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遠藤 佑香, 藤原 崇, 荒川 丈夫, 小泉 理美, 森 麻紀子, 岩崎 将, 千葉 和朗, 來間 佐和子, 桑田 剛, 小泉 浩一, 神澤 ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
44-48
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
胃型腺腫は,胃底腺の頸部粘液細胞への分化が主体の腫瘍で,主に胃のUM領域に発生する比較的稀な疾患である。十二指腸にも生じるが報告例が少なく,その臨床像や内視鏡像については知られていない。2010年8月~2014年6月までの間に,病理組織学的に十二指腸の胃型腺腫と診断された8例について検討を行った。平均年齢は66歳,男女比は5 : 3,大きさは平均12.5mmであった。占拠部位は球部6例,下行脚2例で,肉眼形態は0-Ⅰ型7例,0-Ⅱa型1例であった。表面性状は絨毛様6例,脳回様2例であった。NBI併用拡大観察を行えた3例中2例でwhite opaque substance(WOS)が陽性で,表面微細構造が評価できた2例では,腺窩辺縁上皮の幅は不均一で,形状も不均一であった。微小血管構築像も2例で観察でき,いずれも口径不同,走行不整を呈していた。治療は,8例中3例で内視鏡治療,2例で手術が行われ,癌の合併は認めなかった。
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田崎 修平
2015 年 86 巻 1 号 p.
49-52
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
Helicobacter pylori(
H. pylori)陽性の慢性胃炎患者では,粘稠な粘液が胃壁に付着し,胃内の内視鏡観察に支障を来すことが多い。内視鏡観察が支障なくできる新たな洗浄法を開発する目的で,大腸内視鏡検査で使用される腸管洗浄液(polyethylene glycol electrolyte lavage solution : PEG)を用いる胃内洗浄効果を検討した。
内視鏡検査前にPEGでの使用をあらかじめ患者に説明して同意の上,署名を得た症例のうち,粘液が多く観察困難な
H. pylori陽性の慢性胃炎患者で,粘稠な胆汁や残渣が胃壁に付着している40例を対象とした。
前処置として洗浄液〔蛋白分解酵素(プロナーゼMS),重炭酸ナトリウム,ジメチコン(ガスコンドロップ内服液,以下,ガスコン),水50ml〕を内服させ,従来のガスコン水による洗浄液群(コントロール群)とPEG群に無作為に割り付けて散布洗浄し,5分後に胃体部大彎の洗浄効果をスコア化して前向きに比較検討した。判定基準は5段階にスコア化し,5分後に散布洗浄前後の効果を判定した結果,PEG群はコントロール群より有意に良好な洗浄効果を認めた。
粘稠な粘液や胆汁残渣が胃壁に付着した内視鏡観察困難な患者に対するPEG法は,新たな洗浄法として期待できるものと考えられた。
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佐藤 義典, 安田 宏, 小澤 俊一郎, 松尾 康正, 伊東 文生
2015 年 86 巻 1 号 p.
53-57
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」(以下,ガイドライン)が2012年に改訂され,当院では2013年1月より本ガイドラインを導入している。今回,上部消化管内視鏡における抗血栓薬服用継続下での内視鏡的粘膜生検の安全性と,抗血栓薬休薬に伴う血栓性偶発症について検討した。当院にて2011年7月〜2014年7月までに施行した通常経口上部消化管内視鏡23,473例中,抗血栓薬服用3,078例(ヘパリン置換例を除く)を対象とし,ガイドライン導入前後において抗血栓薬継続下の粘膜生検施行率,出血性偶発症,血栓性偶発症について後ろ向きに調査した。粘膜生検の施行は,ガイドライン導入前1,163例,導入後1,915例であった。ガイドライン導入前後における結果は,抗血栓薬継続下での粘膜生検施行率16例(2.3%)/244例(17%)(P<0.001),生検時出血0例(0%)/1例(0.4%),生検後出血0例(0%)/0例(0%),抗血栓薬休薬に伴う血栓性塞栓症の発症1例(0.2%)/1例(0.2%)であった。抗血栓薬服用継続下での内視鏡的粘膜生検施行率は有意に増加していたが,出血性偶発症の増加はなく,安全に施行できていた.抗血栓薬休薬に伴う血栓塞栓症の発症があり,抗血栓薬服用症例ではガイドラインに準じた対応が望ましい。
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松井 啓, 野村 浩介, 栗林 泰隆, 山田 晃弘, 古畑 司, 木村 隆輔, 山下 聡, 菊池 大輔, 小川 修, 三谷 年史, 飯塚 敏 ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
58-62
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
