日本地球化学会年会要旨集
2003年度日本地球化学会第50回年会講演要旨集
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ポスターセッション
大気/降水
  • 本多 照幸, 石田 幸三, 五十嵐 康人, 青山 道夫, 廣瀬 勝己
    セッションID: 1P01
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    2001年つくば降下物中の含有元素を中性子放射化分析により定量し、その結果を用いて降下物の起源や2000年試料との比較を含む時系列変化などについて研究し、つくば降下物の特性を明らかにすることを目的とした。その結果、_丸1_2001年と2000年の元素濃度を比較すると、NaとBrは8月と9月で2001年の方が3_から_6倍ほど高かった。また、Sc、ランタノイドおよびThは一般に2001年の方がやや高い傾向にあったが、特にThはすべての月で高かった。_丸2_降下物中の元素濃度は多くの場合、降水現象と関係があり、NaおよびBrは降水量の増減に対応して濃度も増減するが、Scやランタノイド等は逆の対応を示した。また、Scおよびランタノイドは、2月_から_5月で黄砂規格化値が1.0に近く、この時期に黄砂が大量に降下していることを反映している。_丸3_Scは降下物中で地殻平均組成や島弧地殻岩石より濃度が低く、黄砂に近かった。本研究により、Scの起源は大部分が大陸起源と推定された。
  • 松本 潔, 宇山 悠紀子, 早野 輝朗, 植松 光夫
    セッションID: 1P02
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    アジア域より放出される人為起源エアロゾルや黄砂粒子は、北太平洋上へ長距離輸送され、外洋大気の放射収支や大気化学組成に大きな影響を及ぼしていると考えられる。2001年の春季に、西部北太平洋海域において大気エアロゾルの物理的、化学的、光学的特性に関する集中観測が行われた(ACE-Asia集中観測)。演者らも、日本列島近海の離島(利尻、佐渡、八丈、父島)を用いて大気観測網を設置し、大気エアロゾル及びその関連物質の連続観測を行った(VMAP観測)。観測は、エアロゾル中の無機イオン成分、微量金属成分、炭素成分などの化学成分と、粒子数密度などの物理パラメータ、オゾンやラドンなどの微量気体成分について行った。その結果、人為起源エアロゾルの輸送パターンと、これを促す特有の総観気象場を見出すことができた。また、硫酸塩や硝酸塩、炭素質成分の起源や輸送メカニズムについても解明する事ができた。
  • 南川 雅男, 碓井 敏宏, 高山 良太, 大橋 麻美, 長尾 誠也
    セッションID: 1P03
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    海洋への窒素の負荷量は年々増加し、最近の見積もりでは地球規模の自然負荷量の2倍近くまでに達しているという (Gruber & Sarmiento, 1997; Seizinger& Kroeze 1998)。これが事実なら窒素制限化にある海洋表層の生物生産も相当分は増加していることが推定される。人類活動によって供給された窒素は、大気窒素の化学固定であれ、化石燃料起源であれ元の放出源は陸上にあり、海洋がシンクとなる。経路としては農地や都市を経由して河川から沿岸海洋にでるか、気体となって大気に放出されたあとエーロゾルや降水に取り込まれて海面に降下する。本研究は、大気降下物として地表に達する窒素の自然同位体組成が一般に軽い値を持っていること、特に化石燃料が関係した窒素や人工固定された窒素肥料は軽いことを利用して、陸から海洋に供給される窒素の動態、寄与率などを解析することを目的に行った。
岩石/地殻
陸水
  • 小林 滋, 益田 晴恵, 西垣 誠
    セッションID: 1P18
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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     バングラデシュでは国内の約3分の2にわたる地域で、WHOの飲料基準を超えるヒ素(0.01mg/L)が地下水中に含まれ、深刻な問題となっている。演者らはヒ素汚染の機構を解明すべく、ダッカから南西約50kmに位置するゴウリプール村周辺地域(約2km四方)で、2001年より乾季・雨期ごとに地質試料・地下水試料の採取と分析を行っている。本報告ではこの調査のうち、主に地下水の水質について報告する。
     ○調査地域の人口と地下水:本調査地域は3つの村からなり、人口は聞き取りによると数千人。生活用水はTube wellを利用し、Dug wellは利用していない。正確な記録はないものの、地域内のほとんどのShallow Tube Well(下記参照)は、WHO旧基準(0.05mg/L)を超えている。しかしヒ素による被害患者は発生していないと思われる。 ○調査地域の地質と帯水層:調査地は地形区分上、ブラマプトラ川氾濫源堆積地域に分類される沖積低地である。雨季には低地が冠水するため、住民は自然堤防上に居を構え、生活水源の井戸もこれらの上に位置する。ボーリング調査で確認している帯水層は、おおむね10から30mの上部帯水層と、70から120m程度(基底深度は不明)の下部帯水層の2層である。これらの帯水層は、いずれも沖積層の細粒砂を主体とする地層である。地域住民は上部帯水層にスクリーンのある井戸をShallow Tube Well、下部帯水層にスクリーンのある井戸をDeep Tube Wellと区分し、呼んでいる。両者の数的割合は約3:1でShallow Tube Wellの方が多いが、飲用人口割合は約半数程度と思われる。
