北日本病害虫研究会報
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2022 巻, 73 号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
特別講演
  • 佐野 輝男
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 1-8
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    ジャガイモやせいも病が小さなRNAの感染で起こることが発見され“ウイロイド”と命名されて50年,現在まで30を超える種が報告されている.ウイロイドは植物の病気の原因として発見されてきたが,必ずしも感染した植物全てに病気を起こすわけではなく,検出技術の進歩に伴い無症状の植物からも検出されるようになった.

    ホップ矮化ウイロイドは東北地方で流行した矮化病ホップから発見された.当初,日本のホップの風土病のように考えられたが,その病原はホップに限定されたものではなく,ブドウやカンキツ類に不顕性感染して世界中に拡がっていた.ホップ矮化ウイロイドのゲノム配列の多様性と宿主適応変異の解析から,ブドウに潜んでいるウイロイドがホップに伝染し,矮化病が発症したことが明らかになった.

    近年,農産物種苗の国際化に伴い,危険度の高いポスピウイロイドに汚染された野菜や花き類の種苗が流通し,植物検疫上の課題となっている.

報文
  • 近藤 亨
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 9-13
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    アブラムシ類有翅虫の飛来抑制効果が知られている反射マルチをニンニク圃場において使用した場合の,アブラムシ類有翅虫飛来抑制効果およびリーキ黄色条斑ウイルス(LYSV)感染低減効果を調査した.飛来の多い春夏期にアブラムシ類有翅虫を黄色水盤トラップにより捕獲調査したところ,反射マルチ区は透明マルチ区(対照)と比較してアブラムシ類有翅虫の飛来数が66~72%減少していた.また,次世代ニンニクについてティッシュブロット法によりLYSV検定を行ったところ,反射マルチ区は透明マルチ区と比較してLYSV陽性株率が42~59%減少していた.これらのことから,ニンニク圃場における反射マルチの利用は,ニンニクへのアブラムシ類有翅虫の飛来を抑制し,LYSV感染を低減することが可能であり,LYSVによる被害の軽減に有効であると考えられた.

  • 齋藤 隆明, 藤井 直哉, 渡辺 恭平, 森脇 丈治
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 14-18
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    2019年9月に秋田県由利本荘市のアスパラガスのハウス半促成栽培圃場において,アスパラガスの側枝や擬葉に小黒点を伴う赤褐色の斑点が多数確認された.病徴,分離菌株の形態的特徴,接種試験および分子生物学的手法により,Cercospora asparagiと同定し,県内でのアスパラガス褐斑病の発生を初確認した.本病の発生実態を2020年および2021年に調査した結果,秋田県内では広範囲で発生しており,特にハウス半促成栽培で多いことが明らかとなった.

  • 齋藤 隆明, 藤井 直哉, 渡辺 恭平, 藤 晋一
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 19-22
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    2020年と2021年に秋田県内6地域のアスパラガス栽培圃場の30圃場から採集したアスパラガス褐斑病菌64菌株を供試し,培地上でのQoI剤に対する感受性検定を行った結果, MIC(最小生育阻止濃度)値が100 ppm以上で耐性菌と判断される菌株は全体の82.8%(64菌株中53菌株)であった.これらの菌株について遺伝子検定を行った結果,チトクロームb遺伝子のG143A変異が確認された.耐性菌は県内で広く確認され,耐性菌検出圃場率は80.0%(30圃場中24圃場)と高い割合であった.以上のことから,秋田県においてQoI剤耐性アスパラガス褐斑病菌が広く発生していることが明らかとなった.なお,本菌におけるQoI剤耐性菌は本邦初確認である.

  • 三澤 知央
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 23-25
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    The isolates of Rhizoctonia solani anastomosis group (AG)-1 IA were known for the pathogens of the Gramineae and Legum plants. Recently, however, AG-1 IA isolates were obtained from several Brassicaceae plants including cabbage in Vietnam. Therefore, this study tested the pathogenicity of three Japanese AG-1 IA strains isolated from cabbage, rice, and timothy to the cabbage plant. All three strains showed pathogenicity, although the virulence of cabbage strain was very weak, presumably as a result of its long-term preservation. These results suggest that most Japanese AG-1 IA strains show pathogenicity to cabbage plants.

