日本地球化学会年会要旨集
2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
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G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
  • 木村 竜丸, 林 誠司, 山本 鋼志
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 251-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    長期的かつ安定した海洋環境のモニタリング手法として、汚染物質の生物濃縮を利用した生物モニタリングが提案されてきた。指標生物としてプランクトン、藻類、貝類、魚類等様々な生物が用いられてきたが、中でも二枚貝は、生息範囲が広域である点や、固着性、サンプリングの簡便性といった観点からモニタリングにおいて広く利用されてきた。本研究では、指標として二枚貝の一種であるマガキを用い、閉鎖性水域であるため汚染物質の滞留が懸念されている伊勢湾(新舞子)・三河湾(半田・豊川・汐川)を対象地域として環境モニタリングを行った。また、カキを組織ごと(外套膜、エラ、閉殻筋、内臓)に分け分析を行うことで、各組織の金属濃縮傾向を明らかにし、より高感度な指標としての有効性を評価した。

  • 中川 卓樹, 室田 桃果, 伊藤 茜, 谷水 雅治
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 252-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    2018年4月に宮崎県霧島連山の一つである硫黄山の噴火に伴い、周辺河川に火山性流体が流入した。これにより、硫黄山の麓を流れる長江川では、河川水の白濁が確認されるとともに、環境基準値の約200倍のAsおよび基準値を超えるPbなどの有害金属元素が検出され、下流域では農業用水の利用にも影響が出ている。本研究では、長江川における火山性流体由来の重金属元素の吸着・沈殿挙動の理解を目的とし、主要無機イオン及び微量元素濃度の測定を河川水と河川堆積物の両相で行った。pHは最上流の地点で1.5と低く、下流にいくに従い7.3まで増加を示した。硫黄山からの距離に対する河川水及び堆積物中のFe及びAsの濃度変化の傾向と熱力学計算の結果を考慮すると、火山性流体起源の溶存Fe2+はpHの上昇により酸化され鉄水酸化物として沈殿し、その際にAsは鉄水酸化物へ取り込まれ河川水中から除去されたと考えられる。

  • 中島 彩来, 竹田 和志, 野尻 幸宏
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 253-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    本研究では、河川水に含まれるアルカリ度と主な溶存無機成分を測定し、流域における岩石風化を評価した。調査対象は弘前市郊外にある平川支流の大和沢川である。上流域は主に山地で人為影響が少なく、下流域には生活起源の排水などの流入がある。積雪期の1月に開始し、融雪期を経て、現在も観測を継続している。その結果、大和沢川の溶存成分濃度の平均値は上流域と下流域で明瞭な差があり、多くの成分が流下に伴い増加することが分かった。上流域では、CaとMgイオンの当量濃度の和とアルカリ度の相関が極めて強く、最上流部では炭酸水素イオンの対イオンとして48%がCaとMgイオンの和で説明できるのに対し、最下流部ではそれが79%に増加した。さらに、海塩濃度の補正を行うと、炭酸水素イオンの対イオンに占めるCaとMgイオンの和の比率が高くなった。このことから、流下において岩石成分の溶出がアルカリ度を高めているものと推察された。

  • 竹田 和志, 中島 彩来, 篠畑 未来, 野尻 幸宏
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 254-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    本研究では、山地渓流水に含まれる溶存無機成分とアルカリ度を測定し、流域における岩石風化を評価した。主たる調査域は平川市東部の山間地にある白岩森林公園内で、浅井川上流部の4つの支流域である。観測は、2018年5月から月1回から2週間程度の間隔で継続していて、積雪期や融雪期もカバーしている。二酸化炭素を含む水による岩石風化では、アルカリ・アルカリ土類金属の溶出とともに炭酸水素イオンと溶存ケイ酸が水に供給され、アルカリ度と溶存ケイ酸濃度が高まる。観測した山地渓流の各測点で水中のアルカリ度と溶存ケイ酸の濃度変化を観測期間にわたって評価すると水中のアルカリ度/溶存ケイ酸比がおおむね0.5~0.7の範囲に収まり、濃度間に良い直線関係が得られた。大雨の後の増水時や最大融雪期には、関係から外れることがあった。このことから、白岩森林公園内小河川の溶存成分変化は、長石のような造岩鉱物の風化反応から理解できる。

