神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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33 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集
  • 石川 均, 敷島 敬悟
    2016 年 33 巻 4 号 p. 333-
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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  • 吉田 正樹, 井田 正博, 政岡 ゆり, 小岩 信義, Jean Louis Stievenart, 吉川 輝
    2016 年 33 巻 4 号 p. 334-343
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    中枢機能を非侵襲的に研究するために,課題や刺激による局所脳活動解析がおこなわれてきた.一方で,このようなアプローチでは中枢機能の統合過程を研究するには限界があった.近年,安静時の脳活動という概念がデフォルトモードネットワークとして紹介され,これが内的思考などに関与し,従来の目標指向型の課題遂行で脱賦活する特徴があることがわかってきた.このような脳の自発的な活動は,従来の課題による脳局所活動と密接に相関することもわかってきた.この流れより,中枢機能の統合過程を解析する手段として,MR信号や拡散テンソル画像をベースにしたグラフ理論による解析法が提唱された.これらの,脳機能の局所解析からネットワーク全体の解析に至る過程を解説する.
  • 仲泊 聡
    2016 年 33 巻 4 号 p. 344-350
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    羞明の誘因には,明るさ,グレア,光沢感という似ているが異なる局面がある.また,これらを横断的に理解する切り口として視覚のダイナミックレンジがある.羞明を訴える脳内疾患に着目すると片頭痛患者に多いが,その局所診断は困難で,これまでの症例からは,視交叉近傍,視床枕,後頭葉底部が関連しているようである.健常者の脳活動を調べた研究では,漠然と羞明の有無で比較すると視覚野全体の反応性上昇をみとめる.しかし,光沢感に関連する大脳領野は,後頭葉底部にみられる.視覚のダイナミックレンジの病態には,それ自体を縮小するタイプと,そのシフトが阻害されるタイプがあり,そのそれぞれで羞明をきたす可能性がある.これらのどこまでが網膜内で情報処理され,どこからかが脳内で行われるのかは未だに不明である.
  • 山下 力, 三木 淳司
    2016 年 33 巻 4 号 p. 351-363
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    これまで,外側膝状体よりも後方の視路障害によって生じる同名半盲患者では,シナプスを越えて網膜神経節細胞まで障害が及ぶことはなく,眼底に異常はきたさないとされていた.しかし,我々は後大脳動脈梗塞後の同名半盲患者において,脳血管障害後の数年以内に視野欠損に対応した網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の菲薄化がみられたことを報告した.GCCの測定は,視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚の測定よりも神経線維障害の検出力が高かった.半盲側の網膜神経節細胞層+内網状層厚も,健側や正常眼に比べ有意な菲薄化を示していた.これらの菲薄化は網膜周辺より中心網膜で顕著であり,経過期間と有意に相関していた.さらに,半盲側のGCC厚, significance mapおよびdeviation map異常領域面積においては,視野障害との有意な関連があった.また,後頭葉病変発症直後のGCC厚の変化が明らかでない症例の経時的変化を行った結果,発症後2年程度で明らかな菲薄化が出現した.このような菲薄化では,網膜神経節細胞の経シナプス逆行性変性の関与が考えられるが,より早期に網膜の変化がみられる症例では,脳血管障害による前部視路への直接の影響がある可能性も否定出来ない.
原著
  • 木村 亜紀子, 増田 明子, 岡本 真奈, 一色 佳彦, 三村 治, 風間 周平
    2016 年 33 巻 4 号 p. 364-369
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    ステロイド治療に反応性は良好だが,ステロイドを漸減すると再発を繰り返す難治性の眼窩筋炎の3例を経験した.再発時には激痛を伴い,左右眼の異なる外眼筋に炎症が生じた.症例1は62歳の男性.ステロイドに反応性良好であるも5回の眼窩筋炎の再燃があり,最終的にプレドニゾロン(PSL)の内服に加え,免疫抑制薬(Methotrexate: MTX)の併用により再燃をみていない.症例2は29歳の男性.3回目の再燃の後,放射線療法を追加した.その後,他院でPSLの内服に加えMTXの内服を併用していたが再燃.合計5回の再燃があったが,その後はPSLとMTXの内服にtriamcinolone acetonide(TA)の局所投与も加え以降3年再燃をみていない.症例3は41歳の女性.当院受診までに5回の眼窩筋炎の再燃があり,6回目の再燃で初診となった.ステロイドパルス中に右眼の眼窩筋炎で再燃し,PSL内服に加えMTXを追加した.しかし,PSL 25 mgで再燃したため40 mgに増量した時点でステロイド緑内障を発症し,点眼でのコントロールがつかず緑内障手術を要した.その後,PSLとMTXの内服で再燃をみていない.再発を繰り返す難治性の眼窩筋炎に対しては,ステロイド治療に加え,早期からの免疫抑制薬の併用とTAの局所投与の併用が不可欠と考えられた.