  • 岩舘 康哉, 西村 穂花, 砂子田 慎一郎, 藤崎 恒喜, 三澤 知央
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 26-31
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    Damping-off symptoms were observed in four commercial cabbage fields in Iwate, Japan, from May to June 2021. Four fungal isolates from the diseased plants were identified as Rhizoctonia solani anastomosis group (AG)-2-1 and AG-2-2 IV. They were confirmed as pathogens, based on the morphological traits, temperature-dependent growth characteristics, hyphal anastomosis reaction, genome analysis using specific PCR primers, rDNA-ITS sequences, and pathogenicity tests. This is the first report of damping-off on cabbage caused by R. solani AG-2-1 and AG-2-2 IV in Japan. Therefore, we propose that they are the pathogens of this disease.

  • 清水 遥人, 吉田 直人, 松本 直幸
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 32-36
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    Dydimella bryoniae and Fusarium graminearum have been known as the two common pathogens of rotted winter squash fruit during storage in Hokkaido, Japan. In this study, we revealed that five additional pathogens, causing fruit rot. They were identified based on morphology and rDNA-ITS sequences as Alternaria sp., Arthrinium arundinis, Botrytis cinerea, Rhizopus arrhizus, and R. stolonifer.

  • 永坂 厚
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 37-42
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    キュウリホモプシス根腐病は転炉スラグを用いて土壌pHを7.5程度に矯正すると被害が軽減されるが,そのメカニズムは明確になっていない.pH矯正が感染に与える影響を調べるため,接種したキュウリ苗の根における感染率の評価を試みた.発病根が脆いため,メッシュシートで内部を区切った根箱による簡便な根端部採取法を考案した.採取した根端部より再分離し,土壌pH矯正と無処理対照の根箱で感染率を比較した.無処理対照が平均0.29(最小–最大,0–0.69)であったのに対し,土壌pH矯正では0.18(同,0.03–0.41)となり,一般化線形混合モデルで有意な低下を確認した(p<0.05).キュウリ苗の一部は萎凋していたが,外観健全な根箱のみの比較でも感染率に有意な差があった.土壌pH矯正はホモプシス根腐病菌の感染を抑制することで被害を軽減すると考えられた.この評価法はメカニズムの解明に有用と考えられた.

  • 西村 穂花, 岩舘 康哉, 佐藤 陽菜
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 43-47
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー
    電子付録

    東北地方を中心に,ダイズ紫斑病のアゾキシストロビン水和剤に対する感受性低下菌が確認されている.そこで本研究では,耐性菌発生リスクが低いとされるマンゼブ水和剤に着目し,ダイズ紫斑病に対する防除効果および効果的な使用方法を2019~2021年の3年間検討した.1回散布における散布時期別の防除効果をみると,開花期の25日後や35日後散布において効果が高く,開花期の15日後散布では効果が低かった.散布回数別では,開花期の25日後および35日後を含む2回もしくは3回の散布で高い効果が認められた.以上のことから,マンゼブ水和剤を開花期の25日後頃に初回散布し,その10日後に2回目散布とすることで効果的に紫斑病を防除することが可能と考えられた.

  • 菅原 敬, 渡部 由理, 黒坂 美穂, 高橋 佳孝
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 48-54
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    トルコギキョウ立枯病(病原:Fusarium oxysporum)は山形県内でも被害が拡大しており,生産上の重要な問題となっている.効果的な対策の構築のためには各種の防除効果を土壌中の生菌数で評価するのが望ましいが,本病についての調査事例はほとんどない.そこで最上地域および庄内地域の栽培圃場において本病の発生実態を調査するとともに,薬剤防除を行っている圃場を対象に,防除前~栽培後または越年後における土壌中のF. oxysporumの菌密度と開花期の発病株率を調査した.その結果,立枯病は生育不良等が発生した圃場の85%で確認され広く蔓延していることが明らかになった.クロルピクリン(商品名 クロピクフロー)の畝立後処理では畝および通路の概ね30 cm深まで防除効果が確認された.これより深い層では防除後も病原菌が検出される事例が多かった.このため土壌消毒後の圃場で発蕾期以降に急激に発病するのは,作物の根が防除効果の及ばない下層に伸長して感染することが原因と考えられた.また,栽培により菌密度が上昇し,発病株率が高い圃場ほど顕著であったが,防除の要否の基準となる発病株率は明確には出来なかった.転炉スラグによるpH矯正の効果はある程度認められた.

