音源の情報を取り入れた物理的音環境の表示方法として,著者らは ‹音源×レベル› 時間構成マトリックスを提案している。本研究では,平成19年に京都市で実施されたトランジットモール社会実験を利用し,音環境の変化を把握するという観点から,その有用性を検証している。従来から用いられている時間率騒音レベル・等価騒音レベルといった指標では,一部の調査地点において音環境の変化が部分的に確認できたに過ぎなかった。しかし,‹音源×レベル› 時間構成マトリックスを用いて音環境を表現することにより,音源別時間支配率・騒音レベル別時間支配率の2次元の情報から,音環境の変化のより詳細な情報が視覚的に把握できた。
2003年の建築基準法改正に伴い,シックハウス対策のために,24時間換気システムの導入が義務付けられた。特に騒音の激しい住宅地等においては高い遮音性能を有する換気システムの導入が必要とされる。そのため,本検討では窓サッシと併せて設置されるダクト型の換気システムを想定し,当該ダクト内に低音域の遮音性能を高めるためのスリット型共鳴器列と中高音域の遮音性能を高めるための薄板列ユニットを設置した。設計した消音器列を配置したダクト型換気システムの遮音性能を確認するために,音響インテンシティ法を用いた実物大模型実験を行った。その結果,広周波数帯域における遮音性能の向上を確認した。
現在わが国の道路交通騒音予測ではASJ RTN-Model 2008の実用計算法が広く用いられており,周波数別の予測はほとんど行われていない。多重反射や多重回折などにより周波数特性が大きく変化する場合,実用計算法による予測精度には限界があると考えられる。本研究では,多重反射が顕著であるトンネル坑口周辺部の騒音に注目し,周波数別予測に基づくモデルの開発を試みた。トンネル坑口を対象とした現在の予測式には,直接音を仮想点音源からの寄与として評価していることや回折減衰量評価の際に半無限障壁を仮定することなどの問題点がある。これらの解消のため,坑口に仮想の指向性面音源を配置することで直接音を評価する手法を提案した。