神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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36 巻, 3 号
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特集
  • 島田 佳明
    2019 年 36 巻 3 号 p. 273-275
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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  • 下野 九理子, 松下 賢治
    2019 年 36 巻 3 号 p. 276-284
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
    ジャーナル 認証あり
     Vigabatrin(VGB, Sabril®)は乳児期に発症する難治性てんかんである,点頭てんかんの治療薬として,2016年に本邦で承認された抗てんかん薬である.点頭てんかんの治療薬としてはACTH療法と並んで第一選択薬とされる.確かな有効性が報告される一方で,VGBは視野障害の不可逆性の副作用が問題となっている.VGBの使用にあたっては定期的な眼科診察と網膜電図検査が義務付けられている.本稿ではVGB治療の実際と副作用管理について概説する.
  • 篠田 啓
    2019 年 36 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     クロロキン網膜症はクロロキン(CQ)の長期投与により両眼黄斑が障害される網膜症として有名で,本邦における三大薬害の一つであり50年以上使用が制限されていた.2015年に全身性エリテマトーデス,皮膚エリテマトーデスに対してヒドロキシクロロキン(HCQ)に薬事承認が得られ,CQと比して低頻度であるがHCQ内服においても同様の網膜症が生じうる.治療は投与を中止することであるが,投薬を中止しても進行悪化することがあり早期発見が重要である.発症には累積投与量,肝機能腎機能障害,高齢などが関与し,処方医と眼科医の連携が極めて重要である.
  • 大出 尚郎
    2019 年 36 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     ジゴキシンはうっ血性心不全や不整脈の治療薬として用いられる強心配糖体であるが,治療有効血中濃度と中毒血中濃度とが近いため容易に中毒を起こしやすい.ジゴキシン中毒の特徴は黄視症,羞明,霧視,視力低下,中心暗点等の眼症状,下痢,嘔吐などの消化器症状,徐脈,不整脈等を認める.視覚電気生理学的特徴では30 HzフリッカーERGの振幅の低下を認める.ジゴキシン血中濃度測定の結果,中毒と診断された場合は休薬する.ジゴキシン中毒による症状は可逆性でwash outにより改善する.
  • 柏木 広哉
    2019 年 36 巻 3 号 p. 297-303
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     現在2人に1人ががんになる時代である.そのため近年の抗がん剤の開発は目覚ましい.それに伴い眼の副作用の報告が増加している.この副作用は,眼部の多岐にわたり,神経眼科領域では,視力低下,視野障害,複視,羞明感などの症状があり,障害部位は,視神経,網膜,外眼筋,脳神経などにわたる.代表的な原因薬剤は,殺菌性製剤(パクリタキセル,ドセタキセル,シスプラチン,5-FUなど),ホルモン製剤(タモキシフェンなど)分子標的薬(クリゾチニブ,イマチニブなど),免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,イピリマブなど)などがある.免疫チェックポイント阻害薬の副作用は,ぶどう膜炎が有名であるが,視神経障害,重症筋無力症など,頻度は少ないが注意すべき副作用がある.特に重症筋無力症は急激に全身型に移行するので注意が必要である.がん治療は,効果(ベネフィット)と副作用(リスク)とのバランスを考えることが重要であり,早期発見と医療連携が必要とされる.
  • 若倉 雅登
    2019 年 36 巻 3 号 p. 304-308
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     ベンゾジアゼン系薬物(BZD)は,化学構造上本来のBZDだけでなく,臨床的にはしばしばチエノジアゼピンも含めて扱うことがある.また非BZDとされる薬物でもBZDと同様に γ-アミノ酪酸(GABA)A受容体に結合して,抗けいれん,催眠鎮静,筋弛緩などの作用を持つ,薬理学的BZD類似薬がある.これらの薬剤による視覚系,神経眼科的副作用は意外と知られていないので,本稿では3項に分けてレビューした.すなわち1)視覚系副作用,2)薬剤性眼瞼けいれん,3)離脱症候群である.
