日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2015年年会
選択された号の論文の208件中1~50を表示しています
S1:火成作用と流体
  • 角野 浩史, Burgess Ray, Jepson Lisa, Chavrit Deborah, 清水 綾, 町田 嗣樹, Ballent ...
    セッションID: S1-01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    マントルウェッジ供給されているスラブ流体の希ガスとハロゲンの特徴を明らかにするため、伊豆小笠原弧北部の火山で採取した溶岩中のかんらん石と、IODPにより採取された北西太平洋プレート状の堆積物と変質した海洋地殻の、希ガス同位体ならびにハロゲン組成を分析した。
    かんらん石のアルゴン同位体比はマントルと大きく異なり、また背弧域に比べ火山フロント上でより海水に近いことから、沈み込みによる海水起源希ガスの影響が島弧下全域に強く及んでいると考えられる。一方大半の試料のハロゲン組成はマントル的であるが、背弧側の一部の試料は、三波川変成帯の東赤石かんらん岩などで報告されている、堆積物中間隙水に似たハロゲン組成をもつ。これらは比較的低ハロゲン濃度のスラブ流体が火山フロント直下から背弧域にかけてマントルウェッジに供給されているのに加えて、高ハロゲン濃度の流体も背弧側で限定的に供給されていることを示唆している。
  • 越後 拓也, 西間木 志野, 谷口 直暉, 木股 三善, 清水 雅浩, 齋藤 静夫, 西田 憲正
    セッションID: S1-02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    Anorthite megacrysts in basaltic andesite from Mt. Fubo, Miyagi Prefecture were examined by EPMA-WDS and SEM-EDS. These observations revealed that anorthite contents of the megacrysts are An92-94 and small Fe-Ni-sulfides (20-50µm) were included in the megacrysts. Our results indicate that these megacrysts have grown in volatile (e.g., H2O and S) rich and low viscosity condition.
  • 浜田 盛久
    セッションID: S1-03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    東北日本の背弧火山である三ノ目潟火山の高MgO(≧8 wt.%)玄武岩は、かんらん石(Fo90)を斑晶として含むほか、地殻由来の斜長石(An30)を含む。Kuritani et al. (2014 Contrib. Mineral. Petrol.)は、三ノ目潟火山の初生メルトの含水量が6-7 wt.%であることを議論したが、メルトがこれほど水に富む直接的証拠は得られていなかった。斜長石などの無水鉱物は微量の水素を不純物として含み、その含有量は、共存するメルトの含水量に依存する。本研究では、斜長石の水素含有量を分析することにより、噴火前に非平衡ではあるが共存した玄武岩メルトの含水量を推定した。分析の結果、斜長石のコアは60 wt. ppm H2Oの水素を含むが、リムでは水素含有量が≧200 wt. ppm H2Oに達した。斜長石が高含水量メルトに取り込まれて噴火に至ったことが確かめられた。
  • 町田 嗣樹, 平野 直人, 角野 浩史, 平田 岳史, 米田 成一, 加藤 泰浩
    セッションID: S1-04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    北西太平洋に分布するプチスポットの地質学的特徴を明らかにするため、3カ所の火山フィールドにおいて採取された約170個の玄武岩試料の全岩化学組成(主要・微量元素,SrおよびNd同位体組成)と40Ar/39Ar年代値データセットを構築した。データセットを火山の地理的分布と合わせて包括的に解析した結果、プチスポットマグマはリソスフェア−アセノスフェア境界に存在する孤立したメルト池に由来することが判明した。プチスポット火山活動の変遷とそれに伴うマグマ組成の変化は、メルト池がプレート運動によって引きずられ、プレート運動のスピードよりわずかに遅く移動することによって制御されている。
  • 黒田 みなみ, 橘 省吾, 奥村 聡, 中村 美千彦, 坂本 直哉, 圦本 尚義
    セッションID: S1-05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    本研究では,ケイ酸塩メルト中の水の拡散について,その含水量依存性と拡散メカニズムの解明を目的とし,石英ガラスを用いた水の拡散実験をおこなった.実験で得られた拡散プロファイルから,ガラスの組成依存性を排除したケイ酸メルト中の水の拡散モデルを構築する.また,そのモデルを流紋岩ガラス,デイサイト質ガラス,玄武岩質ガラス中の水の拡散に応用し,一般的なケイ酸塩メルト中の水の拡散モデルの構築をめざす.
