北日本病害虫研究会報
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2020 巻, 71 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
特別講演
報文
  • 伊賀 優実, 藤 晋一
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 14-20
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    種子の含水率を10%以下にする事前乾燥処理と65 °C10分間の温湯消毒を組み合わせる技術(新技術)は,従来法(60 °C10分間処理)よりも防除効果が向上する.この新技術の普及に向けて農家でばか苗病を対象に実証試験を行った.農家での種子予措の各段階でサンプリングし育苗試験を行った.その結果,1/6サイズの育苗箱の試験では従来法では発生が認められたが,新技術では発生が認められなかった.水稲用育苗箱を用いた試験では,新技術で処理した場合,発病苗はわずかに認められる程度でその効果は従来法に比べて高かった.今回の試験では,新技術の試験を行った2件の農家ともに従来法よりも発病苗の発生が少なかった.以上のことから,新技術が生産現場においても従来法よりも高い防除効果が得られることが明らかとなった.

  • 吉田 めぐみ, 大久保 さゆり, 善林 薫, 小林 隆
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 21-31
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    移植栽培および湛水直播栽培の水田圃場が混在する秋田県の大規模経営体において,2017, 2018年の2カ年,イネいもち病の発生様相調査および各種手法で判定した葉いもち感染好適条件の適合性検討を行った.その結果,従来のBLASTAMや1 kmメッシュ気象情報に基づくBLASTAMでは感染好適条件の「見逃し」が生じたが,圃場畦畔に設置した市販の葉面濡れセンサーで計測した濡れ時間データを用いたBLASTAM判定では,「見逃し」を生じることなく感染好適条件を判定でき,本センサーの利用により,葉いもち予察の高精度化を図れることが示唆された.なお本経営体ではいずれの圃場もいもち病の初期防除が行われていたが,調査を行った範囲では,移植圃場に比べ直播圃場で葉いもち発生が早期から認められる傾向があった.また一経営体の中においても,場所によって濡れ時間の差異による感染好適条件の生じやすさの違いが生じうることが示された.

  • 藤根 統, 新村 昭憲
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 32-37
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    北海道では,イネの褐条病と苗立枯細菌病の防除対策として,酸度4.2%の穀物酢を用いた食酢液による循環式催芽が用いられている.本研究では,蒸気式催芽を行う場合の食酢を用いた両病害の防除法について検討した.防除効果と食酢の種子発芽に対する影響から,浸種後半に食酢2%液で浸種する方法が適切であった.一方,浸種した種子を催芽直前に食酢液に短時間浸漬する方法は,浸種中の処理に比べ高い食酢濃度が必要で,防除効果と種子発芽への影響から実用的では無いと考えられた.以上の結果から,浸種期間中の最後の水交換時から食酢2%(50倍)液で種子を基本48時間(許容範囲24時間~72時間)浸種する方法を北海道における蒸気式催芽を行う場合の食酢利用方法とした.

  • 岩間 俊太
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 38-41
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ダイズ紫斑病菌の長期保存菌株を用いた液体培養菌糸を接種源とし,調製後の菌糸懸濁液をポットに養成したダイズの若莢に塗布接種することによって紫斑粒を形成させる接種試験方法を検討した.液体培養菌糸は,液体培地移植用の供試菌株のシャーレ培地における前培養期間を含めて2週間程度の短い期間で得られ,開花期確認後に準備が可能であった.塗布接種は開花期19日後の2019年8月22日に株内全ての若莢に行い,接種後に透明ポリエチレン袋被覆による簡易な湿室保持を8月22~26日の4日間行った.8月26日の袋除去後は,莢黄変期にあたる10月3日の収穫時まで屋外自然降雨条件下で管理した.収穫は全株の全稔実莢を対象に行い,網袋に入れて温室内で自然乾燥後,1莢ずつ手で脱粒して発病粒率を調査した.その結果,発病粒率5%程度の少発生ではあったが,液体培養菌糸は長期保存菌株であっても接種源として利用でき,接種源の準備から接種後の管理方法まで,比較的簡易な試験方法で紫斑粒を形成させることができた.