  • 櫻庭 夏海, 竹田 和志, 中島 彩来, 野尻 幸宏
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 255-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    青森県平川市内の中小河川の溶存成分濃度とその季節変化を調査するとともに、農業などの人為活動の影響を評価した。調査対象は平川市の山地を水源とし平地へ流下する枇杷田川・六羽川・広船川・浅井川・引座川とこれらが注ぎこむ平川の本流である。調査は2018年の4月から11月に行い、2019年4月に再開した。溶存ケイ酸は、年間平均濃度が上流で高く下流で低くなり、加えて顕著な季節変化を示した。中流域では河川水を農業用水に利用しているため、稲作水田でのイネによる取り込みが濃度を低下させる原因と考えられた。そこで2019年は、試験水田を設定し、流入水、水田内用水、流出水の溶存ケイ酸濃度の観測を開始した。その結果、高低差がある2枚の水田において、供給水、上段の水田、下段の水田、放流水へと溶存ケイ酸濃度が次第に低くなることが認められた。供給水の溶存ケイ酸がイネの成長の過程で吸収されたことを反映しているものと考えられた。

  • 新谷 毅, 益田 晴恵, 三田村 宗樹, 根本 達也
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 256-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    本研究では、既存の地下水の地球化学データを整理してデータベースを構築し、地下水の地球化学的特徴と地質構造をGISにより3次元図化した。これらの結果に基づいて、大阪平野全体における異なる地球化学的特徴を持つ地下水塊の分布を明らかにし、地下水盆内での水質の進化過程について考察した。 3次元地図は2次元地図と比べると鉛直方向の地下水塊の分布を効果的に示し、これにより明らかになった地下水塊の分布は、特にMa9より深い地下水環境は停滞的であることを示唆する。また、南北の山間では、有馬高槻断層と内畑断層は有馬型塩水を代表とする深部熱水の経路として重要な役割を持つ。

  • 野崎 晃, 清水 大河, 高橋 悠太, 堀内 克己, 中口 譲
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 257-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    高度経済成長の結果、大阪湾は水質汚濁が進み赤潮の発生件数が急増した。この対策として昭和54年からCODのみを対象とした水質総量規制が実施され、平成13年からは窒素やリンも加わり水質は改善されてきた。しかし、近年大阪湾は窒素やリンが不足し、貧栄養による弊害も報告されるようになった。このような大阪湾を再び豊かな海にするためには、窒素やリンなどの栄養塩他、鉄などに代表される生物活性微量金属も必要といわれている。天然水中で鉄が安定に存在するためには有機リガンドが必要と言われている。天然に存在する有機物の中で腐植様物質は様々な有機リガンドをもち、鉄などの微量元素と錯形成し安定に存在すると考えられている。そこで本研究では、大阪湾を豊かな海に変えることを目的に、鉄などの生物活性微量金属を安定に大阪湾に供給するために、森林土壌から採取、抽出した腐植物質に生物活性微量金属を錯形成させることを目的に研究を行った。

  • 星野 友里, 大野 剛, 深海 雄介
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 258-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    水銀は生物に濃縮されやすく、微量であっても人体に影響を与える重金属であるため、人への主な暴露経路である水圏の水銀循環を理解することは重要である。これまで、環境中の水銀の汚染評価、起源推定の指標として水銀濃度や化学形態の分析が用いられていた。さらに現在、同位体比を用いた分析が注目されている。水圏試料の水銀同位体比測定例としては、比較的水銀濃度の高い魚介類について報告がある。しかし、魚介類の水銀摂取源である海藻やプランクトンについては水銀濃度が極めて低いため、現状では同位体比の分析が困難である。そのため、水圏での水銀濃縮過程を包括的に理解するためには食物連鎖の最初期段階に位置する低水銀濃度試料の同位体比測定法を確立することが鍵となる。そこで、本研究では微量水銀同位体分析を可能にするため、水銀濃縮法の検討を行った。