【背景】2012年7月に「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡ガイドライン」(以下,新ガイドライン)が発刊され,従来のガイドラインよりも抗血栓薬服用中止による血栓塞栓症のリスクに配慮したものとなった。【目的】新ガイドライン導入後の内視鏡的生検後出血率を明らかにする。【方法】2013年4月1日〜2014年3月31日まで,生検を施行した患者を対象に,はがきと電話による聞きとり調査で前向き観察研究を行った。【結果】対象は生検を行った3,696件(EGD 2,862件,CS+DBE 834件)。対象患者の平均年齢は64.6±12.6歳であった。抗血栓薬のない患者は3,348件(90.6%),抗血栓薬を適切に休薬した患者は234件(6.3%),抗血栓薬を継続したままの患者は82件(2.2%)であった。有効回答率は全体で76.5%であった。有効回答数のうち後出血なしは96.6%であった。本研究の後出血の定義にあてはまった患者は3件のみでいずれも抗血栓療法のない患者であった。有効な回答が得られた抗血栓薬を継続したまま生検した患者57件中,後出血を認めた患者は0件であった。【考察】本研究では新ガイドラインに準じて,抗血栓薬を内服したまま内視鏡的生検を行った症例の後出血率は0%であった。内視鏡的生検における新ガイドラインは妥当であると考えた。
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榎本 俊行, 斉田 芳久, 高林 一浩, 長尾 さやか, 竹下 惠美子, 渡邊 良平, 高橋 亜紗子, 西牟田 浩伸, 齋藤 智明, 松清 ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
63-65
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
【目的】大腸癌症例の増加や手術手技の向上に伴い,器械吻合を伴う大腸癌手術症例は増加してきている。しかし,術後偶発症は患者のQOLを低下させるため,その対策が重要である。その対策として腸管切離,消化管吻合での偶発症を回避するため,当科では,左側結腸・直腸癌手術を行う症例に対して,術中に大腸内視鏡を挿入し観察を行っている。【対象】2006年1月〜2014年8月までに経験した左側結腸・直腸癌手術731例中570例(78.0%)に術中内視鏡検査を施行した。【結果】術中内視鏡検査で異常所見を認めた症例は570例中13例(2.3%)であった。最終的に縫合不全が認められたのは5例(38.5%)であった。13例の内訳は,吻合部粘膜のずれや色調変化3例,吻合部出血1例,リークテスト陽性例9例であった。吻合部粘膜のずれや色調変化の3例では,1例でdiverting stoma造設を施行,1例で再吻合を施行した。術後3例とも縫合不全を認めた。吻合部出血の1例は,クリッピングにて止血した。術後の出血はなかった。リークテスト陽性例の9例は,再吻合を4例に,ストーマ造設を3例に,吻合部補強のみを2例に施行した。術後縫合不全は2例に認めたが,保存的に治癒した。【結論】術中内視鏡検査で異常所見のある症例は縫合不全が高率にみられるため,再吻合やdiverting stoma造設や吻合部の補強などが必要である。
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深見 裕一, 渡辺 翔, 安田 圭吾, 金城 美幸, 高浦 健太, 浅川 剛人, 鈴木 雄一朗, 小橋 健一郎, 池宮城 秀和, 永山 和宜 ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
66-69
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
【背景・方法】2012年に大腸癌腸閉塞に対して内視鏡的金属ステント留置術(SEMS)が保険収載された。当院では収載後,金属ステント留置を行う症例が増えてきたが,収載以前は経肛門イレウス管による減圧と手術による治療を行っていた。2011年4月〜2014年8月までに大腸癌腸閉塞に対して施行した金属ステント留置術(n=10)と経肛門イレウス管留置術(n=11)の留置成功率,減圧成功率,人工肛門造設率,合併症についてそれぞれ比較検討した。【結果】金属ステント群は全例で留置に成功した。術前腸管減圧目的(bridge to surgery : BTS)が3例,緩和目的(palliative therapy)が7例であった。経肛門イレウス管留置例のうち,留置に成功したのは10例,腸管減圧に成功したのは9例であった。両群を比較すると金属ステント留置群のほうが,減圧成功率が高い傾向があると言えた(p=0.0956)。またBTS症例3例と待機的手術をしたイレウス管留置群9例を比較したところ,BTSでは全例で端々吻合が可能であったが,イレウス管群で5例であった。金属ステント留置群のほうが人工肛門造設を回避できる傾向があるかもしれない(p=0.1573)。【結論】大腸癌腸閉塞に対する金属ステント留置術は,短期成績,腸管減圧目的,緩和目的いずれについても有効な治療方法であると考えられた。
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高林 一浩, 斉田 芳久, 榎本 俊行, 長尾 さやか, 高橋 亜紗子, 中村 陽一, 渡邊 良平, 西牟田 浩伸, 浅井 浩司, 草地 信 ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
