導や家庭科の学習内容をふまえ、五大栄養素の働きおよび栄養素の3つの働きについて尋ねた。各設問の回答率を算出し、男女別に学年間で回答率の比較等を行った。
    結果 平日の起床時刻については6時~6時半、就寝時刻については21時~22時と回答した児童がどの学年においても最多であったが、高学年になると22時以降に就寝する者も3割以上に増えていた。不定愁訴に関し、高学年になると「疲れる」と回答する者が増加する様子が見られた。これらのことから、児童が各家庭で十分に休養をとり、翌日までに疲労を回復できるよう支援する必要があると考えられる。体の調子を整える食品に対する児童の理解度は高いが、高学年においても無機質に関する正答率は低く、無機質に関する知識の定着に有効な指導方法を開発する必要性が示唆された。
  • 大本 久美子, 茂友 南実子
    セッションID: P-038
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    今日、食生活の重要性が叫ばれている一方で、「食」への関心が低い若者が増加している。「食べる」ということは人間の共通の営みであり、この営みが私たちの身体を作り、健康を支えている。何を選び、どのように「食べる」かは、各人の意思決定にゆだねられるところが大きく、「食」への関心の低さが価格以外の品質や安全性、作り手、産地などに目を向けられなくなっている一因とも考えられる。そこで、消費者市民社会の形成者である大学生に向けて「食」への関心を高め、「持続可能な食生活」を営むことができるよう「食」に関する消費行動を切り口に教材を作成した。
    方法
    大学生を対象に質問紙調査を実施し、「食」に関する消費行動の現状と課題を把握した。その調査結果をふまえ、課題を解決するための教材を作成した。 
     結果
    作成教材は、大学生の食に関する意識、食行動の改善を目的に以下の3つの内容から構成されているA5版のパンフレットである。
    ①  食生活の実態(下宿生の約半数は3食食べていない・自宅生の約8割は料理をしない・生産地を気にして食品を購入する者は2割未満等)の調査結果をグラフで示し、自らの食生活を振り返る。
    ② 何のために自らの食生活を振り返るのか、視野を広げ自らの食行動の影響について考える。
    ③「 大学生のうちにできること」の具体例を9つ挙げ、実践につなげる。
    本教材の最大の特徴は、消費者教育を学んだ大学生がその成果を教材化した点にある。

     

     
  • - 青色以外の単色絵付け皿との比較 -
    川嶋 比野, 数野 千恵子
    セッションID: P-039
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    演者らは前報(本学会第67回大会)で、青色の色相及び彩度を変化させた絵柄皿を焼成し、料理に与える影響を調査した。その結果、基準色とした青色(マンセル近似値4.9PB3.1/9.1)が最も食欲を増進させることがわかり報告した。今回、青色以外の単色絵柄皿と比較し、食欲増進の効果及び料理との相性を検証したのでその結果を報告する。
    方法
    基準色の青色絵柄皿をデジタルカメラで撮影し、画像編集ソフトを用いて、色相を赤色方向に変化させた画像、緑色方向に移動させた画像を作成した。また、絵柄のない白色の皿も含め、計4色の皿の画像を用意した。料理は前報と同じ、給食で喫食頻度の高い料理を20品用意し、撮影して木目の背景、皿と共に合成画像を作成した。女子大生および中高年男女を対象に、各料理を盛り付けた4色の皿の写真を見比べ、それぞれどの程度食欲を増したか、7点評点法及び順位法によりアンケート調査を行った。
    結果
    全体の傾向としては、青色と赤色の評点が高かった。赤色は特に酢豚や焼売などの中国料理と相性が良く、青色よりも評点が高い場合もあったが、キウイフルーツやトマトのくし切りなど、相性の悪い料理もあった。青色は、どの料理とも相性が良く、相性の悪い料理は特になかった。緑色は白色に次いで評点が低いことが多く、あまり食欲を増進させる色とは言えなかった。また、全体的に白色の評点は低く、特に淡い色の料理や単色の料理と相性が悪かった。
  • 小泉 茉由, 松島 悦子
    セッションID: P-040
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】おいしさは、食物や食べる人、環境などの要因で形成される主観的なものである。食物からの情報は味覚や視覚、嗅覚などで知覚され、色はおいしさの評価を左右する重要な要因である。先行研究によると、青や紫など寒色の皿は食欲を減退させると指摘されているが、藍色の皿は古くから一般的に使われてきた。そこで本研究では青い皿に着目し、その色調の違いがおいしさの印象にどのように影響を与えるかを明らかにした。 
    【方法】A大学の女子学生と教職員62人を対象として、明度と彩度の異なる4種類の青い皿に煮魚やハンバーグ、サラダ、そうめんなど8種類の料理を盛り付けた画像を作成し、印象評価を行った。評価法は、SD法に基づき、おいしさにかかわる形容詞対7項目に対する5段階評価である。事前に質問紙調査を行って、画像に用いる皿の形や料理を選定した。