  • 北川 俊輝, 河西 大悟, 下内 良平, 児玉谷 仁, 神﨑 亮, 冨安 卓滋
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 259-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    水俣湾は1977年~1990年にかけて25 mg kg⁻¹以上の水銀を含む底質は浚渫・埋め立てが行われたが、未だにバックグラウンドの数十倍の水銀を含む底質が存在する。本研究では2013年~2018年に採取された底質中の総水銀濃度及び底質化学組成の測定を行い、排出された水銀の拡散について検討を試みた。八代海表層底質中総水銀濃度は、水俣湾に近いほど高く、遠ざかるほど低くなる傾向が見られた。底質化学組成を見ると主要成分はSiO₂、Fe₂O₃、Al₂O₃であった。SiO₂に対しFe₂O₃及びAl₂O₃をプロットすると、八代海底質ではともに正の相関が見られ、水俣湾沿岸に近い程それらの割合が高くなる傾向が見られた。水俣湾、袋湾の底質では、SiO₂に対するFe₂O₃、Al₂O₃の割合は八代海底質に比べて高く、SiO₂に対するこれらの値は八代海底質とは明らかに異なる領域にプロットされた。

  • 向井 康太, 藤森 崇, 舟川 晋也
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 260-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    森林における落葉落枝の腐植過程では、塩素・臭素が無機態から有機態へと変化することが知られている。しかし、堆積有機物層から鉱質土層に至るまでの塩素・臭素の化学形態や量的変化には不明な点が多い。先行研究では、褐色森林土壌を対象とし堆積有機物層から鉱質土層までの塩素・臭素の化学形態別鉛直分布を調査した。しかし、多くの土壌分類の一種類のみを調査した結果であり、異なる土壌分類間の比較はできていなかった。本研究では、国内の代表的な3種類の土壌種間における塩素・臭素の化学形態別鉛直分布を調査した。

  • 田村 一紗, 高橋 嘉夫, 板井 啓明
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 261-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    水圏においてプランクトンは食物連鎖の低次に位置にし、その微量元素濃度は、生体要求量だけでなく環境下での利用可能性を反映する。ネット採取試料のバルク組成での評価は、器官ごとの濃縮の違いや鉱物などの非生物粒子を区別しないため、プランクトンが元素循環において果たす役割を説明するうえで情報に乏しい。そのため、本研究では放射光X線マイクロビームを用いた個体別元素濃度定量を目指し、μ-SXRFを用いたプランクトン個体別元素マッピング、μ-SXRFおよびICP質量分析器による生物観察汎用の固定試薬浸漬による微量元素濃度への影響評価を行った。結果、S, P, Caなど生体で一般的に存在比が高い元素は種を問わず検出された一方で、蛍光X線のエネルギーが小さく得られたシグナルは少なかった。試料-検出器間の減衰を差し引いた真の蛍光強度の算出法確立と濃度定量が今後の課題である。

S02 地球メタロミクス
G13 地球化学の境界領域への展開
  • 平尾 萌, 巣山 哲, 筧 茂穂, 伊藤 進一, 白井 厚太朗, 冨士 泰期, 青野 智哉, 西田 梢, 石村 豊穂
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 地球化学の境界領域への展開
    p. 263-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    北西太平洋の小型浮魚類は太平洋十年規模変動やレジームシフトと対応した魚種交替をしめすことが知られている.今後の持続可能な水産資源の利用に向けて,集団構造や回遊経路が気候変動に対しどのように応答するかを明らかにすることが,資源評価と管理を行う上で重要であるものの,具体的な大気・海洋・生態系の相互作用の素過程の解明には至っていない.魚類の耳石はCaCO3で形成され耳石中の酸素安定同位体比(d18O)は生息環境の水温を反映する.近年では,耳石の高解像度解析により,得られたd18Oから個体の経験水温と分布域の復元が可能となり,回遊モデルとの融合によって資源変動メカニズムの解明へ向けた新たな魚類生態情報に関わる研究が加速している.一方で,耳石d18Oの時系列から経験水温を復元する中で,切削技術と時間軸認定の精度評価,CaCO3の結晶形の確認が必要である事を認識した.本研究ではサンマの耳石を例に,この2点の評価について報告する.

