森林に対する社会の多様な要求を森林管理計画に反映させるためには,森林と人間社会の関係を明らかにすることが必要である。そこで本研究では,日本を対象として,森林と人間社会との関係の変化パターンの分析結果をもとに両者の関係を変化させる仕組みについて検討し,「森林-人間社会」関係モデルを構築した。本モデルは,以下の4つの基本概念で構築されている。すなわち,(1)森林と人間社会との関係はフィードバック機構,(2)関係を変化させる主な要因は,人間社会による影響(『要求』,『利用』,『行為』),(3)『要求』には階層構造があり,現れる要求は『人間社会の体制』と『森林の機能』によって変わる,(4)『要求』を受けて,森林に対する行動(『利用』,『行為』)が起こり,森林が変化する。本モデルによって,森林と人間社会との関係の変化を人間社会の状態と森林の状態にもとづく簡単な構造で説明し,「森林-人間社会」の本質的な関係の枠組みを捉えることがことができた。さらに,森林に対する社会の要求の変化や森林利用が多様化する傾向を,要求の階層構造から説明することができた。
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