神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
Print ISSN : 0289-7024
ISSN-L : 0289-7024
39 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
特集
  • 橋本 雅人, 大久保 真司
    2022 年 39 巻 1 号 p. 2
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり
  • 中野 絵梨
    2022 年 39 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     頭蓋内圧亢進を原因として生ずる視神経乳頭腫脹を,うっ血乳頭(papilledema)と呼ぶ.頭蓋内圧亢進の原因は多岐にわたるが,脳腫瘍や髄膜炎,閉塞性水頭症のような緊急性の高い致死的な疾患が原因となっていることが多く,見逃してはならない重要な乳頭所見である.近年は光干渉断層計が普及しており,視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚を測定することで,乳頭腫脹の有無やその経時的変化を定量的に評価することが可能になった.一般的に,うっ血乳頭で視機能障害は生じない,またはあっても軽微であるとされるが,中等度以上のうっ血乳頭では,漿液性網膜剥離や多数の網膜出血や滲出物,および硝子体出血による視力低下を認めることがある.また,長期にわたるうっ血乳頭の存在は,視神経乳頭萎縮を引き起こし,視力低下および視野障害を来す.

  • 辻 隆宏
    2022 年 39 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     緑内障性視神経症,特に正常眼圧緑内障の発症機序・原因について,諸説あり結論がでていない.その有力な仮説の一つとして,篩状板部での脳脊髄液圧(頭蓋内圧)と眼圧の圧較差が正常眼圧緑内障の発症の要因となると言われている.ほとんどの臨床研究が正常眼圧緑内障では低脳脊髄液圧であることを示唆しているが,そうではないとする報告もある.しかしながら,どちらの臨床研究も少数を対象としたものであり,また,プロトコールも統一されていない.したがって,非侵襲性の脳脊髄液圧測定方法の開発による大規模な臨床研究を行い,より詳細に検討すべきである.

     脳脊髄液圧の低下による緑内障の発症機序は,これまでの動物実験の結果から,1)篩状板部での脳脊髄液圧と眼圧の圧較差が篩状板の変形により物理的に軸索流が停滞する,2)低い脳脊髄液圧が直接的に軸索流を停滞させる,3)篩状板後部の脳脊髄液からの排泄機構(glymphatic system)の破綻などが推測される.実験動物として一般的なげっ歯類では篩状板構造が未熟であるものの,急性低脳脊髄液圧モデルでも一定の網膜神経節軸索の変性や細胞死を観察された.今後は,これら動物モデルにより低脳脊髄液圧による軸索変性の分子機序の解析や慢性低脳脊髄液圧モデルなどの開発が必要である.

  • 花井 香織
    2022 年 39 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     急激な脳圧亢進に伴い眼内出血が生じることは古くから知られている.しかしながら,その機序に関わる臨床的研究はほとんどなされておらず不明な点が多い.本稿の前半では急性脳圧亢進の病態とその疾患群の特徴及び実際に硝子体出血(vitreous hemorrhage:VH)を来した症例を提示し,解説した.脳圧亢進による眼内出血の原因としては,網膜中心静脈圧亢進が最も有力な説とされている.これは,網膜中心静脈が視神経周囲くも膜下腔を通過する部位において,髄液圧上昇が網膜中心静脈への圧迫を来たし,静脈圧上昇を引き起こすものと考えられる.また篩状板を介した眼圧-脳圧の圧較差(translaminar pressure difference)の勾配もうっ血乳頭の発症メカニズム,さらには眼内出血に深く関与している.後半では急性脳圧亢進における眼内出血の代表的疾患であるTerson症候群(Terson syndrome:TS)について,その発生メカニズムを中心に解説した.TSの発症機序については諸説があり一定の見解は得られていないが,最も有力な説はくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)による急激な脳圧亢進により網膜中心静脈圧が上昇,網膜の毛細血管が破綻し内境界膜下出血やVHを来す説である.他には視神経周囲くも膜下腔に流入したSAHが眼内に直接流入するという説がある.また,近年TSでは後部硝子体皮質前ポケットに出血が存在しないことがわかり,TSにおける眼内出血発症機序を解明する新たな知見の一つと考える.

  • 山上 明子
    2022 年 39 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     脳脊髄液が減少する病態では起立時に増悪する頭痛・頸部痛,めまい,耳鳴り,視機能異常,嘔気,倦怠感,疲労感など多彩な症状を呈する.また,多くの症例が様々な視機能異常を自覚しており眼痛,ピントが合わない,単眼複視,複視,視力低下,羞明,視野障害などを自覚して眼科を受診している.眼所見としては輻湊痙攣,原因不明の視力・視野障害,求心性視野狭窄を呈する例があるが,眼科的に異常がみられない症例も多い.今回は,眼科を受診してその後,脳脊髄液漏出症と診断された4例について提示する.眼所見以外の症状にも注目し,事故や外傷の既往を過去にさかのぼって確認し,脳脊髄液減少症が疑われれば専門医に紹介していく必要がある.