70-73
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
直腸脱は肛門疾患の中でも比較的頻度は低いが,近年の高齢化に伴い症例が増加している。経会陰式手術は低侵襲であるため,選択されることが多い術式であるが,再発率が高いことが問題となる。直腸固定術をはじめとする経腹式アプローチは再発率が低く,最近では腹腔鏡下手術の有用性も報告されている。直腸癌手術におけるtotal mesorectal excision (TME)の層で直腸を剥離した後,メッシュを仙骨前面に固定し,吊り上げた直腸に巻きつける方法であるが,一般的に経会陰式アプローチでの再発率が高率であるのに対し,本術式の再発率は低率である。本疾患の患者の多くが高齢者であるため,重篤な心肺系などの合併症がなく全身麻酔が可能であることを評価した上で適応とするが,当科においても最近では直腸脱を繰り返す患者や,初発であっても比較的若年の患者に対して腹腔鏡下直腸吊り上げ固定術(Wells法)を導入し,これまでに9例施行した。手術時間と出血量の中央値はそれぞれ186分,2mlであり,術後平均在院日数は9日であった。1例で軽度の粘膜脱を認めた以外,重篤な合併症は認めず,再発も認めていない。
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好川 謙一, 佐藤 宏和, 堀内 和樹, 安江 千尋, 吉松 亜希子, 高城 健, 丸田 紘史, 安武 優一, 渡辺 知佳子, 高本 俊介, ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
74-78
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
Crohn病(CD)患者における疾患活動性評価において,当院では患者の負担を軽減する目的で内視鏡検査とMR enterocolonography(MREC)を併用している。MRECは近年,欧米を中心にCDに対する小腸・大腸評価のモダリティとして普及しつつある。CD患者が長期にわたり定期検査を受ける必要があることを踏まえると,MRECは被曝なく消化管評価を行うことができ,内視鏡検査に比較しても低侵襲であるというメリットがある。さらに注腸検査のように術者の技量に左右されないこと,また病変部位の同定が可能であることから,時間軸での比較に優位性がある。その正確性についても良好な報告が数多く存在し,今後日本でも普及していく可能性がある。潰瘍などのdeep mucosal lesionについては,MRECでも良好に検出されることが報告されている。今回我々は,同時期に大腸内視鏡検査とMREC検査を行ったCD患者について,比較的浅い病変についてもMRECで検出されるのか,またどのような所見で不一致となるのか,検討を行った。対象としたMREC像での4所見について,単独ではびらん・発赤の検出率は低かったが,これらを組み合わせることでびらんについては高い検出率を得ることができた。しかし比較的浅い病変については,MREC像上のrelative contrast enhancementは偽陽性率も高かった。
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山田 哲弘, 竹内 健, 新井 典岳, 岩佐 亮太, 石川 ルミ子, 鈴木 康夫
2015 年 86 巻 1 号 p.
79-82
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
近年,Crohn病において,超音波検査,CTや MRIなどのcross-sectional imagingによる病変評価の重要性が増してきている。内視鏡検査は粘膜治癒の評価に不可欠だが,侵襲性が高く被検者の受容性に問題があり,頻回に行うことは困難である。また本邦で開発・発展した小腸バルーン内視鏡も深部小腸に挿入困難な症例も多く,また,画像検査における位置付けも十分になされていない。今回,小腸バルーン内視鏡とcross-sectional imagingであるCT enterography(CTE)を用いてCrohn病の再燃と手術について予後予測を検討した。内視鏡評価はsipmple endoscopic activity score for Crohn’s disesase(SES-CD)を,cross-sectional imagingの評価はCTE scoreを用いた。SES-CDにおいては5点未満の群で寛解維持率,手術回避率が有意に高く,CTE-scoreについては3点未満の群で寛解維持率は有意に高かった(p=0.002)。特にCTE所見として肛門病変,内瘻,出血,膿瘍が認められた場合には手術率が有意に高かった(p=0.00013)。
CT enterographyによるcross-sectional imagingはCrohn病の再燃および手術予測に有用と考えられた。
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岩﨑 哲良, 加藤 智弘, 菰池 信彦, 井出 大資, 三戸部 慈実, 光永 眞人, 猿田 雅之, 松岡 美佳, 有廣 誠二, 田尻 久雄
2015 年 86 巻 1 号 p.