  • 藤井 直哉, 齋藤 隆明, 渡辺 恭平
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 55-60
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    高密度播種苗栽培に疎植栽培を組み合わせて,イソチアニル・フラメトピル箱粒剤を側条施用(1 kg/10 a)または育苗箱施用(50 g/箱)し,葉いもち及び紋枯病に対する防除効果を検討した.その結果,同剤を箱施用した高密度播種苗・栽植密度37株/坪は,高密度播種苗・同60株/坪や中苗・同60株/坪と比べて,葉いもち及び紋枯病に対する防除効果が低下した.一方,同剤を側条施用した高密度播種苗・同37株/坪,高密度播種苗・同60株/坪及び中苗・同60株/坪は葉いもち及び紋枯病に対して高い防除効果が確認された.

  • 前原 瞳, 山田 真孝, 藤 晋一
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 61-64
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    2021年福島県内で,プロクロラズ剤で種子消毒した苗を移植した水田においてばか苗病が発生した事例が確認され,本病原菌のプロクロラズ剤に対する感受性の低下が疑われた.そこで,福島県内で発生したばか苗病罹病イネから本病菌5菌株を分離し,生物検定および培地上での薬剤感受性を調査した.生物検定において2菌株は発病苗率が0.1%以下であったのに対して,3菌株は発病苗率が4.4~6.8%で,無消毒区に対する防除価が92.1~93.7となり十分な効果が認められなかった.また,プロクロラズ剤に対するMIC値は,防除効果が高かった1菌株では6.25 ppmであったのに対し,効果が低かった3菌株では12.5~25.0 ppmと高くなった.これらの結果,今回,福島県でプロクロラズ剤に対する感受性が低下したばか苗病菌の発生を初めて確認した.

  • 森谷 真紀子, 錦 秀斗, 小関 彩恵子
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 65-69
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    山形県において2018年~2020年の3か年に,現地圃場からイネばか苗病菌124菌株を分離し,培地検定による最小生育阻止濃度(MIC値)と接種種子を用いた防除効果からプロクロラズ剤の薬剤感受性を調査した.各菌株におけるプロクロラズ剤のMIC値の範囲は,2018年菌株と2019年菌株で1菌株を除いて1.0 ppm~20 ppm,2020年菌株では1.0 ppm~12.5 ppmであった.MIC値ごとの菌株数の分布はいずれの年も2山型となった.接種種子に対するプロクロラズ剤の防除効果を,防除価90を基準としてMIC値ごとに評価した.MIC値が3.13 ppm以下の菌株に対しては安定して実用的な効果を示したが,MIC値が5.0 ppm以上の菌株では,実用上効果の低い菌株が多かった.この結果,本県では,MIC値が1.0 ppm~3.13 ppmで実用上プロクロラズ剤の防除効果が得られる感受性菌と,MIC値が5.0 ppm以上で防除効果が劣る感受性低下菌の両方が分布していると考えられた.

  • 羽田 厚
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 70-75
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    海外の先行研究で開発されたVenturia inaequalisのSSRマーカーから,国内のリンゴ圃場で採取したV. inaequalis個体の識別に利用可能な8遺伝子座のマーカーセットを選定した.このマーカーセットを用いてSTRUCTUREによる解析を行うと,リンゴ黒星病の発生が多い県北部や盛岡市近郊のV. inaequalis個体群は,4つの始祖的クラスターの影響を受けており,偏りが少ないこと,発生の少ない地点で採取された個体群は単一の始祖的クラスターに偏っており,過去に強いボトルネック効果が生じたことが示唆された.今後はこれら8種のSSRマーカーをV. inaequalisの個体群構造解析に用い,多発前後における集団の遺伝的浮動や,外部からのDMI剤低感受性菌持ち込みの有無等,病原菌集団の進化過程を定量的に解析することが可能になると期待される.