     眼科臨床においては,急性狭隅角緑内障における抗コリン作用は常に問題にされるが,重要度も頻度も高いと思われる神経眼科的副作用には関心が低く,服薬歴を聴取する機会は少なかったと思われる.これらの薬剤は非常に種類が多く,特に日本では世界の中でも飛びぬけて多用,乱用されているので,こうした副作用に留意することが重要である.
原著
  • 大庭 紀雄, 丹沢 慶一, 伊佐敷 靖
    2019 年 36 巻 3 号 p. 309-322
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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    目的:瞳孔に関する過去50年間の研究論文を計量書誌学的に検討するとともに,高頻度被引用論文を明らかにする.
    対象と方法:Web of Science(Clarivate Analytics社)が提供する文献データベースScience Citation Index Expandedにonlineアクセス(2018年11月),pupilまたは派生語(pupillometrypupillographypupillary)を標題に含み過去50年間(1968-2017)に国際誌に発表された英文原著論文(総説を含む)を検索した.収集した3,013論文について,研究課題の内容などを検討した.また,1900年以来の瞳孔研究論文の被引用回数を調べ,ランキング上位の高頻度被引用論文を抽出した.
    結果:発表論文数は2005年頃まで年間50件前後で,その後は着実に増加して2010年代には100件を超えた.国別発信数はUSAがトップで34.1%を占め,United Kingdom(10.8%),Germany(8.4%),Japan(7.1%),People's Republic of China(3.5%)の順である.眼科学,神経病学,神経生理学,神経科学,神経薬理学,神経心理学と多彩な専門領域で検討されている.主要課題には,緊張性瞳孔,固定瞳孔,瞳孔回避,メラノプシン関連瞳孔反射,瞳孔径と高次収差との関係性,トロピカミド点眼によるAlzheimer病診断,知的作業に伴う精神感覚性瞳孔反射,眼内手術における瞳孔管理,瞳孔測定の臨床応用(RAPD,瞳孔視野計開発,遺伝子治療の評価)がある.論文の被引用回数は0から640まで大きくばらついた.ランキングの最上位には知的作業誘発瞳孔反射(Beatty, 1982),スタイルスクロフォード効果(Stiles, 1933),想起と瞳孔径(Kahneman, 1966),情動と瞳孔(Bradley, 2008),メラノプシン関連瞳孔反射(Lucas, 2003)がある.こうした高頻度被引用論文は神経心理学,神経生理学領域における研究が比較的多い.
    結語:瞳孔は医学生物学の多彩な専門領域で研究対象となってきたが,近年は神経学や神経眼科に関連する研究に加えて神経心理学領域の諸課題に関心が高まっている.
  • 權守 真奈, 鈴木 利根, 原 雄時, 町田 繁樹
    2019 年 36 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     抗Low-density lipoprotein receptor-related protein 4(Lrp4)抗体単独陽性の重症筋無力症および疑診例4例について,臨床症状や血清中の自己抗体,画像所見および治療経過について検討した.患者の4例中3例が女性で1例が男性,平均発症年齢は55歳で,いずれも眼症状を主体とした軽症例から中等度の全身型であった.すべての症例で抗Lrp4抗体が単独陽性で,抗Acetylcholine receptor抗体と抗Muscle-specific tyrosine kinase抗体は陰性であった.その他の自己抗体では,抗thyroid peroxidase抗体が4例中3例で陽性であった.CT上,4例とも胸腺腫はみられなかった.治療として,コルチコステロイド剤3例,免疫抑制薬1例,抗コリンエステラーゼ阻害薬1例が有効であった.
