実験社会心理学研究
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23 巻, 1 号
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  • 亀田 達也
    1983 年 23 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究では, 個人が自らの判断に対して抱く自信 (主観的妥当性) に, 類似他者からの合意, 非類似他者からの合意とではどちらがより大きな影響を与えるか, について実験的な検討を行った.
    教員採用試験に関する調査研究との設定のもと, 被験者は, 2人の教員志願者のうち現在どちらがより大きな教育的成功をおさめているか判断する, という課題を与えられた. 判断を下した後, 各人には, “他の被験者” の判断が伝達された. このとき被験者の半数に対しては, “他者” が望ましい中学校教員像について被験者本人と類似した価値観をもつとの教示を行い, 残りの半数には, 異なる価値観をもつと教示した. また, “他者” の判断内容には, 被験者自身の判断と一致する場合, 一致しない場合の2水準を設定した. この後, 被験者は再度判断を下すように求められた. 他者合意による影響は, 伝達をはさんだ都合2回の判断において, 各判断に対する被験者の自信評定がどのように変化したかにより測定した.
    主な結果は, 次のとおりであった.
    1. 非類似他者との判断の一致は, 類似他者との判断の一致以上に, 被験者の判断に対する自信を上昇させた.
    2. 類似他者との判断の不一一致は, 非類似他者との判断の不一致以上に, 被験者の判断に対する自信を低下させた.
    3. 判断の一致・不一致のいかんにかかわらず, 類似他者は非類似他者よりも, より好意的に評価された
  • 個別尺度法によるパーソナリティ認知次元の抽出
    林 文俊, 大橋 正夫, 廣岡 秀一
    1983 年 23 巻 1 号 p. 9-25
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究では, 個々人が他者のパーソナリティを認知する際に働かせる次元の数やその意味内容を, 個別尺度法を用いて分析することを目的とした.
    被験者は大学生男子44名 (うち, 分析の対象としたのは33名). 各被験者は, 32名の刺激人物を個人ごとに構成された個別尺度上で評定することを求められた (調査SPR). また, 各被験者の個別尺度に含まれている特性をSD法でいうコンセプトとして扱い, それぞれを大橋ら (1973) による20対の共通尺度上で評定させた (調査TIF).
    調査SPRの資料より, 個人ごとに因子分析を行なった. そして, 抽出された諸因子を, 調査TIFの資料を媒介として分類・整理した. 得られた主な結果は, 次の3点である.
    1) 認知的複雑性の指標となる個々人の因子数は, 1~7の範囲に分布し, かなりの個人差が認められた. ただし, 人が他者のパーソナリティ認知に際して働かせる次元数としては, 最頻値として一応4次元程度を想定するのが適当であると考えられた.
    2) 抽出された因子の意味内容は, かなり多岐にわたっていたが, 多くは評価的色彩を帯びたものであった. また, 評価次元とは独立な形で力本性に関する因子もいくつか見いだされた.
    3) 個別尺度法により抽出された因子の多くは, 林 (1978a, 1978b) の提唱するパーソナリティ認知の基本3次元 (個人的親しみやすさ, 社会的望ましさ, 力本性) の枠組から分類・整理することが可能であった
  • 鹿内 啓子
    1983 年 23 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 他者の成功・失敗の因果帰属に及ぼすselfesteemの影響を検討することを目的としている. 仮説は, self-esteemの低い者 (低SE群) はそれの高い者 (高SE群) にくらべて, 他者を高く評価する傾向があるので, 他者の成功を内的要因に, 他者の失敗を外的要因に帰属しやすいであろうというものである.
    中学1年生男子128名, 女子129名の中から, self-esteem得点の高い者, 中位の者, 低い者, 各々60名ずつを分析の対象とした. まず, 他の中学生のアナグラム課題での成績であると教示して, 4名の刺激人物 (SP) の成績を知らせ, それぞれの成績について因果帰属を求めた. 4名のSPのうち2名は4試行すべてに成功し, 他の2名はすべてに失敗している. また因果帰属は, 能力, 努力, 問題の難しさ, 運, および調子の5要因について, それぞれが各SPの4試行全体の成績にどの程度影響していたかを7点評定させて測定した. その後, 被験者自身にアナグラム課題を行なわせ, 4試行各々および4試行全体の自己の成績について, 他者の場合と同様の方法で因果帰属させた. 最後に, self-esteemを質問紙によって測定した.