  • 上木 賢太, 岩森 光
    セッションID: S1-06
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    本研究は、常圧から5GPa の圧力幅で、マフィックから珪長質までの幅広い組成のメルトに適用可能な含水ケイ酸塩メルトの密度モデルの構築を行った。メルト中の水成分の圧縮率、熱膨張率およびその圧力微分、そして部分モル体積と K’に関して、先行研究によって実験値に推定された密度を参照して、キャリブレーションを行った。ドライメルトの K’に関しては、メルトの SiO2 含有量に対して新たにパラメーター化を行った。構築したパラメーターセットは、幅広いバルク組成や含水量でのメルトの密度を高精度で再現した。無水のメルトと比べると、含水メルトは低密度になるとともに、圧縮されやすくなる。メルトの含水量は地震波速度にも大きな影響を及ぼすことが予想される。この影響を議論するため、本モデルで決定されたパラメーターを用いて、メルト組成や含水量が地震波速度に及ぼす効果に関する定量的な見積もりを行った。
  • 石橋 秀巳
    セッションID: S1-07
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    玄武岩質メルトのfO2に及ぼすSの脱ガスの影響を,平衡バッチ脱ガスモデルを仮定して試算した.熱力学モデルによりSO2/H2Sを計算したところ,ΔQMF>0のfO2条件では,脱ガスするSはほぼSO2であった.メルトのFe3+/Fe2+およびS6+/S2-とfO2の関係はそれぞれ先行研究によって提案されたモデルを用い,メルトからのSの平衡バッチ分別過程でのfO2変化を計算した.その結果,初期fO2条件がQMF+0.7程度の場合にはSの脱ガスはfO2にほとんど影響を及ぼさず,これより酸化的/還元的な初期条件ではSの脱ガスによってより酸化的/還元的になることがわかった.プチスポットSite-Bで採取された玄武岩質ガラスについて,2000ppm以下のSの脱ガスを考慮した場合,その初期fO2条件としてΔQMF>1.4の結果を得た.従ってプチスポットの起源マントルは島弧的なfO2状態であると考えられる.
  • 小林 真大, 角野 浩史, 長尾 敬介, Burgess Ray, 石丸 聡子, 荒井 章司, 芳川 雅子, 川本 竜彦, 熊谷 佳孝, 小 ...
    セッションID: S1-P01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    ハロゲンはマントルへと沈み込む水のよいトレーサーになると期待されている。沈み込み帯直下のマントルウェッジにスラブ起源流体が及ぼす影響や、どのような相がハロゲン組成を支配しているかを解明することを目的とし、火山フロントに位置するアバチャ火山、ピナツボ火山と背弧側に位置する一ノ目潟で産出したマントル捕獲岩に含まれるハロゲン組成を求めた。火山フロント直下のマントルにはIに富むスラブ起原流体の影響が強く及んでいた。背弧側では、Iに富む成分以外にも複数の成分の影響が見られ、その組成は単斜輝石の組成に強く影響されている。
  • 福光 李奈, 石丸 聡子, 荒井 章司, Payot, Betchaida D.
