神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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32 巻, 3 号
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特集
  • 若倉 雅登
    2015 年32 巻3 号 p. 233
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
  • 原田 高幸
    2015 年32 巻3 号 p. 234-239
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    我が国における中途失明原因の多くは網膜・視神経の変性疾患であり,第1位は緑内障である.緑内障のrisk factorとして高眼圧があるが,日本人の場合は眼圧上昇がみられない正常眼圧緑内障(NTG)が全体の約7割を占めるという特徴がある.NTGの病態は必ずしも明確ではないが,我々はグルタミン酸輸送体の遺伝子欠損マウスがNTGの疾患モデルとなり得ることを報告した.また同モデルを利用して,神経保護効果を示す既存薬があることを見出している.一方,神経特異的に発現するグアニンヌクレオチド交換因子であるDock3は,神経保護および視神経軸索再生を促進することが明らかとなった.以上のような我々の取り組みについて,最新の知見を交えて御紹介したい.
  • 嶋澤 雅光, 原 英彰
    2015 年32 巻3 号 p. 240-247
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    我が国の中途失明疾患には,緑内障,糖尿病網膜症,加齢黄斑変性症および網膜色素変性症などがある.これらの失明性疾患の多くは網膜細胞の変性に起因することが知られている.しかし,その病態の発症および進行機序は十分に解明されていない.近年,緑内障をはじめとした網膜疾患における小胞体ストレスの関与が注目されている.著者らは,様々な種類の細胞ストレスにより,網膜神経節細胞が細胞死に至る前に小胞体ストレスを誘導することを明らかにした.また,緑内障患者においてその網膜・視神経の障害と同時に眼から脳への視覚中枢の中継路である外側膝状体に変性が起こることが明らかになってきた.本稿では,網膜神経節細胞死における小胞体ストレスの関与,視覚中枢変性およびその治療戦略について紹介する.
  • 忍足 俊幸
    2015 年32 巻3 号 p. 248-254
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    中枢神経に属する視神経は軸索が損傷を受けると再生できず不可逆的に変性する.軸索の障害は神経細胞死を誘導するが,神経を保護しても障害を受けた軸索を再生させないと視機能の回復には至らない.しかし中枢神経のグリア環境は再生に阻害的に働くため生理的な環境下では再生を誘導できない.そのため神経保護のみならず軸索を保護し再生を促進する治療戦略が必要となる.
    網膜の3次元培養は神経細胞死と神経突起再生を同時に評価でき,網膜レベルでの神経保護・再生の治療戦略を確立するための基礎的なエビデンスを提供するシステムである.我々はc-Fosが神経細胞死に必須の因子であり量依存性に神経細胞死を誘導すること,ミトコンドリア依存性・小胞体ストレス依存性の細胞死経路が関与すること,種々の神経栄養因子が神経保護・再生促進作用を有すること,NT-4が最も網膜レベルでの再生促進作用が強かったことを報告した.また,多くの網膜・視神経疾患の病態に関与する終末糖化産物(AGE)を負荷することにより神経細胞死・再生阻害が起きること,AGE誘導神経細胞死にJNKが関与することを示した.JNKは人糖尿病網膜や緑内障眼で活性化が確認されており,人の網膜・視神経疾患と培養網膜で見られる神経細胞死のメカニズムが共通していることが示唆される.このことから,培養で再生促進作用が確認された神経保護因子は人においても有効である可能性を示唆するものである.
    In vivoでは中枢神経のグリアを末梢神経のグリアであるシュワン細胞に置換した人工移植片の移植により視神経再生を誘導することができ,最大で18%の再生率を得た.今後は移植ではなく視神経軸索のもとあるtractを再利用する現実的な再生戦略へシフトしていくと思われる.
  • 山下 俊英
    2015 年32 巻3 号 p. 255-262
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    視神経や脳・脊髄などの中枢神経は,いったん損傷すると回復が困難となる.神経回路の再生を抑制する機能をもつ軸索再生阻害因子と呼ばれる一群の膜蛋白質の存在が,その原因のひとつであると考えられている.これらの蛋白質は,中枢神経の神経細胞の周りを取り巻くミエリンやアストロサイト,ミクログリアなどに発現し,損傷した神経回路の再生を阻止している.最近の研究の進歩によって,再生阻害現象のシグナル伝達機構が明らかになってきた.得られた知見をもとに,軸索再生阻害因子あるいはそのシグナル伝達機構を抑制する薬剤が開発され,一部は臨床試験に至っている.さらにRGMaなど,一部の軸索再生阻害因子は免疫系も制御することが示されており,多発性硬化症などの神経免疫疾患の新しい分子標的として注目されている.本総説では,軸索再生阻害因子の機能と臨床応用の可能性について,最近の知見を中心に概説したい.