  • 角野 晶大, 小野寺 政行, 日笠 裕治
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 42-46
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ホウレンソウ萎凋病被害軽減のためpH 7.5を目標に転炉スラグを施用した場合に,萎凋病以外の土壌病害の発生に及ぼす影響を調査した.まず,根腐病,立枯病および株腐病の各汚染土壌を詰めたミニプランターにホウレンソウを播種し,14日後に発病株率を調査した.その結果,いずれの病害も転炉スラグ施用での発病株率が無施用と同程度であった.次に,2016年に転炉スラグを施用したハウスで2017~19年にホウレンソウを年4作栽培し,萎凋病と立枯病の発病株率を調査した.各栽培前の土壌pHは無施用区で6.2~6.7,施用区で7.1~7.6であった.いずれの栽培時でも,施用区の萎凋病の発病株率が無施用区(発病株率0.8~37.4%)の13~73%に軽減されたのに対し,立枯病では無施用区(発病株率0.7~11.4%)の71~226%の発生であり,被害軽減効果や発病の助長はないものと考えられた.以上から,転炉スラグ施用による萎凋病以外のこれら土壌病害の発生への影響は認められなかった.

  • 佐々木 大介, 宇佐見 俊行
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 47-52
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    2018年6月に静岡県で栽培されていたレタス(Lactuca sativa)に,生育遅延や萎凋といった生育不良症状が発生した.根の褐変部位から分離した糸状菌の同定と接種試験により,本症状はBerkeleyomyces rouxiaeによるレタス黒根病であることが明らかとなった.静岡県における本病の発生は本報告が初となる.

  • 大澤 央, 秋野 聖之, 荒木 宏通, 赤井 浩太郎, 浅野 賢治, 近藤 則夫
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 53-57
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    To prevent potato storage rot caused by Phytophthora infestans, we developed a novel chemical control method wherein a fungicide is applied to foliar residue in blighted potato fields. We applied cyazofamid to inoculated residue and sampled the ridgetop soil 7 days later. The population density of P. infestans in sampled soil was quantified using real-time PCR. To evaluate the inoculum potential of each soil, sampled soil was mixed with injured healthy tubers and incubated for 3 weeks. After incubation, the number of rotten tubers was counted. In most experiments, the quantity of P. infestans DNA and number of rotten tubers both decreased with use of proposed method. These results imply that the proposed method may prevent potato storage rot.

  • 近藤 亨, 逵 瑞枝
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 58-61
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    2018年8月,青森県むつ市においてカボチャ果実にいぼ症状が発生した.分離菌株についてカボチャに対する病原性の確認,細菌学的性状解析,遺伝子解析を行った結果,分離菌をPseudomonas syringae pv. syringae,本症状をカボチャ果実斑点細菌病と同定した.青森県におけるP. syringae pv. syringaeによるカボチャ果実斑点細菌病の発生は初めての報告である.

  • 永坂 厚, 横田 啓, 上杉 龍士, 逵 瑞枝, 笠井 友美, 本庄 求, 菅原 茂幸
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 62-68
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    東北地域の春まきタマネギ栽培では鱗茎にBurkholderia cepaciaによるタマネギ腐敗病が発生して問題となっているが,防除体系は明確になっていない.東北地域の複数の圃場において,慣行防除体系とアザミウマ類および細菌病に対する効果が高いと想定した防除モデル体系を比較したところ,防除モデルの方がタマネギ腐敗病の発生が少なくなった.

    そこで,この要因について検討するため,防除モデルのうち細菌病防除剤あるいは殺虫剤を無散布とした区,およびその両方を無散布とした区を設定した.その結果,タマネギ腐敗病の発生は,細菌病防除剤を無散布とした区が防除モデル区と同等であったが,殺虫剤を無散布とした区では,両方を無散布とした区と同様に多くなった.さらに,ネギアザミウマ寄生虫数と発病率に有意な正の相関が認められた.したがって,タマネギ腐敗病の効果的な防除にはネギアザミウマの防除が寄与するものと考えられた.