    セッションID: S1-P02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    ルソン–台湾弧の火山フロントに位置するイラヤ火山に産するかんらん岩捕獲岩は,シリカに富む流体(およびメルト)による交代作用を被っている。その記載岩石学的特徴は非常に多くのH2O流体包有物が観察されているアバチャ火山のものと類似し,多量のH2O流体包有物の存在が期待される。本研究では,流体を含むかんらん岩の岩石学的特徴と流体包有物の組成(相と塩濃度)測定をおこない,包有物がH2OとCO2からなり,H2O流体の塩濃度(NaCl相当量)はほぼ均質(≈ 4.0 wt%)であることを確かめた。opx IIの有無と含まれるH2O流体包有物の組成に関して明瞭な関係性は見いだせていないが,更に詳細な検討をおこない考察する。
  • 末善 健太, 平賀 岳彦
    セッションID: S1-P03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    中央海嶺下などでの湧昇マントルが、部分溶融に伴ってどのような電気伝導度変化と粘性率変化を示すのかを明らかにするため、合成レールゾライトの高温高圧下での物性を測定した。レールゾライトは、Mg(OH)2、SiO2、CaCO3、MgAl2O4の粒子サイズ50 nm未満の粉末から、フォルステライト80%+エンスタタイト10%+ダイオプサイド10%と、フォルステライト50%+エンスタタイト40%+ダイオプサイ10%の組成に、それぞれ0%、 0.5%、1.5%の量のスピネルを添加したものを作製した。ソリダス以下では、伝導度と粘性率はアレニウスプロット上線形にプロットされ、それぞれ~180kJ/molと~700kJ/molの活性化エネルギーをもつ。ソリダス以上では、伝導度と粘性率は温度上昇に伴うより急激な変化を示す。この伝導度増加と粘性率低下は、メルト分率の増加と関係していると考えられる。
S2:岩石─水相互作用(共催:資源地質学会)
  • 土屋 範芳
    セッションID: S2-01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    地殻エネルギーのフロンティアを開拓すべく,未来技術として,流体との相互作用が極端に弱くなる400℃以上の超臨界環境,および岩石の流動性が増して誘発地震が発生しづらくなる延性領域を利用する必要がある.従来型地熱の開発対象領域である脆性環境を通り越した,その向こう側にあるより熱エネルギー環境が高い(400~500℃以上の)延性領域の開発を目的とした研究について紹介する.この研究は,野外観察,室内実験,数値計算などを効率よく組み合わせて実施しているが,これに加えて,大深度掘削により,超臨界地熱環境の実態をつぶさに観察する必要がある.現在,ICDP (International Continental Drilling Program)の本プロポーザル(JBBP: Japan Beyond Brittle Project)を準備中である.
  • 平野 伸夫, 青島 聡, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    発表者らはこれまでおこなってきた,熱水中での岩石溶解に関する研究において,特定の温度圧力条件下で花崗岩や石英に著しいき裂が生じる場合がある事を報告し,この現象を熱水誘起割れ(HDF : Hydrothermally Derived Fracturing)と名付け,様々な実験的検討をおこなってきた.その結果.高温高圧環境下における岩石表面での流体沸騰と,その際に発生した顕熱や潜熱による温度の低下による熱応力の発生がき裂生成に関係していることを見いだした.また,高温高圧環境下の岩石に低温流体を接触させた場合の流体沸騰による発生だけではなく,高温高圧環境からの急減圧に伴う流体沸騰によっても発生する事が判明した.この現象を数種類の岩石で検討した結果,石英の存在が影響している可能性があり,また,地殻深部の高温岩石や岩体内部,火山近傍地下におけるき裂発生や岩石破壊プロセスの一部である可能性がある.
  • 鈴木 拓, 土屋 範芳, 山田 亮一, 宇野 正起
    セッションID: S2-03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    地熱資源開発における調査課題解決のため本研究は地熱未探査地域を対象とし、噴出物中の石英に含まれるメルト包有物の解析によりマグマ温度・圧力を決定 し、マグマ溜まりの位置を推定した。対象の白沢カルデラは仙台市西方に位置し7Maに噴出しており、地震波探査によって地下10~20kmに低速度域が示 唆されている。包有物のノルム組成と相図から見積もられた晶出圧力は50~300MPaに集中、深度は1.6~10kmと推測される。単一結晶中の複数 の包有物では微量元素濃度と晶出深度に負の相関があり、マグマ上昇に伴う分化を示唆する晶出圧力頻度は150~250MPaであり、地下5~8kmに巨大なマグマ溜まりの存在が示唆され、カルデラ中心部に最浅晶出深度0~2kmの試料が集中している。これらの深度と比較して、地震波探査の低速度域から推定される現在のマグマ溜まり(10~20km)は7My間に下降していると推測する。
  • 最首 花恵, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    In the geothermal field, the permeable-impermeable boundary is at around 3 km depth. This boundary consists of the local minimum value of quartz solubility in the Kakkonda field, Japan. In this study, calculation of quartz solubility reveals the relationship between the permeability and WRI in the deep drilling wells recorded overpressure in the world.
  • 中村 仁美, 千葉 紀奈, 常 青, 森川 徳敏, 風早 康平, 岩森 光
    セッションID: S2-05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    有馬型温泉水の湧昇域については,模式地である有馬温泉のほかに,紀伊半島が知られており,断層に沿って深部から上昇すると考えられている.しかし,それらの起源や上昇過程,特に地殻との相互作用についてはいくつかの可能性が指摘されているものの,未解明な点が多い.
