神経眼科
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40 巻, 2 号
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特集
  • 三木 淳司, 前田 史篤
    2023 年 40 巻 2 号 p. 107
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
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  • 多々良 俊哉, 前田 史篤
    2023 年 40 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
    ジャーナル 認証あり

     近年急速に普及している多焦点のコンタクトレンズ(CL)や眼内レンズは瞳孔径によってretinal image qualityに差が生じる.加齢に伴い縮瞳していくことは既知のことであり,高齢者用の多焦点レンズは加齢縮瞳に適した設計がなされている.その一方で,昨今話題となっている近視進行予防用の多焦点CLは,老視用の多焦点CLより中心遠用部分や光学部全体を広くしており,瞳孔の大きい若年者の装用を意識して設計していると推測される.今後,各年齢の瞳孔径に適した眼科機材の開発,設計がますます発展していくと推測されることから,本稿では小児から高齢者までの瞳孔径の加齢変化について,海外の報告と日本人の報告とに分けてまとめた.

  • 荒木 俊介, 三木 淳司
    2023 年 40 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
    ジャーナル 認証あり

     片眼弱視の弱視眼に対光反射異常は生じるのだろうか?本稿では,これまでの弱視の対光反射異常に関する報告をレビューした.弱視眼における相対的瞳孔求心路障害(RAPD)の陽性率は0~82%と報告者によって大きなばらつきがみられた.また,弱視眼にRAPDを認めた場合でも,弱視の原因が影響するか否か,弱視の重症度との関連性,振幅と潜時のどちらに異常がみられたか,などの結果は報告者によって様々である.

     片眼弱視のRAPDの原因として,網膜神経節細胞レベルでの異常や対光反射への大脳皮質の関与などが推測されている.一時はほぼ全面的に否定されたかに思われた弱視の網膜異常説に関しては,光干渉断層計(OCT)の登場で,弱視の網膜微細構造の評価が近年盛んに行われている.RAPD陽性の片眼弱視を対象にOCT所見を詳細に検討した報告は見当たらないが,弱視の網膜厚に関する研究の多くは弱視の網膜構造変化に対して否定的な見解を示している.

     これまでの研究から,大きな対光反射異常が,弱視眼で一貫して検出されるわけではないということは確かであるが,症例ごとの観察では弱視眼に小さなRAPDを認めることもある.その原因については明確な結論が得られておらず,今後の研究結果が待たれる.

  • 前田 史篤
    2023 年 40 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
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     瞳孔の静的および動的な所見は,神経眼科において客観的なバイオマーカとして重要である.Pupillographyの利点は測定精度の向上,多様なパラメータの解析,検者バイアスの除外などがある.瞳孔計測に特化した専用機器を用い,刺激条件や解析項目を工夫することで,これまでよりも多角的な機能評価ができるようになった.

     本稿では特に注目されているthe post-illumination pupil responseとpupillary escape,そして色刺激による対光反射について解説した.

症例報告
  • 大多和 太郎, 毛塚 剛司, 高橋 利幸, 志村 雅彦, 後藤 浩
    2023 年 40 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
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     抗MOG抗体関連視神経炎は再発を繰り返すが,比較的視力予後の良い疾患として知られている.ステロイド抵抗性の抗MOG抗体関連視神経炎の経過中に,Leber遺伝性視神経症の保因者であることが判明した症例を経験したので報告する.

     症例は54歳男性.1か月前から右眼の霧視を自覚.眼痛はなかった.初診時の矯正視力は右眼0.1,左眼1.2,右眼は相対的瞳孔求心路障害がみられ,平均限界フリッカ値は右10.7Hz,左28.7Hz,動的量的視野検査では両眼に中心暗点を認めた.両眼とも軽度の視神経乳頭発赤以外に検眼鏡上の異常所見はなく,フルオレセイン蛍光眼底造影検査でも異常はなかったが,眼窩造影MRIで右視神経に沿った淡い造影効果が検出された.右視神経乳頭炎の診断でステロイドパルス療法を2クール施行,その後,血清中抗MOG抗体の陽性が判明し,免疫グロブリン点滴療法を追加した.しかし,改善はみられなかったため,ミトコンドリア遺伝子検査を行ったところ11778番塩基対の変異が確認され,Leber遺伝性視神経症の保因者と診断した.抗MOG抗体が陽性でも治療に抵抗する場合は,他の視神経症の合併も疑う必要がある.