  • 武藤 大知, 高橋 素光, 西田 梢, 石村 豊穂
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 地球化学の境界領域への展開
    p. 264-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    炭酸カルシウム(CaCO3)で形成される魚類の耳石の酸素安定同位体比(d18O)は生息環境の水温を反映し,日周輪を形成しながら日々のd18Oを記録するため,経験水温の推定や回遊履歴の解明へ向けた活用が期待されている.近年では,微小領域切削装置(Geomill326)と微量炭酸塩安定同位体比質量分析(MICAL3c)の融合により,従来の数十倍の高時間分解能で耳石d18O分析が可能になり,各魚種への応用が始まっている.マアジ(Trachurus japonicus)は,稚魚期の耳石成長が早く,その日周輪幅が他魚種よりも広いという特徴があるため,世界初の「魚類の1日単位でのd18O(=経験水温)履歴の抽出」が実現できる可能性がある.本研究では,対馬海峡の東西で漁獲されたマアジの耳石を分析対象とし,①耳石の日々のd18O履歴抽出を実現するために分析技術の高度化を目指しつつ,②対馬海峡東西の個体のd18Oを比較し,経験水温の特性解明と初期成長の違いの要因推定を試みた.

  • 樋口 富彦, 伊藤 進一, 石村 豊穂, 上村 泰洋, 白井 厚太朗, 進藤 花, 西田 梢, 小松 幸生
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 地球化学の境界領域への展開
    p. 265-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、春季に採取した未成魚マサバ耳石の酸素安定同位体比を分析し、経験水温履歴の推定を行った。伊豆諸島周辺海域から黒潮続流域より採取したマサバの耳石標本について、耳石全体を用いた酸素安定同位体比(δ18O)分析を実施した。耳石分析の結果、仔魚期は耳石の成長とともに耳石δ18Oが減少するのに対し、稚魚期では耳石成長とともにδ18O が増加することがわかった。孵化後約30日までの耳石日輪成長幅についてクラスター解析を実施した結果、6 個のクラスター(CL)に分類できた。高成長を示したCL-5,6 と低成長を示したCL-1,2 を比較すると、CL-5,6 の方が高いδ18O を示し、より低水温を経験していることが示唆された。つまり、初期成長が良い個体は成長が良いためにより積極的に低水温域に侵入し、高栄養価の餌料を得ることができるという正のスパイラルが働いていることが示された。

  • 吉村 寿紘, 日下 宗一郎, 為則 雄祐, 荒岡 大輔, 川幡 穂高, 大河内 直彦
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 地球化学の境界領域への展開
    p. 266-
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/20
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    縄文人の生活史の進化、発育に伴う食物内容の移行や健康状態に関する知見は縄文社会の発展を解析するうえで重要な基礎情報となる。有機物の残存しない地質時代の化石にも多く含まれるため将来的な応用範囲は広く、生体内の金属元素の反応系に特化した海と陸の資源の摂取傾向や栄養段階の新指標として期待される。本研究では縄文晩期の愛知県豊川市の稲荷山貝塚から出土した縄文人の歯試料5点を対象に微小領域分布および化学形態について報告する。リンに対する各元素のシグナル強度比とエナメル質の炭素同位体比、ストロンチウム同位体比、コラーゲンの炭素窒素同位体比を比較したところ、エナメル質の炭素同位体比と平均Mg/PおよびS/P信号強度比に相関(R = -0.91, -0.90)が認められた。マグネシウムはエナメル質と象牙質ともに化学形態の差異は認めらなかった。塩素のXAFSスペクトルの特徴は塩素フッ素燐灰石と類似し、硫黄はS(+6)とS(-2)の異なる酸化状態が混在していた。

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