    【結果】「おいしそう」という評価はサバの味噌煮などの茶系の料理で低く、同じ料理でも皿の明度・彩度の違いによって評価は異なった。これは、皿の色と料理の色との対比という視覚現象によるものと考える。また、温かい料理でも「冷たそう」と評価され、青い皿は料理を冷たく見せる効果が確認された。以上より、皿の青という色相のみならず、明度や彩度も料理のおいしさの印象に影響を与えることが明らかとなった。また、学生と教職員では、明るさや華やかさの項目で評価に有意差が認められ、好まれる明度・彩度は年齢により異なることが示唆された。
  • 大久保 郁子, 佐藤 悠, 高木 美幸, 後藤 昌弘
    セッションID: P-041
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 管理栄養士養成校では、臨地校外実習4単位の習得が必須である。本学では、事業所の集団給食が1週間、病院の臨地実習が2週間、保健所の実習が1週間とし、特に病院の実習は2週間と非常に短時間で,高度化する医療現場での知識習得には不十分である。そこで、学生受け入れの了解を得た、外来栄養指導実施の医院で、学生の実践教育の研修を試みたので報告する。
    方法 学生は、T医院で6月から12月の7ヵ月間、診察時間と授業を鑑み、週2~3回外来栄養指導を研修した。調理した実物の展示と、写真、参考献立を記載したリーフレットを作成、了解の得られた患者に対して、野菜の切り方と加熱による体積の変化に関する知識と理解度を調査することとし、アンケート調査を実施した。期間は1週間とした。
    結果 回答者数は計51名(男性29名、女性18名、未記入4名)であった。切り方や加熱による量の変化は9割の患者が理解していた。HbA1cの高い糖尿病患者は回答者の35%占めたが、その全患者が今後野菜摂取が増えそうだと回答した。
    考察 実際に調理した野菜の提示で、患者様に100%理解されたことから、本学学生は、立体的な媒体による栄養指導の有効性を実感したと考える。この結果が、管理栄養士として現場で患者への栄養指導を行う際の有効な一考になると考える。
  • 濱口 郁枝, 東根 裕子, 作田 はるみ, 奥田 豊子
    セッションID: P-042
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現代の大学生は家庭で食事作りに携わる機会が少ない。そこで,女子大学生を対象に好みの汁物の塩味濃度と食事作りに対する意識との関係について明らかにし,さらに実習で味見を強化する味覚教育を行い,好みの汁物の塩分濃度に及ぼす効果を検討した。
    方法 兵庫県内1大学における調理実習履修者53名を対象とした。4月(授業開始時期)と7月(授業終了時期)に0.7%,0.8%,0.9%の塩分濃度のすまし汁の好みについて,順位法を用いて官能評価を行った。また,食事作りに対する意識などに関する質問紙調査を7月に実施した。回答は7件法で求めた。
    結果 4月のすまし汁の好みの塩分濃度の比率には差がなかったが,7月は1番好きな濃度は0.7%が31人(58.5%),0.8%が20人(37.7%)と多く,0.9%は2人(3.8%)であった。したがって,調味の際に味見をする経験を重ねた結果,健康に良い薄味が分かるようになり,さらに薄味を好むようになったと推察された。また,質問紙調査の結果,「塩味について慎重に味見をするようになった」は,非常に当てはまる・とても当てはまると回答した者を合わせて33人(62.3%)であり,味見に対する意識が向上したと考えられる。0.9%の濃い塩分濃度のすまし汁を好んだ者は,家庭で調理する意欲の程度が低かった。したがって,実習で味見の練習を行う味覚教育は,薄味を意識し好むことに効果があると示唆された。しかし家庭においても調理を行い,薄味に慣れ親しむ機会を多くすることが重要である。
  • 土海 一美, 西村 栄恵
    セッションID: P-043
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】平成25年に「健康づくりのための身体活動基準 2013」が策定され、これまでの運動だけでなく、日常の生活活動に着目し、身体活動量を増やすことを目的としている。しかし、一方では、平成25年国民健康・栄養調査では、20~29歳女性のやせは21.5%であり、他の年代と比較し、やせの割合が高いという状況が報告されている。そこで、身体活動レベルとエネルギーバランスとの関連を明らかにすることを目的とし調査を実施した。【方法】女子大学生83名を対象とし、食物摂取頻度調査法(Food Frequency Questionnaire:FFQ)は、エクセル栄養君 食物摂取頻度調査 FFQg Ver.3.5.(建帛社)用いて、身体活動レベル及び食事摂取状況の調査を実施した。【結果及び考察】身体活動レベルは、1.89±0.39、エネルギーバランスは、-473kcal±460kcalであった。また、身体活動レベルとエネルギーバランスとの間に有意な相関関係が認められた(r= -0.49、p<0.001)。さらに、たんぱく質エネルギー比率13.2±2.1%、脂質エネルギー比率31.5±4.9%、炭水化物エネルギー比率55.3±6.3%であった。身体活動レベルが高い学生ほど、摂取エネルギー量が不足していることが明らかとなった。活動量に見合った摂取量を把握し、適正なエネルギー及び栄養素を摂取できるよう支援が必要であることが示唆された。