    一方,島弧火山岩の化学組成は,マグマ生成時のスラブからの寄与や,マントルでの生成条件を介し,スラブの分布,熱的・化学的性質とその変遷を記録していることが分かっている.本研究では,火山岩との対比に基づき,紀伊半島に湧出する温泉水を用いて,その起源や上昇過程を制約し,有馬型温泉水の成因やテクトニクスを含めた地質構造との関係を議論する.
  • 武者 倫正, 土屋 範芳, 岡本 敦
    セッションID: S2-06
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    海底地殻環境下では蛇紋岩化プロセスによって水素や非生物性メタンが生成すると考えられているが、その反応速度は非常に遅く、蛇紋岩化の室内実験では熱水噴出孔の高濃度のメタン生成を説明できていない。一方、水熱条件下で硫化水素を用いた還元反応により高濃度の水素が生成することが報告されており、本研究では硫化水素還元による水素生成反応と、その水素と海水中の二酸化炭素を反応物としたメタン生成反応(Fischer-Tropsch反応)という2段階の反応が熱水噴出孔における高濃度メタンの生成に寄与している可能性を検討した。 表面触媒として磁鉄鉱(Fe3O4)を加えた水熱実験で、168 [h]の加熱実験で蛇紋岩化によるメタン生成の約17~数百倍の速度でメタンが生成することが判明し、熱水噴出孔での流体循環時間で天然で観察される流体中のメタン濃度が十分に達成されることが示唆された。
  • 中田 英二, 千木良 雅弘
    セッションID: S2-07
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    火山砕屑岩が分布する地域において鉛直方向の風化プロファイルを得た。深部から表層へ向かって粘土鉱物、斜長石の分布に移り変わりが認められたので報告する。
  • 西山 直毅, 横山 正
    セッションID: S2-08
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    地質媒体の浸透率は,岩石-水相互作用の進行速度に大きく影響する重要なパラメータである.地質媒体の間隙構造の複雑さによって浸透率は非常に幅広い範囲の値を取り得るが,どのような因子(間隙率,間隙径,屈曲度)が浸透率を支配しているのかは,十分に解明されていない.本研究では,間隙を水で満たした岩石試料にガス圧をかけてガスを貫通させる「水押し出し法」によって最大開口径を測定し,浸透率との関係を調べた.最大開口径と浸透率の間には非常に強い相関が見られ,浸透率が最大開口径によって主に支配されていることを示している.
  • 東野 文子, 河上 哲生, 土屋 範芳, Satish-Kumar M., 石川 正弘, Grantham Geoffrey, 坂田 周平, ...
    セッションID: S2-09
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    東南極セール・ロンダーネ山地中央部ブラットニーパネに産するGrt-Opx-Hbl片麻岩には、主たる片麻状構造を切って、GrtとHblから成る幅約1cmの脈が貫入する。この脈は、角閃岩相高温部で外部から流体流入を受けて形成されたと解釈でき、脈から離れるにつれ、HblとBtのCl濃度とHblのK濃度は減少し、PlのNaに富むリムは薄くなることからNaCl-KClを含む塩水の流入が示唆される。さらに、LA-ICPMSを用いた微量元素組成分析から、脈から離れるにつれ、Hbl中のZn, Sr, Ba, Pb, U濃度、Pl中のLi, Sr, Ba, Pb濃度が低下することが分かった。個々の元素濃度が一定になる距離は、鉱物種ではなく元素によって異なり、脈からの距離に応じた微量元素組成変化プロファイルは、脈から壁岩にかけての元素拡散を示唆する。本発表では、拡散速度と鉱物組織の関係性を考慮して検討を行う。
  • 和田 菜奈絵, 安東 淳一, 山本 貴文, 角野 浩史, 小林 真大, DAS Kaushik, 鍵 裕之
    セッションID: S2-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    Finero金雲母カンラン岩体は,古生代から中生代にかけてマントルウェッジでスラブ脱水による交代作用を受けたことが報告されている。この流体がカンラン岩の塑性変形に与える影響に着目した。一部の試料は以下のような特徴がみられることから,含水下で応力集中がおこっていることが確認できた.1)オリビンのポーフィロクラストは複雑な波動消光を示す。2)流体包有物が大量に存在する。変形の疎過程を、走査型電子顕微鏡(SEM/EBSD)を用いたオリビンのすべり系の決定及び,流体包有物の希ガス同位体測定による流体の起源の推測から考察した.この結果,オリビンのすべり系は無水から含水条件を示すすべり系に上書きされている様子が確認でき,流体包有物の希ガス同位体比は,大気,大陸地殻,MORBマントル成分の三成分混合型を示した.剪断帯中のオリビンの塑性変形と脆性変形には流体が関与していたこと示唆している.  
