スルファメトキサゾール-トリメトプリム合剤(以下ST合剤)はニューモシスチス肺炎(以下PCP)予防の第一選択で最も頻繁に処方される薬剤であるが、副作用による中止が少なくない。
添付文書やガイドラインにおいて、投与量に関する記載はあるが、免疫学的腎疾患の患者に対する適切な投与量は不明確である。そこで、本研究では、免疫学的腎疾患の患者におけるPCP予防のための低用量ST合剤の忍容性を調査することを目的とする。
2016年4月から2024年3月の間に免疫学的腎疾患におけるPCP予防のためのST合剤を処方された患者を対象として、ST合剤の累積中止率とPCPの累積発生率を調査し、ST合剤の投与量に応じて対照用量群(4錠/週)と低用量群(2錠/週)の2群に分け比較検討した。
75人の患者が対象となり、10人が対照用量群、65人が低用量群であった。観察期間において、どちらの患者群もPCPを発症していなかった。180日時点の競合リスクを考慮したST合剤の累積中止率は対照用量群で30.0%(95%信頼区間0.071-0.578)低用量群で15.37%(95%信頼区間0.075-0.259)であった。対照用量群と比較した低用量群の調整ハザード比は0.397(95%信頼区間0.110-1.438)p = 0.160であり、有意差はみられなかった。
低用量群は対照用量群と比較し、有意差はみられなかったが、ST合剤の中止が少ない傾向であった。したがって、今回の後方視的調査の結果から、免疫学的腎疾患の患者におけるPCP予防のための低用量ST合剤は対照用量群と比較し、忍容性が高く、より安全に使用できる可能性が考えられる。
抄録全体を表示