本稿では, 産業用エレクトロニクスメーカーの実証研究を元に, 企業における製品開発プロセスを, 外部知識の利用という側面から検討する。ここでは, 組織内情報統合と対顧客での組織間情報統合とを比較し, 顧客情報を探索·獲得するための説明概念として, 顧客との繋がりの強さを導入する。その上で, 外部知識を利用するための情報伝達システムの構造的発展と, 技術的成功をもたらす外部知識の獲得方法について議論する。その結果, (1)顧客との繋がりが強い企業活動は, 技術的知識を持つ者が担当している, (2)製品開発プロジェクトメンバーが顧客の情報に対して受動的に接するだけでなく, 能動的に働きかけることが, 顧客の技術的な需要の探索·獲得においては有意に作用すること, を示す。顧客の技術的需要を満たす製品を提供することは, 顧客にとって付加価値の高い製品開発を意味する。本研究は, (1)顧客の技術的需要は常に明示的なものではなく, 顧客にとっての付加価値という形で便益を提供するためには, 顧客自身が意識しない需要を認知することが必要であること, (2)こうした顧客需要を先取りした認知を行なうためには, 技術的知識を持つ者が顧客との直接的なコミュニケーションを行なうことが必要であること, (3)これは特に, 顧客製品との間での技術的な整合性を意図した開発において有効であること, を示唆している。
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