  • 横田 啓, 熊谷 初美, 佐々木 達史
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 69-73
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    東北地域の春まきタマネギ栽培ではBurkholderia cepacia complex細菌を主因とするりん茎の腐敗が問題となっている.栽培現場ではすでに各種細菌病に対する殺菌剤(細菌防除剤)が散布されているが,これらのりん茎腐敗に対する効果は明確ではない.そこで,殺虫剤と細菌防除剤の組合せが腐敗と収量に及ぼす影響について,2018~2019年の2ヵ年検討した.

    殺虫剤によるネギアザミウマ防除と細菌防除剤を併用した場合は腐敗球率が低下したこと,細菌防除剤単独では効果が低い事例が確認されたことから,細菌防除剤のりん茎腐敗に対する防除効果を得るためには殺虫剤によるネギアザミウマ防除が必須と考えられた.なお,細菌防除剤の種類や散布時期には収量確保の観点から今後検討する必要がある.

  • 三澤 知央, 黒瀬 大介
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 74-79
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    In March 2018, bud rot and basal petiole rot of strawberry were found in Hokkaido, Japan. An isolate obtained from the diseased tissue was identified as Rhizoctonia solani anastomosis group (AG)-2-1・Subset3 (AG-2-1/Nt) based on the anastomosis reaction, culture appearance, temperature-dependent growth characteristics, specific PCR, and DNA sequences of the rDNA-ITS region. Original symptoms were reproduced on inoculated plants with the isolate. This is the first report of strawberry bud rot caused by R. solani AG-2-1・Subset3 in Japan; therefore, we propose its inclusion as one of the pathogens of the disease.

  • 岩舘 康哉, 佐々木 陽菜
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 80-83
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ナス褐色斑点病および同病に由来すると推定される果実の小陥没症に対する8種殺菌剤の防除効果を検討した.その結果,イソピラザム水和剤,ベンチオピラド・TPN水和剤,アゾキシストロビン水和剤,ペンチオピラド水和剤等は,褐色斑点病および果実の小陥没症に対する防除効果が高かった.また,これらの薬剤は,褐色斑点病菌の子実層形成抑制効果も高かった.

  • 岩舘 康哉
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 84-87
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ナス褐色斑点病および果実の小陥没症に対する感受性の品種間差異を圃場試験により検討した.果色や果形,へたの色など形質が異なる11品種について調査した結果,感受性の品種間差異が確認されたものの,全供試品種において褐色斑点病および果実の小陥没症の発生が確認された.褐色斑点病や果実の小陥没症の発生が比較的少ない「味しらかわ茄子」などの品種もみられたが,求められる果形・果色や用途が明確なナス栽培では,品種の切り替えは容易ではない.そのため,品種の切り替えのみで本病および果実の小陥没症の被害を完全に回避することは困難と思われた.

  • 大竹 裕規, 野地 晴奈, 安田 敬
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 88-89
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    福島県のトルコギキョウ栽培施設において,トルコギキョウ斑点病に対する各種薬剤の防除効果を検討した.その結果,TPN水和剤,トリフルミゾール水和剤,ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤,アゾキシストロビン・メタラキシルM粒剤の4剤で防除価が80以上となり,防除効果が認められた.

  • 猫塚 修一, 名久井 一樹, 遠藤 歩美
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 90-96
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    開花直前にDMI剤を使用する防除体系におけるリンゴ黒星病発生のリスク要因を明らかにするため,過去30年間(1990~2019年)に岩手県内3地域で5月後半~9月後半に行った巡回調査データおよびアメダス気象データを用い,黒星病の発生の有無を従属変数,各要因を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った.黒星病の発生は「前年秋期の発生」および「感染好適日の早期出現」との有意な関連が認められ,これらがリスク要因であると考えられた.