     ○調査対象井戸:井戸は各戸に設置(Household well)されている。調査は実際に生活用に供されている井戸を対象とし、調査地内の自然堤防全域を網羅でき、かつ両帯水層ともに調査の対象となるよう約40箇所を選定し、季節ごとの水質分析を行った。また両帯水層に観測井を各1カ所設置し、同様に分析を行った。
  • 李 暁東, 益田 晴恵, 大野 雅子, 日下部 実, 曾 海贅
    セッションID: 1P19
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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     四川盆地では汚染物質が盆地内に留まりやすい構造のために汚染の進行が近年深刻である。四川盆地での大気と水循環に伴う汚染物質の移動経路を明らかにする一連の研究の一環として,地下水の主成分と安定同位体比分析を行った結果を報告する。調査対象地域は四川盆地でもっとも大きい集水域を持つ民江の源流域と最初の人口密集地である都江堰市周辺である。 採取した51の全ての試料でCa+Mg-HCO3型の水質を持っている。源流域では水素安定同位体比は-110‰程度であり,盆地を取り囲む3500mを超える高い山脈を涵養源としている。水質に特別な汚染は見られない場合が多いが,人口密集地では硝酸・塩化物イオンが高濃度で出現し,周辺の生活排水が直接流入していることが疑われる。都江堰市では,郊外の1500m程度の山地を涵養源としている地下水が盆地との境界付近に出現するが,山地から離れて民江に近い場所では,郊外の山地と源流から運ばれる水の混合したものとなる。この地域の水質は良好ではあるが,源流域よりは人為的汚染の影響が現れる。また,ときに人為汚染による高濃度の硝酸・硫酸・塩化物イオンが含有される場合がある。本調査地域の地下水水質の汚染物質として最大の原因は,家庭排水であろう。
  • 岩井 宏之, 吉田 尚弘, 豊田 栄
    セッションID: 1P20
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    人為起源窒素化合物の負荷の高い都市河川(多摩川)の複数地点において亜酸化窒素(N 2O)の濃度と同位体分子種(アイソトポマー)比を測定した。これらのデータから都市河川における溶存N 2Oの動態の推定を試みた。
  • 水野  崇, 岩月 輝希, 古江 良治, 彌榮 英樹
    セッションID: 1P21
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    岐阜県瑞浪市で実施されている瑞浪超深地層研究所計画の一環として,立坑掘削が地下水の水質に与える影響を把握するために,地下の地質環境が擾乱される以前の地下水の水質を把握するための調査・解析を実施した。その結果,研究所用地周辺の地下水は,白亜系の基盤花崗岩を覆う第三系の堆積岩上部ではNa-(Ca)-HCO3型であるが,堆積岩下部と花崗岩中ではNa-CL型であることが分かった。また,後者のナトリウムイオン濃度,塩素イオン濃度は深度依存性を示し,深度と共に上昇する。これらのことから研究所用地周辺では,深部に存在する高塩素濃度地下水と,浅部の低塩素濃度地下水の混合により地下水質が決定していると考えられる。
  • 有井 康博, 山口 善敬, 坂本 正子, 中口 譲
    セッションID: 1P22
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    滋賀、京都、大阪府を流れる淀川河川水中の栄養塩としての無機窒素、無機リン、全溶存態窒素そして全溶存リンの分布の季節変化を調査した。また、その結果から大阪湾への窒素およびリンの年間供給量を見積もった。
  • 大野 雅子, 益田 晴恵, 日下部 実
    セッションID: 1P23
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    新生代堆積物中に帯水する地下水への自然由来のヒ素溶出には,帯水層内での生物化学作用が関与している可能性が高い.本研究では,ヒ素含有地下水の出現する大阪府泉州地域の井戸でヒ素と主成分組成・硫酸イオンの硫黄同位体比を測定し,微生物活動の水質への影響を検討した。

    観測を行った井戸は,第四紀堆積物からなる大阪層群に掘削され,深度約50mで,水位が地表から約2m下にある.日常的には使用されておらず,地下水は比較的停滞した状態にある.試料採取は2001年10月_から_2003年4月の間,約一ヶ月ごとに真空ポンプを用いて六つの深度(水深0m(水面付近),1.4m,2.5m,7m,11m,15.7m付近)から採取した.試料には現地で必要な処理を施し,実験室で主成分組成とヒ素濃度を分析した.また試水に含まれる硫酸イオンを硫酸バリウムとして固定し,前処理を行った後に,硫黄同位体比を測定した.

