神経眼科
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40 巻, 4 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
特集
  • 中村 誠, 石川 均
    2023 年 40 巻 4 号 p. 313
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
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  • 坂本 麻里
    2023 年 40 巻 4 号 p. 314-319
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     視神経炎は視神経の炎症性脱髄疾患の総称であり,炎症が視神経乳頭に波及して乳頭腫脹をきたす視神経乳頭炎と,初期には眼底に異常を認めない球後視神経炎がある.視神経は網膜神経節細胞 (retinal ganglion cell: RGC)の軸索から構成され,視神経炎によるRGCの軸索や細胞体の障害は,網膜光干渉計(OCT)の乳頭部解析や黄斑部解析において網膜厚の変化として捉えることができる.視神経炎のOCTでは,急性期には乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillary retinal nerve fiber layer: cpRNFL)厚が乳頭腫脹の評価に有用である.慢性期には,乳頭周囲および黄斑部の神経線維層厚や網膜内層厚が菲薄化する.cpRNFL厚に加え黄斑部のRNFL厚,神経節細胞層(ganglion cell layer: GCL)と内網状層(inner plexiform layer: IPL)を合わせたGCL+IPL厚などが病態把握や経過観察に有用である.

  • 宇田川 さち子, 大久保 真司
    2023 年 40 巻 4 号 p. 320-327
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)は,視神経・視路疾患においても,乳頭周囲網膜神経線維層厚(circumpapillary retinal nerve fiber layer:cpRNFL)や黄斑部網膜内層厚を測定し,他覚的に定量的な評価に用いられている.鼻側半網膜の神経線維が,視交叉後方で交叉し,反対側の視索に入る.一方で,耳側半網膜からの神経線維は,視交叉で交叉せずに同側の視索へ入る.視交叉の病変では,典型的には両眼の乳頭黄斑線維束と鼻側神経線維すなわち交叉線維が障害されるため,両耳側半盲を呈することが多い.一側の視索は同側の耳側半網膜から投影される非交叉神経線維と反対側の鼻側網膜からの交叉性神経線維からなるため,障害側とは反対側の同名半盲を呈する.OCTによって,視交叉・視索疾患の構造を詳細に評価することで,経過観察や視野の回復予測など,今後のさらなる活用が期待される.

  • 山下 力
    2023 年 40 巻 4 号 p. 328-339
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     これまで,外側膝状体よりも後方の視路障害によって生じる同名半盲患者では,シナプスを越えて網膜神経節細胞(RGC)まで障害が及ぶことはなく,眼底に異常はきたさないとされていた.しかし,光干渉断層計(OCT)が技術的に発達し僅かな網膜萎縮を検出できるようになり,先天性および後天性後頭葉病変患者を評価した研究において乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚の菲薄化が示され,cpRNFL厚の菲薄化の程度は後頭葉病変発症からの経過期間と有意な相関が示された.我々は,片側性後大脳動脈(PCA)梗塞による同名半盲患者において,脳血管障害後の数年以内に半盲測網膜に網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の菲薄化がみられたことを報告した.片側PCA梗塞後に同名半盲を呈した症例をOCT用いて解析すると半盲性RGC障害が検出され,後頭葉病変後における網膜神経節細胞の経シナプス逆行性変性(TRD)の関与が示唆された可能性がある.これらのGCC厚の菲薄化は網膜周辺より中心網膜で顕著であった.さらに,後頭葉病変発症直後のGCC厚の変化が明らかでない症例の経時的変化を行った結果,発症後2年程度で明らかな菲薄化が出現した.後部視路病変患者のRGCのTRDを検出する方法として,cpRNFL厚の測定よりもGCCおよび網膜神経節細胞+内網状層(GCL+IPL)厚の解析が有用である.

  • 前久保 知行
    2023 年 40 巻 4 号 p. 340-349
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     Optical coherence tomography angiography(OCTA)は低侵襲,短時間に網膜や脈絡膜,視神経乳頭部の層別血管を定量的に評価できる機器である.OCTの撮像技術が進み,スキャンスピードが高速化したことによりOCTAでも高解像な画像が得られるようになってきた.特に網膜血管疾患,pachychoroid spectrum disease,緑内障で診断への応用が進んでいる.神経眼科領域でも様々な疾患で評価され,多くの疾患で視神経乳頭周囲や黄斑部における血管網の構造変化が視野などの機能変化と相関することがわかってきた.虚血性視神経症,視神経炎,視神経乳頭ドルーゼン,圧迫性視神経症,遺伝性視神経症などの視神経疾患だけではなく,もやもや病などの脳血管性疾患,Parkinson病などの神経変性疾患での報告もされてきている.現段階では撮像技術に限界があることや少数例での検討が多いことなど診断への応用には課題もあり,OCTAだけでの診断は未だ難しいものと考えられる.しかしながらOCTAを用いることで得られた新たな知見もあり,今回神経眼科領域におけるそれぞれの疾患の報告をまとめることで今後のOCTAの活用法,役割について考えてみたい.