  • 中野 央子
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 97-99
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    新規系統剤を含めた斑点米カメムシ類に適用登録を持つ6剤の残効性を検討するため,アカヒゲホソミドリカスミカメTrigonotylus caelestialiumとアカスジカスミカメStenotus rubrovittatusの室内放飼試験及び圃場に網枠を設置し薬剤処理7日後にアカスジカスミカメを放飼する試験を行った.室内での薬剤散布後日数を変えた殺虫効果から,約2週間の殺虫効果が見込めるのはジノテフラン水溶剤のみであった.また,カスミカメ2種に対する殺虫効果に薬剤による特性の違いが見られ,エチプロール水和剤とスルホキサフロル水和剤は薬剤処理7日後にはアカスジカスミカメに対する殺虫効果が低下し,クロチアニジン水溶剤は薬剤処理翌日からアカスジカスミカメに対する殺虫効果が低いことが示唆された.圃場試験で斑点米混入率が対無処理比50以下となったのはジノテフラン水溶剤,エチプロール水和剤,スルホキサフロル水和剤の3剤であった.

  • 上野 清, 田渕 研
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 100-107
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    飼料用米圃場の斑点米カメムシ類(アカヒゲホソミドリカスミカメ,アカスジカスミカメ)が隣接する主食用米圃場に及ぼす影響について検討した.殺虫剤散布を2回行った主食用米圃場では隣接する飼料用米圃場での斑点米カメムシ類を対象とした防除の有無に関わらず散布後のすくい取り虫数や斑点米混入率はほぼ同等であり,無防除の飼料用米圃場が主食用米圃場に隣接することで斑点米の発生量が変動する根拠は得られなかった.一方で,主食用米圃場で殺虫剤を2回散布したにも関わらず斑点米混入率を0.1%以下に抑えることができない試験圃場があり,その要因は水田のイヌホタルイ等カヤツリグサ科雑草の繁茂によるものと考えられた.

  • 田渕 研, 吉村 英翔, 上杉 龍士, 大江 高穂, 髙橋 明彦
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 108-113
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    The rice bug, Leptocorisa chinensis (Hemiptera: Alydidae), was first recorded in Rikuzentakata, Iwate Prefecture, Japan, in 2019. This species has a known distribution in southern Japan, and its northern limit was previously reported to be almost 100 km south of the new record. We investigated the current distribution status, crop damage, and potential overwintering area for the species. We captured individuals of L. chinensis in 6 of 11 sites examined in 2019. These sites were considerably close to evergreen coniferous forests, which is the overwintering habitat of this species. Pecky rice damage by L. chinensis was observed at all of the sites examined in 2018 (n=3) and 9 of the 11 sites in 2019, suggesting that adults had invaded paddy fields in nearly all of the research areas. The damage was almost 1/10 compared with that caused by other major pecky rice bugs (e.g., Stenotus rubrovittatus), and no serious damage caused by L. chinensis was observed. The mapping of previous winter temperature data shows that the potential overwintering area of this species has been gradually expanding, which highlights the need for further investigation of its distribution.

  • 新山 徳光
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 114-117
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    イヌホタルイの多発生ほ場と隣接する少発生ほ場におけるアカスジカスミカメの発生状況を2か年調査し,本種成虫が多発生ほ場から隣接ほ場へ侵入するか否かを検討した.その結果,イネ出穂前ではイヌホタルイの多発生ほ場においてアカスジカスミカメ成虫が多発生となっても,隣接ほ場のイヌホタルイやノビエが無発生条件では本種の発生がまったく認められず,侵入が起こらないことが確認された.しかし,イネ出穂後では,イヌホタルイの多発生ほ場における成虫発生ピークと同時期に,密度は低いものの隣接ほ場においても成虫発生ピークが認められたことから,どこから侵入したのか判然としなかった.

