神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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37 巻, 4 号
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特集
  • 溝田 淳
    2020 年 37 巻 4 号 p. 361
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
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  • 柏木 広哉
    2020 年 37 巻 4 号 p. 362-369
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     眼窩は7つの骨に囲まれ容積は25-30 cc.眼球,血管,神経,リンパ系組織,脂肪,筋肉が存在しており,様々な腫瘍が発生する.良悪性に関わらず腫瘍による眼球突出(稀に眼球陥凹)や眼球運動障害による複視,視神経の圧迫による視力低下や視野狭窄など神経眼科的症状をきたす.悪性腫瘍は原発,浸潤性,転移性に分けられ,リンパ系腫瘍が多い.リンパ腫は確実に全摘出することができれば後療法は必要なくなることがあるが,その頻度は極めて少ない.また副鼻腔や鼻腔からの浸潤性癌は視神経障害を起こすことが多く,生命予後を延長することができても視機能維持で苦慮することも多い.また,近年進歩している放射線療法(陽子線,重粒子線)や抗がん剤治療による視神経障害などにも注意が必要である.

  • 高比良 雅之
    2020 年 37 巻 4 号 p. 370-377
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     眼窩に生じる良性腫瘍・腫瘤性病変は,①良性腫瘍,②血管奇形,③IgG4関連疾患を含むリンパ増殖性疾患(良性)に大別される.その病変の部位や大きさによって,視力低下,視野障害,複視などの症状を来し,手術やステロイド治療などの適応となる.一方で眼症状が無いか軽微である場合には経過観察のみを行う場合もある.なかには悪性化傾向の強い疾患もあり,鑑別診断には留意すべきである.

  • 恩田 秀寿
    2020 年 37 巻 4 号 p. 378-386
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     外傷後の神経眼科疾患には適切な診断と治療が求められる.頭部外傷においては頭蓋底骨折や脳出血による脳神経麻痺をしばしば認める.眼窩上壁や視神経管は骨折しやすく,それぞれ眼球運動障害と重篤な視力低下が生じる.眼窩外傷は鈍的眼外傷で生じることが多く外傷性視神経症と眼窩骨折は眼窩外傷における代表的な疾患である.外傷性視神経症は受傷直後から急激な視力低下をきたす.早期にステロイド治療を開始し,効果がない場合には視神経管開放術を行うことで視力の改善が期待できる.眼窩骨折は眼球運動障害と眼球陥凹をきたす疾患である.特に閉鎖型骨折では眼球心臓反射による徐脈を合併している場合があり,緊急手術を要する.

  • 武田 鉄平, 鴻 信義
    2020 年 37 巻 4 号 p. 387-393
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     副鼻腔と眼窩は眼窩骨壁を隔てて隣接している.そのため副鼻腔の炎症や嚢胞性病変,腫瘍などが眼窩に波及し,眼球運動障害や視力障害など時に重篤な症状を呈する場合がある.画像診断上,眼窩へ明らかな圧排や浸潤傾向を示していない副鼻腔疾患でも視機能障害を呈する場合があるため,副鼻腔に陰影がある場合や,臨床上副鼻腔と関連が疑われる場合は,早急に耳鼻咽喉科医にコンサルトすることが望まれる.

  • 山中 行人, 渡辺 彰英
    2020 年 37 巻 4 号 p. 394-399
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     眼窩内の疾患は,しばしば視力低下と複視(あるいは眼球運動障害)を引き起こす.この際に,視力低下の原因が視神経障害によるものか否かを鑑別することが重要である.視神経障害の有無を判定するためには,相対的瞳孔求心路障害(relative afferent pupillary defect:RAPD)の有無を調べたうえで,限界フリッカ値や静的・動的視野検査を行う.視神経障害によって複視が引き起こされていた場合は,眼窩内および眼窩先端部付近の病変(特発性眼窩炎症,眼窩蜂巣炎,眼窩先端部症候群,IgG4関連眼疾患,眼窩腫瘍,甲状腺眼症),あるいは眼球運動を司る脳神経(動眼,滑車,外転神経)と視神経・視交叉までの視路線のいずれもを障害する病変を鑑別疾患として考える必要がある.

