アーカイブズ学研究
Online ISSN : 2434-6144
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5 巻
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特集 2006年度大会
〈記念講演〉
  • 中世アーカイブズ学への思い
    上島 有
    原稿種別: 記念講演
    2006 年 5 巻 p. 2-50
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    アーカイブズの整理原則としては、一般に出所原則と原秩序尊重の原則の二つがあげられる。たしかにこれはアーカイブズが一次的記録情報資源という特殊性にもとづいたものである。しかし、わが国の中世アーカイブズ整理の立場からすると、この二つでは十分ではないと考える。アーカイブズ整理の原則(史料管理論)としては、I 原形態の尊重、II 原秩序の尊重、III 原伝存の尊重という三つがあげられると思う。これはI かたち、II かたまり、III かさなりというアーカイブズ学の研究課題、またI 形態論、II 構造論、III 伝来論という史料認識論の課題に相おうずるものでもある。さらにこれは、アーカイブズの生成から保存にいたるアーカイブズのライフサイクルの全過程を考察の対象とするものでもある。このような考えに到達したのは、近世アーカイブズ学の成果と東寺百合文書をはじめとする約10万通の東寺文書の整理の経験によるものである。そして、東寺関係文書は、わが国のアーカイブズとしてもっとも望ましい形で保存されていると考えられ、そのことについて具体的に述べた。

〈シンポジウム:アーカイブズ専門職の未来を拓く〉
  • 保坂 裕興
    原稿種別: シンポジウム
    2006 年 5 巻 p. 52-53
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー
  • 別府大学の事例を中心に
    針谷 武志
    原稿種別: シンポジウム
    2006 年 5 巻 p. 54-65
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    アーカイブズ教育の検討が盛んに行われている。まず日本の大学・大学院におけるアーカイブズ教育の現場を概観し、2、3の大学での事例を紹介した。つぎに別府大学のアーキビスト養成課程をとりあげ、それを事例にしてアーカイブズ教育の問題点について述べた。このモデルでは、養成課程は大学+大学院をセットとし、学部教育では、将来大学院へ進学する者へのアーカイブズ基礎教育だけでなく、大学院へ進まないで卒業する者へのレコード・マネジメント教育の役割を与えるよう、設計している。アーキビスト養成の重要なキーは公文書館での実習と考えるが、今年度実施後、その結果を検討する必要を感じている。

  • 教育・研修に向けて
    波多野 宏之
    原稿種別: シンポジウム
    2006 年 5 巻 p. 66-73
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    博物館、図書館、アーカイブズなどが扱う情報資料を広く文化情報資源と捉え、まず、「ドキュメンテーション」技術の形成と美術分野におけるドキュメンテーション・センターの実態を示して、こうした活動の存在がデジタル・アーカイブズの前提であることを強調する。次にアート・ドキュメンテーション学会の活動分野がこれら三つのディシプリンの統合の上に成立することを述べ、しかし、その教育研修システムは未形成であることを指摘する。第三に、駿河台大学文化情報学部の理念と教育体制を概説し、アート・ドキュメンテーションへの取組みを始めたことを特記する。最後に新たに登場した「痕跡の伝達」にかかわる研究としての「メディオロジー」の意義を検討し、こうした統合的視点が文化情報学のみならずアーカイブズ学教育においても重要であることを強調する。

  • アーキヴィストの専門職化に関する考察
    高山 正也
    原稿種別: シンポジウム
    2006 年 5 巻 p. 74-82
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    日本におけるアーカイヴズの整備・発展のためには専門職アーキヴィストの養成は不可欠である。しかし、現状ではアーカイヴズで指導者として働く職員は必ずしも専門職とは見なされていない。このために、日本でも専門職としてのアーキヴィストを養成すべきであると主張する人がいる。そこで著者はR.H.Hallの説に従い、アーキヴィストの社会構造的側面と態度的な側面から、専門職化が可能かどうかの評価を試みた。すなわち、職業、スクール、専門職団体、倫理綱領の存在があるかと言う社会構造に関する評価項目と、専門職団体の活用、大衆への奉仕の信念、自己規制の信念、職業的使命感、業務の自律性と言う態度的な指標についてである。この結果、日本のアーキヴィストは専門職化の途上であることが示された。

  • 渡辺 浩一
    原稿種別: シンポジウム
    2006 年 5 巻 p. 83-91
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    本報告は、国文学研究資料館史料館が2002年に発足させた「アーカイブズ・カレッジ」の実践報告である。同カレッジはそれまでの史料管理学研修会を発展させて、現職者研修よりも大学院教育をめざした、アーキビスト教育大学院課程開設のための一種の実験である。受講生に高レベルの修了論文を書かせるために、カリキュラム外に指導教員が主催するゼミを開催し論文指導を行うなど、極力大学院修士課程に準じた教育を行っている。しかし、前後期あわせて6週間という時間的制約のために、演習・実習が十分にできず、論文指導も時間不足である。これからは、正規の大学院設置が望まれる。

論考
  • 木村 玲欧, 林 能成
    2006 年 5 巻 p. 94-111
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    被災経験がない市民には、非日常である災害を正確にイメージすることは難しい。長いあいだ大きな災害を経験していない地域の防災力向上には、過去の事例や他地域の事例から災害の実態・教訓を学び、災害文化を地域に継承することが必要である。

    災害アーカイブは、未来の災害に備えるために災害・防災活動に関するさまざまな一次的資料を蓄積するだけではなく、一般図書や児童書・映像資料なども収集した資料室的な側面もあわせもつことが効果的である。このような考え方のもと、研究者のみならず地域市民や小中高校生、行政の防災担当者までもが学べる、災害・防災に関する各種資料を集積した「災害アーカイブ」を、東海地域の基幹大学である名古屋大学にて2003年4月から立ち上げている。

    本報告では、市民防災教育のための災害アーカイブを立ちあげる過程について報告する。全国にある災害アーカイブ・資料室の先例を分析し、地域防災力向上のための災害アーカイブのあり方を提案した。現在は、市民の要望もあり、インターネットを通した検索システムも整備しており、項目・目次レベルでの言語検索が可能である。

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