本研究は, PM式監督類型によってEinstellungeffectに差異が見い出されるか, どうかを吟味しようとしたものである. 被験者は, 女子大学生111名であり, 実験条件として, PM式監督類型 (4類型) と不安水準 (2水準) が設定され, 4×2=8の実験群が構成された. Einstellung effectの測定にはLuchins, A.S. (1942) の “水がめ問題” を修正した課題を用いた.
本研究において検討された仮説は, (1) P機能はEin-stellung effectを高め, M機能はEinstellung effectを低める. (2) 高不安群は低不安群よりも高いEin-stellung effectを示す. (3) M機能のEinstellung effectを低める効果は, 外的要因 (P行動), 内的要因 (高不安) によって, 緊張が高まっている時にのみ顕現化する, という3つの仮定から設定された. 仮説1 Einstellungeffectに関して, 監督類型の影響力は, P型>PM型, M型, pm型の順位になるであろう. 仮説2高不安群において, pm型<M型のEinstellung effectを示すだろう. 仮説3 pm型の監督者のもとの被験者では高不安群>低不安群のEinstellung effectを示すだろう. 見い出された結果は以下の通りであり, 仮説1に関しては, P型>PM型, M型という関係には有意差を見い出したが, P型とpm型の比較で, P型>pm型という仮説1を支持する結果は得られなかった. しかし, 低不安群に限定するならば, P型>pm型という有意差を見い出しており, 外的要因 (P機能) と内的要因 (高不安) の両者が加算されてより緊張を高めEinstellung effectを高めることはない, という新しい仮定が暗示された. 仮説2の高不安群においてM型はpm型よりも低いEinstellung effectを示すという仮説2を支持する結果が得られた. しかし, M型・低不安群がPM型・低不安群よりも高いEinstellung effectを示すという結果も見い出された. この結果は, 3つの仮定からは演繹できない. そこで, pm型・低不安群との比較, 実験後の感想が検討され, 低不安で, かつ弱いP機能 (外的にも, 内的にも緊張が高まっていない状態) のもとでは, M機能はむしろEinstellung effectを高めるのではないか, という解釈がなされた. つまり, Einstellung effectを高める2つのプロセスがあるのではないか, ということが示唆された. その1は課題志向的構え形成過程であり, その2は対人志向的構え形成過程である. 仮説3のpm型において高不安群が低不安群よりも高いEinstellungeffectを示すという仮説は支持されなかった. が, 解決時間の分析では仮説3の方向が支持された. なお, Einstellung effectと解決時間にはφ=. 417の有力な相関があった.
以上の仮説と結果の検討から, Einstellung effectを低めるには, 緊張を高める要因 (P機能, 高不安) と緊張解消をする要因 (M機能) が併存していることが必要であることが示唆された. 上述の結果以外に “作業に対する面白さ” がリーダーのM機能と有意な相関 (r=. 494, p<. 01) があり, “作業に対する難しさ” の認知は解決時間と相関 (r=. 247, p<. 01) のあることが見い出された.
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