神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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40 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集
  • 城倉 健, 中馬越 清隆
    2023 年 40 巻 3 号 p. 203
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり
  • 中馬越 清隆
    2023 年 40 巻 3 号 p. 204-213
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

     アルツハイマー病に合併する眼球運動異常や律動性眼球運動混入(saccadic intrusions),前庭機能障害について解説する.アルツハイマー病などの認知症では眼球運動や前庭異常がバランス障害につながり,転倒・骨折などのQOL低下や病状進行に影響する可能性がある.アルツハイマー病はsaccadeやpursuitの異常や前庭機能障害を高率に合併する.さらにmicrosaccades,square-wave jerksといった律動性眼球運動混入を合併する.海馬はアルツハイマー病の病態において重要である.海馬と前庭間の相互作用を根拠に,アルツハイマー病に合併する前庭機能障害の研究が多く報告されている.アルツハイマー病のバイオマーカーとして眼球運動検査や前庭機能の有用性を今後も追及していくべきである.

  • 寺尾 安生
    2023 年 40 巻 3 号 p. 214-221
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

     パーキンソン病(PD)で特徴的にみられる眼球運動症状にはsaccadic pursuit,振幅過小,矩形波眼球運動,固視の障害などがある.他のパーキンソン症候群と比較して眼球運動異常は比較的軽いが,これを調べることによってPDにおいて脳の病態生理を調べることができる.PDではサッカードの最終共通経路となっている上丘(superior colliculus: SC)の機能が大脳基底核により抑制され,振幅過小,サッカード潜時の延長を認める一方,この抑制がときに解除されてサッカードを抑制する機能の障害もみられる.PDのサッカードの異常を調べることで病期とともにPDにおける脳の病態生理がどのように変化していくかを明らかにすることができる.

  • 小出 眞悟, 石原 智彦, 小野寺 理
    2023 年 40 巻 3 号 p. 222-228
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

     脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration: SCD)は主に小脳と脳幹が侵される神経変性疾患である.SCDは遺伝性と孤発性に分類され,多くの疾患を含み,それぞれ臨床的特徴も異なる.SCDで障害される小脳,脳幹は眼球運動の各要素,衝動性眼球運動,滑動性追従眼球運動,前庭眼反射,視運動性眼運動,輻湊,固視に関わる部位である.このため,SCDでは眼球運動障害の頻度が高く,しばしば疾患ごとに特徴的な眼球運動障害も認められる.神経眼科的評価としてこれらの特徴を理解する事は,SCDの診断に重要である.

  • 工藤 洋祐, 城倉 健
    2023 年 40 巻 3 号 p. 229-237
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

     進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy: PSP)は,古典的には易転倒性,垂直性核上性眼球運動障害,体幹中心の筋強剛,無動,認知機能障害を来す神経変性疾患であるが,近年では,より多彩な臨床亜型が報告されている.PSPでは病初期より垂直性の衝動性眼球運動(saccade)の潜時延長や最大速度,振幅の低下が検出される.Square‑wave jerksも初期から高頻度に認められることが多い.病期の進行に従って水平性saccadeや追従性眼球運動(smooth pursuit)も障害される.前庭眼反射は比較的保たれるが,視運動性眼振は,急速相の障害に伴い解発は不良になる.

原著
  • 水井 徹, 毛塚 剛司, 國見 敬子, 後藤 浩
    2023 年 40 巻 3 号 p. 238-247
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

    【緒言】ステロイド抵抗性視神経炎に対して免疫グロブリン大量静注(IVIg)療法が保険収載されたが,その効果や適応等については必ずしも明確ではない.自験例におけるIVIg治療の成績と問題点について検討した.

    【方法】東京医大病院眼科で診断された視神経炎に対して,ステロイドパルス療法を1~3クール行うも視力改善が得られなかったため,引き続きIVIg療法を施行した6例7眼を対象に,治療前後の視力,視野,限界フリッカ値(CFF)の変化について後ろ向きに検討した.

    【結果】診断確定時の平均年齢は44.2歳で,視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)が2例2眼,抗MOG抗体関連視神経炎(MOGAD)が2例3眼,特発性視神経炎が2例2眼であった.治療前の最低視力は光覚弁~0.15,視野異常は5眼が中心暗点もしくは傍中心暗点を呈し,2眼は周辺視野のみが残存していた.IVIg療法後の最終視力1.0以上に改善したのは5眼,視野は5眼で暗点が消失したが,1眼は中心暗点が残存した.NMOSDとMOGADの1例ずつでIVIg療法後に血漿交換療法を行った.