83-86
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis : UC)の長期経過症例におけるsurveillance colonoscopy(SC)は様々な内視鏡観察法が利用されているが,いまだに確立された方法はない。近年,脳神経外科や泌尿器科において腫瘍の存在診断に腫瘍親和性物質である5-aminolevulinic acid(5-ALA)を用いた光線力学的診断(photodynamic diagnosis : PDD)が行われている。UCに関連した腫瘍性病変の検出に関しては,5-ALAを用いたPDDの報告は限られ,その有用性については確立されていない。今回,我々はUC長期経過症例で5-ALAを使用し,腫瘍性病変の検出についてのPDDについて検討を行った。通常光による内視鏡観察では検出が困難であった病変について,5-ALAによる蛍光内視鏡による検出(PDD)が有効であった症例を経験した。特にlow-grade dysplasia病変での内視鏡観察では腫瘍辺縁に強い蛍光信号を示していた。この結果は,マウス大腸炎モデルで発生する腫瘍病変での蛍光信号と類似していた。今後,より多くの症例での検討が必要ではあるが,5-ALAを利用したPDDが,UCのsurveillanceとして有用である可能性が示唆された。
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奈良坂 俊明, 溝上 裕士, 圷 大輔, 瀬山 侑亮, 小玉 夏美, 田島 大樹, 今西 真実子, 江南 ちあき, 遠藤 壮登, 寺崎 正彦 ...
2015 年 86 巻 1 号 p.
87-89
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
大腸憩室出血は,最も頻度の高い下部消化管出血である。その内視鏡的止血にはクリップ法やendoscopic band ligation(EBL)法が行われている。しかし,クリップ法は再出血が多く,EBL法は再出血率が低いが出血点同定後にendoscopic variceal ligation(EVL)デバイスを装着しスコープを再挿入する必要がある上,デバイスは高価である。そこで,内視鏡の再挿入を必要とせず,低コストで施行できる新たな止血法として留置スネアによる結紮止血法(留置スネア法)を考案した。方法は,スコープに透明キャップを装着し挿入。出血点を確認後,留置スネアを透明キャップ内に展開し,憩室を吸引,内翻し憩室基部をスネアで結紮する。本手技を2013年11月〜2014年5月までに6例に施行した。5例(83.3%)で完全止血が得られた。穿孔を含め処置に伴う偶発症は認めなかった。4例は2~3カ月後に経過観察を行い憩室の瘢痕化を確認した。留置スネア法はEBL法と比べ,スコープの抜去後のデバイス装着が不要で,速やかに止血操作が可能である。価格も留置スネアはEVLデバイスの約1/6(2,400円/14,500円)であり,安価である。今回我々が考案した留置スネア法は大腸憩室出血の止血法として安全かつ有効な方法と考えられた。
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乾 正幸, 乾 純和, 大和田 進, 近藤 裕子, 蘇原 直人
2015 年 86 巻 1 号 p.
90-93
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
NBI拡大観察は小規模なクリニックでも簡単に行うことができるモダリティである。クリニックにおけるNBI拡大観察の有用性を検討するため,外来内視鏡治療の適応となる10mm前後の大腸ポリープに対するNBI拡大観察の診断能について検討を行った。当院において2013年1月〜2014年6月の間にNBI拡大観察を行い,内視鏡的に切除された112病変を対象とし,内視鏡治療前のNBI拡大観察で得られたvascular patternと病理組織学的所見とを後ろ向きに解析した。Vascular patternは昭和分類を用い,normal,faint,network,dense,irregular,sparseおよびothersに分類した。対象病変の平均病変径は5.5mmであり,肉眼形態別の内訳はⅡa 47例,Is 49例,Isp 14例,Ip 2例であった。Vascular patternと病理組織像の対比ではfaint patternを過形成性ポリープの指標とした場合,感度/特異度/正診率は81.8/97.9/92.0%,network patternおよびdense patternを腫瘍性病変の指標とした場合,感度/特異度/正診率は94.6/73.7/91.1%であった。NBI拡大観察はクリニックにおけるスクリーニング大腸内視鏡検査の精度を向上させる有効なモダリティであることが示唆された。
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川口 義明, 出来田 牧子, 川西 彩, 川嶌 洋平, 羽田野 敦子, 小川 真実, 峯 徹哉
2015 年 86 巻 1 号 p.