  • 森 万菜実, 山名 利一
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 76-80
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー
    電子付録

    In 2018, approximately 80% of the apple cultivation areas in Hokkaido were affected by apple scabs. Furthermore, in 2017, DMI-resistant strains of Venturia inaequalis were found in Japan. Therefore, we investigated the sensitivity of V. inaequalis in Hokkaido to DMI. Eighty-two isolates were collected from the apple orchards in Hokkaido. We conducted culture medium tests for difenoconazole and fenarimol sensitivity, and the half maximal effective concentration (EC50) values were calculated. In addition, allele-specific polymerase chain reaction (PCR; Yaegashi et al. 2020) was used to detect the Y133F substitution on all isolates. Allele-specific PCR confirmed that approximately 80% of all isolates had the Y133F substitution. The culture medium tests showed that the EC50 values were higher for isolates with the Y133F substitution than those without this substitution. When the isolates were inoculated and sprayed with difenoconazole and fenarimol fungicides, the fungicides showed effects on the isolates without the Y133F substitution but not on those with the Y133F substitution. Thus, we found that DMI-resistant strains of V. inaequalis were present in Hokkaido.

  • 森 万菜実, 山名 利一
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 81-84
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    In Hokkaido, QoI fungicides have been used for controlling apple diseases. The high-risk of resistant strains of Venturia inaequalis, which cause apple scab, is also well known. We investigated the sensitivity of isolates of V. inaequalis in Hokkaido to QoI fungicides. We conducted polymerase chain reaction (PCR)-restriction fragment length polymorphism (RFLP)-based analysis (Fontaine et al., 2009) to detect the G143A mutation of mitochondrial cytochrome b in V. inaequalis. The PCR-RFLP results showed that approximately 85% of all samples contained this mutation. We also observed that isolates with this mutation grew on a medium that had been treated with a QoI fungicide. Thus, a high proportion of V. inaequalis strains present in Hokkaido were resistant to QoI fungicides. When the resistant isolates were inoculated and sprayed with a QoI fungicide, the fungicide did not have the desired control effect.

  • 仲谷 房治
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 85-96
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    リンゴうどんこ病は,花そう葉全体が奇形化した「芽しぶ」で形成された分生子を伝染源にして第二次感染する.品種「ふじ」において,「芽しぶ」が存在する樹に限り,「芽しぶ」の下方の果そう葉や新梢葉にこれまで報告のない褐色斑点が多数発生することを観察した.褐色斑点は開花14日後頃に果そう葉に発生し始め,その後新梢葉にまん延した.褐色斑点は直径1~4 mmの円形病斑であり,健全部との境界は褐色の明瞭な境界線で区切られる.どの褐色斑点上にもうどんこ病菌と思われる菌糸組織が存在したが,密度は疎で萎びていた.本菌は初期病徴である退緑斑点上や健全葉面上で繁殖し,分生子を多数形成するが,褐色斑点上では,菌糸の伸長や分生子の形成が阻害されており,褐色斑点は抵抗性反応によって形成されるものと推察された.開花直前と落花期にうどんこ病防除薬剤シフルフェナミド顆粒水和剤を散布すると褐色斑点の発生を抑制できた.

  • 長澤 正士, 戸澤 淸徳
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 97-101
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    秋田県沿岸部におけるニホンナシ黒星病の収穫直前(8月下旬)の果実発病に関与するリスク要因を明らかにするため,過去13年間(2009~2021)にのべ117事例で実施した巡回調査データおよび気象データを用いたコホート内症例対照研究およびロジスティック回帰分析を実施した.その結果,8月下旬の果実発病は「6月中旬の果そう葉の発生」と密接な関連がみられ,リスク要因と考えられた.

  • 岩舘 康哉
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 102-107
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    農業生物資源ジーンバンクが配布する「世界のナス・コアコレクション」の中から37系統についてナス褐色斑点病および果実小陥没症に対する感受性差異を検討した.供試したすべての系統において褐色斑点病および果実小陥没症の発生が確認され,無発病の系統はなかった.「WEC018」,「WEC056」および「WEC080」の3系統は,対照品種「くろべえ」と比較し,有意に褐色斑点病の発生が少なかった.本研究の結果は,将来的な本病抵抗性品種開発における基礎的知見として活用できると思われる.