  • 大江 高穂, 小野 亨, 横堀 亜弥, 加進 丈二
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 118-123
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ダイズサヤムシガの発育零点と有効積算温度定数を明らかにするため,2017, 2018年に宮城県古川農業試験場内のダイズほ場から得られたダイズサヤムシガを用いて,異なる温度における卵期,幼虫期,蛹期の発育日数の違いを検討した.その結果,15~35 °Cの範囲内における卵期の発育日数,15~23 °Cの範囲内における幼虫期,蛹期の発育日数が明らかとなった.以上のデータから不偏長軸法を用いた有効積算温度法則パラメータの推定を行った結果,各ステージの発育零点と有効積算温度定数は,それぞれ卵期:8.5 °C,74.8日度,幼虫期:4.7 °C,329.6日度(雄:4.3 °C,346.2日度,雌:4.3 °C,329.9日度),蛹期:8.6 °C,172.6日度であると推定された.

  • 大江 高穂, 小野 亨, 横堀 亜弥, 加進 丈二
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 124-130
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ダイズほ場におけるダイズサヤムシガの発生消長と子実被害の関係を明らかにするため,2016~2018年に宮城県古川農業試験場内において,フェロモントラップによる成虫の発生消長,見取り法による幼虫の発生消長を調査し,子実被害との関係を解析した.その結果,ダイズサヤムシガはダイズほ場において年2~3回発生することが明らかとなった.また,有効積算温度によるダイズほ場での発生世代を推定した結果,ダイズサヤムシガは,ダイズほ場侵入前に1世代経過しており,ダイズで発生する幼虫は第2~4世代幼虫であった.子実肥大期以降に発生する第4世代幼虫の発生ピーク時の発生量からの被害予測が可能か検討したところ,幼虫数と子実被害の間に正の相関関係が認められた.一方,フェロモントラップによる誘殺数と第4世代幼虫数との間に有意な関係性は認められなかった.これらの結果から,フェロモントラップ誘殺数から第4世代幼虫数を予測し,子実の被害程度を推定することは難しいと考えられた.

  • 上杉 龍士, 田渕 研, 小西(降幡) 令子, 吉村 英翔
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 131-137
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    キャベツ圃場でのオオムギ混植とネット障壁設置による害虫の発生抑制効果とその要因を検証した.対照区(無処理区),ネット障壁区(物理的障壁区),オオムギ混植区を比較したところ,コナガ,キンウワバ類,モンシロチョウ,およびアブラムシ2種いずれについても,オオムギ混植区で発生量が最も低く抑えられ,特にモンシロチョウとアブラムシ2種に対する効果が顕著であった.ネット障壁でも害虫の発生が抑制されたが,その効果はオオムギ混植に劣った.このことから,オオムギには害虫に対する物理的障壁機能に加えて,害虫の定位行動を視覚的・化学的に攪乱する機能の存在が推察された.また本研究では,オオムギ混植によるゴミムシ類,クモ類,アリ類,コメツキムシ類の発生量の増加はなく,これらの天敵類は害虫の発生抑制の要因ではないと考えられた.一方で,キャベツ葉上のヒラタアブ類幼虫・蛹がオオムギ混植区で速やかに増加したことから,これがアブラムシ類の発生抑制の一要因であると考えられた.

  • 荻野 瑠衣, 武澤 友二, 岩崎 暁生
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 138-143
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    In the onion fields of Hokkaido, a major northernmost island of Japan, outbreaks of stone leek leafminer (Liriomyza chinensis) infestation have been occurring since 2013. In fields where heavy leaf damage occurred, a proportion of the harvested bulbs showed damage from larval mines, in addition to evidence of larval remains. The capture rate of adults in yellow sticky traps indicated that leafminers produce three generations annually. The peaks include the hibernating generation (late May to early June), first generation (mid-July to late July), and second generation (mid-August to late August). The position of the damaged scales and the timing of leaf emergence indicated that bulb damage from oviposition occurred after mid-June.However, the most effective time to implement control measures against larval invasion was in early August,when two applications of effective insecticide reduced onion damage by 1/10.

  • 新藤 潤一
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 144-148
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    ニンニクの重要害虫であるチューリップサビダニのニンニク茎葉での寄生部位を,越冬前から収穫期まで調査した.サビダニは越冬前から越冬直後の4月には葉身だけに寄生していたが,5月中旬には葉身基部でも認められるようになり,5月下旬には葉鞘内部への侵入が確認された.以降は収穫期まで葉鞘内部が主な寄生場所であった.6月下旬の収穫期に近づくにつれてりん球先端から寄生部位までの距離が短くなり,収穫物にサビダニ寄生部位が含まれることが明らかになった.このりん球を種子として使用することで翌年の被害が発生すると考えられた.

