実験社会心理学研究
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53 巻 , 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 油尾 聡子, 吉田 俊和
    2013 年 53 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    社会的迷惑行為の抑止方法には,禁止や制裁といった方法が取られることが多い。しかし,これらの方法は迷惑行為者の反発心を喚起させるため,長期的にみて抑止効果が弱い。本研究は,これらの方法の問題点を解決すると考えられる報酬による社会的迷惑行為の抑止効果を実証したものである。具体的には,社会的迷惑行為の行為者に対して認知者が好意の提供(親切な行動)を行うことによって,そうした行為が抑止されるのかどうかを検討した。好意を提供された迷惑行為者は,“好意を与えてくれた他者に対して,同様のお返しをしなければならない”という互恵性規範が喚起され,社会的迷惑行為を抑制すると予測された。大学生153名を対象とした実験室実験の結果,飲み物を振る舞ってもらうことを通して好意を提供された迷惑行為者の中で,特に,互恵性規範が喚起されやすかった人々は,社会的迷惑行為を抑制するよう動機づけられることが示された。最後に,好意の提供による社会的迷惑行為の抑止方法は,迷惑行為者と迷惑認知者の感情的反応と関係性の良好さをも配慮した長期的に有効可能性の高い方法であることが考察された。
資料論文
  • 白岩 祐子, 唐沢 かおり
    2013 年 53 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    近年,裁判員制度や被害者参加制度が刑事裁判に導入され,一般市民の法的判断を規定する要因が注目され始めている。本研究では,被害者参加人のタイプや表出感情,被害者参加制度に対する個人の態度が,量刑判断にどのような影響を及ぼすのかを検討するため,大学生・大学院生などを対象にシナリオ実験を行なった。その結果,誰が被害者参加人を務め,どのような感情を表出するかという要因と,個人の量刑判断との間に関連はみられなかった。また,「他者は自分よりも被害者参加人の言動に影響される」という社会的影響の非対称な認知が確認され,この判断バイアスは,被害者参加制度に対する態度が否定的であるほど大きくなった。さらに,制度に対する態度は,非対称な認知のうち自己への影響認知を媒介して量刑選択に影響を及ぼしていた。具体的には,被害者参加制度に反対するほど被害者参加人の発言による自己への影響が否定され,それによって短い量刑が選択された。以上の結果を踏まえ,量刑判断の規定因研究における展望と課題が議論された。
  • 石盛 真徳, 岡本 卓也, 加藤 潤三
    2013 年 53 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究では27項目で構成されるコミュニティ意識尺度の原版の利便性を高めることを目的として短縮版の開発を行なった。その目的を達成するために392名の調査回答者(平均年齢40. 9歳,男性50. 3%・女性49. 7%)のデータを収集した。短縮版12項目は,原版のコミュニティ意識尺度と同じく連帯・積極性,自己決定,愛着,および他者依頼の4つの下位尺度から構成されている。各下位尺度はいずれも3項目から構成されているが,それらの項目については原版を用いた先行研究において一貫して同一の下位尺度に負荷している項目から選定を行なった。短縮版の探索的因子分析を実施した結果,短縮版が原版と同じ4因子構造を保持していることが示された。次に検証的因子分析を実施した結果,短縮版の4因子構造モデルが十分な適合度を持つことが示された。したがって短縮版は原版の半分以下の項目数でコミュニティ意識という構成概念を測定し得ることが示されたといえる。今後は,利便性の向上した短縮版を積極的に活用し,現実のコミュニティにおける課題の解決に向けた実証的研究を進めていくことが必要である。
  • 吉田 琢哉, 中津川 智美
    2013 年 53 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    他者との良好な関係を志向する関係目標は,対人葛藤対処方略の選択を左右することが示されてきた。しかしこれまでに得られた知見は,対処方略への影響の仕方について齟齬が見られる。すなわち,関係目標は葛藤の解消に有効とされる協調方略を促進するという結果と,協調方略を抑制するという結果とが混在している。本研究は接近―回避の軸から関係目標を区分し,その齟齬を解消することを目的とした。接近的な関係目標は,対処方略のうち協調と主張に正の影響を与える一方で,回避的な関係目標は,服従および回避の選択を促進すると考えられる。本研究の結果はこれらの仮説を支持するものであった。また,相手との関係性という社会的文脈を親密性と地位から捉え,関係目標への影響を合わせて検討した。その結果,親密性が高いほど協調が選択され,その関連は接近的な関係目標により媒介されることが示された。地位については,関係目標に対しても対処方略に対しても,特に影響は見られなかった。これらの結果について,対処方略を選択した後の相手の反応への期待に起因する可能性に基づいて考察された。
  • 田原 直美, 三沢 良, 山口 裕幸
    2013 年 53 巻 1 号 p. 38-51
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,職務チームの対面的コミュニケーション行動を,特殊な機器を活用して詳細に測定,記録し,チームワーク特性と比較検討することで,職務チームにおいて有効なチーム・コミュニケーションとはどのようなものかについて実証することを試みた。システム・エンジニアを対象に,10週間職務遂行中の対面コミュニケーションを測定し,コミュニケーションの量的指標及びネットワーク指標を算出した。これらの指標と,質問紙調査により測定したチームワーク,職務満足感,集団アイデンティティ,及びチームのパフォーマンスとの関連を比較検討した。最終的に9チーム59名を対象に分析した結果,頻繁で緊密なチーム・コミュニケーションは必ずしも優れたチームワークを保証するものではないことが示された。また,チームとしての発達段階や,遂行する課題の特性,課題の習熟度などによって,チーム・コミュニケーションとチームワークとの関連が変化することも示唆された。
展望
  • 縄田 健悟
    2013 年 53 巻 1 号 p. 52-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/03
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,集団の視点を軸に,社会心理学における集団間紛争研究の概観と展望を議論することである。本論文では,集団間紛争の生起と激化の過程に関して,集団を中心とした3つのフェーズから検討した。フェーズ1では「内集団の形成」として,自らの所属集団への同一視と集団内過程が紛争にもたらす影響を検討した。フェーズ2では「外集団の認識」として,紛争相手となる外集団がいかに否定的に認識され,攻撃や差別がなされるのかを検討した。フェーズ3では「内集団と外集団の相互作用」として,フェーズ1,2で形成された内集団と外集団が相互作用する中で,紛争が激化していく過程を検討した。最後に,これらの3フェーズからの知見を統合的に議論し,集団間紛争に関する社会心理学研究の今後の課題と展望を議論した。
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