本論文では国土地理院発行の1:25,000地形図から作成したDEM を基に推定した傾斜角と方位角の誤差について検証した。最初に,地理情報システムを用いて,国土地理院の基盤地図情報(縮尺レベル25000)の10m間隔の等高線および標高点から空間解像度10mのDEMを作成するとともに,国土地理院の基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュデータからもDEMを作成した。それらのDEMから斜面の傾斜角と方位角を求めた。次に,GPSと光波測距儀を用いてDEMのセルに対応する林地に10m×10mの区画を設定し,区画の中心点からクリノメータで斜面の方位角と傾斜角を測定した。最後に,現地での測定値を用いてDEMから求めた推定値の誤差を求めた。その結果,傾斜角の推定値は偏りが無く,RMSEが10度以内であった。傾斜角が緩やかな場所を除くと,方位角の推定値も偏りが無く,RMSEが40度以内であった。しかし,谷線や尾根線など等高線間の水平距離に比べて傾斜角や方位角が急減に変化している場所については方位角の誤差が大きくなっていることに留意すべきである。
北海道中部の夕張択伐試験地における57年間の長期観察結果をもとに,択伐施業による北方針広混交林の林分構造と成長の変化を調べた。その結果,試験地内に林相別(広葉樹林,針広混交林,針葉樹林)に設定されている3調査区ともに,択伐の結果,枯損量の減少および生立木の形質向上が認められ,伐採後の林分材積が回復していた。一方で,針葉樹林を除き伐採ごとに立木本数が減少し,その結果,林分構造は択伐林型から単層化する傾向がみられた。また,針葉樹林においても広葉樹の増加によって今後択伐林型が崩れる可能性が示唆された。これらはクマイザサの密生による天然更新の不良が大きな要因と考えられ,3調査区ともに将来の保続的な収穫が危惧される状況になっていた。このため,林床植生がクマイザサの地域において択伐施業を保続的に行っていくためには,コストを考慮した更新補助作業の実施が必要であると考えられた。