  • 河上 哲生, 酒井 治孝, 佐藤 活志
    セッションID: S2-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    ネパール東部ダンクッタ地域のMCT下盤側に分布する泥質片岩中の、電気石の組成変化を調べた。通常の泥質片麻岩中の電気石リムの組成は、変成度が上昇するにつれ、Mg/(Mg+Fe2+)[=XMg]、Ca/(Ca+Na)が高くなり、Xサイトの空隙が減少する。一方、藍晶石帯に産する電気石脈中の電気石の組成は、脈からの距離に応じて変化し、脈中の電気石は高いXサイトの空隙を有し、XMgがほぼ一定であるが、脈から数cm離れた箇所の電気石は、低いXサイトの空隙を有し、XMgもばらつく。この組成差は電気石形成時の流体/岩石比の違いを反映し、流体/岩石比が高い状態で形成された電気石は、高いXサイトの空隙を有する可能性がある。電気石を大量に産する泥質片岩中の電気石のなかにも、同様の組成的特徴を有するものがあり、これらも変成同時の流体流入に伴って形成された可能性が高い。
  • 宇野 正起, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    地殻への流体供給に対するメルト貫入の寄与を明らかにする為に,東南極セールロンダーネ山地南東の地殻—メルト吸水反応帯を調査した.パーガス閃石−金雲母かんらん岩に花崗岩質岩脈が脆性的に貫入しており,その境界に角閃石,金雲母からなる厚さ10–15 cm程度の吸水反応帯が形成されている.その生成条件は5 kbar, 700 °Cと見積もられ,中部地殻に相当する.メルトに含まれる6wt%の水の内,反応帯には主にK2O, CaOの付加により4wt%が吸水されているが,残りの2wt%は系外へ放出されている.吸水量は,流体供給量ではなく,母岩側の反応帯形成速度に律速されていると考えられる.本発表では,反応帯の主要・微量元素プロファイルおよび反応拡散モデルから,このような反応帯をモデル化し,島弧地殻への水流体供給量への影響について議論する.
  • 奥山 康子
    セッションID: S2-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    大阪府南部,和泉山脈北麓地域に分布するドーソン石を含む炭酸塩脈が、有馬型高温泉に相当する流体から沈殿した可能性を、酸素・炭素同位体比から検討した。Kazahaya et al. (2009)による有馬型高温泉端成分から沈殿する方解石の同位体比を計算で求めると、温泉程度の温度で鉱物脈中の方解石の同位体比は説明できる。鉱物脈が、近接して存在し有馬型温泉の1つであるNa-Cl-HCO3型温泉の活動で形成されたという考え方に著しい矛盾はない。
  • 川本 竜彦, Hertwig A., Schertl H.-P. , Maresch W. V.
