関節リウマチ(RA)の発症および重症度と, HLA-DRβ鎖のposition 7-74にQKRAA, QRRAA, RRRAAのいずれかをコードするHLA-DRB1アリルとの有意な関連は, 集団を超えて確認され, RAにおけるもっとも確立した疾患感受性遺伝子と認識されている. これらの配列は“shared epitope”と総称され, HLA-DRB1*0401, 0404, 0405, 0410, 0101, 1001, 1402などがこれをコードする代表的なアリルである. この関連の分子機構は未解明であるが, 近年, HLA-DRB1 shared epitopeとRAの関連は, 特に抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体陽性RA群において顕著に認められることが明らかになった. また, MHC領域には, HLA-DRB1以外にもRA感受性遺伝子が存在することが強く示唆されている. 今後, これらの知見を, 病因解明, 創薬, 個別化医療, 予防医学に連結する研究が期待される.
1型糖尿病は多因子疾患であり, 病因的に必ずしも均一な疾患ではないが, 主に自己免疫が関与しているため, 古くからHLA遺伝子の関与が知られていた. 近年のゲノムワイド相関解析でも, HLA領域の関与が最も大きいことが確かめられている. 一方で, HLA領域は多型に富み, 広い範囲にわたって連鎖不平衡を示す特異な領域であることから, 何が1次的な遺伝因子なのか, 長年にわたり議論の的となってきた. 現在のところ, HLA遺伝子ではクラスIIに属するDRB1遺伝子とDQB1遺伝子の多型の組み合わせで疾患の感受性/抵抗性が規定されていると考えられる. また, クラスIに属するHLA-B遺伝子もクラスII遺伝子とは独立した遺伝因子であるとする報告が多い. さらに, クラスIIIに存在する非HLA遺伝子も強い相関を示すが, 我々は2遺伝子座解析によりTNFA遺伝子はHLA遺伝子との連鎖不平衡により2次的な相関を示すこと, IKBL遺伝子は主に抵抗性に相関し, HLA遺伝子とは独立した遺伝因子である可能性を報告してきた.
「はじめに」1998年10月に岡山大学において日本で初めての生体肺移植が成功し1), 2000年には東北大学2)と大阪大学3)で待望の脳死肺移植が始まった. その後日本の肺移植は着実な発展を遂げ, 2008年6月現在までに, 6つの肺移植施設(東北大学, 京都大学, 大阪大学, 岡山大学, 福岡大学, 長崎大学)で113例(生体69例, 脳死44例)の肺移植が行われた. 国際心肺移植学会が報告した肺移植23,716例の5年生存率は約50%である. 4)一方, 日本の肺移植数は少ないが, その成績は5年生存率約70%と良好である. 5)肺移植後のもっとも頻度の高い死亡原因は, 6ヶ月以上経過してから生じる慢性拒絶反応である. 2008年現在, 慢性拒絶反応に対する明らかに有効な治療法はない. そして, 急性拒絶反応が慢性拒絶反応の引き金となることが推測されていることから, 急性拒絶反応の適切な治療が慢性拒絶反応の予防となることが期待されている. ここでは肺移植の免疫について概説する.