  • 中野 絵梨
    2023 年 40 巻 4 号 p. 350-356
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
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     光干渉断層計(OCT)が約30年前に誕生してから,眼科診療は劇的に変化した.神経眼科領域でも特に,視神経疾患の診断や治療評価において,OCTの価値が注目されている.しかしながら,既存のOCTでは網膜各層の可視化および定量化にとどまり,細胞自体を直接描写することは叶わなかった.近年,補償光学(AO)を適用したプロトタイプOCT(AO-OCT)を用いることで,高解像度の網膜画像が取得できるようになり,網膜神経節細胞層内に網膜神経節細胞(RGC)の細胞体と考えられる高反射体を観察できるようになった.視神経疾患の視機能障害はRGCの細胞死と密接に関連している.AO-OCTで非侵襲的にRGCの細胞自体をヒト生体で直接評価することで,視神経疾患の発症や進行のメカニズムに関する新たな知見を得たいと考えている.

症例報告
  • 小笠原 涼, 山上 明子, 岩佐 真弓, 井上 賢治, 若倉 雅登, 近藤 聡英, 中島 円
    2023 年 40 巻 4 号 p. 357-363
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     眼症状にて発症した特発性頭蓋内圧亢進症の1症例を経験したので報告する.

     症例は49歳女性.頭痛,羞明,下方視での一時的な視覚障害を主訴に受診した.視力は正常,両眼の著明な乳頭腫脹があり,視野検査で両眼マリオット盲点の軽度拡大がみられた.前医MRI(magnetic resonance imaging)では占拠性病変はなく視神経周囲のくも膜下腔拡大と眼窩内視神経の蛇行があり頭蓋内圧亢進所見があった.MRV(magnetic resonance venography)は異常が見られなかった.治療抵抗性の頭痛もあり,MRI所見より特発性頭蓋内圧亢進症を疑い脳神経外科紹介,腰椎穿刺で髄液圧は35 cmH2Oと上昇あり,特発性頭蓋内圧亢進症と診断された.保存的治療するもうっ血乳頭所見,一過性視覚障害の発作頻度は改善が見られなかったため,脳神経外科にて腰椎腹腔シャント手術が施行された.術後は,うっ血乳頭所見は著明に改善し,一過性視覚障害や羞明は消失,頭痛や耳閉感も消失.視力・視野は正常に復した.保存的治療で改善のない症例では,不可逆的な視神経のダメージが起こる前の適切な時期に外科的治療介入が必要であることが示唆された.

  • 桂野 水那, 新明 康弘, 廣岡 季里子, 新海 晃弘, 中村 佳代子, 林 一彦, 石田 晋
    2023 年 40 巻 4 号 p. 364-370
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
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     56歳女性.19年前より両眼の正常眼圧緑内障の診断で前医にて抗緑内障点眼治療を受けていたが,4日前から左眼の眼球運動痛と急激な視野狭窄を自覚し,北海道大学病院を紹介された.視力は右(1.2),左(0.8),眼圧は両眼9 mmHg.右眼の視野検査では緑内障様の鼻側上方の沈下,左眼では高度な周辺部視野欠損と傍中心暗点が認められた.光干渉断層計の網膜内層解析では左眼後極に広範囲の菲薄化と右眼に弓状の菲薄化がみられた.造影MRIで左視神経の増強効果を認め,さらに抗アクアポリン(AQP)4抗体が陽性であったことから抗AQP4抗体陽性視神経炎と診断した.ステロイドパルス治療2クールと免疫グロブリン大量静注療法を施行し,左眼の周辺部視野欠損は改善した.緑内障と思われる経過中でも,眼圧上昇なしに急激に視野狭窄が悪化した場合,視神経炎の合併を念頭におき,抗AQP4抗体の測定を行うべきである.

  • 庄子 尚子, 田川 義晃, 新明 康弘, 新海 晃弘, 董 陽子, 中村 佳代子, 陳 進輝, 石田 晋
    2023 年 40 巻 4 号 p. 371-376
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     肋間帯状疱疹後に発症したHorner症候群に対して,アドレナリンα2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩点眼液で眼瞼下垂の改善と瞳孔の左右差の消失を得た一例を報告する.

