本来の林業活動は森林破壊とは無縁であるにもかかわらず,依然として林業を森林環境の破壊者の一つとして認識している人々が存在している。それゆえ,林業技術者と一般市民が出席する催しを企画する際には,市民に向けて林業についての正しい理解を広げることが重要である。また,林業技術者と一般市民との森林の樹木に対する見方の違いを理解することも重要である。本研究では,林業技術者と非林業技術者(小学生および高校生)が,森林内で好きな木を選ぶ行動にどのような相違があるかを検討した。その際,被験者の視線方向を調べるために,ビデオカメラを被験者の頭部に取り付けて使用した。その結果,林業者は樹木の全体を眺めて樹木を選んでいることがわかった。しかし,林業技術者も非林業技術者も,最終的には林業的にも高く評価される形態の樹木を選んでおり,両者の間にそれほど大きな樹木の見方の違いがないことがわかった。このことは林業技術者と一般市民との対話を促進し得る森林環境教育活動の可能性を示唆している。
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