戦後に植栽された我が国の人工林資源は約1,000万haに及び,そのほとんどが利用可能な林齢に達してきている。しかしながら,国内市場では国産材の供給不足を補う意図で始まった木材輸入が,我が国の総木材需給量の80%を占めるに至っている。これは,外材が低価格,等品質の条件を満たしながら大量に安定供給できたからである。それに対し国産材は市況の変化に対して非弾力的であったため供給を伸ばすことができなかった。弾力的に木材の安定供給が達成できるか否かは,生産基盤の経営規模,持続性によるところが大きい。本稿では,造林,伐出等の木材生産費分析を行うことによって国産材供給増加の可能性について検討した。分析の結果,現在の価格水準では,造林,伐採等の生産費用を賄うことができないことが分かった。また造林補助金を考慮しても再造林できるほど十分な収入を得ることができず,新たな林業助成策が講じられない限り,我が国の持続的な林業経営を達成することが困難であることが明らかとなった。
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