症例報告
  • 金山 俊介, 池田 哲也, 後関 利明, 石川 均, 浅川 賢, 庄司 信行
    2019 年 36 巻 3 号 p. 330-334
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     Vici症候群は,1988年にViciらによって報告された脳梁欠損や先天白内障,眼皮膚白皮症や混合性免疫不全などを呈する常染色体劣性遺伝の先天性多臓器疾患であり,その多くは心不全や感染症によって3歳未満で死亡することが多い.細胞内蛋白代謝調節関連遺伝子であるectopic P-granules autophagy protein 5(EPG5)遺伝子の変異が原因とされている.眼合併症として,先天白内障や網膜低色素のほか,視神経萎縮や眼振などの神経眼科的な異常を呈することが多い.今回我々は,網膜電図,視覚誘発電位検査,赤外線電子瞳孔計などの他覚的検査が施行可能であった17歳の本疾患を経験した.両眼の閉瞼不全による点状表層角膜炎と両眼の視神経萎縮を認めたものの本疾患に典型的な白内障と網膜低色素は認めなかった.網膜電図ではnegative typeの波形を認め,視覚誘発電位検査は両眼とも明瞭な反応を認めたものの,対光反射は消失していた.今回の症例は我々の調べ得る限り過去最高齢であり,他覚的な視機能検査を施行することが出来たVici症候群の症例を経験したので報告する.
  • 春田 雅俊, 大島 寛之, 吉田 茂生
    2019 年 36 巻 3 号 p. 335-339
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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    目的:視神経炎として診断,治療されていた片眼性網膜変性の一例を報告する.
    症例:21歳,女性.左の視神経炎の精査目的で久留米大学病院を紹介受診した.7年前に左の視神経炎の診断でステロイドパルス療法を施行されたが,視力は改善しなかった.矯正視力は右1.5,左0.03で,左眼は相対的瞳孔求心路障害が陽性であった.左眼の眼底検査では,視神経乳頭が蒼白化し,中間周辺部の網膜色調が粗造で,網膜血管は狭細化していた.右眼の眼底に異常は認めなかった.光干渉断層計,眼底自発蛍光,網膜電図,フルオレセイン蛍光眼底造影の検査結果から,左眼の片眼性網膜変性と診断した.
    結論:片眼性の視力低下で視神経が原因として考えられる場合でも,周辺部網膜を含めた精査を行い,網膜の異常を除外することが重要である.
  • 野上 豪志, 鈴木 賢治, 原 直人, 藤山 由紀子, 佐藤 司, 新井田 孝裕
    2019 年 36 巻 3 号 p. 340-345
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     症例は10歳,女児.左眼の上眼瞼痛と複視を主訴とし,前医で左眼動眼神経麻痺と診断された.CT・MRI画像検査,血液・髄液検査で異常を認めず,ステロイドパルス療法にて治療効果は得られなかった.その後当院の神経眼科外来へセカンドオピニオン目的で受診した.当院初診時は,左眼の眼瞼下垂,眼球運動障害,調節障害,対光反射の減弱を認めた.眼瞼下垂,眼球運動障害は発症後2か月で完全回復を認め,調節障害は発症後25か月でほぼ改善を認めたが,対光反射の減弱は発症後25か月時点でも残存している.また,経過中に患眼の対光近見反射解離(light-near dissociation),瞳孔括約筋の分節的な麻痺を認め,0.125%ピロカルピン塩酸塩を用いた点眼試験では瞳孔の脱神経性過敏を呈した.本症例の動眼神経麻痺後における瞳孔緊張症の責任病巣は,毛様体神経節より末梢の節後線維と推察された.
印象記
書評
Asian Section
  • Reika Kono, Hiroshi Ohtsuki, Ichiro Hamasaki, Jiro Seguchi, Yuki Moriz ...
    2019 年 36 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2019/10/02
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     This report describes a case involving a Japanese patient with distance esotropia, who was followed-up for 4 years using magnetic resonance imaging(MRI). A 68-year-old woman with high myopia exhibited esotropia of 10 prism diopters(∆)and right hypotropia of 5∆; her axial lengths were 31.0 mm oculus dextrus(OD)and 30.7 mm oculus sinister(OS). Bilateral enlarged lateral rectus(LR)-superior rectus(SR)bands and posterior staphylomata were observed on orbital MRI. At the 4-year follow-up, her ocular deviation had deteriorated to esotropia of 18∆ and right hypotropia of 8∆; however, her axial lengths had scarcely changed(31.0 mm OD; 30.8 mm OS). The enlargement and rupturing of the bilateral LR-SR bands had worsened. Progressive enlargement and rupturing of the LR-SR bands, which are presumably related to aging and possibly linked to progressive connective tissue degeneration, may increase ocular deviation.
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