  • 佐々木 大介
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 108-112
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー
    電子付録

    Leaf mold (pathogen: Passalora fulva) and Cercospora leaf mold (Pseudocercospora fuligena), fungal diseases of tomato leaves, have very similar symptoms, while the conidiophores are morphologically distinguished. Therefore, an accurate diagnosis requires observing the conidiophores with a biological microscope. This paper proposed an in-field diagnosis method of both diseases through microscopic observation of their conidiophores by a commercially available sperm observation kit (product name: Men’s Loupe, TENGA Healthcare Inc.) attached to the camera lens of a smartphone. Among the kit components, two types of oval magnetic sheets (“Loupe” with a 550× ball lens in the center and “Plate” with a hole in the edge) were used. The loupe was attached to a smartphone so that the ball lens’s center overlapped the camera lens’s center. Conidiophores were collected from diseased leaf with cellophane tape. The plate with the cellophane tape covering the hole was magnetically attached to the loupe. Conidiophores were observed launching a camera application on the smartphone. The above method had the same diagnosis accuracy for both diseases as a biological microscope.

  • 三澤 知央, 黒瀬 大介, 佐藤 豊三
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 113-118
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    Ripe rot of grape caused by Colletotrichum spp. including the Colletotrichum gloeosporioides species complex (CGSC) is one of the important diseases in grape production. We re-identified seven grape strains deposited as CGSC in the NARO Genebank, Japan, based on the phylogenetic analysis with six loci (rDNA-ITS region, glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase, actin, β-tubulin, calmodulin, and glutamine synthetase genes).These strains were isolated from five prefectures, i.e., Hokkaido, Yamanashi, Shimane, Hiroshima, and Fukuoka. Phylogenetic analysis based on these six loci revealed that one, three and three strains belonged to Colletotrichum siamense, Colletotrichum aenigma, and Colletotrichum viniferum, respectively. Leaves of potted grape plants were inoculated with three representative strains of three species. All inoculated plants exhibited leaf blight symptoms. Colletotrichum siamense, C. aenigma, and C. viniferum have not been reported as grape ripe rot pathogens in Japan, therefore; we propose these three species as the pathogens of the disease.

  • 八木沼 湧太, 田渕 研
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 119-125
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー
    電子付録

    We evaluated the potential availability of the predictive model of pecky rice damage by Stenotus rubrovittatus using land-use data (Tabuchi et al., 2022) in Miyagi Prefecture, considering the data from the Miyagi Prefectural Plant Protection Office. We also improved the model from the combined data of the current study of 38 rice paddies from 2017 to 2020 and from previous studies. We then applied the current study data to the predictive model and calculated the predicted value of pecky rice damage. Moreover, the model of the previous study was improved by adjusting the parameter coefficients of the fixed factors. The accuracy of the improved model was evaluated by comparing the observed and predicted values of the model. The relationship between predicted and observed values was positive and marginally significant in the model of the previous study with the data of the current study. At the same time, the relationship was statistically significant in the improved model. The coefficient of determination of the improved model increased by 0.269 compared with the model from the previous study. Our study demonstrated that the predictive model of pecky rice damage was available with scattered data on the prefectural scale and was possibly applicable in other areas.

  • 吉田 雅紀, 大友 令史, 柄澤 真梨歩
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 126-130
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    岩手県沿岸南部において,2021年9月に水田内および畦畔ですくい取り調査を行ったところ,9地点中8地点でクモヘリカメムシが確認された.また,同地域から稲穂を採集し斑点米被害を調査したところ,14地点中4地点でクモヘリカメムシによる被害が確認され,斑点米混入率は平均0.02%であった.一方,カスミカメムシ類による被害は,14地点中12地点で確認され,斑点米混入率は平均0.48%であった.本地域における斑点米の主要加害種は従来どおりカスミカメムシ類であるものの,クモヘリカメムシの発生地域は拡大していると考えられた.