  • 武藤 嘉則, 萱島 知子
    セッションID: P-044
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]近年、和食はユネスコ無形文化遺産に登録されるなど世界で注目を集めている。その要因として、健康的なイメージがあることがあげられる。しかし、その一方で特に若者において和食を食べる、味わう機会が減っていることが危惧される。そこで本研究では、和食のおいしさに欠かせない「だし」に注目し、大学生のだしに関する食生活の現状と課題を明らかにすることを目的とした。
    [方法]2015年12月~2016年1月にS大学の学部生209名を対象にアンケート調査を行った。アンケートでは、食経験、食習慣、健康状態、家庭科の学習について現在と、一部の項目は中学生の頃を思い出すことで回答してもらった。有効回答率は92.3%であり、対象者の平均年齢は19.8歳、実家暮らし38.9%、一人暮らし58.9%であった。
    [結果]だしを使った料理を食べる機会はある群(毎日ある・よくある)が半数程度であり、中学生の頃の7割程度と比べ減少していた。また大学生で日常的に食材からとっただし(鰹節・煮干し・混合だし)を使用している者は26.4%であり、これも中学生と比べ減少していた。さらに自分でだしをとる頻度は「全くない」と回答した者が7割であった。これらには大学生で生活が変化したことが影響していると考えられる。加えてこれらのだしの摂取状況や調理頻度について、食習慣や健康状態との関連性がみられた。
  • 平井 由美子
    セッションID: P-045
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 学生はひとつの事象を講義(座学)、実験、実習を通して学んでいく。そして各課程における学習は、講義で「知る」、実験で「わかる」、実習で「使える」とステップアップする必要がある。そこで、講義で知ることができた事象を実習で使えるための実験科目の授業デザインを設計し実施した。テーマは、寒天とゼラチンの凝固作用をとりあげ、理解する内容として、(1)ゼラチンはたんぱく質分解酵素をもつ果物を使うと固まらない、(2)寒天は有機酸酸度の高い果物を使うと固まらない の2点に焦点をあてた。

    方法 授業デザインは、各班で検討する条件は1条件とし、班ごとに(1クラス7班)条件を変えて実験を行った後、ジクソー法を実施した。知識定着の測定は自己評価ルーブリックによる自己評価とし、授業を受ける前と実験レポート作成後で比較した。

    結果および考察 前年までは授業内小テストで理解度を測定しており、今年度と同じ評価方法で測定はできなかったので単純に相対比較はできないが、前年よりも理解できた学生は増えた。さらに、授業前後の理解度を比較してもそのレベルは上昇した。以上のことから、実験で「わかる」にするためにジクソー法を使うことは有効であることがわかった。今後はジクソー法のみならず協調学習による理解の定着を図り、講義・実験・実習と一気通貫できる授業デザインの研究が必要である。
  • 松島 悦子
    セッションID: P-046
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】 食の外部化が進行し、調理を学ぶ場として学校での調理実習の重要性が増している。本研究では、大学での調理実習が学生の知識と調理技術、コミュニケーションにどのように影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。
    【方法】 A大学の平成27年度基礎調理学実習Ⅱの授業で、受講者57名を対象者として、調理学の知識と技術、実習に対する意識などについて、履修前後に質問紙調査を行い比較分析した。実習中の各班の様子を非参与観察法により観察記録し、学生には、毎授業後に振り返りシートの記述を課した。
    【結果と考察】 調理学知識に関しては、炊飯の仕方や、野菜やイモの茹で方、味噌汁の食塩濃度、包丁による切り方の名称の正解率が、事後で有意に高まった。これらは実習で行っており、自らの体験が知識の定着につながったと考えられる。調理技術では、「コンロを使う自信がある」という意識は事後で高まったが、「包丁を使う自信」については有意な変化はみられなかった。普段家で調理をするという学生は少なく、調理技術の向上には、授業以外でも練習を積むことが必要だろう。コミュニケーションについては、班のメンバーに「考えをわかってもらえるように話す」「貢献する努力をする」という意識は高まり、逆にコミュニケーションは苦手という意識は著しく軽減された。観察記録にも、メンバー間でアドバイスをし合う様子が多く記述されており、協同作業を通じてコミュニケーションが促進されたためと推察される。
  • 菅野 友美, 青木 里奈
    セッションID: P-047
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年,児童の多くが野菜を苦手に感じており,野菜離れが進んでいる.本研究では,児童の野菜への苦手意識を減し,積極的に野菜を摂取することを目的として,野菜の苦手意識の要因をマスキングする調理法を検討した.そして食育教室を実施して親子で野菜を用いた菓子を製作・試食し,野菜の認知と苦手意識について調査した.
