神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
Print ISSN : 0289-7024
ISSN-L : 0289-7024
39 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集
  • 澤村 裕正
    2022 年 39 巻 4 号 p. 277
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり
  • 澤村 裕正
    2022 年 39 巻 4 号 p. 278-286
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     高次脳機能を捉えるために分子生物学,電気生理学,神経解剖学,神経心理学,脳機能イメージングなど多彩なアプローチ手法がとられている.機能的MRI(functional magnetic resonance imaging: fMRI)はMRIを用いた脳機能イメージング手法の一つであり,BOLD(Blood Oxygenation Level Dependent)効果と呼ばれる血液中のヘモグロビン動態をもとに脳機能が測定される.非侵襲的かつヒトを対象に高次脳機能を調べることが可能であるという利点を有する一方,直接の電気信号を捉えているものではなく,空間解像度や時間解像度にもある程度の制限があるという欠点を有する.そのような欠点を補うため,単純な活動の差分を解析するunivariate analysisをはじめとして,adaptation methods, multi-variate pattern analysis(MVPA,あるいはMulti-voxel pattern analysisとも呼ばれる)など様々な解析方法が工夫されてきた.本稿では演者の経験をもとにfMRIの解析方法のいくつかを示し,高次視機能の評価方法につき概説する.

  • 二宮 太平
    2022 年 39 巻 4 号 p. 287-292
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     中枢神経系機能の解析手法の一つである電気生理学的手法,その中でも特に個々の神経細胞の電気的活動を測定するsingle-unit recording法を用いた研究について紹介する.Single-unit recording法は覚醒下の動物から時間的・空間的に高い解像度で神経活動を解析することが可能であり,認知神経科学の分野で広く用いられている手法である.本稿では,まず当該手法について概観した後,筆者が研究対象としている社会的認知機能,特に自己と他者の行動情報処理に関わる,マカクザル上側頭溝中間部の神経活動解析について解説する.

  • 桑波田 晃弘
    2022 年 39 巻 4 号 p. 293-300
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     脳活動の観測は,視覚神経と脳機能の接続,脳疾患の治療,脳機能解明のために重要である.脳活動を観測する手段として,超高感度の磁気検出器を用いて脳内の神経活動に伴う電気信号(神経電流)から生じる磁場を計測する脳磁図(magnetoencephalography: MEG)がある.MEGは,神経活動由来の神経電流から生じる磁場信号を計測しているため,脳の神経活動を直接的に解明する手段として有力である.

     本研究では,視覚神経に関して代表的な脳活動の一つである定常状態視覚誘発磁場(steady state visually evoked field: SSVEF)に関して,従来の超高感度磁気センサである超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device: SQUID),近年注目を集めている光ポンピング磁力計(optically pumped magnetometer: OPM)による計測結果を比較・検証し,次世代の優れた超高感度磁気センサであるダイヤモンドNV(nitrogen-vacancy)センサに期待する優位性を述べる.視覚神経を通した脳活動を観測することで,患者の主観的な評価(視力検査における見える,見えないなど)を,客観的に定量的数値として評価することが可能となると考えるため,本手法がさらに発展することで,基礎医学の発展への大きな貢献が期待できる.

  • 井上 謙一
    2022 年 39 巻 4 号 p. 301-310
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     光遺伝学は,特定の神経細胞あるいは神経回路の活動をミリ秒単位の高い時間精度で正確に操作することを可能とする技術である.ヒトと進化的にも行動学的にも近縁のサル類における光遺伝学の適用は,基礎研究と応用研究の両方に大きな進展をもたらすと考えられる.近年の技術発展により,トランスジェニックやノックインといった遺伝子改変動物の利用が困難な非ヒト霊長類においても,神経路選択的な光刺激やイメージング技術との併用など,光遺伝学を利用した有用な実験的アプローチが実用的になりつつある.今後非ヒト霊長類における光遺伝学の利用がさらに進む事で,運動や認知に関する様々な神経回路の役割が因果的に明らかにされるとともに,光遺伝学の臨床応用が後押しされると考えられる.