  • 髙橋 良知, 佐山 玲
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 131-133
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    水稲早生品種において,移植栽培と直播栽培の栽培様式の違いや,移植時期の早晩により出穂期が変動した場合の割れ籾発生について調査を行った.試験に供試した早生品種である「秋のきらめき」と「あきたこまち」における割れ籾の発生は,栽培様式の違いや移植の早晩比較において出穂期が遅くなるほど減少した.

  • 青木 元彦
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 134-137
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    2019, 2020年の2カ年,北海道南部の渡島地方において,ダイズクキタマバエの被害推移を調査するとともに,2薬剤を用いて薬剤散布適期について検討した.被害は7月下旬~8月上旬にダイズ3~4節の葉柄の変色または小葉のしおれから始まり,8月下旬~9月上旬にかけて被害葉柄数が増加した.クロチアニジン水和剤2,500倍またはシペルメトリン水和剤3,000倍を7月中旬と下旬に散布すると,8月中旬まで被害葉柄数を無処理区比50以下に抑制し,安定した防除効果となった.この時期に2薬剤を散布すると,子実重は無処理区より3~48%増加した.その要因として,莢数や粒重の増加が考えられた.

  • 高倉 慎, 浅野 千春, 青木 大祐
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 138-140
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    露地栽培キュウリ3ほ場(須賀川A, Bおよび会津坂下)から採取したワタアブラムシについて,キュウリ葉を用いた簡易検定法でネオニコチノイド系薬剤を主体とした薬剤の効果を検討した.その結果,須賀川A個体群は供試薬剤5剤すべてで感受性があり,須賀川B個体群ではネオニコチノイド系薬剤6剤のうちアセタミプリド水溶剤の補正死虫率が58.3%であったが,その他の5剤は3.3~17.4%と補正死虫率は低かった.会津坂下個体群は供試したネオニコチノイド系薬剤6剤すべてで補正死虫率が10.3%以下と低かった.また,アセタミプリド水溶剤およびジノテフラン水溶剤の半数致死濃度を求め,常用濃度で効果のあった須賀川A個体群を感受性個体群として抵抗性比を算出すると,須賀川B個体群および会津坂下個体群ともに抵抗性比が100倍以上となった.これらのことから,福島県においてネオニコチノイド系薬剤抵抗性を有する個体群が発生している可能性が示された.

  • 小笠原 南美, 平山 和幸, 十川 聡子, 石栗 陽一
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 141-146
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    2015年に青森県内9ヵ所の慣行防除リンゴ園で土着カブリダニ類の発生消長および発生種の調査を行った.5~9月の期間,各園地で月に1回調査を行ったところ,全園地でフツウカブリダニとケナガカブリダニの発生が見られた.優占種はフツウカブリダニであり,発生盛期は7~9月であった.また,2020年に青森県弘前市の慣行防除リンゴ園から採集したフツウカブリダニの雌成虫に対する殺虫剤および殺ダニ剤の影響を室内試験で評価した.殺虫剤では,有機リン剤のフェントエートで補正死虫率が42.5%となったが,これまで悪影響が大きいとされていた有機リン剤やピレスロイド剤を含むその他の剤では0~24.5%と影響は小さかった.殺ダニ剤のうちピリダベン,ミルベメクチンおよびビフェナゼートで補正死虫率がそれぞれ100%, 85.9%および96.5%となり,悪影響が大きかったが,その他の7剤は0~17%で影響は小さかった.これらの結果から,青森県内の慣行防除園に生息しているフツウカブリダニは殺虫剤に対する感受性が低下した個体の割合が増加している可能性があることが示唆された.

  • 加藤 真城
    2022 年 2022 巻 73 号 p. 147-152
    発行日: 2022/12/23
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

    近年,果樹害虫に対する各種カブリダニ製剤の登録が進んでいるが,立木で栽培されるリンゴは比較的樹体が大きく,枝の構成が複雑なため,多くの放飼頭数が必要と考えられ,コスト面等から普及が進んでいない.そこで成木に比べ枝葉の少ない2年生,3年生のリンゴわい化樹において気門封鎖型殺ダニ剤(プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル乳剤)を使用した上で成木に比べて少量(1/2~1/5程度)の放飼量であるミヤコカブリダニ製剤1パックを放飼したところ,ナミハダニ,リンゴハダニに対して十分な効果が得られた.

講演要旨
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