  • 曽我部 由香, 真鍋 耕一郎, 村田 晶子, 山地 康文, 森本 尚孝, 宮谷 克也
    2016 年 33 巻 4 号 p. 370-378
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    腫瘍随伴症候群としての眼窩炎症の報告は極めて少ない.腫瘍随伴徴候を呈する肺癌患者に発症した,視神経障害を伴う両側の急性眼窩炎症を経験した.78歳男性.8か月前に肺腺癌と診断されて化学療法を受け,3か月前に完全寛解を得ていた.両上下眼瞼の浮腫,結膜充血浮腫,眼球突出を呈し,矯正視力は右眼(0.9)左眼(0.2)であった.眼窩MRIでは外眼筋の軽度腫大,左視神経の軽度の炎症を示す所見がみられた.全身検査の結果,C-reactive protein上昇,連銭形成を伴う貧血,ポリクローナルな高γグロブリン血症があり,血清interleukin (IL)-6が高値であるとともに,縦隔リンパ節に肺癌再発が確認された.併発した腫瘍熱に対してPrednisolone 20 mgを開始したところ,すみやかに眼窩炎症は消褪し,視力も回復した.再発肺癌に対する化学療法は部分寛解に留まったが眼窩炎症の再燃はなかった.
    腫瘍に対する免疫応答により誘導された,多彩な炎症性サイトカインによる炎症,及び異常免疫の賦活化の結果,自己炎症性疾患として眼窩炎症が発症したと考えた.原因不明の眼窩炎症には腫瘍が随伴していることがあり,本例のようにIL-6高値,あるいは高IL-6血症を示す特徴的血液学的所見が有用である可能性がある.
臨床報告
  • 徳久 照朗, 稲葉 万弓, 曽根田 瞬, 仁科 幸子, 敷島 敬悟
    2016 年 33 巻 4 号 p. 379-384
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    稀な黄斑低形成および黄斑部網膜皺襞を伴う中隔視神経異常症(septo-optic dysplasia(SOD))の症例を経験したので報告する.
    症例は9才の女児.新生児期に低血糖発作を繰り返し,2歳時に成長ホルモン分泌不全と診断された.同時に内斜視と両側視神経萎縮を指摘され,精査のため当科を紹介受診した.初診時,右眼光覚弁(+),左眼視力(0.9).眼底検査で両側視神経低形成,網膜血管の蛇行および光干渉断層計で右眼の黄斑低形成,網膜皺襞を認めた.MRIでは右優位の両側視神経萎縮,視交叉・視索の萎縮および下垂体の萎縮を呈していた.以上から,黄斑低形成および黄斑部網膜皺襞を伴う稀なSODと診断した.
    SODおよび黄斑低形成の発症に関し,共通因子の存在を仮定し,遺伝的要因,環境要因の側面から考察を行った.本症例では共通因子は特定できなかった.しかし,SODと黄斑低形成の両者の発症に関与する因子が存在する可能性も考えられ,今後同様の症例の蓄積が待たれる.
  • 渡辺 敏樹, 気賀沢 一輝, 宮崎 泰, 平形 明人
    2016 年 33 巻 4 号 p. 385-391
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    眼以外の神経症状が見られない視神経萎縮で発見された神経梅毒の一例を報告する.症例は59歳男性,数年前より両眼の進行性視力低下,視神経萎縮を認めるも,数か所の病院にて原因が判明せず当院へ紹介となった.視力右(手動弁),左(0.1),視野は,右は下耳側周辺のみ残存,左は中心および下方に暗点を呈し,両眼視神経乳頭の萎縮がみられた.対光反射近見反応解離を認めたが,縮瞳傾向はなかった.画像検査では視神経萎縮を呈したが,圧迫などの異常所見はなかった.血液および髄液の梅毒抗体の高値,髄液細胞数の上昇を認め,HIV抗体は陰性だった.神経梅毒と診断,ペニシリン大量点滴治療を2週間施行した.治療後,髄液細胞数の低下,血液と髄液の梅毒抗体の低下を認めたが,視力,視野に著変はなかった.経過中に脊髄癆などの神経学的異常はなかった.神経梅毒による視神経萎縮は,日常診療にて遭遇する事は稀だが,視機能予後は不良である.視神経萎縮の原因として梅毒を念頭に置く必要がある.