    5月下旬から6月中旬にかけて薬剤が到達しにくい葉鞘内部に侵入しているサビダニに対し,師管,導管双方における浸透移行性を有するスピロテトラマト水和剤の2週間間隔2回散布の防除効果を検討した.その結果,本剤の茎葉散布は収穫後のニンニクりん球のサビダニ寄生数を著しく低下させ,高い防除効果が認められた.

  • 関根 崇行, 伊藤 博祐, 柴田 昌人, 駒形 泰之
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 149-156
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    Bioassays were conducted to assess the efficacy of 11 acaricides against 12 populations of two-spotted spider mite, Tetranychus urticae, collected from apple orchards in the central and southern Miyagi prefecture. Milbemectin, BPPS, acequinocyl and bifenazate, which were used infrequently in the last 10 years, showed high efficiency in all or most populations. The efficiency of cyenopyrafen and cyflumetofen, which were frequently used in most orchards are classified as IRAC code 25A, was reduced in multiple populations. Spiromesifen, which was also frequently used, showed high efficiency in most populations but reduced efficiency in some populations. This indicated that some precautionary measures, such as biennial application, need to be taken to delay the reduction of acaricides susceptibility. Surveys of the surrounding environment indicated that the orchards where many acaricides showed a higher efficiency tend to be surrounded by forest.

  • 木村 佳子, 小笠原 南美
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 157-161
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    Bioassays were carried out to examine the susceptibility of hawthorn spider mites, Amphitetranychus viennensis to insecticides and acaricides. The eggs and adult females that originated from a population in a commercial apple orchard in Aomori Prefecture, were highly susceptible to pyrethroids, acaricides, flufenoxuron and spinetoram, while they were less susceptible to organophosphates, diamides, neonicotinoids, BTs, flonicamid, ethiprole, pyrifluquinazon and IGRs excluding flufenoxuron, in the bioassays conducted in 2019.

    Considering the above results and temporal trends in the insecticides used in apple orchards, the recent increase of hawthorn spider mite in apple orchards under pest control may be due to the decreased susceptibility to organophosphates and the frequent use of insecticides that do not effectively to hawthorn spider mite.

  • 岩崎 暁生
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 162-166
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    Synthetic Grapholita dimorpha sex pheromone traps were settled in an apple/cherry orchard in Naganuma, central Hokkaido, between the summers of 2017 and 2019. Examinations of male genitalia of all the trapped Grapholita moths revealed that two congeneric species other than G. dimorpha were also trapped, i.e., G. inopinata and G. andabatana. G. dimorpha moths were trapped continuously during late May and early/middle September, with the peak period of each generation as follows; Hibernating generation: late May to early June, first generation: late July to early August, and second generation: late August. Among a total of 44 G. inopinata moths trapped, 43 were trapped between late June and late July, with only one exception caught between 21 and 25 May, 2019. A total of eighteen G. andabatana moths were trapped between late June and late July.

  • 伊藤 慎一, 五十嵐 美穂
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 167-170
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    セイヨウナシの発芽前にセイヨウナシハモグリダニ(仮称)Eriophyes sp.2に対し,石灰硫黄合剤10倍およびマシン油乳剤50倍の防除効果が認められた.また,発芽前のスピロテトラマト水和剤2,000倍は,前述の2剤に比較して散布44日後の効果がやや低かったが,散布70日後にはマシン油乳剤区と同等の被害葉率となり,遅効的であるが効果は認められた.

    2018~2019年の6月に採取した本種の被害葉を所定濃度の供試薬液に5秒間浸漬する簡易感受性試験の結果,セイヨウナシ生育期の薬剤は,ビフェントリン水和剤とクロルピリホス水和剤の各3,000倍とトルフェンピラド水和剤2,000倍の効果が高かった.