    井戸水には高濃度の鉄が含まれることが特徴である.全ヒ素濃度と全鉄濃度には正の相関があることから,ヒ素の大部分は懸濁する酸水酸化鉄に吸着していることがわかる.
    夏季_から_秋季(6月_から_10月)には,全ヒ素濃度は水面付近で2.4_から_8ppb程度であるが,それ以深では7.3_から_10.6ppbである.また全鉄濃度は水面付近で3_から_25.3ppmであるが,それ以深では30ppm程度である. しかし12月には,水深0_から_2.5m付近でヒ素及び全鉄の濃度がそれぞれ2ppb,4.5ppm程度まで低下する.
    02年1,3月には,全ヒ素は6ppb程度,全鉄は30_から_35ppm程度に増加し,深度による濃度の違いが小さくなる.しかし4,5月になると,水面付近で全ヒ素13ppb,全鉄39ppmであり,それ以深のそれぞれ,8_から_11ppbと30ppm程度より高濃度になる.
    酸化還元電位は,水面付近で高く,深部では小さくなる.調査期間の大半でその値は_-_50_から__-_110mv程度の値を示すが,鉄とヒ素の濃度が急激に低下する12月には水深2.5m付近までの値が,+30mv前後,2002年の12月も同様に+200mv前後まで上昇した.しかし,1月になると値は_-_60mv程度に下がる.
    硫黄同位体比(‰,CDT)は,01年10_から_11月には水面付近で+25.9_から_+29.9‰の値であるが,それ以深では+26.4_から_+35.9‰と,水面付近より高い値を示す.12月には全深度で+32_から_+32.5‰とほぼ一定の値となる.02年1月には,全深度で+12.6_から_+15.1‰の値となり,最低値をとるが, 4月になると,硫黄同位体比は再び増加し,+32.6_から_+32.9‰となった.
    硫黄同位体比の低下する1,3月に,硫酸イオン濃度が,通常の約12_から_14ppm程度から,20_から_35ppm程度に増大する.また水面付近での硫黄同位体比と硫酸イオンは負の相関を示す.

    この井戸では, ヒ素は鉄酸水酸化物に吸着しているものが多いため,それが懸濁している試料ではヒ素濃度が高くなる.酸化的な水面付近では鉄酸水酸化物は沈降してヒ素濃度が低くなり,より還元的な深部では鉄酸水酸化物は分解し,それに伴ってヒ素も溶出する.
    硫黄同位体比は春_から_秋季にかけては帯水層中の黄鉄鉱に由来する重い硫黄が硫酸イオンの主な供給源であることを示唆している.硫酸イオンの硫黄同位体比は,硫酸還元バクテリアなどの同位体分別作用により変化する.水質の変動が大きい水面付近では,生物活動によって二次的に同位体比の変動が起こっている.冬季に硫酸イオン濃度が増加し,同位体比が大きく減少している.これは硫酸イオウの起源が堆積物にあるのではなく,雨水や肥料などの人為起源硫黄にあるためであろう.また同位体比が水深によらず,ほぼ一定であることはバクテリア活動による同位体比の変動がないためであろう.
