2004年に日本アーカイブズ学会が設立され、今年で10年となった。始めに、学会が何を目指して設立され、どのようにアーカイブズ理解を広めるのに関わってきたかを振り返る。またこの10年はアーカイブズを取り巻く環境が大きく進展した10年でもあった。そうした社会の変化も概観し、それらが日本アーカイブズ学会の取り組みと重なり合って発展してきた日本のアーカイブズの現状を確認する。最後に、この10年でのアーカイブズ・コミュニティの拡大は評価しつつ、それを支える基盤強化に取り組む必要性について指摘する。
本稿では、日本において組織アーカイブズとしての企業アーカイブズが持続可能であるための優先課題を考える。まずアーカイブズは、企業活動における価値創出に貢献することが必要である。しかし「日本的経営」には「企業内異動と内部昇進」や「新規学卒一括採用」等の特徴があり、専門の大学院課程修了者がアーカイブズ専任正規従業員として新規に採用されることは構造的に難しい。本稿では関係者への聞き取りを基に、アーカイブズが経営の意思決定機関の近くに位置づけられることの重要性、経営層への働きかけ、とりわけCSR的観点からのアーカイブズの今日的意義の強調の必要性、社内異動者に対する効果的研修プログラムの開発と専門的な教科書の必要性、といった点を提起する。
本稿では、1936年の米国アーキビスト協会設立の前後において、欧州由来のアーカイブズの原則・方法論がいかに米国のアーカイブズ界に受け入れられ、解釈され、適用が試みられたかについて、米国国立公文書館等が所蔵する一次資料を参照しつつ考察する。米国でフォンド尊重の原則をめぐる検討が本格化したのは、1934年の国立公文書館設立後のことであった。その結果、米国政府文書の実態を踏まえた文書群単位として「レコードグループ」が考案され、その記述では当該文書群の現用段階におけるファイリング方式が重視されている。つまり同館において、フォンド尊重の概念は移管され始めた大量の連邦文書の整理・公開を進めるための実践的解決策として解釈され、応用されたのであった。
地域の過疎化と学校の統廃合が進む中で、学校アーカイブズは散逸・亡失の危機に直面している。学校アーカイブズに価値を見出し、学校アーカイブズは、「歴史資料として重要な公文書」として、文書・記録のライフサイクルの中で保存されるべきである。保存し管理されるだけではなく、利用されなければならない。学校アーカイブズを保存・利用するためには、地域に公文書館が必要である。つまり、地域で確実に保存し、住民の利用できる組織体・施設が学校アーカイブズの「受け皿」となる。
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