    方法 苦手意識の強い野菜を試料とし,蒸す,炒めるなどの調理後,順位法を用いて官能検査した.野菜の苦手意識要因のマスキング効果があった野菜ペーストを用いてクッキーを開発した.食育教室で,3種類の野菜ペーストを使ったクッキーを作製した.対象は4~11歳の児童9名とその保護者6名である.作製・試食後,野菜の苦手意識に関するアンケートを行った.調査は質問紙方で行い,回答は無記名・自記式とした.
    結果 野菜を砂糖などの調味料と一緒に調理することで野菜の苦味をマスキングすることができた。また一度冷凍し、凍結のままペースト状にして加熱することで野菜の香りや食感を改善することができた。そこで3種類の野菜を凍結後ペーストにし、砂糖で煮詰めた野菜ペーストを用いて親子でクッキーを作製した。クッキーに入っている野菜の種類をあててもらったところ,正解率の平均は22%であり,児童は苦手な野菜も摂取していたことから,苦手意識を克服できたといえた。また親子で作製するというコミュニケーションも苦手意識の克服に必要であることがわかった
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    セッションID: P-048
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
ポスター発表 5月28・29日 被服
  • 森 俊夫, 吉岡 陽一郎, 遠藤 祐里
    セッションID: P-049
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 従来,しわ外観の評価は熟練者による目視で行われてきたが,この評価は主観的で,疲労も伴うことから,客観的な評価が望まれている.さらに,色柄模様によってしわ外観がカモフラージュされるので,曖昧性も伴い評価がより困難となる.そこで本研究では,色彩画像解析を適用し,種々の布のしわ回復性を客観的に評価する方法を導入すると共に,新しい形態安定性評価法を提案することを目的とした.
    方法 試料布(日清紡テキスタイル㈱生地提供)として綿単色布6種,ポリエステル単色布6種と綿色柄布9種類を用いた.リンクル試験機によりしわを付与した.解像度72dpi,504×504pixelsの条件で取り込んだテクスチャ画像を,色彩画像解析によりL*(明度)画像に変換し,L*のヒストグラム曲線および明度平均を求めた.角二次モーメント(ASM),コントラスト(CON),相関(COR),エントロピー(ENT)の4つの形態情報量を求めた.
    結果 リンクルしわをつけた単色布で,黒布ではしわ付与の前後においていずれの特徴量についても大きな変化が見られなかったことから,カモフラージュ効果が高く,白や黄の布では低いことが分かった.リンクルしわの経時変化を示すしわ回復挙動に対して,しわ回復指数を導入した.回復曲線のカーブフィティングから求めた回復指数の比較から,黒の布は白や黄の布よりも,また色柄の複雑なものほどカモフラージュ効果が高いと判断した.
  • 松田 美帆, 増渕 哲子, 森田 みゆき
    セッションID: P-050
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  羊毛繊維のフェルト化は,水分,摩擦効果の異方性,物理的作用が関係していることは知られている。また,水分にアルカリや酸が含まれるとフェルト化は促進するとされ,温度なども少なからず影響しているといわれている。しかしながら,そのメカニズムを裏付ける資料やデータが明らかでない。本研究では,温度およびpH,処理時間,界面活性剤の有無が、表面状態すなわちキューティクル(スケール)組織に与える影響の検討を行なった。  方法  羊毛繊維はメリノ種(ニュージーランド産)をそのまま用いた。pHは,酸性は酢酸(Wako),アルカリ性はNaOH(Wako)を用いて調整した。装置はPentaView LCDデジタル顕微鏡(CELESTRON)を用いた。撮影条件を,明るさ+3,しぼり6とし,ホールスライドガラスを使用した。乾燥状態の羊毛繊維(約6㎝)で封入剤を使用せずスライドガラス上に固定し,溶液を滴下したのち,羊毛繊維表面のキューティクル(スケール)組織の変化を,定点撮影した。  結果・考察  水道水20℃で,pH4,pH6.5~7,pH10で処理したところ,pHによる表面状態の相違は認められなかった。pH6.5~7水道水で20℃,40℃,60℃で処理した場合も,表面状態に相違は認められなかった。一方,20℃で界面活性剤を添加した場合,スケールの立ち上がりが認められ,表面の凹凸の変化が見られた。界面活性剤を添加することにより,表面張力が低下したため,繊維表面がぬれやすくなり,スケールの隙間に水が入りやすくなったためと考えられる。
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