症例短報
  • 大野 新一郎, 河田 康祐, 戸田 修二, 江内田 寛
    2016 年 33 巻 4 号 p. 392-395
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    涙腺に発症し視神経症を併発したIgG4関連眼疾患が疑われた症例を報告する.症例は71歳男性.右眼の視力低下,両眼の眼球突出を主訴に当科を紹介受診した.視力は右手動弁,左0.8であった.直接対光反射は右眼で減弱し,不十分で,RAPDは陽性であった.眼底に異常は認められなかった.限界フリッカ値は右眼測定不能,左眼は30 Hzであった.MRIにて涙腺腫大,血清IgG4高値,涙腺生検による病理組織所見はIgG4陽性形質細胞が強拡大視野内に30個認められた.以上より,IgG4関連眼疾患診断基準により疑診群と診断した.視神経症の原因は腫大した涙腺により視神経が圧排され圧迫性の視神経症を発症したと考えられた.ステロイド全身投与を行ったところ視力は速やかに改善した.IgG4関連眼疾患は視神経症を併発することがあるので注意を要する.また,過去の報告のごとく治療はステロイドに良好な反応を示す.
臨床と研究の接点
  • 高橋 真有
    2016 年 33 巻 4 号 p. 396-401
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    眼球運動を視線の移動として考えた場合,二次元運動となるが,眼球は剛体であるので眼球運動は眼球の回転として考えなければならず,三次元運動となる.剛体の回転運動では交換則が成り立たないことから,水平,垂直の回転順を逆にすると,最後に生じる回旋の方向が逆になってしまう(Fick vs Helmholz回転).しかし,サッケードなどの随意性眼球運動はこの回旋成分を持たず,これはListingの法則として知られる.
    我々はこれまで,垂直性サッケードの脳幹出力神経回路について,ネコで細胞内記録を用いた電気生理学的・形態学的解析を行い,その詳細を明らかにしてきた.その過程の中で,上丘間興奮性交連結合を発見し,それが上丘の頭側部のみに存在することがわかった.この交連性興奮結合は,左右上丘の上向き,ないしは下向きどうしのサッケード出力細胞の間に存在していることから,垂直性サッケードと関係しListingの法則に関与していることが示唆された.
原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
Asian Section
  • Kartika A, Setiohadji B
    2016 年 33 巻 4 号 p. 421-427
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/01/14
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    Purpose: To describe the clinical characteristics and visual acuity outcome in methanol toxic optic neuropathy patients after treatment with high-dose intravenous methylprednisolone.
    Method: This is a descriptive retrospective study. Data were gathered from the medical records of 244 patients (488 eyes) diagnosed with methanol toxic optic neuropathy over a 5 year period (January 2010 until December 2014). They were treated with high-dose intravenous methylprednisolone 1 g/day followed by oral methylprednisolone 1 mg/kg which was tapered off. The sex, age, onset of blurred vision, time interval between alcohol ingestion and the treatment, funduscopic examination and visual acuity during the initial assessment, on the third day and at the one week, two week and one month follow-up visits were obtained and analyzed.
    Results: There were 244 patients included in our study. Two-hundred-twenty six (92.6%) were male. One-hundred-six (43.5%) were 26-35 years of age. One-hundred-sixty-nine (68.3%) had onset of visual loss 24 hours after alcohol exposure. One-hundred-eighty-seven (64.5%) had an interval that was 2 days – 1 week between alcohol ingestion and steroid treatment. One-hundred- sixty-five (67.6%) had optic disc swelling seen by funduscopy. Most patients had an initial visual acuity between light perception and counting fingers at 1 meter. On the third day of intravenous methylprednisolone treatment, 288 out of 488 eyes (59%) showed improvement of visual acuity, 175 eyes (35.8%) showed no improvement and 25 eyes (5.1%) had decreased visual acuity.
    Conclusion: The majority of patients were male and most cases were between the ages of 26-35 years of age. Loss of visual acuity mostly occurred after 24 hours of alcohol ingestion and the majority of cases received treatment 2 days–1 week of alcohol ingestion. Fundusopic examination showed optic disc swelling in most cases. Treatment with high-dose intravenous methylprednisolone may improve visual acuity of patients with methanol toxic optic neuropathy.
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