    得られた結果は, 次のようなものである.
    1. 高SE群は中SE群や低SE群にくらべ, 他者の成功を内的要因に帰属する程度が弱く, 逆に失敗を内的要因に帰属する程度が強かった. この結果は, 社会的比較過程を通してself-esteemが形成されてくる中で獲得されてきた, 他者評価の水準の差異によるものと解釈された. 外的要因については仮説は支持されなかった.
    2. self-esteemの高さや成功・失敗にかかわらず, 全般的に他者の成績は外的要因よりも内的要因に帰属され, 自己の成績は外的要因に帰属されやすかった. これはJones & Nisbett仮説を支持するものとみなされた.
  • 猪股 佐登留
    1983 年 23 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    新奇な無意味図形と連想価の低い仮名文字の無意味語とを用いて, 刺激の呈示回数が増えるにしたがい, それらの刺激に対する好み度と熟知度は対数関係として直線的に上昇するものと仮定したとき, 両者の上昇傾向は相互にどのような関連性を示すものか, またこのような傾向を説明するための1媒介因モデルと2媒介因モデルうち, 実測資料に対していずれの適合度が高いか, を検討することを目的として実験が行われたが, 前者の条件では, 刺激呈示回数の増大にともない熟知度の評定が向上するとともに, それに追随して好み度は好転した. 後者の条件では, 刺激呈示回数の増大にともない熟知度は増大して, 最終的にはやや低下し, 好み度と刺激呈示回数の関係は, 最終的には飽和状態を現わした. これらの資料にLISREL分析を施すことによって, 前者の条件では1媒介因モデル, 2媒介因モデルともに資料に適合するが, どちらかと言えば1媒介因モデルの方がやや有利であり, 後者の条件では, 刺激呈示回数の熟知度と好み度に対する関係の不均衡を説明するために, 2媒介因モデルが採用され, このモデルは資料に適合すると判明した.
  • 三井 宏隆
    1983 年 23 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • Lerner-正当世界仮説の検討
    諸井 克英
    1983 年 23 巻 1 号 p. 61-73
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    前回の実験と同様に, Lerner-Simmonsパラダイムで見出されたderogation現象の正当世界仮説に基づく解釈の妥当性が検討された.
    被験者は49名の男子大学生で, 対連合学習実験の場面を収録したと称されるテープを聴いたが, 前回の実験とは異なり, エラーとショックとの対応関係の有無を顕在化させるために, 観察者にSPの反応の正誤を逐次チェックさせた. また, 学習実験場面で生じたderogationが後の評定にどのような効果を及ぼすかも調べることにした.
    仮説は次の通りである. 1) RS条件ではSPのde-rogationが生じるが, C条件とES条件ではSPのde-rogationは生じないだろう. 2) RS条件では正当世界信念の強い者は弱い者よりもSPをderogateする程度は大きいが, C条件とES条件では信念の強さは関係ないであろう.
    仮説1, 2は支持され, 以下に示すような傾向が見出された.
    (1) SPのderogationは生じなかったES条件では, エラーとショックとが一対一的対応をしているために, ショックは学習を促進するポジティブなものとして知覚され, 実験事態のポジティブな評価を伴っており, したがって, 不当性の知覚自体が最初から生じていないことが明らかになった. これは, SPの相対印象値は観察者の正当世界信念の強さと無関係であることによっても裏付けられる.
    (2) SPのderogationが生じたRS条件では, エラーとショックとの対応関係の欠如ゆえに, ショックは学習妨害的であると知覚され, 実験事態のネガティブな評価を伴っており, この条件のSPは, Lernerが主張するように, 不当性解消のためにderogateされたと言える. これは正当世界信念の強い者ほど, SPをよりderogateする傾向があったことによっても裏付けられる.
    (3) RS条件でのderogationに関するさまざまな代替説明-「SPの行動-derogation」仮説, 「加害者意識-derogation」仮説, 「共感-同情」仮説-について検討したが, いずれも妥当であるとは言えず, 正当世界仮説による説明が最も有力であることが明らかになった.
    (4) SPのderogationがその後の事態に及ぼす効果については, Lernerの仮説とは逆の傾向, すなわち, RS条件ではderogateしたSPを補償しようとする傾向があることが見出された.
