日本組織適合性学会誌
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4 巻, 3 号
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原著論文
  • 小林 明, 豊島 幹夫, 吉富 淳, 千田 金吾, 松原 亨一, 小出 幸夫, 佐藤 篤彦, 吉田 孝人
    1998 年 4 巻 3 号 p. 131-137
    発行日: 1998年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    日本人サルコイドーシス患者53名を対象とし, ヒト主要組織適合性抗原クラスIIのDRB1, DQB1, DPB1各対立遺伝子のDNAタイピングを行った. 遺伝子増幅法としてトランスクリプションメデイエイテッドアンプリフィケーション法とポリメレースチェインリアクション法を用い, 検出法としてハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ法を用いた. 患者群全体では, DRB1^* 0803, DQB1^* 0601が増加しており有意差を示した. DPB1では, 有意な差はみられなかった. 男性群ではDRB1^* 1502, DQB1^* 0601, ^* 0402が, 女性群ではDRB1^* 0405, DQB1^* 0401が有意に増加しており, 男女に違いがみられた. サルコイドーシス(サ症)は病因不明の多臓器肉芽腫性疾患であり, その発症には外来抗原などの環境要因と, ヒト主要組織適合性抗原(HLA)などの遺伝要因が複雑に関係しているとされている. HLAは遺伝的に高度な多型性を持ち, 抗原ペプチドをT細胞に提示することで, 免疫系において中心的な役割をはたしている. HLAは, 免疫異常が関係する疾患に対する感受性を規定する要因の一つと考えられており, I型糖尿病や, 慢性関節リウマチなど, 多くの疾患でその疾患感受性との関係が研究されている. サ症では眼所見のある症例でHLA-DRB1とDQB1の対立遺伝子座をDNAタイピングした報告があり, 眼病変の病型や病変部位の違いにより相関性を示すクラスII対立遺伝子が異なることが知られている. 呼吸器に所見のある症例でのHLA-DRB1と, DQB1をDNAタイピングした報告は少なく, DPB1のDNAタイピングの報告はまだない. 著者らは, より詳細で正確なタイピング結果を得るためシークエンススペシフィックオリゴヌクレオチド(SSO)法の一つであるハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(HPA)法を用い, サ症患者のHLA-DRB1, -DQB1, -DPB1の対立遺伝子(アリル)タイピングを行い, 健常人群との比較を行うことにより, 免疫遺伝学的探求を試み, 興味ある新しい知見を得たので報告する.

  • 斉藤 敏, 大田 智, 橋爪 清隆, 福島 弘文, 太田 正穂, 山田 英世
    1998 年 4 巻 3 号 p. 138-145
    発行日: 1998年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    成分献血ドナー, 血液病患者及びその家族のクラスIタイピングにおいて, 現在使用している5種類のHLA-Cw8抗血清による反応パターンの違いから, Cw8抗原が3種のサブタイプに分類された. それぞれの反応パターンを示す細胞からDNAを抽出しHLA-CについてPCR-SSP法を用いてDNAタイピングを実施したところ, HLA-Cw^* 0801, Cw^* 0802, Cw^* 0803の3アリルが識別された. 抗血清の反応パターンによるCw8抗原の分類と3種類のCw^* 08アリルとの間には相関性があり, 今回使用した抗血清によりHLA-Cw^* 08の3アリルが血清学的に識別可能であった. 日本人におけるHLA-Cw^* 0801, Cw^* 0802, Cw^* 0803の遺伝子頻度はそれぞれ6.3%, 0%, 2.3%で, 2座間における連鎖不平衡はHLA-Cw^* 0801ではA26.1(A^* 2602), B71(B^* 1518), B^* 4006, B^* 4801が推定され, Cw^* 0803ではB^* 4801が推定された. 更に, 3座間の連鎖不平衡としてA24-Cw^* 0801-B^* 4006, A26.1-Cw^* 0801-B^* 4006, A24-Cw^* 0803-B^* 4801の3ハプロタイプが推定された.

シリーズ:異種のMHC
  • 椎名 隆
    1998 年 4 巻 3 号 p. 146-154
    発行日: 1998年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    これまで, MHC領域が解析されていた鳥類はニワトリである. しかし, そのMHC領域におけるクラスIおよびクラスII遺伝子の構成並びに発現遺伝子数はその他の動物種とは異なった様相を呈している. 本稿において, ニワトリと近縁であると考えられているウズラのMHC領域の遺伝子解析を行ったところ, クラスI領域とクラスII領域とが独立していること, 少なくとも4つ以上のクラスI遺伝子が発現していることなどから, ウズラとニワトリとのMHC領域の遺伝子構成に大きな相違が見い出された. この理由として, 両者の生育する環境や人為的な選抜淘汰などが挙げられる. 主要組織適合遺伝子複合体(major histocompadbility complex:MHC)は自己と非自己を認識し, 免疫応答を司ることにより, 個体の生体防御機構の一旦を担っている抗原をコードする遺伝子群である. ヒトのMHC領域は第6染色体短腕上の6p21.3に位置し, 約4Mb内に230近くの遺伝子が存在するという, 他のゲノム領域と比較して遺伝子密度が顕著に高い領域である(1). また, この領域は, 高度な遺伝的多型性を有していること, 100以上の疾患と高い相関を持つことなどの興味深い特徴を有する. ニワトリのMHC領域(B遺伝子型)も, 組織適合性, 補体活性, T-B細胞間相互作用など種々の免疫機能に関与していることはもとより, マレック病, ラウス肉腫, 家禽コレラなどに対する抵抗性, 産卵率, 育成率および死亡率などの経済形質等についても血清学的手法並びに分子生物学的手法を用いた解析によりMHC領域により支配されていることが報告されている. これらは他の総説にまとめられているので参照されたい(2〜4). これまでの鳥類のMHCについての研究は1961年の最初の報告以来, 現在に至るまでニワトリに関する知見を中心に展開されてきた(5). ここでは, ニワトリのMHC領域の遺伝子構成についての概略, 並びにウズラを材料に用いた著者らの研究成果に基づくトリMHC領域における遺伝子構成の差異および今後の展望について概説する.

シリーズ:血清学
  • 田中 秀則
    1998 年 4 巻 3 号 p. 155-168
    発行日: 1998年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    現在全国の血液センターでは, 濃厚血小板HLA「日赤」供給に必要な成分献血登録者及び骨髄バンク登録者のHLAタイピングを行っている. この検査に使用されるHLAタイピングトレイは, 各トレイ供給センター(全国9センター)または各血液センターで作製されていた, それぞれのタイピングトレイは, 異なる抗血清を使用して作製されていることから, センター間におけるタイピング精度が均一化されていないのが現状であった. このような問題について, 血液センターで構成される「白血球・血小板抗原型に関する研究会」では, タイピング精度の向上と均一化を行うためのひとつとして, 各血液センターで使用するタイピングトレイの共通化について検討を行った. そのため, 全国の各血液センターが保有しているHLA抗血清の再評価を行い, 共通化したトレイの作製およびその供給の可能性について検討を行った. その結果, 量的にも質的にも全国の血液センターで使用するタイピングトレイの供給が可能と考えられ, 平成9年7月より日本赤十字社内で行っている試薬製造業務のひとつとして, HLAタイピング用全国共通トレイ(共通トレイ)の製造及び供給が行われるようになった. ここでは, 以下の内容について概説したい. 1. 共通トレイの製造及び供給システム 2. DNAを使ったHLA再検査システム 3. 共通トレイ使用抗血清について

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