     病変部位の検索には眼窩部MRI検査が有効であり,T2脂肪抑制強調画像あるいはSTIR法での撮像をオーダーする.また,眼窩先端部症候群の評価には造影MRIが有効である.

症例報告
  • 黒澤 史門, 植木 智志, 清河 慈, 畑瀬 哲尚, 福地 健郎
    2020 年 37 巻 4 号 p. 400-405
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
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    目的:高血圧性網膜症による乳頭腫脹と鑑別を要した特発性頭蓋内圧亢進症によるうっ血乳頭の1例を報告する.

    症例:当科初診時42歳,女性.無治療の高血圧があり,網膜出血・軟性白斑の他に網膜趨壁を伴う旺盛な乳頭腫脹がみられ,程度が強い乳頭腫脹であることからうっ血乳頭を積極的に疑い,頭部画像検査・髄液検査を行って特発性頭蓋内圧亢進症の診断に至った.

    結論:本症例は診断に至るまでに高血圧性網膜症による乳頭腫脹との鑑別を要したため,特発性頭蓋内圧亢進症の診断を考える上で重要な症例であった.うっ血乳頭の診断には頭部画像検査・髄液検査を積極的に行うことが重要であることが改めて示唆された.

  • 曽我部 由香, 水川憲一 , 田村彩 , 都村豊弘 , 藤川達也
    2020 年 37 巻 4 号 p. 406-412
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
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     抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎は,眼痛,乳頭腫脹が多く,MRI上視神経の腫脹が強く,ステロイドによく反応し視力予後が良好などの臨床的特徴があるとされる.今回,網膜動脈分枝閉塞,前部虚血性視神経症,漿液性網膜剥離,同側の外転神経麻痺を合併して視力回復が不良であった片眼の抗MOG抗体陽性視神経炎について報告する.

     症例は69歳,女性.2週間前から右眼深部痛と視力低下があり,初診時右眼は光覚弁がなかった.右眼に線状出血を伴い蒼白な視神経乳頭腫脹,黄斑部漿液性網膜剥離と軽度の外転制限がみられた.蛍光眼底造影では乳頭の分節状充盈不良と下方網膜動脈への流入欠損を認めた.MRIで右視神経全長が腫脹しており,強く造影された.ステロイドミニパルス2クール,シクロフォスファミドパルス2クールを施行した後に抗MOG抗体陽性が判明した.ステロイドミニパルス1クールを追加し,視力視野は徐々に改善したが,1年後の最終視力は0.2にとどまっている.

     抗MOG抗体陽性視神経炎は稀に網膜血管や視神経乳頭の虚血,漿液性網膜剥離,眼球運動神経麻痺を伴うことがある.

  • 石川 大起, 石川 均, 龍井 苑子, 後関 利明, 金山 俊介, 飯田 嘉彦, 庄司 信行
    2020 年 37 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     症例は74歳,女性.右眼の視野狭窄,眼痛,急激な視力低下を主訴に当科受診.初診時,視力は右眼手動弁,左眼(1.2).右)相対的瞳孔求心路障害(RAPD)陽性.全方位で右眼の眼球運動障害を認めた.両眼とも軽度白内障を認める他は,黄斑部,視神経,含め特記すべき事項はなかった.頭部MRI Gd脂肪抑制T1強調画像並びに脂肪抑制T2 強調画像にて右球後視神経から視交叉及び視索までの高信号域を認めた.

     以上の所見から,右)視神経炎を疑いステロイドパルス(メチルプレドニゾロン1,000 mg,3日間)施行.経過中に,初診時採血から抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性が判明した.抗MOG抗体陽性視神経炎ならびに炎症波及による眼窩先端症候群と診断した.ステロイドパルス後,眼球運動障害は速やかに改善したが,視力の改善は乏しかったため,ステロイドパルス2クール目を施行した.2クール目施行後の頭部MRIでは右球後視神経・視交叉・視索の高信号域は消失していたが,右眼視力は(0.02)までしか改善しなかった.抗MOG抗体陽性視神経炎は比較的視機能予後良好と報告されているが,本症例のような難治性視神経炎の症例が存在することに留意して治療に臨む必要がある.