    以上のことから,この地下水中のヒ素の一次供給源は堆積物中の黄鉄鉱であるが,水中でのヒ素濃度は鉄酸水酸化物の溶解度に規制されて,二次的に変化する.鉄酸水酸化物の安定性は,地下水中のバクテリア,特に硫酸還元バクテリアの活動に規制されている可能性が高い.
  • 梶原 佑介, 坂元 隼雄, 冨安 卓滋, 穴澤 活郎
    セッションID: 1P24
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    近年、各地で地下水位の低下や地下水の水質汚染などが深刻な社会問題となっている。臨海部では、地下水の過剰採取により帯水層に海水が浸入し、地下水の塩水化が生じ、飲用不適、工業用水水質の悪化、農作物への被害等が生じている。これらの地下水質の劣化は,地表面における活発な人間活動に伴うものである。その結果,地下水の利用計画にも、種々の障害が生じている。地下水環境を保全するために,人間活動に伴う地下水環境への影響の程度を明らかにするための基本的な研究が必要となる。本研究は,生活空間での水環境を把握するために、鹿児島市における地下水中の化学成分を分析、解析した結果を報告する。
  • 西中須 暁子, 山中 祐樹, 山本 温彦
    セッションID: 1P25
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    南九州の典型的な火山地帯を流れ、鹿児島湾奥部に流入する網掛川および別府川について水質の年変化を調査した。両河川の源流部は、互いに異なる火山岩からなり、水質に相違が認められる。両河川において、水質に影響している地質、温泉、湧水などの関係を明らかにし、水質変化の要因について考察する。
  • 穴澤 活郎, 顕谷 久典, 坂元 隼雄, 冨安 卓滋
    セッションID: 1P26
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    鹿児島市周辺域の湧水・河川水について採水・化学分析を実施した。その結果、主要化学種の変動には、明瞭な地域性が見られた。本研究では、河川水質と各種地理情報(土地利用状況や地質など)との関係について、統計的手法による把握を試みる。
温泉/熱水
有機物
  • 安田 朝子, 西村 弥亜, 綱島 直哉, 竹中 千里, 佐久川 弘
    セッションID: 1P30
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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     これ迄、我々の研究室において、酸性降下物が森林衰退の原因と考えられる岐阜県の乗鞍岳と神奈川県の桧洞丸を対象に酸性降下物による土壌劣化の度合いを、バクテリアと糸状菌起源の指標有機分子を使って、示しうる可能性が示唆されてきた。 本研究では、その可能性が、人工的に酸性物質を散布する暴露実験において確認されうるか否かを検討した。その結果、次の事が、解った。  1.暴露実験において、上記のフィルドから得  られた可能性が確認され た。  2.暴露実験から、土壌劣化の度合いを示しう  る新たな指標有機分子として、バクテリア  起源の4種脂肪酸(i16:0、10Me16:0、16:1  ω7、18:1ω7)と糸状菌起源の3種脂肪酸   (16:1ω5、18:2ω6、20:2ω6、20:3ω6)、  及び2種Sterol、24-Methylcholesta- 5,7-dien-3β-ol、24-Ethylcholesta- 5,7,22-trien-3β-olの有望性が示唆され た。
  • 南 雅代, 村中 泰史, 中村 俊夫
    セッションID: 1P31
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    宇和海の海底から採取されたナウマン象臼歯化石のアミノ酸のラセミ化率を測定した。臼歯化石からゼラチンコラーゲンを抽出し,加水分解後XAD-2樹脂処理をして純化したアミノ酸集合体成分を誘導体化し,ガスクロマトグラフィーによりアスパラギン酸のD/L比を測定したところ0.128という値が得られた。このD/L比と純化されたアミノ酸集合体成分に対して得られている14C年代(43,870±450 BP)から,4.1℃という平均温度履歴が算出された。約4万年前は氷河期であったために,現在よりも海水面が低く,この試料の採取地である瀬戸内海は陸地であり,ナウマン象などが生育していた。化石骨が陸地の堆積物中に存在していた間は4.1℃以上の温度環境にあったと予想できる。また海底の温度は5℃位と考えられ,ナウマン象臼歯化石から得られた4.1℃という平均温度履歴は,大体妥当であると考えられる。