原著
  • 佐藤 司, 後関 利明, 浅川 賢, 石川 均, 清水 公也
    2015 年32 巻3 号 p. 263-268
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    RAPDx®を用い,相対的瞳孔求心路障害(RAPD)と対光反射を測定し,暗順応時間が測定結果と再現性に及ぼす影響を検討した.暗順応1,5,10分にて測定し,各パラメータを時間別に比較した.また3日間の連続測定を行い,再現性の検討も行った.RAPDを評価するパラメータ(Amplitude score,Latency score)は,時間別に有意差は認めなかったが,個体内で0.3 log units程度の範囲内で変動を認めた.対光反射のパラメータで縮瞳幅や潜時,縮瞳・散瞳速度は,暗順応1分と5,10分の間に有意差を認め,再現性は良好であった.RAPDx®による測定は,暗順応1分でも視入力の左右差の評価は可能であるが,対光反射のパラメータでの経時的な定量評価は,最低5分の暗順応が望ましいと考えられる.
  • 中村 由美子, 三村 治, 木下 茂, 鈴木 一隆, 豊田 晴義
    2015 年32 巻3 号 p. 269-279
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
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    瞬目解析により眼瞼痙攣の病態,ボツリヌス毒素(BTX)療法の効果を定量的に評価できるかを検討した.対象は兵庫医科大学病院眼科で初めてBTX療法を受けた眼瞼痙攣患者7名および正常対照6名で,瞬目高速解析装置を用いて正常者とBTX療法前後の患者の瞬目運動を自発性,随意性に分けて比較検討した.眼瞼痙攣患者では正常対照者と比較して,瞬目回数は自発性で増加,随意性で減少していた.一方,閉眼時間は自発性,随意性とも有意に増加していた.眼瞼痙攣患者ではBTX投与により,最大閉瞼速度が減少し閉眼時間が短縮,瞬目間隔が延長した.眼瞼痙攣の病態の把握,BTXの効果判定に瞬目解析は有用である.
症例短報
  • 小川 雄, 酒井 勉, 河野 優, 高橋 利幸, 藤原 一男, 敷島 敬悟
    2015 年32 巻3 号 p. 280-284
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    3回目の測定で抗AQP4抗体陽性所見が得られた再発性難治性両視神経炎の1例を経験した.52歳女性.前医で両眼視神経炎に対しステロイドパルス療法を施行されたが,再発を認め紹介受診.抗AQP4抗体(CBA法)含め自己抗体は陰性.再発性視神経炎の診断でステロイドパルス療法を施行.その後も再発を繰り返し,両眼の視神経炎の再発を認めた.この時点でも抗AQP4抗体は陰性.5回目の再発時において抗AQP4抗体が陽性を認めた.ステロイドパルス療法は奏功せず血漿交換療法を施行した.NMO spectrum disordersでは抗AQP4抗体の陽転化を認める症例があり,再発を繰り返す難治症例では複数回の測定が望ましい.
  • 福元 尚子, 本村 政勝, 宮﨑 禎一郎, 中嶋 秀樹, 川上 純, 辻野 彰
    2015 年32 巻3 号 p. 285-290
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    高度な外眼筋麻痺を主症状とした重症筋無力症(MG)患者にメチルプレドニゾロン大量静注療法(IVMP)を施行したところ,外眼筋麻痺が著明に改善した3例を経験した.1例はMGFAⅠ,2例はMGFAⅡaだった.3例共,外眼筋麻痺による複視で発症し,発症から,それぞれ2年,7か月および1か月経過した症例であったが,IVMPで眼筋型麻痺はほぼ消失した.2例はAChR抗体が陰性だったため,1例は反復誘発筋電図と塩酸エドロフォニウム試験で,もう1例は神経筋接合部生検でMGと診断した.外眼筋麻痺のみの症状であってもMGを疑う必要がある.そして,発症から長期経過した症例でもIVMPを試みる価値はある.
臨床と研究の接点
  • 河野 玲華
    2015 年32 巻3 号 p. 291-295
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/10/16
    ジャーナル 認証あり
    眼球赤道部をリング状に取り囲むコラーゲンを主体とする眼窩結合組織(これを眼窩プリーと称す,以下プリーと略)は,外眼筋の走行を安定させ,かつ外眼筋の起始部として機能的な役割を担う.とくに密なコラーゲンを主体とする厚みが2~2.5 mmの外直筋と上直筋との間のプリー組織(LR-SRバンドと略)の形態と眼位との関係が注目されている.LR-SRバンドに加えて外直筋のプリー組織も加齢の影響を受けやすく,LR-SRバンドの菲薄化,伸展,断裂,さらに外直筋プリーの下垂が眼位異常を生じさせる可能性が指摘されている.なかでも,sagging eye syndromeと称されるタイプの眼位異常ではbaggy eyelid,superior sulcus deformity,腱膜性眼瞼下垂などの外眼部異常も随伴するのが特徴である.
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