症例報告
  • 濱 奈緒子, 松本 直, 富田 匡彦, 功刀 葉子, 加藤 桂子, 堀 裕一, 石川 均
    2022 年 39 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     Uhthoff徴候は体温上昇に伴い視力低下などが出現する現象だが,眼血流との関係についての報告はまだない.我々はlaser speckle flowgraphy(LSFG)を用い,視神経炎疑い症例のトレッドミル負荷前後における,視神経乳頭血流を測定したので報告する.症例は25歳女性.1か月前から運動後や入浴後に一時的な右眼視力低下を自覚し,精査目的に当科紹介受診した.Uhthoff徴候と考え,トレッドミル負荷前後に視力,視野,視覚誘発電位(VEP),視神経乳頭血流を測定した.さらに,1年後の症状消失時に同様の検査を行い,その変化を検討した.Uhthoff徴候を認めている間では視野異常,VEP遅延を認めたが,運動負荷前後の視神経乳頭血流の傾向(左右差)に変化を認めなかった.また,自覚症状消失時の運動負荷前後で視力,視野,VEP,視神経乳頭血流の傾向に変化を認めなかった.本症例において視神経乳頭血流は急性期の視力,視野などの変化と関係は認めず,Uhthoff徴候との間にも明確な関連性はないことが示唆された.

  • 森本 壮, 下條 裕史, 西田 幸二
    2022 年 39 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

    目的:変動する左眼の眼瞼下垂と左眼の全方向への眼球運動障害および下直筋の肥厚を呈した一例について報告する.

    症例:症例は47歳,女性.左眼瞼下垂と複視を主訴に本学眼科を受診した.初診時には,左眼の眼瞼下垂と左眼の外上斜視および左眼の全方向の眼球運動障害を認めた.頭部MRI検査で,左眼の外眼筋と上眼瞼挙筋の高輝度信号および下直筋の肥厚を認めた.他の疾患の可能性を除外し,左眼の特発性外眼筋炎と診断し,経過観察となった.左眼の眼瞼下垂についてはその後,再発を繰り返したが,ステロイド治療は効果がなかった.

    結論:今回の症例は,特発性外眼筋炎としては,非典型的であり,ステロイド治療に抵抗することから別の病態が存在する可能性が考えられた.

  • 三好 由希子, 澤村 裕正, 小泉 聡, 相原 一
    2022 年 39 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     動静脈瘻とは動脈と静脈の異常な交通であり発症部位により幅広い臨床症状を呈する.診断はMRI,MRAにより行うことが一般的だが,今回脳血管造影のみ陽性所見で診断に至った海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻を経験したので報告する.症例は69歳,女性,初期症状は頭痛でその後右眼の充血,眼球突出を呈した.近医にて動静脈瘻が疑われMRI,MRAが施行されたが外眼筋腫大のみの所見であり外眼筋炎として加療されたものの改善乏しく当院紹介受診となった.当院初診時右眼RAPD陽性,結膜血管の拡張蛇行,眼球突出,眼球運動障害,眼底出血を認めた.造影MRI,MRAにて動静脈瘻は指摘されず外眼筋腫脹,眼球突出から特発性眼窩炎症による圧迫性視神経症が疑われステロイドパルス療法が施行された.所見の改善乏しく,再度の単純MRI,MRAでも動静脈瘻は描出されなかった.しかし症状や眼所見から動静脈瘻が疑われ,脳血管造影にて右海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻の診断に至った.血管内コイル塞栓術施行後すみやかに自覚症状,眼所見が改善した.眼科医が動静脈瘻を疑った際には脳血管造影でのみ病変部の検出が可能な症例があることを念頭におき,脳血管外科と連携し脳血管造影を積極的に検討すべきであると考えられた.

  • 山崎 美香, 山上 明子, 岩佐 真弓, 井上 賢治, 若倉 雅登, 鹿島 悟, 眞木 二葉
    2022 年 39 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/29
    ジャーナル 認証あり

     症例は51歳,男性.亜急性に発症した複視を自覚しその1か月後に右眼眼瞼下垂が出現した.各種検査によって,甲状腺機能亢進症による甲状腺眼症と重症筋無力症の合併が疑われた.メチルプレドニゾロンパルス療法1クールによって複視は改善したが,右眼眼瞼下垂と眼球運動障害が残存した.再度パルス療法を施行したところ,2クール終了後には,右眼眼瞼下垂は改善したが,その後も変動する眼球運動障害を認めた.甲状腺眼症と重症筋無力症に対し,同時に治療を要した症例の治療経過より,どちらの疾患に対して,どの程度治療効果があったかについて正確に判定することは難しいが,各々に特徴的な所見の改善度やMRIの画像所見から,ある程度推察することは可能ではないかと考えた.

原典で読む神経眼科シリーズ
「呼吸器内科医がエタンブトール投与に際して行うべき眼科的副作用対策」について
エラータ
feedback
Top