20世紀の後半に先進諸国において定着した社会経済システムとしての福祉国家は、その基礎となった大量生産・大量消費による経済成長が地球規模の資源エネルギー問題の登場による経済成長の鈍化と財政危機、およびグローバル経済の進展による企業活動や雇用の国際的流動化がもたらす国内雇用市場の劣化によって安定的な基盤を失い、21世紀に入ってポスト福祉国家の在り方が模索されている。我々が今、福祉国家型の大きな政府という公共概念の変革を迫られていることは確かだとしても、その出口が単純な小さな政府ではないとすれば、どのような社会像と公共空間像を想定するべきなのだろうか。マルチパートナーシップ・ガバナンスはその問いに対する一つの答えとして我々の研究グループが提唱してきたものであり、「地域公共人材」、そしてその社会的能力を見える化する「地域公共政策士」の資格フレームは、マルチパートナーシップ・ガバナンスを担い、ポスト福祉国家に向けた社会変革につなげる人材の創出を視野に入れた人材育成システムである。
本稿では、「地域公共政策士」資格フレームの創出に至る経緯とその運用を中心に、報告することとしたい。
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