    セッションID: S2-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    マントルウェッジ由来のカンラン岩捕獲岩中に塩水包有物を発見し塩濃度を報告してきた(Kawamotoほか, 2013, Proc Nat Acad Sci USA, Kumagaiほか, 2014, Contrib Mineral Petrol)。また、塩濃度は、水流体とマグマの間の元素分配に影響を与え、スラブ流体は塩水であると島孤玄武岩の化学組成の特徴を合理的に説明できる(Kawamotoほか, 2014, Earth Planet Space)。このような塩水をどのようにマントルウェッジに運ぶかについては、最新のハロゲン元素と希ガスの分析により、沈み込む堆積岩中の間隙水や蛇紋岩が有力視されている(小林ほか, 2015,  地学雑)。本研究では、沈み込むスラブとマントルウェッジの間にある沈み込みチャネル中で生成されると考えられるヒスイ輝石岩中の流体包有物の塩濃度について報告する。
  • 野坂 俊夫, Wintsch Robert, Meyer Romain
    セッションID: S2-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    IODP第345次航海で採取された斑れい岩類に産する蛇紋石の,化学組成と鉱物共生を分析した。斑れい岩類中の蛇紋石は,かんらん岩中に産するものと違って,ブルース石の混在を示さず,局所的なスメクタイトの混在を示唆する。蛇紋石には,Si/(Mg+Fe)比やMg/(Mg+Fe)比などの化学組成の変化と,共存する磁鉄鉱あるいはスメクタイトの量の変化が認められた。それらの変化は,温度,シリカ活動度,酸素フュガシティ,あるいは水/岩石比などの変動によって説明することができる。
  • 大柳 良介, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    本実験では,天然のマントル-下部地殻境界のアナログとして,かんらん石-斜長石-水系の水熱実験を行い,反応進行度の空間分布の詳細な解析を行った.実験条件は230̊C,飽和蒸気圧(= 2.80 MPa),最大反応時間は7960時間である. 結果,斜長石との境界から反応生成物の系統的な変化が観察された.かんらん石の最も斜長石に近い領域ではAlリザーダイト,離れるとAl-freeリザーダイト+ブルーサイト+マグネタイトが生成し,Caを含んだ鉱物は観察されなかった.斜長石の領域で生成物は観察されなかった.Alリザーダイトに含まれるAl量は斜長石との境界で最大であり(~15wt%),斜長石から離れると少なくなる傾向をとる.これから推測される7960時間後の斜長石からのAlとSiの移動距離は,それぞれ斜長石とかんらん石の境界から1.5mmと3.7mmであった.また,かんらん石領域における反応生成物の含水量は斜長石との境界で高く,反応チューブの先端部に向けて次第に低くなる傾向をとる.
  • 石川 慧, 佐久間 博, 土屋 範芳
    セッションID: S2-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    地殻中では鉱物粒界や間隙中に高温高圧の水が存在しており、この水は地殻中の物質移動や地震のような地殻現象に深く影響していると考えられている。またこのような狭い領域に存在する水は、表面との相互作用で通常のバルク水とは違った挙動を示すことが知られている。本研究では、古典分子動力学計算を用いて、298Kから573Kの温度条件における石英表面上の水の自己拡散係数を、様々な視点で評価した。石英面で挟み込んだ水の自己拡散係数は、石英間の厚さ5 nm以下で小さくなり、5 nm以上の厚さの水ではバルク水とほぼ同じ自己拡散係数を示した。また水分子一つひとつの自己拡散係数を定義し、低拡散の水分子と高拡散の水分子が石英間のどの位置に分布しているかを可視化した。その結果、表面から1-2 nm程度の範囲に低拡散の水分子が分布しており、この低拡散水分子の分布は573Kの高温の条件でも存在していることが分かった。
  • 横山 正, 佐久間 博
    セッションID: S2-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    バルク水中のSi, K, Clの拡散係数(D0)は,KとClはほぼ等しく,Siはそれらの約1/1.7倍である.しかし,Si, K, Clを等濃度(各1.7 mM)含む溶液を拡散源として,ベレア砂岩とフォンテーヌブロー砂岩について行われた拡散試験の結果は,間隙水中のSiの拡散速度が,バルク水中のSi, K, Clの拡散係数の違いから予測される値よりも小さくなることを示した.また,間隙をSi濃度1.7 mMの溶液で満たした後,遠心分離で間隙水を取り出して分析した結果から,特にベレア砂岩については間隙中でSiの沈殿が生じていることが分かった.拡散試験中のSi輸送量が予測値より少ないのは,岩石内部でSiが沈殿することにより濃度フ゜ロファイルが変化する効果や,高いSi濃度下でSiの重合等が起こりD0が小さくなる効果が関係している可能性がある.
