日本組織適合性学会誌
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19 巻, 2 号
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総説
  • 小林 孝彰
    2012 年19 巻2 号 p. 199-209
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    クロスマッチ, HLA抗体検査は腎移植医療において不可欠な検査である. 移植前では, ドナーに対するHLA抗体(DSA:Donor Specific Antibody)の有無(そして量)を判定することで, 抗体関連型拒絶反応を引き起こすリスクの高い移植を回避することができ, また, 移植を決行する場合にはその準備(脱感作療法)も可能となる. 献腎移植は, 十分な術前検査が可能な生体腎移植とは状況が異なる. 日本でも公平, 公正な臓器配分システム(臓器移植ネットワーク)が構築されている. しかしながら, 移植医療が一般的に受け入れられている欧米に比べ日本では, 登録患者に対する検査, ドナー発生時の検査において様々な課題が残されている. また, 新規に産生されたHLA抗体, とくにDSAと慢性拒絶反応との関連は数多く報告されているが, 移植後のHLA抗体モニタリングの有用性については明らかにされていない.

原著論文
  • 尾崎 有紀, 鈴木 進悟, 吉川 枝里, 重成 敦子, 岡 晃, 光永 滋樹, 椎名 隆, 猪子 英俊
    2012 年19 巻2 号 p. 211-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/03/30
    ジャーナル フリー

    著者らはHLAクラスI遺伝子であるHLA-A, -Bおよび-Cの全領域をそれぞれ特異的に増幅させるPCR, Roche GS Juniorを用いた次世代シークエンシング, 塩基配列の編集およびアリル判定までの一連の過程により, 8桁レベルの超高解像度DNAタイピング(Super high resolution Single molecule-Sequence Based Typing;SS-SBT)法を開発し, これについて報告した. 一方, クラスII遺伝子であるHLA-DRB1についてSS-SBT法を実施するためには, HLA-DRB亜領域に存在する5種類の構造多型がPCRプライマーの設計の際に問題となる. そこで本研究では, HLA-DRB1遺伝子のエクソン2からエクソン6について, 血清学的グループ特異的に増幅させるPCR系を開発し, このPCR産物の次世代シークエンシングにより, HLA-DRB1についてambiguityを排除した8桁レベルの超高解像度DNAタイピング(SS-SBT)法を開発することを試みた. その結果, 従来法では単一のアリル判定が困難な19検体について次世代シークエンサーを用いたDNAタイピングを行ったところ, 2つのアリルを除き, 全ての検体について8桁レベルのHLA-DRB1アリルが判定された. また, この過程にて5種類の新規HLA-DRB1アリルが検出され, それらのうちの1種類はエクソン4に非同義置換を伴うものであった. したがって, 本法はambiguityの認められない8桁レベルの単一のアリルまで判定が可能なHLA-DRB1タイピングに有効であるとともに, 新規HLA-DRB1アリルやnullアリルを効率よく検出するための優れた手法であることが示唆された.

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