実験社会心理学研究
Online ISSN : 1348-6276
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63 巻, 1 号
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原著論文
  • 寳田 玲子, 渥美 公秀
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 63 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/20
    [早期公開] 公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,愛知県半田市の外国籍市民への支援と当事者の支援団体との恊働的実践についてなされたものである。外国籍市民に対する支援は,当事者側のニーズが次第に明らかになることで,支援者側がそのニーズに即した適切な支援を行うことがますます求められてきている。一方で,外国籍市民との恊働的実践において,支援者が当事者とともにニーズを確認しそれに合わせた支援を行っていても,あとから見出された本来の支援内容とは異なるもう一つのニーズが出現してくることがある。本研究では,当事者と支援者がともに確認した「当初の支援ニーズ」と,かかわりから見出された「もう一つの支援ニーズ」が互いに異質なまま混在している状態が,当事者と支援者の関係性が問われる場面だととらえ,これらの異なるニーズが混在する場をどのように活用すべきか考察することを目的とした。恊働的実践を展開していく中で,「当初の支援ニーズ」と,「もう一つの支援ニーズ」が出会うことで生成される互いの差異,すなわち「ずれ」は,必ずしも解消すべきものではなく,むしろ当事者と支援者を結びつけるきっかけに繋がることが示された。

  • 矢守 克也, 岡田 夏美
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 63 巻 1 号 p. 14-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/20
    [早期公開] 公開日: 2023/05/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,既存の質問紙調査研究やそのデータをメタレベルの視点から考察する立場に立って,防災・減災に関する実践・実務に対して,これまで欠落・不足していた長期的かつ俯瞰的な観点を与え,あわせて,質問紙調査法に新たな視点を提供することを目的とした。特に,単一の調査研究から得られた結果だけではなく,複数の調査研究の方法や結果を俯瞰的に総覧することで,新たな洞察が得られる場合があることを指摘した。具体的には,第1に,日本社会における家庭での防災対策を具体的なトピックとして取りあげ,質問紙調査から得られるデータを読み解く際の〈ベンチマーク〉や〈ベースライン〉の重要性について論じた。第2に,「自助・共助・公助」というフレーズを取りあげ,「自助・共助・公助」をめぐる葛藤や矛盾を十分に把握するためには,一つには,調査の結果ではなく,調査の形式(設問の立て方)に注目する必要があること,また,もう一つには質問紙調査を通して主として〈平均化〉の論理によって得た知見を,それ単体としてではなく,〈極限化〉の論理を通して別途得た知見とリンクさせて総合的に理解することが重要であることを明らかにした。

  • 向井 智哉, 松木 祐馬, 貞村 真宏
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 63 巻 1 号 p. 32-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/20
    [早期公開] 公開日: 2023/06/22
    ジャーナル フリー
    電子付録

    現在の日本では,被害者のプライバシーに関する証拠(情報)のうち,関連性が低いものが裁判に顕出することを禁じる「レイプ・シールド法」を導入することの是非が論じられている。このような議論を背景に,本研究は,被害者関連情報として,被害者の性的前歴(多×少×記述なし)と職業(風俗従事者×医者×記述なし)がその被告人に対する量刑に及ぼす効果を検討することを主な目的として調査を行った。ドメイン知識を活用しつつ,被害者関連情報の効果を検討するために,分析にはベイズ的アプローチを用いた。分析の結果,被害者関連情報の量刑判断に対する主効果の95%確信区間には0が含まれており主効果は認められなかった。ただし,性的前歴多×風俗従事者に交互作用効果が見られ,被害者は性的前歴が多く,かつ風俗従事者であると記述された場合には,性的前歴や職業に関する記述がなされない場合および風俗従事者であるという情報のみが提示された場合と比較して,被告人に重い量刑が求められることが示された。上記の結果から得られる政策的示唆について論じた。

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