94-98
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
高齢化が進み胆膵疾患は増加しており,胆管炎など緊急胆管ドレナージが必要な場面に遭遇する機会も少なくない。Endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP)を施行したものの,胆管挿管がうまくいかず,その上,ERCP後に膵炎を起こすといった場面は,決して珍しいことではないかもしれない。すべてのケースで高次施設に搬送が可能とも限らない。胆膵内視鏡検査(ERCP,endoscopic ultrasonography : EUS関連)を誰もが,どこでも,ある程度安全に行えることができるように,教育施設ではその教育方法を確立すべきであるが,指導医の育成すらままならないのが現状である。
当施設における胆膵内視鏡検査の教育法のポイントとして,①ERCP助手には,術者を積極的に経験させる,②入院患者を通じて胆膵疾患診断・治療の理解を深める,③ERCP所見用紙の記載による胆管,膵管画像診断の教育,④ミニレクチャーやカンファレンスによる教育,⑤computer simulatorとphantomによる教育,が挙げられる。我々はこれらの教育法をTraineeである消化器内科ローテーター,研修医,留学生などに実践しており報告する。
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白田 龍之介, 伊佐山 浩通, 山本 夏代, 木暮 宏史, 中井 陽介, 多田 稔
2015 年 86 巻 1 号 p.
99-103
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
胆膵領域におけるERCP関連手技は難易度が高く,他領域の内視鏡治療と比較して偶発症も多い。しかし,胆膵内視鏡手技の教育プログラムには定まったものがなく,各施設の裁量に任されている。教育においては効率面だけではなく,安全性への配慮が不可欠である。当科における胆膵内視鏡専門医の研修状況について報告する。
当科では,一般消化器内科の専門研修を終了した6〜7年目の医師が2〜3名胆膵専門研修を開始する。内視鏡治療を行う前提として,診断,治療方針の決定,患者への説明が行えることが求められる。内視鏡手技に関しては独自のトレーニング指針を作成しており,達成度に応じた段階的研修を行っている。実際の治療中には「ちょっとかしてみろ法」と名付けた指導法を行っている。これはトレイニー単独での治療完遂にこだわらず,操作が困難な局面で指導医が術者をこまめに交代・指導する方法で,実地での理解を深め,安全を担保する目的で行われる。また,治療後には治療レポートの添削,治療内視鏡の録画閲覧による復習,他のトレイニーの治療を見ることも有用である。
施設の特性上,複数のトレイニーが研修していること,他院での治療困難例などトレイニーに不適な症例が多く,胆管結石などの典型的な症例が少ないことなどから,経験術者件数は少ないが,胆膵診療に特化して診断から治療までのマネージメントを研修することができる。
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岩野 博俊, 良沢 昭銘, 田場 久美子, 谷坂 優樹, 佐藤 洋子, 須藤 晃佑, 新井 晋, 真下 由美
2015 年 86 巻 1 号 p.
104-107
発行日: 2015/06/18
公開日: 2015/06/23
ジャーナル
フリー
【目的】悪性肝門部狭窄の減黄術において,我々は片葉ドレナージを原則としている。今回,術前症例,非切除例における成績を検討した。【方法】2013年7月〜2014年10月までに施行したERCP 456件中,肝門部狭窄43例を対象とし,初回減黄法,追加ドレナージ,最終減黄法,減黄期間,化学療法施行率,化学療法不能であった原因について検討した。【結果】減黄前に切除の可能性ありと診断した18例の初回減黄法は,ENBD 3例,plastic stent(PS)1本留置14例,PS複数留置1例であった。追加ドレナージを4例に要したが,13例(72.2%)は片葉ドレナージで対応可能であった。術前減黄期間は平均9.3(0〜30)日であった。胆管炎による手術延期が1例あった。減黄前に非切除と診断した25例の初回減黄法は,PS 1本留置17例,MS 1本留置5例,PS複数本留置2例,MS複数本留置1例であった。追加ドレナージを5例に要したが,17例(68%)は片葉ドレナージで対応可能であった。化学療法を予定した24例中18例(75%)に化学療法を施行し,減黄期間は平均24.7(0〜125)日であった。施行不能の原因は,減黄不良4例,原疾患の進行1例,肝膿瘍1例であった。【結論】大部分の症例において,片葉ドレナージで手術や抗腫瘍療法へ移行可能であった。
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