  • 野本 信也, 小園 正樹, 川添 菜津子, 三田 肇, 木越 英夫
    セッションID: 1P32
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
    会議録・要旨集 フリー
    クロロフィルの続成変化で生じるとされるベンゾポルフィリンの生成時期並びに期待される地層中での安定性をを調べることを目的として,現世および先カンブリア代のストロマトライトの分析を行った。試料をクロム酸酸化抽出してポルフィリン類をマレイミド類とフタルイミド類に誘導して分析する手法をとった。現世試料の表層以外の部分と先カンブリア代試料からマレイミド類とフタルイミド類共に見出された。現世試料では前者が,また先カンブリア代試料では後者が優勢であった。
  • 中島 丈博, 村江 達士, 河野 徹士
    セッションID: 1P33
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
    会議録・要旨集 フリー
    生命起源における化学進化過程での物質機能の発現を解明するための第一歩として、真核生物の細胞膜脂質の主成分である卵黄ホスファチジルコリンでコーティングした多孔性マイクロカプセルをモデル細胞膜小胞として用いて、外溶液に存在するアミノ酸の、モデル細胞膜小胞内部への取り込みについて検討した。今回は最も簡単な構造を持つアミノ酸であるグリシンについて外溶液の濃度を変化させたときの内部の取り込み量の経時変化について報告する。
  • 家村 育民, 村江 達士, 矢守 章, 池田 英二
    セッションID: 1P34
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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     衝撃波は、宇宙空間では、超新星爆発、隕石、彗星等の衝突などによって発生し、化学進化におけるエネルギー源の一つになったと推定されている。一般に衝撃波は、瞬間的な高温高圧状態を作り出し、出発物質とは化学的、物理的に異なった物質を作り出すことが知られている。また、アミノ酸は生体の基礎構成物質の一つであり、原始地球において、簡単な物質から非生物的に合成され、それらが重合してタンパク質などの高分子化合物を生成していったと考えられる。グリシンは最も単純なアミノ酸であり、隕石からも多く検出されている。本研究では、化学進化と衝撃反応の関連を明らかにする目的で、水溶液氷状態のグリシンに衝撃を加え、その構造変化を検討した。
地球外物質
  • 三村 耕一, 外山 誠司
    セッションID: 1P35
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    隕石,特に炭素質隕石中には多量の非生物起源の有機物が存在している.この隕石中の有機物は,地球に届くまでに様々な環境の変化を経験し,その化学組成を変化(化学進化)させてきたはずである.本研究では,その環境の変化をもたらした現象として衝撃現象に焦点を当て,有機物の化学進化における衝撃反応の重要性について検討した.今回の衝撃実験では,アンティゴライトと芳香族炭化水素(フェナントレン,ピレンとフルオランセンの混合物)を混合した試料を出発物質として用い,衝撃波を被った試料の組成変化について調べた.
  • 玉置 美奈子, 三澤 啓司, 山口 亮, 海老原 充
    セッションID: 1P36
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    石鉄隕石の一種であるメソシデライトは、Fe-Ni金属とケイ酸塩包有物からなる。メソシデライトのケイ酸塩包有物はHED隕石と類似しているが、その起源は不明である。そこでケイ酸塩包有物に着目し、その全岩希土類元素分析からメソシデライトのケイ酸塩包有物のもととなったマグマの化学組成を推定する。さらに岩石鉱物学的研究から、ケイ酸塩包有物の金属相との混合による熱・化学組成の変化を見積もる。
  • 永島 一秀, 竹田 裕, 伊藤 正一, 圦本 尚義
    セッションID: 1P37
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    CRコンドライトのMg-richコンドルールのコアおよび,リムの酸素同位体分布について報告する.リムの酸素同位体組成分布は,同位体マッピングを行うことで評価した.その結果,およそ半分のオリビン粒子が16Oに富む組成をもち,その他の半分のオリビンや他の粒子は16Oに乏しい組成を持つことが分かった.16Oに富むオリビンの存在は,コンドルールリムは,起源の異なる物質が,コンドルールに集積することによって形成されたことを示唆する.
