ブラシレス同期機の問題点は主として回転励磁系の設計に集約される.整流回路はほかの部分に比べて過負荷耐量が低く, ブラシレス同期機の本質的な故障は, 機械的・電気的にほとんどこの部分に発生する.すなわち, 整流素子は熱容量が小さく, 短時間過電流耐量が低くサージ電圧によっても簡単に破壊されるなど多くの問題点をもっている.このため, 整流器の定格の決定, 素子の保護などについてはきわめて慎重な検討がなされているが, さらに, くわしくは回転励磁系を模擬して種々の動作状態における整流回路の解析を進める必要がある.
本稿では, 整流回路を簡単に取り扱える状態変数解析法についてのべ, さらに, 励磁系解析の1段階として1整流素子の故障計算をとりあげた.
整流素子の故障には, 断線ならびに短絡の二つの現象がみられ, このときにはそれぞれ過電圧・過電流が発生する.これらの場合の解析結果の主要点をあげればつぎのようになる.
(1) 1素子故障時の界磁電圧波形は, 短絡および断線のいずれの場合も故障後ただちに定態波形を示す.
(2) 断線時の過電圧は, 初期条件によっては発生しない.この過電圧は断線時のモデルおよび浮遊容量の影響を考慮して求めることができる.
(3) 故障時の過電流によって, 健全な他相の素子も故障することがある.
(4) 故障電流は減衰せず, さらに, 大きな直流分を含むため, 励磁機の電機子巻線ならびに付属した制御系に悪影響を与える.
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