    【考按】ステロイド抵抗性の視神経炎に対するIVIg治療は概ね有効であったが,ステロイドパルス療法後の視野障害が高度な症例では効果に限界があった.

症例報告
  • 田村 千奈見, 長友 さおり, 中馬 秀樹, 池田 康博
    2023 年 40 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

     37歳の男性が左眼の霧視を自覚した.矯正視力は右1.2 左0.6.相対的瞳孔求心路障害(relative afferent pupillary defect: RAPD)は陰性であった.周辺視野欠損は明らかでなく,ハンフリー静的視野10-2プログラムを用いた中心視野に両耳側半盲と左眼の中心感度の低下を認めた.頭部磁気共鳴画像(MRI)にて視交叉内部後方やや左側よりに造影される病変を認めた.視交叉炎と診断し原因検索を行い,明らかな全身性炎症性疾患は認められなかった.その後自然軽快し,左矯正視力は1.0まで回復,両耳側半盲は消失し,左眼の中心感度も正常化した.頭部MRIの造影効果も消失した.本症例は,視交叉内の黄斑線維走行部に限局した接合部障害をきたした特発性視交叉炎で,組織学的研究を臨床的に証明する,まれでかつ貴重な症例であると思われた.またこのような症例は,適切な視野プログラムを選択しないと病変を見逃す可能性があり,注意を要すると思われた.

  • 山口 知暁, 檜森 紀子, 西村 尭幸, 内田 恵子, 柳町 真希, 竹下 孝之, 谷口 桜, 長谷川 隆文, 石岡 千加史, 中澤 徹
    2023 年 40 巻 3 号 p. 254-259
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
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     急速に進行する視力・視野障害が先行し,頭痛やうっ血乳頭などの頭蓋内圧亢進症状がみられず,頭部造影magnetic resonance imaging(MRI)検査で視神経鞘に造影増強効果が認められた胃癌患者を経験し,胃癌細胞の視神経への直達浸潤による髄膜癌腫症を経験したので報告する.

     症例は50代,女性.X-2年に進行胃癌に対して,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行され,術後補助化学療法を施行されたが,腹膜播種として再発が認められた.化学療法中より両眼性の霧視を自覚した.初診時,両眼に急速に進行する視力低下と動的視野検査で盲中心暗点が認められた.前眼部および眼底の視神経乳頭に特記すべき異常所見はみられなかった.頭部造影MRI検査で両眼性に複数の脳神経と視神経周囲および視神経鞘に造影効果が示された.胃癌の髄膜播種の可能性を考慮し,髄液検査を施行すると,髄液細胞診でClass V 陽性,Adenocarcinomaが検出され,胃癌髄膜癌腫症と診断された.

     担癌状態の患者に頭蓋内圧亢進症状を伴わない急速な視力低下や視野障害が認められる場合には,髄膜癌腫症による癌細胞の視神経への直達浸潤を念頭に置く必要がある.

  • 高井 康行, 山上 明子, 朝比奈 裕美, 碇 莉有, 井上 賢治, 海老原 伸行
    2023 年 40 巻 3 号 p. 260-264
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル 認証あり

     眼部帯状疱疹では多彩な眼合併症を来すが,多くは皮疹発症後に出現する.今回,皮疹に先行した急性涙腺炎を来した眼部帯状疱疹の症例を報告する.糖尿病で治療中の87歳男性.皮疹発症5日前に右眼の結膜炎を来した.点眼加療も改善なく,当院を受診した.右眼の結膜炎と眼瞼腫脹を来たし,眼窩CTで右眼の涙腺腫脹を認めた.細菌性を疑い抗生剤内服開始した.翌日,右眼周囲の三叉神経第1枝領域の皮膚に小水疱を伴う発赤が出現し,眼部帯状疱疹の診断となった.アシクロビル点滴と点眼治療を開始するも改善に乏しく,プレゾニゾロン20 mg/日の内服を追加した.アシクロビル点滴は7日間で終了した.プレゾニゾロンは漸減中止し,発症2か月後に涙腺炎含め改善した.高齢者や免疫不全のある患者の片側涙腺炎を認めた場合は,帯状疱疹を鑑別にあげる必要がある.

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