本稿では、アジア歴史資料センターのデータベース構築作業を担ってきた調査員の立場から、デジタル・アーカイブズの現在と展望を考えたい。まず、センターにおけるデータベースの構成とその概念について述べる。次に、このデータベースの利用、すなわち資料へのアクセスをめぐって、検索等の機能を確認した上で、データベースの精度に関するいくつかの問題を紹介する。最後に、開設準備段階からのアジア歴史資料センター構想を簡単に振り返りつつ、現在のセンターの機能や位置付けを確認する。この中では、とくに公共のデジタル・アーカイブとしてのセンターの課題と取り組みを見ることを通して、デジタル・アーカイブズの展望へと目を向ける。
本稿は、アーカイブズのデジタル化について、若干の事例紹介と、アーキビストへの提言を行ったものである。正倉院文書のデータベース化の事例と、「上田貞治郎古写真コレクション」のデータベース化の事例について述べた。これらは、史料の現状と原状の構造に配慮しつつデータベース化を行っている点において共通している。また、研究の要請にしたがって作成されているという特徴を持っている。アーキビストが、デジタル化を行う際の不満は、これらの研究の要請にしたがうものが効果的に作成されない点にあるのではないかと考える。そのため、後段では、筆者はデータベース作成の経験をもとに、アーキビストが「アーキビストのためのデジタルデータ」を作成するためのいくつかの提言を行った。
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