薬剤投与設計をする上で腎機能を評価することは、腎機能低下患者において特に重要である。腎機能推算式の算出には体重が必要だが、肥満患者では、理想体重や補正体重を用いることが推奨されている。肥満患者においては実測体重を用いた推算腎機能では、実際の腎機能と比較して過大評価となることが危惧されているが、日本人においてどの程度の差があるかは明らかになっていない。そこで我々は腎機能低下のある肥満患者の腎機能評価に用いる体重について検討した。
対象は2017年1月1日から2022年12月31日に東京歯科大学市川総合病院において入院下で24時間蓄尿を実施したeGFR 60 mL/min/1.73 m2未満かつbody mass index(BMI)25 kg/m2以上の患者とし、Cockcroft-Gault式によるクレアチニンクリアランス(CCr)と実測CCr(mCCr)を比較した。
対象は107名であった。実測体重、理想体重、補正体重、標準体重のmean absolute error(MAE)は10.1、14.2、12.0、14.5、mCCr±30%以内の割合は74.8%、53.3%、70.1%、54.2%であり、最も高精度であったのは実測体重であった。一方でBMI 30 kg/m2以上かつeGFR 30 mL/min/1.73 m2未満の患者では、実測体重、補正体重のMAEは6.5、6.2、mCCr±30%以内の割合は58.8%、64.7%であり補正体重が最も高精度であった。
eGFR 60 mL/min/1.73 m2未満の肥満患者で腎機能を推算する場合、実測体重は正確性においては補正体重より優れていたが腎機能の過大評価となる可能性があり、注意が必要である。また、BMI 30 kg/m2以上かつeGFR 30 mL/min/1.73 m2未満では補正体重を推算式に用いることを推奨する。