  • 小林 賢治, 清水 美穂, 宮部 靖子, 木下 貴正, 今泉 寛子
    2023 年 40 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
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     マントル細胞リンパ腫(MCL)の約70%は節外病変を有するが,眼球付属器の発症は稀である.今回,眼瞼に発生したMCLの一例を経験したので報告する.

     66歳,男性.右眼瞼下垂を主訴に近医を受診し,精査目的に当科を紹介された.初診時,右眼瞼腫脹,上斜視,右眼上転制限と,複視がみられた.頭部MRIで両眼瞼に結膜下病変を認め,生検部位からマントル細胞リンパ腫と診断し,当院血液内科で化学療法を開始した.1か月後に眼瞼腫脹は改善し,複視は消失した.眼病変から見つかるMCLの頻度は稀であるが,眼瞼腫脹や複視が見られた場合,MCLも鑑別の一つとして考慮に入れるべきと考える.

  • 山崎 美香, 岩佐 真弓, 山上 明子, 塩川 美菜子, 井上 賢治, 若倉 雅登
    2023 年 40 巻 2 号 p. 137-147
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
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     我々は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種後,2か月以内に発症した視神経炎を5例経験した.2例(症例1,2)は典型的な抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎で1例目は片眼,2例目は両眼発症であった.3例目は,非典型的な両側抗MOG抗体陽性視神経炎にぶどう膜炎を併発していた.4例目は,非典型的な両側視神経炎であり,視神経周囲炎様の所見と著明なくも膜下腔の拡大を伴っていた.5例目は,非典型的な片眼抗MOG抗体陽性視神経炎であり,ワクチン接種から活動的な進行がみられるまで,約2か月を要していたが,ワクチン接種時期と視神経炎の発症の時期から,SARS-CoV-2ワクチンの副反応の可能性を十分考慮すべきと考えた.今回経験した5症例は,それぞれ,全く異なる臨床所見を示しており,SARS-CoV-2ワクチン接種後の視神経炎は,典型的な視神経炎を呈する症例から,一見視神経炎以外の疾患を疑うような非典型的な視神経炎まで,多様な臨床像を呈する可能性がある.また最も注目すべきことは,5例中4例で抗MOG抗体陽性であったことであり,ワクチン接種と抗MOG抗体陽性視神経炎がどのように関連しているのか,その真偽と機序の解明を待ちたい.

  • 後藤 祐一朗, 石川 均, 龍井 苑子, 髙橋 洋平, 庄司 信行
    2023 年 40 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/07/11
    ジャーナル 認証あり

     再発を繰り返し,ステロイドパルス療法(intravenous methylprednisolone:IVMP),血漿交換療法,免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)を行うも視機能回復が困難であった小児抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎の1例を経験したので報告する.

     症例は13歳,男児,X年10月,右眼の視力低下,眼球運動時痛を主訴に前医受診した.抗MOG抗体陽性視神経炎の診断となった.IVMP療法を2クール行い,視力は(1.2)まで改善した.2か月後プレドニゾロンによる後療法中,右眼に再発を認め,再度IVMP療法を2クール行い視力は(1.2)まで回復した.その後当院紹介となり,1か月毎の定期診察にて適宜プレドニゾロンを減量していたが,X+1年7月に再度右眼の視力低下を認め3回目の再発を認めた.IVMP療法を2クール,二重膜濾過血漿交換療法を計3回施行したが,視力の改善を認めなかった.その後ステロイドに加えアザチオプリンの併用にて後療法を開始したが,X+2年2月,左眼にも発作が生じた.再度IVMP療法を3クール,IVIG療法を行うも最終視力は,右眼(0.15),左眼(0.04)にとどまった.

     治療抵抗性抗MOG抗体陽性視神経炎の症例はこれまでも散見されているが,今後急性期治療,および再発予防治療の方法について再考が必要であると考える.

原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
2022年第8回神経眼科知識評価プログラム(NOKAP)テスト実施報告
眼瞼けいれん診療ガイドライン第2版(2022):最近の概念とみどころ
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