  • 五十嵐 美穂, 伊藤 慎一, 菅 太一
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 171-176
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    山形県庄内地域のセイヨウナシに発生したセイヨウナシハモグリダニ(仮称)の越冬場所,越冬場所からの離脱および越冬場所への移動時期,そして生育期の果実に対する加害状況について調査した.その結果,セイヨウナシハモグリダニの越冬は芽鱗片内部で行われ,頂花芽の寄生芽率が高く,寄生している虫数も多かった.離脱は発芽期頃から始まったが,早期離脱せずに越冬部位である芽内部を加害し,火ぶくれ症状を引き起こすことが認められた.また,生育期後半の芽鱗片内への移動時期については明らかにすることはできなかったが,移動は11月下旬まで続くことが示された.果実に現れるサビ症状は,本種が花托に侵入することで生じ,幼果期以降は加害できないと推察された.

  • 伊藤 慎一
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 177-181
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    2018~2019年に雨よけ栽培の大粒種ブドウ圃場において,クビアカスカシバ幼虫に対するジノテフラン水溶剤の樹幹塗布効果を検証した.調査樹は予め塗布部位となる主幹部の粗皮削りを行い,成虫発生直前の5月24日にジノテフラン水溶剤1 gと水1 mの割合で混和して調整した薬液40 mLを刷毛で塗布した.

    塗布後は概ね10日間隔で,樹当たりの寄生幼虫数を調査した.塗布樹の処理88~101日後までの累積幼虫数の密度指数は22~25で,塗布未処理樹に比較して低く被害抑制効果が認められた.

    また,それぞれ主幹径10 cmの「高尾」と主幹径18 cmの「ピオーネ」から収穫したブドウ果房のジノテフラン成分残留量を分析した結果,検出数値はそれぞれ0.04 ppm, 0.05 ppmで同程度であった.

  • 降幡 駿介, 岸本 英成, 三代 浩二, 外山 晶敏, 井原 史雄
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 182-187
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    To investigate seasonal capturing prevalence of fruit-spotting bugs in northern Japan and to examine capturing characteristics of pheromone-baited waterless pyramidal traps, we carried out a seven-year field study at Morioka City, Iwate Prefecture, in northern Japan. We also carried out an eight-year study at Tsukuba City, Ibaraki Prefecture, in central Japan. At Morioka, Plautia stali showed prevalence with two peaks of adults and one peak of nymphs, Halyomorpha halys showed almost no capture except for one peak of adults in autumn, whereas Glaucias subpunctatus was not captured at all. At Tsukuba, P. stali was captured throughout the seasons but especially in summer. H. halys showed prevalence with two peaks in spring and autumn, and G. subpanctatus was captured only in late autumn. These results reflect the environment of each site, including weather and food distribution at local and/or landscape levels.

  • 有賀 雅喜, 高倉 慎, 野地 晴奈
    2020 年 2020 巻 71 号 p. 188-191
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/12/15
    ジャーナル フリー

    2018年11月に福島県のポインセチア栽培施設で初めて確認されたモトジロアザミウマについて,ピーマンで継代,飼育している系統を用い,卵,幼虫,成虫のそれぞれの生育ステージで,キチン生合成阻害剤のフルフェノクスロン乳剤およびルフェヌロン乳剤の防除効果を検討した.

    その結果,両剤ともに産卵直後の薬剤浸漬処理では殺卵効果が高かった.一方,孵化直前の卵に対しては殺卵効果が認められず,幼虫が孵化したが,それら孵化幼虫はすべて死亡したことから卵期間を通して高い殺虫効果を期待できると考えられた.幼虫では,両剤ともに薬剤処理6日後で補正死虫率95%以上と高い効果が認められた.成虫では,薬剤処理した葉を摂食させても,両剤とも殺虫効果は認められなかった.しかし,薬剤処理後5日間は孵化幼虫の出現数が対照区と比較して少なくなったことから,成虫に対する産卵阻害もしくは産下卵の孵化を阻害する効果があると推察された.

講演要旨
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