  • 藤原 あずさ, 安東 淳一, 大藤 弘明
    セッションID: S2-P01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    オリビンは通常それほど顕著な劈開を示さない。しかし地表に露出する蛇紋岩化した超塩基性岩体には、cleavable olivineと呼ばれる顕著な劈開が発達したオリビンが普遍的に産出される。本研究では、マリアナ前弧中部の雷神海山を構成する蛇紋岩化が進んだ超塩基性岩(ダナイト)を構成するオリビンを試料に用い、その中に顕著に発達するcleavable olivineの成因を、微細組織観察を基にして明らかにした。本研究によって、転位クリープによる亜結晶粒界(転位の配列)の形成と、その後のH2Oのパイプ拡散が、cleavable olivineの形成にとって、本質的に重要であることが示唆された。
  • 木戸 正紀, 武藤 潤, 小泉 早苗, 長濱 裕幸
    セッションID: S2-P02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    本研究では,下部地殻に相当する温度・圧力条件下で,水を添加した灰長石に対して変形実験を行い,灰長石の塑性変形に対する水の効果を定量的に明らかにすることを目的とする.実験はGriggs型固体圧変形試験機を用いて温度900 °C,封圧1 GPaで軸圧縮試験を行った.試料には,微細(粒径約3 μm)な灰長石多結晶体を用いた.実験前に灰長石に蒸留水を0.5 wt%加え,ウェット試料とした.高封圧の試料の強度は,低封圧の実験(< 450 MPa)から得られた拡散クリープによって変形するウェットな灰長石の構成則から予測される強度に比べて著しく低かった.また,回収した円筒試料の上部はほとんど変形しておらず,下部に変形が集中していた.薄片観察では試料下部に流動変形が示唆される線状の伸長構造がみられた.まだ変形機構は確かめられていないが,高圧下での水の効果は低圧の実験からの予測よりも大きい可能性がある.
  • 安東 淳一, 石山 沙耶, 中井 俊一, Das Kaushik, 太田 泰弘
    セッションID: S2-P03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    平尾台に露出する結晶質石灰岩中に発達するカタクレーサイトの形成過程を、野外調査、変形微細組織観察、化学組成分析、及び流体包有物の均質化温度・融点測定、Rb-Sr同位体比分析結果をもとに考察した。その結果、このカタクレーサイトは複数回の水圧破砕によって形成されたこと、そして、この破砕に関与した流体は、平尾石灰岩層と接した状態が長く継続したH2Oを主成分とする比較的高温で、かつ塩濃度の低い流体であった可能性が強いことが明らかとなった。
  • 藤田 和果奈, 中村 美千彦
    セッションID: S2-P04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    間隙流体分布に対する結晶粒成長の効果を調べるため、ピストンシリンダー装置を用いて石英―水系における液相焼結実験を行った。実験条件は900°C、1 GPa、91–382時間である。出発物質は石英とゾルゲル法で合成した非晶質シリカの混合粉末を用い、流体源としてブルーサイトを用いた(流体量約0.7, 1.7, 3.7 wt.%の三段階)。実験の結果、焼結初期の段階で粒成長と過剰な流体量の間隙からの吐出しが起こったことが分かった。吐出しは192 hではほぼ収束しており、粒間に保持されていた流体量は約0.8 wt.%であった。また、初期流体量の大きい実験では、粒成長が明瞭に進行していた(保持時間192 hで0.7, 3.7 wt.%でそれぞれ25, 84 µm)。以上から、多量の流体の存在下では、流体の吐き出しは流体を介した溶解・析出によって粒成長とともに効果的に進行すると考えられる。
  • 山口 海, 上原 誠一郎
    セッションID: S2-P05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    伊豆半島周辺に存在する蛇紋岩体は,古第三紀~新第三紀頃に形成された日本で最も新しいオフィオライト岩類であると考えられ,伊豆半島周辺の形成史を解明する鍵として重要視さてきた。本研究では千葉県房総半島嶺岡帯に産する蛇紋岩について,研究例の少ない蛇紋岩の仮晶組織の観察を行った。現地にて採集した蛇紋岩試料について,偏光顕微鏡観察,X線回折分析,SEM-EDS分析を行った。蛇紋岩はいづれも蛇紋岩化作用を受けており,偏光顕微鏡下で網目状組織,バスタイトが主として観察された。多くの試料にニッケル硫化鉱物が含まれており,アワルワ鉱,自然銅も少量確認された。ニッケル硫化鉱物は(Ni+Fe)/S比の値が0.78~1.82 の間を変化し,少量のFeが含有されており,Co, Cuを含むものも確認された。蛇紋岩化が完全な網目状組織では,コアは褐色,緑色,黒色を示し,Feが選択的に濃集する特徴があった。
R1:鉱物記載・分析評価
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