  • 龍井 苑子, 金山 俊介, 後関 利明, 石川 均, 庄司 信行
    2020 年 37 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     39歳男性.初診時,左眼視力光覚なし,眼球運動時痛あり,相対的瞳孔求心路障害陽性,造影MRIにて視交叉近傍に高輝度の炎症領域を認め視神経炎の診断となった.既往歴,家族歴に特記すべきことなし.ステロイドパルス3クール,及び血漿交換療法を併施するも左眼視力は不変であった.各種自己抗体は陰性であったが,ミトコンドリア遺伝子11778塩基対変異を認めた.発症4年後も患眼は光覚なし,僚眼は視機能を維持している. 本症は視神経炎としても非典型的で,レーベル遺伝性視神経症としても臨床的特徴は合致しなかった.難治性の視神経疾患では基礎にミトコンドリア遺伝子塩基対変異を有する可能性があることを念頭に入れる必要がある.

  • 小野 貴暁, 三戸 裕美, 岡本 直記, 後藤 克聡, 家木 良彰, 桐生 純一, 三木 淳司
    2020 年 37 巻 4 号 p. 423-428
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

     ステロイド治療中に僚眼発症を来した動脈炎性前部虚血性視神経症にトシリズマブが奏功した1例を報告する.症例は85歳,女性で,初診時視力は右眼手動弁,左眼0.7であった.右眼の相対的瞳孔求心路障害が陽性で,右眼視神経乳頭は蒼白浮腫を呈しており,右眼動脈炎性前部虚血性視神経症が疑われた.ステロイドパルス療法を施行したが,僚眼発症を来し,側頭動脈生検で炎症細胞浸潤,巨細胞が確認された.ステロイド治療に抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)投与を併用し,治療開始100日目で視力は右眼0.02,左眼0.3を維持している.活動性の高い動脈炎性前部虚血性視神経症はステロイド治療に加え,トシリズマブの併用が有用と考えられる.

入門シリーズ118
追悼文
Asian Section
  • King Hans Kurnia, Syntia Nusanti, Mohamad Sidik
    2020 年 37 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/28
    ジャーナル 認証あり

    Purpose: To evaluate ocular myasthenia gravis(OMG)treatment response and conversion rate of OMG to generalized myasthenia gravis(GMG)in a neuro-ophthalmology clinic of an ophthalmology unit in a tertiary referral hospital in Indonesia.

    Methods: This is a retrospective chart review. Study subjects were new OMG patients who had not received treatment previously. The clinical profile of patients, initial and final treatment regimen, treatment response, final diagnosis, and OMG conversion rate and duration were evaluated. Treatment response was evaluated as improvement in diplopia or ptosis after one month of initial treatment, and were categorized as optimal improvement, partial improvement, unchanged, and inconclusive. OMG conversion rate and duration were determined by evaluating the final diagnosis and were classified as OMG, GMG, and conversion to GMG.

    Results: Among the 50 patients with OMG, 74% were prescribed pyridostigmine monotherapy, while 26% were prescribed an additional oral steroid as the initial treatment regimen. While the majority of patients(75.9%)experienced improvement, 24.1% patients showed no change in ocular symptoms following initial treatment administration. Neither the presence of diplopia or limited ocular movement in the initial clinical presentation nor the initial steroid use was associated with treatment response(p≥0.05). OMG to GMG conversion rate was 12.8%, with a mean conversion duration occurring at 11.9±9.3 months since diagnosis.

    Conclusions: The majority of OMG patients experienced improvement following initial treatment regimen administration. While OMG conversion rate was low, conversion to GMG mainly occurred during the first year since diagnosis.

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