  • 伊藤 正一, 圦本 尚義
    セッションID: 1P38
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    Y81020 CO3.0 chondriteからO-16-poorなコンドルールを内包するO-16-richなigneous CAIを発見した。さらに、O-16-poorなmelilite coreをO-16-richなigneous CAIが取り囲んでいた。結果、コンドルールとCAIの形成は空間的、時間的に重なっていたことを示した。酸素同位体の結果からから、初期太陽系における固体物質は循環しながら進化したことを示した。
  • 松濤 誠之, 永島 一秀, 長沢 宏, 圦本 尚義
    セッションID: 1P39
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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     炭素質隕石を初めとする始源的隕石は太陽系初期に形成された。これら隕石中には太陽系形成以前に存在した恒星の放出物から形成された微粒子が太陽系形成時の加熱による蒸発,溶融をのがれ,それら隕石中にごく少量含まれている.これらは一般にプレソーラーグレインとよばれる。 従来プレソーラーグレインの分離回収にはシカゴ大学のグループが開発した酸を用いて隕石を分解する方法が広く用いられている(Amari et al., 1994).シカゴグループの方法はシリケイト成分をフッ酸を用いて除去し,その残査からプレソーラーグレインを見つけ出す方法である.現在までに報告されているプレソーラーグレインのほとんどがこの方法で分離,回収された物である.本研究ではNaOHを用いた岩石融解法(Chan et al., 1983)を用いて炭素質コンドライト中のシリケイト成分を融解し,その残渣を同位体分析しプレソーラーグレインを分離する方法の開発を行った.異なった方法でシリケイト成分を除去することにより,今までの結果を独立に検証することができ,また新しい組成や形状のプレソーラーグレインを発見することが期待できる.
  • 米田 成一, 岡田 昭彦, 朴 芝鮮, 海老澤 紀子, 長尾 敬介
    セッションID: 1P40
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    2003年2月4日、広島市安佐南区の医薬品を卸している会社の配送センターで雨漏りが見つかり、従業員の方が天井の穴の修理作業をしていたところ、床に落ちていた隕石を発見した。会社が休みであった1日(土)夕方から3日(月)の朝の間に落下したと考えられる。大きさが縦5.8cm×横10.5cm×高さ4.6cm、重さが約 414グラムで、国内で発見された49番目の隕石である。薄片の光学顕微鏡観察とSEM-EDXによる分析の結果、分類はH5 chondriteであった。宇宙線生成核種はガンマ線の測定と希ガスの測定を行った。Ne-21による宇宙線照射年代は約90Maで、非常に長いものであった。
堆積物
  • 武邊 勝道, 山本 鋼志
    セッションID: 1P41
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
    会議録・要旨集 フリー
    堆積環境指標として用いられる希土類元素 (REE)の遠洋性堆積物の間隙水中での挙動に着目した.堆積物のREE組成は間隙水の組成に影響を受ける.しかし,測定の困難さのために,間隙水のREE組成の報告例は乏しい.本研究では,化学平衡論を用いて,堆積物のREE組成から間隙水中のREE組成を推定することに成功した.この結果は,海水が堆積物にとり込まれて間隙水となる過程での元素移動に関する情報を与えてくれる.
  • 本多 照幸, 木村 賢一郎
    セッションID: 1P42
    発行日: 2003年
    公開日: 2005/05/15
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    東京湾(_II_)(湾奥部)、東京湾(_IV_)(湾口部)、陸奥湾および噴火湾の沿岸海底堆積物コア試料、及びそれらの比較対象として外洋の北西太平洋海底堆積物コア試料中の主要並びに微量元素延べ14元素を中性子放射化分析により定量した。また、鉛210法を用いて沿岸堆積物の堆積速度及び堆積年代を算出した。その結果、_丸1_Ce/U比_-_Th/U比の相関は、全てのコア試料で相関係数が0.920_から_0.991と極めて高い相関を示した。また、東京湾(_II_)および噴火湾では全コアを通じて還元環境にあり、一方、東京湾(_IV_)及び陸奥湾では、少なくとも上層部で酸化的な環境にあることが示唆された。本研究で新たに導入したCe/U比_-_Th/U比を用いる方法は、堆積環境を知る上で極めて有効と思われる。さらに_丸2_FeおよびMnの濃度上昇が見られた噴火湾第5層(深度8_から_10cm)の堆積年代は、およそ1940_から_1950年と求められ、その年代は有珠火山の噴火により昭和新山が形成された1943_から_45年と一致した。
海洋
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