症例報告
  • 後藤田 知邦, 小松 哲也, 松本 直, 森川 葉月, 加藤 侑里, 堀 裕一, 石川 均
    2022 年 39 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     今回筆者らは,緑内障精査中に偶発的に発見された脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia:PVL)が原因と思われる先天性1/4同名半盲の1例を経験した.症例は47歳,男性.眼精疲労を主訴に前医を受診し,網膜光干渉断層計検査にて一部神経節細胞複合体(ganglion cell complex:GCC)の菲薄化を認め,緑内障精査目的に静的視野検査を施行したところ,視野異常が判明し当院紹介となった.眼底検査で診察上,視神経乳頭陥凹や網膜神経線維層欠損は認めず,Goldmann視野計にて傍中心から周辺にかけて一致性左下1/4同名半盲を認めた.頭部MRI(magnetic resonance imaging)検査では,右視放線周辺部位の右側脳室後角の拡大,壁の不整,および脳室周囲白質の体積減少を認めた.本症例の視野欠損の責任病巣は,画像所見より右視放線であることが確認され,原因としてPVLが示唆された.この疾患によるGCCの菲薄化の報告はないが,原因として後頭葉障害による経シナプス逆行性変性の可能性が考えられた.

  • 本田 紗里, 横山 利幸, 武居 敦英
    2022 年 39 巻 4 号 p. 316-319
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     三叉神経第1枝(以下,V1)領域の帯状疱疹に合併する眼球運動障害は半年以内に改善することが多いとされているが,今回我々は,80歳女性の帯状疱疹に伴う左眼の外転不全が1年半以上遷延した症例について報告する.10日前より皮膚症状が出現し,近医皮膚科で帯状疱疹と診断され治療するも改善せず,当院皮膚科に紹介となり,同日に当科コンサルトとなった.初診時,強い左眼瞼腫脹と左V1領域に水疱と紅斑を認め,前眼部や網膜硝子体に炎症所見は認めないが,左眼外転不全と内斜視を認めた.複視の強い訴えはなく,明らかな頭蓋内病変や外眼筋の肥厚・炎症所見は認められなかった.経過観察を行い,徐々に眼位は改善したが,左眼の外転不全は発症1年半が経過しても残存した.V1領域の帯状疱疹が外眼筋麻痺を合併した症例は各国から報告されているが,1年以上遷延した症例は稀である.V1領域の帯状疱疹においては,角膜や眼内炎症所見だけでなく,眼位や眼球運動にも注意深い観察が必要であるとともに,眼瞼腫脹が強く患者が複視を訴えない例もあるが,遷延する外眼筋麻痺を伴っていることもあるため,初診時や経過中も必ず評価することが必要であると考える.

  • 堤野 晃宏, 須田 謙史, 高橋 綾子, 中野 絵梨, 田川 美穂, 柏井 聡, 澤村 正典, 菊谷 明広, 辻川 明孝
    2022 年 39 巻 4 号 p. 320-325
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル 認証あり

     症例は57歳男性.左踵悪性黒色腫に対する全層皮膚移植の3週間後に亜急性の視力低下を自覚し当科を紹介受診.初診時矯正視力は,右眼(0.04),左眼(0.07)で,両眼に盲中心暗点を認めた.対光反射は迅速,相対的瞳孔求心路障害は陰性であった.眼底写真撮影では左眼下方に網膜神経線維層欠損を認めるのみで,視神経乳頭に発赤・腫脹や毛細血管拡張を認めなかった.光干渉断層計では初診4週目から乳頭-黄斑部の神経節複合体厚の菲薄化を認め,動的視野計にて中心暗点は拡大傾向であった.レーベル遺伝性視神経症(LHON)の可能性を考え,ミトコンドリア遺伝子検査を施行した結果,ミトコンドリアDNAの11778点変異を認めた.本症例は晩発性で家族歴もなく,かつ視神経乳頭の特徴的な所見を伴っていなかったため,LHON発症時の典型的な臨床像から離れていた.急性の盲中心暗点の進行を認めた場合は,典型的な所見を伴わなくとも晩発性LHONの可能性を念頭に置く必要がある.

入門シリーズ120
原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
English Section
feedback
Top