     症例は51歳,女性.右背部肋間帯状疱疹(Th4-6)を発症し,抗ヘルペスウイルス薬投与によって皮疹は痂皮化,治癒した.しかし発症4週後に左眼瞼下垂,左縮瞳,左前額部の発汗低下,左三叉神経第一枝領域の知覚異常が出現し,発症6週後に当院神経内科を初診した.左Horner症候群と左三叉神経第一枝障害と診断され,水痘帯状疱疹ウイルスの髄腔内感染が疑われた.抗ヘルペスウイルス薬・ステロイド投与で改善を認めず,左眼瞼下垂治療目的で当科初診した.1%フェニレフリン塩酸塩点眼試験で左眼瞼下垂の改善・散瞳が得られ末梢性節後性Horner症候群と考えられた.5%フェニレフリン塩酸塩点眼を開始し左眼瞼下垂は改善したものの散瞳による羞明を訴えたため,0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液に変更したところ,左眼瞼下垂は改善したままで瞳孔の左右差は消失した.ブリモニジン酒石酸塩点眼液はHorner症候群の眼瞼下垂に対する対症療法として有用な可能性が示唆された.

  • 青山 祐里香, 澤村 裕正, 山上 明子, 安本 龍馬, 相原 一
    2023 年 40 巻 4 号 p. 377-382
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
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    【緒言】Leber遺伝性視神経症(LHON)は若年男性好発の両眼性視神経症である.今回,中心視野障害を有する正常眼圧緑内障にLHONを合併し,視神経炎との鑑別に苦慮した一例を報告する.

    【症例】40歳代前半の男性,前医で両眼性の中心視野障害(5度以内)を認める正常眼圧緑内障にて加療中だった.右眼の急激な視力低下を認め当院紹介.初診時視力は右(0.07)左(1.2),右眼の相対的瞳孔求心路障害陽性であり右眼の軽度眼窩部痛を有した.右視神経乳頭上方の発赤腫脹を認め,動的視野検査にて上方視野欠損及び中心暗点を認めた.頭部造影MRIで右眼視神経に淡い造影効果を呈した.ステロイドパルス療法が施行されたが視力,眼底に変化を認めなかった.抗アクアポリン4抗体・抗MOG抗体陰性であった.採血検査にてm.11778G>Aの変異が検出された.1年後に左眼の頭部MRIで造影効果を伴わない視力低下を認め,LHONと考えられた.

    【考察及び結論】進行した緑内障に合併し,MRI所見から視神経炎との鑑別が困難であったLHON症例を経験した.MRIで造影効果を認め視神経炎が疑われる場合にもLHONの可能性も念頭に置くべきと考えられた.

  • 後藤 克聡, 三木 淳司, 荒木 俊介, 小野 貴暁, 春石 和子, 家木 良彰, 桐生 純一, 高井 洋樹, 宇野 昌明
    2023 年 40 巻 4 号 p. 383-389
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     硬膜外自家血注入療法が奏功した外転神経麻痺を伴う脳脊髄液漏出症の1例を報告する.症例は40 歳,女性.嘔吐を伴う起立性頭痛で近医を受診し,片頭痛と診断されたが,その 3 週間後に複視が出現した.頭部造影MRIで硬膜下腔のびまん性拡大,びまん性硬膜造影所見を認めた.低髄液圧症を含めた脳脊髄液漏出症の疑いで精査・加療目的で当院脳神経外科へ紹介され,当科受診となった.視力は右(1.0×-18.00D=Cyl-1.00D Ax180°),左(1.0×-19.00D),眼圧は右13 mmHg,左15 mmHg,前眼部・中間透光体,眼底に異常所見はなかった.眼位検査では遠見25 prism diopter(PD)の内斜視,近見は16PDの内斜視,Hess赤緑試験で右眼の外転制限がみられた.CTミエログラフィーで髄液漏出像がみられ,脳脊髄液漏出症と低髄液圧症に伴う外転神経麻痺と診断された.初診時から2週間後,頭痛は消失するも外転神経麻痺が残存したため,初診時から1か月後に硬膜外自家血注入療法が行われた.治療1か月後,複視は消失,眼位は遠見・近見ともに4PDの内斜位,右眼の外転制限も改善した.起立性頭痛を伴う外転神経麻痺をみた場合には,脳脊髄液漏出症も念頭に置く必要があり,その治療には硬膜外自家血注入療法が有用であると考えられた.

総説
  • 高橋 真有
    2023 年 40 巻 4 号 p. 390-398
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2024/01/06
    ジャーナル 認証あり

     脳幹縫線核にあるオムニポーズニューロン(OPN)は,固視の間,持続発火をするが,サッケードの直前とサッケード中に発火を停止する.この部位の電気刺激でサッケードの発現が抑えられることから,固視の際,対象へのサッケードを抑制していると考えられた.サッケードの開始に際してこのオムニポーズニューロンを抑制するニューロンを同定するため,サッケードの司令中枢である上丘からOPNへの入力パターンを,細胞内記録法および染色法を用いて調べたところ,上丘頭側部から興奮,尾側部から抑制があることがわかった.さらに上丘からの抑制は抑制性バーストニューロン(IBN)を介していることを切断実験により証明した.IBNがOPNを抑制するニューロンであることが同定され,これまで考えられてきたような,サッケードをトリガーする特別な信号が存在するのではなく,サッケードドライブ系の一部であるIBNを介してサッケードが起こることが明らかとなった.

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