    以上の結果を通じて, Lerner-Simmonsパラダイムでは, SPが不当な事態におかれ, 事態全体の認知を歪曲することによって正当性を回復できない時には, SPのderogationが大きく生じることが明らかになった. また, Lerner-Simmonsパラダイムでのoutcomeと「行為+人格的価値」との対応は二つのレベルで考えられ, さらに, 学習に対するショックの効果性についての知覚や, outcomeに対する統制力の要因が, 不当性の知覚に関与していることが示唆された.
  • 石井 京子, 石井 滋
    1983 年 23 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は管理者の職務異動・異動後の在職期間・異動時の職務類似性, 及び非異動管理者の在職年数がリーダーシップの変容に及ぼす効果について検討を加えるものである.
    被験者は海運業務に携わる某企業体の従業員約800名である. 質問紙調査は三隅 (1970) の開発したPMリーダーシップサーベイを用いて, 約2年間のインターバルをおいて実施した. 分析は1回・2回のデータがそろっている管理者136名について行なった. (すべて男性である).
    結果は次のとおりである.
    1. リーダーシップM機能については, 異動群の相関が非常に低く, 非異動群との間に有意な差が見い出された (Table 1).
    2. 異動群を職務による類似-非類似で分析したところ, 職務類似群は非類似群にくらべP機能の相関が高い傾向が認められたが, 有意差は認められなかった (Table1).
    3. 異動群を配転後1年以内-1年以上に分けて分析したところ, 1年以内群はP機能の相関が低いが, 1年以上群は相関が高くリーダーシップの恒常性が認められた (Table 1).
    4. 1年以上群及び類似職務群は1年以内群や非類似職務群に比べ, 計画P因子と専門性得点が有意に高いことが示された (Table 2).
    5. リーダーシップの変容方向については, M機能は異動群に上昇群が有意に多いことが認められたが, P機能には異動群・非異動群間に有意差は認められなかった (Table 3・4).
    6. 非異動群における在職年数とリーダーシップ機能との関係については, P機能に在職年数の増加とともにP得点の向上が認められた (Table 5・6).
  • 深田 博己
    1983 年 23 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 1983/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 無関連恐怖喚起状況下での説得促進効果の特徴を解明するために, その持続性および媒介メカニズムについて検討した. 無関連恐怖喚起による説得促進効果は一時的で持続性に欠けるであろうと仮定され, また, 無関連恐怖喚起の一時的な説得促進効果は, distractionによって媒介されるであろうと仮定された.
    独立変数は, 恐怖の関連性 (関連恐怖, 無関連恐怖), 恐怖喚起 (強恐怖喚起, 弱恐怖喚起) および時間 (説得直後, 1週間後, 4週間後) であり, 時間変数のみが被験者内変数であった. after-onlyデザインを利用し, 恐怖の関連性操作には “同一恐怖喚起-異種話題説得” の手続きを用いた. 被験者は女子大学生120人であり4実験群と1統制群に対し24人ずつ無作為に配置された. 従属変数は態度変容であり, 意見と行動意志の2側面を測定した. distractionは, 説得話題に関する反論, コミュニケーターの信憑性に対する認知の側面について測定した. また, 説得1週間後に, 説得話題に関する思考, 情報交換といった注目行動を測定した.
    1. 意見変化の分析から, 無関連恐怖喚起状況下での説得的コミュニケーションの直後効果は, 無関連恐怖喚起水準の上昇によって一時的に促進されるが, その説得促進効果は時間経過とともに急激に消失し, 持続性をもたないことが示された.
    2. 主として行動変化の分析から, 比較条件として設定された恐怖喚起コミュニケーションの直後効果は, 関連恐怖喚起水準の上昇によって促進され, その説得促進効果は4週間後も持続することが示された.
    3. 無関連恐怖喚起は, distraction測度として測定された説得話題に関する反論やコミュニケーターの信憑性に対する認知に影響を及ぼさなかった.
    4. 関連恐怖は説得後の受け手の注意を説得話題に向けさせる機能をもつが, 無関連恐怖は逆に受け手の注意を説得話題からそらす機能をもつことが判明した.
    本研究の結果は, 無関連恐怖喚起状況下での説得促進効果が持続性に欠けるものであることを実証し, 当初の仮説を支持した. そして, distractionに関する当初の予想が支持されなかった点について, 今後の研究ではより直接的なdistraction測度を設定することが必要であると提案された.
  • 1983 年 23 巻 1 号 p. 95
    発行日: 1983年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
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